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過去に何人も挑戦して敗れさった「開放特許」【弁理士:富澤正】

【第3回】「自らがベンチャー企業を守るためには、自ら実行しなければならない」
これまで税理士が過去何十年も取り組んでいた大きな課題に果敢に挑戦する
富澤正氏に『解放特許』についてお聞きしました(全4回)

 
使われていない知的財産を使ってそれを利益に活かす。自治体として初めて本格的に取り組んだ川崎市の知的財産交流事業(通称:川崎モデル)も大成功と呼ぶには程遠い状況だ。弁理士業界、中小企業の事業と地域経済の発展のために挑戦する情報雑誌『開発NEXT』。開放特許の未来はどうなるのでしょうか?
 
――開放特許についてお聞きしたいと思います。
 
富澤: 大企業の保有している特許の7割が使われていないんですよね。国の政策で、大企業が使わない特許を開放して、中小企業はその特許を使って新しいものづくりをしましょうという流れです。
 
有名な例ですが、富士通が新しい技術で、防菌、防臭がある素材を作ったんです。それを中小企業側でマスクに練りこんで防菌、防臭機能のあるマスクを作りました。これは富士通の特許製品を使ったマスクになります。それによってすごい効果が出たので売れました。このような形で、ある企業が持っている特許の技術をマスクメーカーが転用することで新しい商品が生まれる。そのようなことを期待して、開放特許が盛んに打ち出されています。
 
特許とは土地ですので土地を貸し出して、要は賃貸するわけです。貸してもらった土地の上で、アパートもしくはマンション建てるのかはその人次第なので、中小企業の方であれば何を立てるのも自由です。
 
その商品が売れるのかどうかも、開放特許を使った企業の力によります。ひとつの新しいアイデアのヒントにはなると思いますし、特許に守られた新たな製品ということにもなってきます。中小企業にとっては、自社で特許取るのが難しいのであれば、他社の特許を使わせてもらい、知財管理をしてもらった上で発展させていくというのは一つの戦略じゃないかなと思います。私はこれを広めるために仕事をさせてもらっています。
 
――大企業が持っている開放されている特許について、中小企業の方は知っているのですか?
それとも知らない特許を先生方が紹介されているのですか?
 
富澤:公共団体に知財コーディネーターという方がいらっしゃいまして、その方が大企業がこういう特許を開放していますという特許活用に関する相談に応じます。さすがに中小企業では、こんな特許が開放されていますといわれても、自社にいきなり転用するのはむずかしい。だからそれを各省庁にいる知財コーディネーターという方を使ってもらって、新しい商品をアイデアとして作くっていこうというのが、いまの流れです。
 
――いわゆる「川崎モデル」というは、これまでと何が違ったのでしょうか?
 
 
富澤:これは私が聞いて感じたところなんですが、あくまで川崎市という市町村がコーディネートして積極的にやったモデルとして有名になったというところだと思います。いままでと何が違うのかといわれたら、特に違う所はないです。川崎市が積極的にやっているから川崎モデルと言っているだけです。
 
――先生は、知財コーディネーターと中小企業をつなげる仕事はされていますか?
 
富澤:私は、今はまだそこまでは出来ていませんが、今後の展開としては、開放特許に興味のある中小企業さんがいたら、それを大企業の特許とマッチングしてあげるという事業まで出来ればと思っています。ただ、いまはそこまでできていないので、特許コーディネーターの方までお繋するというところまでは、いま私たちがやっています。
 
――中小企業側はメリットが大きいと思いますが、大企業は国から言われているからやっている感じですか?
 
富澤:あとはプロモーションですね、大企業がそれでもうかるなんてことほとんどないですから。プロモーションとしてやって「ガイアの夜明け(テレビ東京)」や「クローズアップ現代(NHK)」で紹介されることで、あそこは特許がしっかりしているところだというところをイメージづける
 
――ブランディングに近い形でしょうか?
 
富澤:中小企業は、当然大企業からの提供であるとかを打ち出します。大企業の後光を受けた商品ですと宣伝することが出来ます。大企業のメリットは、やっぱりプロモーションですよね。
そうやって中小企業に対しても貢献しているということもいえますし、すくなからず特許ですから、年間で登録料払わなければなりません。
 
1年で1件あたり10万円くらいするわけです、10年以降はね。寝ている特許に10万円払うことになるなら10万円ででも貸し出したら元が取れるというバランス感覚ですね。最低限でも10万円稼いだ方がいいわけですよね
 
――京都試作ネットや知財交流会はどこが違うのでしょうか?
 
富澤:これは、あくまで試作をしたいという人たちがやってきます。京都試作ネットというのは約100社の連合体があって、そこに問い合わせした人の中から、この受付フォームの人が、この100社の中からどれがいいのかなと適材適所を選び出すというマッチングサービスです。
 
京都試作ネットの場合は、こういうものが創りたいというのが明確です。積極的に、こういうものが創りたいというのが分かっています。でも、知財交流会のほうは大企業側がこういうのあります、興味があったら手を上げてくださいという形なので、何を作りたいというものはありません。材料だけ渡されて、こういうものがあります、何か使ったらどうでしょうか?と言う形です。オープンイノベーションともいいますよね
 
――中小企業にとってはメリット高いですよね。これから開放特許の利用は増えていきますか
 
富澤:私たちも国もそうやって考えている所なので、やっぱりオープンイノベーションという今の流れに乗っているのがこの開放特許だと思っています。
 
――開放特許が使われている案件はどのくらいありますか?
 
富澤:事例でいえば川崎で約20件。それが多いとみるか少ないとみるか。なかなか実現しない中ではやはり多いと思います。相手の大きさは千差万別で、ただそれほど大きくないところがほとんどです。30名以下のモノづくりの会社、10名以下の所もが使ってやっている
 
――そうすると資金調達まで含めて必要ということになるんでしょうか?
 
富澤:そうですね、今なら国が後押ししてくれている状況なので、国の補助金、助成金を使ったり、クラウドファンディングによって資金調達をしたりとかの選択肢が今出来ている。他の士業の人達が応援するのであれば、とても感謝されるモデルのひとつでもあるかな。
 
いまの段階では、まだ国や県が応援しないと成り立たないモデルです。それを民間委託したいというのがいまの流れですね。
 
――今回、やっと国が後押ししてくれる
 
富澤:そういうこともありますね。それも含めて挑戦している所です。これはもう、はっきりいって生半可には成功しないです。川崎市役所がガンガンやって約20件ですからね。しかも10年くらいですよ。あれは市役所じゃなかったら出来ないですよ。お互いがプロモーションだと考えない限りはやれないモデルです。私は確実に売れますよという自信はまったくないです。ただ、事例が増えやすい環境だと思います。中国で作ったりとか、誰しもが簡単にものが作れる時代になって来てます。そこでは、うまくいくんじゃないかなと思っています。
 
――開放特許は、弁理士業界の最前線のテーマですか?
 
富澤:過去に何人も挑戦してきて、敗れさっているんですね。40年50年失敗してます。誰も成功してない。だから私も別に新しいことをしているわけではない。当然、生まれる考え方ですからね。特許を使ってそれを利益にいかそうというのは、過去何十年も諸先輩がたが、みなさん取り組んできた課題です。私はただ時流に乗っただけです。
 
・プロフィール
弁理士の未来を発信する「開放特許エキスパート」
 
弁理士、コスモス特許事務所パートナー:富澤 正(とみざわ ただし)
 
LECで弁理士受験の講師を務める。オモシロ特許研究会を主宰し、知的財産権の大切さを伝えるため全国で講演を行う。商標権を活かしたアイデア商品を作るベンチャー企業「Time Factory株式会社」を設立。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!(日本経済新聞出版社)』『 理系のための特許法(中央経済社)』などがある。
 

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