バンドマンから司法書士へ! 椎葉基史氏が司法書士業務にこだわらない理由

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・1日16時間の猛勉強で司法書士合格

 
まずは、簡単に自己紹介をお願いします。
 
20代前半までバンドマンをしていました。当時はプロのミュージシャン目指していたのですが、活動していく中で次第に限界を感じ、ついにはプロのミュージシャンへの道を諦めてしまいました。
 
当時は本当に悔しい想いをしましたし、その後は特別何か打ち込めるものも見つからず、2年くらいフラフラどうしようもない生活を送っていました。
 
そんなある日、九州に暮らす母親から電話があり、知人の連帯保証人になってしまい自己破産することになったと告げたのです。そのとき母親に大変親切に手続をしてくれたのが司法書士の先生でした。
 
私が初めて司法書士という職業を知ったきっかけです。そこから徐々に私自身、人のためにお役に立てる仕事をしたいと考えるようになり、司法書士を目指すことを決断したのです。
 
また、資格の予備校に相談に行ったときに、司法書士の平均報酬が1,300万円~1,400万円と書かれていて。当時、僕はそれを年収だと勘違いしていたというオチがついているのですが、その時は素直に「いいな!」と思いました。
 
それで予備校の人に相談してみると、あっさり「無理ですね」と言われてしまい……。何くそと反骨精神で頑張って勉強していたら、幸いにも9ヶ月ほどで資格を取得できました。それが26歳のときです。当時は1日16時間ぐらい勉強していたと思います。
 
司法書士の資格を取得してからは、大手司法書士法人に2年ほど勤務しました。その後、司法書士法人を辞めて、ちょうど30歳で独立しました。
 
 
独立したとき、事業計画などは作成していましたか?
 
作っていなかったと思います。先に独立した人から、独立に関するノウハウは聞いていましたが。かなり見切り発車で開業したと思います。ホームページも開業してから作ったので、半年ほどは仕事がない状態でした。
開業時の手元の運転資金も半年後には底をつくほどになっていました。
 
現在の規模まで成長できたきっかけは何だったのでしょうか?
 
今年の10月で丸8年になるのですが、最初は債務整理が8~9割で、残り1~2割が不動産業者からの仕事でした。それでも、ウェブを活用したり、情報収集をしたりなど、とにかく行動していたと思います。
 
船井総研に行き、全国の成功している事務所に関する事例を聞いては、できることから真似していました。実は、開業して2~3年ほど経ったときに、債務整理が落ち着き、費用対効果が厳しくなったときがありまして……。
 
それで相続に着手するようになったのです。ただ、大手の事務所と競い合っても勝てないので、ウェブで集客したり、単価を工夫するなどしたりしていました。
 
ウェブで受注できる業務には、3つ条件があります。1つは緊急性が高いこと。2つ目は手続きの結果が重大であること。3つ目は単価が安いことです。この3つのキーワードを満たしている業務は何かと考えたとき、「相続放棄」だと気づきました。
 
相続放棄の年間統計を調べてみると、すごい勢いで増えていて。加えて、自分の周りで相続放棄を専門に行っている業者もいなかった。それでホームページを制作し、スタートしたのです。今から5年半ぐらい前、開業してから2年ちょっとの頃ですね。
 
そのようにして、現場でお客様のニーズを聞き、試行錯誤したことが良かったのかと思います。若いころから、自分で考えるクセはついていましたので。自営業的な感覚と言うのでしょうか。あとは、この業界とかけ離れたところで人生を歩んできたこともプラスになっています。
 

・とくに大変だった3つのこと

この8年間で、大変だったことを3つ挙げるとしたら何がありますか?
 
1つは、相続放棄事業を開始したとき、集客はそこそこできていたのですが、業務フローが上手に構築できなくて。自分がやっているときは良かったのですが、人に任せはじめたとき、忙しすぎて辞めてしまう社員もいました。
 
当時の僕には、パートを雇うという発想がなくて。社員にイチから教えるという発想しかなかった。分業という要素を度外視していたのですね。
 
そうすると、たくさんの依頼があるなかで、モチベーションの高い社員ほど余計な作業に時間をとられてしまう。ジレンマが大きくなり、元気がなくなっていく。クレームが増えてくるとストレスもたまります。
 
それで2年ほど前に、ある事務所のオペレーションを見学させてもらいました。面談などにも同席させてもらい、業務フローや使用ツールも聞いて、できることから真似しました。
 
今は、半分近くがパートさんです。パートが社員の作業をうまく取れるようになることで、仕事がスムーズに回るようになりました。もちろん、現在も日々、改善のくり返しです。
 
あとはクラウドツールなどを活用し、業務を効率化しています。相続放棄に合うソフトがなかなか無いので、試行錯誤の連続ですね。
 
2つ目は、僕が実務をしない状況をつくり出すのに苦労したことです。クオリティが落ちることも覚悟して仕事を振るというのは、最初のうち、なかなかできませんでした。育成期間も必要ですし、権限委譲にも悩みましたね。
 
いまだにクオリティの問題は感じます。ただ、僕がいつまでもコミットしていると、能力のある人間ほど面白くないですよね。そうなると、ある程度は任せてしまい、結果にコミットするしかない。
 
東京支社では、大阪本店でナンバー2だった人を、家族ごと転勤してもらい、稼働しています。すでに1年3ヶ月ほどでしょうか。今では、自分で営業して仕事を取る感覚や組織経営の大変さも痛感してもらいながら、成長しています。
 
3つ目は、マーケティングや広報、広告なども含めて、外部の業者と自分だけで進めていたこともあり、なかなか満足できなかったことです。それで、今年に入ってからは、ウェブ担当や広報担当を社内に入れて活動するようにしました。
 
とくに今年は広報に力を入れていて。わりと結果が出ています。取材をいただいたりすることもありますし。ある意味では、内製化を進めた結果だと思います。今では、もっと早く進めていれば良かったのではと感じていますね。

・業界の枠にとらわれない

 
椎葉さんはこの業界をどうとらえていますか?
 
仕事は減ると思います。とくに手続き関係の業務ですね。だからこそ、僕がつねに意識しているのは、お客さんの意思決定にどれだけ関われるかということ。どちらかというと、コンサル的な要素の強い仕事をやっていくべきだと考えています。
 
業界をベースに考えると面白くなくなってしまうので。あくまでも、僕らの強みは法律家であることの価値です。そう考えれば、もっと付加価値のある商品を提供できると思います。やはり、既存の業務にとらわれていると、発想自体が陳腐化してしまいますよね。
 
最近では、遺品整理の手配や立会いを、すべて法律家が代行するサービスを提供しています。遺品整理の現場で出てくる重要な書類を、リーガルチェックしつつ、必要な手続きを案内して、相続業務を受注する。遺品整理業者さんにも案内してもらう。
 
まさにニーズ目線の商品づくりです。司法書士業務として、バックエンドで売りたいものはもちろんありますが、入り口をつくることの方が面白くて。
 
あとは、僕がもともと音楽をやっていたこともあり、性格的に、人と同じことはあまりやりたくない。上手にアレンジできたときのほうが、喜びが大きいのです。自分の作品になりますから。
 
お客様の潜在的なニーズは、もっと広範囲にあるはずです。司法書士業務としてできないなら、株式会社でもいい。士業グループで対応してもいい。お客様のニーズを掘り起こし、日本初の事業を生み出せたらいいですね。
 
また、全く新しいイノベーションも楽しいですが、既存領域に隠れている空白マーケットを探したいというモチベーションも強いです。相続放棄や限定承認はまさにそうですね。先行者メリットもありますし、専門家として講演をさせていただくこともあります。
 
僕の理想は、世の中の事務所が、ちょっとずつ違う事業をやること。そうすれば、全員が共存共栄できますし、もっと士業が面白いものになるのではないかと思います。
 
今後の目標についてはいかがですか?
 
昨年度、相続放棄が660件ほどでしたので、目指せ1,000件です。中長期的には1万件まで伸ばしたいと思います。
 
全国の統計によると、限定承認が800件、相続放棄が19万件ほど。年間127万件相続が発生しているのに、このかたよりは何なのか。専門家がお客様にコミットしてない証拠です。ですので、うちの事務所だけでも、年間100件の限定承認をできればと考えています。
 
ありがとうございます。最後に、読者へのメッセージをお願いします。
 
なんでもやってみることです。むしろ、やらないのが1番良くない。あとは世の中を疑ってかかること。ブームに飛びつくのではなく、本当のニーズはどこにあるのかと考えてみることが大切です。
 
また、お客様に提供するサービスに関しては、迷いがあったらダメです。迷うならやめたほうがいい。僕自身、相続放棄や限定承認には全く迷いがないどころか、もっとみんなに伝えたいという想いがある。そういう気持ちがあれば、多少しんどいことがあってもブレません。
 
最初からうまくいくことなんかない。光が見えるまでさまようのが普通です。その期間はしんどいですが、強い気持ちがあれば乗り越えられるはず。やはり、「これは絶対に世の中のためになる!」という商品を売り続けることが大切ですね。
 

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