全世界的な一括コンプライアンスへ 【弁護士:北村豊】

【第4回】既存の業界の壁を越えた新しい法務サービス提供に取り組んでいる北村豊さんに、『士業の協働』についてお聞きしました(全4回)

 
 
世界4大会計事務所の一角を占めるEY(アーンスト・アンド・ヤング)のメンバーファームとして日本に弁護士法人が新設されて3年。日本初の本格的ワンストップ法務・税務・会計サービスを立ち上げた北村豊氏。世界の専門家との協働に本格的に取り組む弁護士法人の先駆けである。『士業の協働』を、一緒に組む税理士に向けてメッセージをお願いしました。
 
――いま弁護士業界で感じる問題はありますか?
 
北村:繰り返しになりますが、日本では税務会計村(税務会計業界)と法務村(弁護士業界)との間に巨大な壁があるように思います。これはお客様のニーズに即したものではないので、できるところから風穴をあけていきたいと考えております。
 
――弁護士として関心のあることは?
 
北村:税務訴訟の次に関心のあることは、クロスボーダー、特に日系企業の海外進出サポートです。これも国ごとに法制度が異なるのである程度仕方がないことではありますが、弁護士業界は国ごとに分かれており、その間の交流は驚くほど少ないと感じます。日本法村、韓国法村、中国法村、ロシア法村・・・という感じですね。お客様にとっては、進出先の国によって専門家を使い分けないといけませんので、とても不便だと思います。それを一本化できるようになるとかなり変わってくるのではないでしょうか。
 
グローバルにワンストップでサービス提供することは、税務会計の世界では従来からやってきたことですが、その流れが徐々に法務の世界にも入ってきているように感じます。国の発展の度合いにもよりますが、世界各国が同じような法務問題に直面しており、その解決方法も共通点が多くなってきています。各国における法務サービスを一括して提供できるようになると法務の世界も変わってくるのではないでしょうか。
 
――企業はITによってグローバル化が進みましたが、影響はありますか?
 
北村:影響のひとつではあるでしょう。日系企業の場合は、伝統的に現地の法務対応は現地で行う傾向が強かったと思います。もっとも、最近は、特にグローバルに展開されているような外資系企業ですと、全世界的なコンプライアンス対応を一括して発注するという流れが出てきています。これが徐々に日系企業にも広まってくるでしょう。
 
――弁護士さんはひとりで仕事をすることを好む人が多い職業ですが、
協働というのはしやすいですか?税理士さん側がしたいという気持ちはわかるのですが?
 
 
 
 
北村:最近はだんだん弁護士側の意識も変わってきているのだと思います。例えば、私たちのひとつ前の世代ですと、弁護士は士業の王様ですというような意識の方もままいらっしゃるでしょうけど、そのような方が『士業の協働』に本気で取り組むのは難しいかもしれません。『士業の協働』は、法務・税務・会計の専門家がお互いに相手をリスペクトしなければ成り立たないと思うからです。私たちの世代は同じ弁護士の中での競争が激しくなってきていることもあって、『士業の協働』がむしろ自然だと考える弁護士が増えてきているように思います。
 
――世代的にフットワークが軽くなってきていますか?
 
北村:そのように思います。少し前まではそこまでしなくても飯が食えた時代がありました。特にリーマンショック前は大手法律事務所に在籍していれば、自然と仕事が増えていくというようなこともあったかもしれません。でも、今はそうではありません。大手法律事務所でパートナーになっても、どうやって仕事をとればよいのか思い悩んでいる弁護士が増えています。
 
――弁護士業界の価格競争はどうなっていますか?
 
 
北村:弁護士業界では、いたるところで価格競争がおきています。例えば、一昔前はM&Aの法務デューディリジェンス1本で数千万ということもありましたが、今は、規模にもよりますが、数百万というものも普通になってきています。特にコモディティな分野になればなるほど安くなります。
 
――先生の分野はコモディティ化してないですよね?
 
北村:税務訴訟に関しては、テーラーメイドな対応が必要になりますので、コモディティ化しにくい分野だと思います。
 
――全体的な報酬は下がっているのですか?
 
北村:同じようなタイプの仕事が増えてプレーヤーの数が増えると、価格競争がおきて報酬が下がるというのは世の中の常ですね。そうならないようにするためには、他人とは違うことをしなければなりません。その一つの工夫が『士業の協働』だと思っています。私どもは、『士業の協働』の成功事例やベストプラクティスをどんどん発信していきたいと考えております。
 
――一緒に組む税理士に対してメッセージをお願いします
 
北村:納税者の正当な権利を実現するために、ぜひ一緒に協働しましょう。税理士業界の競争は弁護士以上に厳しいと思いますが、いざとなれば税務訴訟までサポートできる事務所だということになると、税理士業界においても他と差別化できるのではないでしょうか。そのためのパートナーとして私どもを活用していただけると嬉しいです。
 
・プロフィール
「勝てる税務訴訟」へ。税務訴訟に強みを持つ弁護士。
 
EY弁護士法人 マネージングパートナー:北村 豊(きたむら ゆたか)
 
弁護士登録した2000年に「長島・大野・常松法律事務所」入所。2006年にミシガン大学LLM、2007年にニューヨーク州弁護士登録、ニューヨーク大学LLM in Taxation、ワシントンDCのCaplin & Drysdaleで研修。2009年から2012年まで金融庁総務企画局政策課金融税制室課長補佐として金融業界や金融取引に関する税制改正要望業務に従事。2010年から2015年まで京都大学法科大学院において非常勤講師(税法事例演習)を務めた。
2013年にEY弁護士法人を立ち上げ、現在に至る。

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