士業の経営方法とは~経営の本質は順序である~

 私は個人的に、マクドナルドの原田泳幸氏が好きで、すべての著書を読んでいますし、セミナーも2度ほど受講したことがあります。
 原田氏は、元アップル日本法人の社長で、その後マクドナルドに転身したことで「マックからマックへ」と話題になりました。
 過去のマクドナルドの快進撃は、まさに原田氏の戦略勝ちなのですが、その戦略論が非常にタメになります。
 著書「成功を決める「順序」の経営 ―勝つためには戦略の順番を間違えるな」(日経ビジネス経営教室)の中で、原田氏はタイトルの通り、順序(本文ではシーケンスと表現しています)が大事なのだと強調しています(他の著書でも同様のことを書かれています)。

原田氏がマクドナルドの社長に就任してからまず行ったことは、「QSC」という基本に立ち返ることでした。すなわち、

Quality:品質
Service:サービス
Cleanliness:清潔さ

おいしく、清潔で、サービスの質が高い店舗にするということです。外食産業では当たり前のことに立ち返ることだったのです。
では、QSCという「品質・サービス・清潔さ」を向上するために何をしたのでしょうか。店舗の改装を進め、出来たてのメニューを出せるよう、オーダーフォー・ユーに対応する投資も徹底しました。
次に進めたのが、従業員満足度を上げることでした。なぜ、顧客満足度ではなく、従業員満足度なのでしょうか。
当時のマクドナルドは、離職率が非常に高く、ベテランクルーがどんどん離れてゆき、クオリティーが上がらなかったのでした。ですから、離職率が下がれば、ノウハウを持ち、モチベーションも高い従業員が、長く働くことになり、結果として店舗のQSCが上がる、という流れを考えたのです。
しかし、これは始まりに過ぎません。次に行ったのが、100円メニューの導入でした。その後の展開は、「えびフィレオ」投入、価格改定(値上げ)、「メガマック」投入と続きます。

原田氏は、勝つためには「順序(シーケンス)」が必要であると強調しています。
まずはベースになる土台をつくり、その土台の上に柱を建て、その柱に壁を張っていくという考え方で、ある戦術を実行するために、その戦術を実行できる環境を整えていく順序、シーケンスが重要であるのだと。
マクドナルドのビジネスは非常にシンプルで、

売上高=客数×客単価

というのが基本です。そんなことは誰でもわかっていることです。
原田氏のいう「順序」とは、打ち手で差別化するのではなく、そこに時間軸を取り込むことです。つまり、マクドナルドの戦略は、

①「はじめに」店のクオリティーを上げて、マクドナルドもなかなかいいじゃないか、と顧客に感じて頂いた上で

②100円メニューを投入

この狙いは客数の増加です。実質的な値下げであり、客単価を下げてでも客数を増加させることに成功しました。
そして、100円メニューで客数を取り戻した後に、

③付加価値の高い商品を投入することで、逆に客単価を増加させる

 つまり、





QSCの向上 ⇒ 100円メニュー ⇒ 値上げ

という順序は偶然ではなく、必然だったと原田氏は書いています。
まるで、ジグソーパズルを1つひとつ組んでいくように、戦略実行のシーケンスを考えるのが経営戦略だということがわかります。
つまり、「経営の本質は順序である」ということです。

 とまあ、マクドナルドの経営戦略を長々と書いてしまったのですが、士業もまったく同じではないか、ということを伝えたかったわけです。
 1つの集客手段が功を奏すことはままありますが、それが続くことはあまり多くありません。なぜなら、採用した施策に、時間軸=順序が何も考慮されていないからです。
 例えば、WEBで問合せを増やす、そして事務所への来客型に変えることで契約率を高くする、という集客方法がありますが、来客型にするだけで明らかにダメになる事務所も多くあるのが事実です。
 この場合、本当に来客型にしたければ、事務所を「きれいに見せる」「お客様が歩く導線を考える」「会議室に安心感を持たせる」「お客様が着座してから飲み物を出すまでに驚きがある」など、「まずやるべきこと」が間違いなくあるわけです。
来客型にすることが目的ではありませんから、来客してもらってからが勝負というわけです。
非常に単純な例なのですが、「順序」まで考えて集客している士業の方が少ないのは、私がいつも取材していて思うことです。逆に言えば、集客できている事務所は、(意識していないかもしれませんが)「順序」を間違えずに行動しています。

  • 問合せを受ける(見込客の発掘)
  • コミュニケーション力を上げる(対面力の強化)
  • 狙い通りの金額で契約する(営業力の強化)
  • 顧客満足度を保つクオリティを提供し続ける(解約率の低下)

 これらはすべて一連の流れであって、この「順番」が大事なのです。集客してもすぐに解約されるのであれば何の意味もないわけです。
 皆さんは何を目的としていますか?何を達成したいですか?
 ただ漠然と「集客」と考えず、「まず何をすべきか」を真剣に考えることから始めてください。

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