税務会計村と法務村をつなぐ『士業の協働』 【弁護士:北村豊】

目次 [非表示]

【第3回】既存の業界の壁を越えた新しい法務サービス提供に取り組んでいる北村豊さんに、『士業の協働』についてお聞きしました(全4回)

            
世界4大会計事務所の一角を占めるEY(アーンスト・アンド・ヤング)のメンバーファームとして日本に弁護士法人が新設されて3年。日本初の本格的ワンストップ法務・税務・会計サービスを立ち上げた北村豊氏。世界の専門家との協働に本格的に取り組む弁護士法人の先駆けである。グループの枠を超え、地方の税理士事務所・税理士法人との共同受任で真にクライアントの期待に応えるために必要なことは何か――。

 

――海外に行かれて何か影響はうけましたか?

 

北村:特にアメリカではタックス・ローヤが多く、弁護士がタックスをやっています。普通の法律事務所にも税務部門があって、そこの弁護士が税務をやっているのが一般的でしたので、いずれは日本でもそうなるかもしれないと思いました。

 

日本に帰ってきて気づきましたが、日本では法律事務所は税務訴訟はやるものの、税務の事前アドバイスは、ほぼ税理士法人・税理士事務所の寡占状況です。それは今もほとんど変わっていません。そういう状況の中で、税務の事前アドバイスをするにはどうすればよいか。法律事務所で税務の事前アドバイスをやるという方法もありえますが、既に日本では税理士法人・税理士事務所の寡占状況でしたので、それには限界があるかもしれないと当時考えていました。

 

――EYには税理士法人もありますよね。内部で組むだけでマーケットシェアを確保できませんか?

 

北村:日本に戻って、アメリカとの比較でとても不思議に思ったのは、日本には巨大なサイロが2つあるように見えるということでした。“税務会計村”と“法務村”という巨大なサイロが2つあり、その間の交流が驚くほど少ない。これが日本のプロフェッショナル・サービスの弱点のように見えました。伝統的にはそれでもよかったのかもしれませんが、それは供給者側の論理でしかなく、お客様としてはお困りであったのではないかと。

 

日本では通常の法律事務所ですと、税務の問題になると、それは税の専門家に聞いてくださいとなるのが一般的かと思います。供給者側はそれでいいかもしれませんがお客様は混乱します。

 

――それで『士業の協働』という考えに至ったと

 

北村:この二つの巨大なサイロという問題が、逆に大きなビジネスチャンスになると思いました。

 

――これから先『士業の協働』はどれくらい大きなマーケットになると予測されていますか?

 

北村:本格的にはまさにいま始まったばかりです。最近は、弁護士法人Y&P法律事務所(2014年5月)やPwC弁護士法人(2014年11月)やDT弁護士法人(2015年4月)など、私どもと同じような取り組みを始めるところがでてきました。逆に森・濱田松本法律事務所がMHM税理士事務所(2015年11月)を作るなど、プレーヤーも多様化してきています。いずれ『士業の協働』が新しい常識になる日が来るとよいですね。

 

特に税務訴訟、M&A、クロスボーダーは『士業の協働』を進めやすい分野だと思います。逆に、例えば、非常に専門性が高い分野は専門性の高い法律事務所の方が得意でしょうし、弁護士が数十人必要な巨大案件は巨大法律事務所しかできないでしょう。マーケットにおいて自然に使い分けされていく時代になると思います。

 

――まだ、泣き寝入り案件は掘り起こしていない状態でしょうか?

 

北村:実際に掘り起こしてみないと分かりませんが、いろいろな理由で本来納税者の主張が認められてしかるべきなのに声を上げていないというケースは少なからずあるのではないでしょうか。

 

 

――ちなみに、北村さんならどう掘り起こしますか?

 

 

北村:例えば、地方の税理士事務所・税理士法人の方と共同受任させていただくことを考えています。税理士の先生方は税務申告を担当して税務調査対応をされ、仮に処分された時には不服審判までは代理することができます。そして、税務訴訟の段階でも補佐人として関与することができます。そこに弁護士と協働する余地があるのではないかと思っております。

 

税理士の先生には、例えば補佐人になっていただき私どもは代理人になりますというような形で税務訴訟を共同受任できれば、税理士の先生にとっても業務範囲が広がりますのでWin-Winの関係になるのではないでしょうか。

 

――実際、弁護士側からみて補佐人をどうとらえていますか?

 

北村:現状、あまり活用されていないように思います。もともとは税理士業界のほうで税務訴訟も業務範囲に取り込みたいという動きをされていたのが一部実現したということだと思いますので、もっともっと活用されてもよいはずです。

 

――税理士が実体法、弁護士は手続法という認識であっていますか?

 

北村:そういう場合もありますが、必ずしもその図式にあてはめる必要はないでしょう。税理士の先生方が実際のお客様の事実関係をよく把握されていることが多いので、いいチームが組めると思います。

 

――先生の事務所がやろうとしていることが『士業の協働』で、事務所の各先生はその中でひとつひとつ専門性があり、先生はその中で税務訴訟をやっているという感じでしょうか?

 

北村:現状そうなっていますね。というのも人間の能力には限りがあり、すべての法律分野を一人でというわけにはいかないですから、事務所内部では適宜分業しています。

 

――『士業の協働』をするなかで、一番必要なものは税理士・会計士さんですか?他の士業の方ですか?

 

北村:まず、税理士の先生方と弁護士はとても近いと思います。同じアドバイザーとしての立場なので共通項が多いです。会計士の先生方との関係では、特に会計のアドバイザリーをされている方とは関係がとても近いですね。

 

――掘り起こしのための税理士さんは、どのような税理士さんをイメージしていますか? ある程度税理士さんも、大勢いるところは限られていると思いますが

 

北村:税務訴訟については、主に企業をお客様とされる税理士の先生だけではなく、主に個人をお客様とされる税理士の先生との関係でも、相続税など色々な分野で可能性があります。また、東京だけではなく、むしろ地方のほうが可能性は高いかもしれません。

 

・プロフィール
「勝てる税務訴訟」へ。税務訴訟に強みを持つ弁護士。
 
EY弁護士法人 マネージングパートナー:北村 豊(きたむら ゆたか)
 
弁護士登録した2000年に「長島・大野・常松法律事務所」入所。2006年にミシガン大学LLM、2007年にニューヨーク州弁護士登録、ニューヨーク大学LLM in Taxation、ワシントンDCのCaplin & Drysdaleで研修。2009年から2012年まで金融庁総務企画局政策課金融税制室課長補佐として金融業界や金融取引に関する税制改正要望業務に従事。2010年から2015年まで京都大学法科大学院において非常勤講師(税法事例演習)を務めた。
2013年にEY弁護士法人を立ち上げ、現在に至る。

登録することで、 利用規約・プライバシーポリシーに 同意したものと見なされます。

関連記事