「紹介営業のみ」「退職者ゼロ」。会計事務所リライトが実践する理想的な事務所経営のあり方とは

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紹介営業の極意


― まずは、独立されるまでの経緯について教えてください。


そもそも税理士業は、独立したい人たちの集まりだと思います。やはり、独立を目的としてスタートする人が多いのではないでしょうか。私自身もそうでした。ただ、どこかの税理士法人に勤めていると、やがて居心地が良くなってしまうものです。

ただ、30歳を過ぎたあたりから、「そもそもなぜ資格を取得したんだっけ?」と思うようになりまして。それで当初の「独立」や「チャレンジ」というところに立ち返り、実際に独立したのが32歳のときでした。

また、うちの実家が事業をしていたということも、独立を意識したきっかけになっていると思います。もう60期を過ぎた老舗の会社です。産まれたときから経営に近い環境にいたために、将来は独立するということを自然に考えられたのかと思います。


― 独立当初は集客などで苦労されましたか?


それがそうでもなくて。前職からお世話になっているお客さんと、独立後もお付き合いがありましたので。10件ほどでしょうか。

また、当時から紹介を得られるような仕組みづくりをしていましたし、コンスタントに年間5~6件の新規顧客を獲得できていましたし。2年でトータル20件にはなるかな、と。ですので、焦りはあまりありませんでしたね。

― 紹介を得られる秘訣はどこにあるのでしょうか?


紹介営業にはコツがあります。そのコツをつかめるかどうかで、事業の成否が決まると言ってもいいのではないでしょうか。端的にまとめると、ポイントは3つあります。

1つ目は、既存のお客さんや出会った人に対して「紹介してください」と伝えること。とくに重要なのは、紹介されると嬉しいという事実を理解してもらうことです。

そもそもお客さんは、紹介することで、こちらが喜ぶとは思っていません。それよりも、単価をあげた方が喜ぶのでは、と考えているのです。ですので、「紹介してもらえると嬉しいんですよ」と、伝えることが大切です。

普段からいい仕事をしていれば、相手の人も、何らかのかたちでお返しがしたいと考えているものです。そこで、紹介してもらえるように伝えておくことがポイントになるのです。

2つ目は、分母数を増やすこと。つまり、できるだけたくさんの人に声をかけるということです。

仕事をした相手はもちろん、出会ったすべての人に対して「税理士を探している人がいたら紹介してね」と伝えておく。あまりガツガツする必要はありませんが、自然な会話の中でそう伝えておけば、少しずつつながりが増えていくものです。

そして3つ目は信頼です。ただ分母を増やすだけでは、なかなか紹介が増えません。ですので、相手と信頼関係を構築できるよう、普段から努力しておくことが大切です。

信頼というのは、相手の立場から物事を考えたうえで、最適なポジショニングを実現することで得られるものです。税理士で言えば、ただ実務をするだけでなく、経営者の方にとって必要な存在になっておくこと。

多くの税理士は、経営者に頼られようとしていません。税務申告が仕事だと考えているからです。そうではなく、「何か問題があれば、いつでも連絡してください」と伝え、付加価値を提供していくこと。

その結果、信頼してもらえるようになるのです。

効率性を重視するのは悪いことではありません。しかし、効率ばかりを追いかけていては、選ばれる存在にはなれないのです。では、どうすればいいのか。積極的にコミュニケートしていくことが大事です。

定期的に訪問する。訪問した際には必ず社長に会う。電話やメールの対応もおろそかにしない。そういったちょっとしたことに気を使うだけでも、相手の印象は大きく変わるものです。

そして、そのような日々の蓄積こそ、紹介をいただくための秘訣なのです。

着実に実践し、実績をあげれば、紹介ほど効率的な営業方法はありません。実績が蓄積されればさらに紹介を得られるようにもなります。まずは、少しずつ実践してみることですね。



「創業以来、退職者ゼロ」はなぜ実現できているのか?


― 経営者の方からの相談にはどのように対応しているのですか?


うちの事務所ではワンストップサービスを提供しています。さまざまな士業と提携し、大抵の相談に対応できる体制を整えているのです。自分たちでできないことは、提携先にお願いする。そのようにして、的確にコーディネートすることを意識しています。

社内で複数の士業を抱えることもできますが、それではこちらから紹介をすることができなくなってしまいます。うちも紹介をいただいているぶん、こちらからも紹介をする。そのような仕組みにしているのです。

紹介という王道はこれからも変わりません。紹介を加速させるためにITを活用したり、セミナーを開催したり、などの施策は検討していますが。

あとはやっぱりスピードですね。レスポンスの早さはもちろん、問題解決までのスピードも重視しています。いただいた相談をスピーディーに解決することによって、次の仕事にもつながります。

― 御社は2011年の創業以来、ひとりも退職者がいないそうですね。そのあたりについて、具体的に教えていただけますか?


そもそも弊社のコンセプトが、「ひとが辞めない事務所」です。士業事務所の商品はひと以外にありません。だからこそ、創業当初から、“ひとが辞めない事務所”をコンセプトにしているのです。

どの士業事務所でも、人の問題で売上が伸び悩むものです。たしかに最初は右肩上がりで成長します。しかし、やがてどこかで限界がおとずれる。その背景にあるのが人材の流出なのです。

だからこそうちの事務所では、「ひとが辞めない」に注力し、方針としてかためています。ポイントは3つです。

まず、納得感のある給与体系を構築すること。高いか安いかではなく、納得できるかどうかが大切です。もらう側が納得できなければ意味がありません。その点で、公平な給与制度を徹底しているのです。

具体的な内容としては、全社員、ひとりずつ決済をしています。半年に1回、決算書をつくるイメージですね。稲森さんのアメーバ経営に似たような感じです。自分で決算をすれば、だれも文句を言えません。自分がやっただけ給料をもらうのですから。

もちろん、高い人はとめどなく高い。それでも、納得感を得てもらうためには必要なことだと考えて実施しています。

次に、社風(企業文化)を整えています。

イメージとしては、厳しさをちょっと緩和する、というような雰囲気を大切にしています。一般的な士業事務所はどうにも殺伐とした空気になりがちです。そうではなく、なるべくフラットで自由な空気にしているのです。

許容度というよりは自主性を高めている感じでしょうか。いわゆる「サーバントリーダーシップ」を採用し、支配するのではなく、主体的に協力してもらえる環境を構築しています。支配型に対する奉仕型。支えてあげるといったイメージですね。

お客さんのために頑張れる環境を整えれば、社員はのびのびと働いてくれます。

あとは、独立するよりも、一緒に働いていた方が得であると認識してもらうことですね。一人では大変なことも、ともに支え合うことでカバーできる。そのうえで、独立するよりも稼げるような体制にしていれば、辞める必然性はなくなりますから。

最後に付け加えるとすれば、会社として好業績を維持し続けること。業績が悪化してしまえば、上記のようなサービスを社員に提供できなくなってしまいますから。その点はやはり、経営者の力量にかかってくると思います。

― そのようなポイント考慮した結果、ひとが辞めない組織ができているのですね。


もっとも大切なのはコンセプトだと思います。コンセプトがブレてしまえば、不満のもとになりますから。コミットメントと言い換えてもいいですね。

いずれにしても、人の問題は経営者が対処しなければなりません。それはどんな業種業態のビジネスでも同じです。定着率を重視するにしても、そうでなくても、人の問題をクリアしなければ会社の成長は頭打ちになってしまいます。

どんな事業者でも、大きく成長しているところは、人材という課題に対して明確な答えをもっているものです。そして、その答えに対してブレることなく邁進している。結果、どんどん会社が強くなる。

企業文化が整えば、社員の側としても、その風土を大切にしようと努力してくれるものです。うちはクレドも朝礼もありませんが、私自身が日々の業務の中で伝えるようにしているので、かなり浸透していると思います。

代表自ら新人研修を行う理由


― 現状、どのような想いで事業を行っていますか?


第一のキーワードは、「経営者の方を幸せにする」ということに尽きるかと思います。そもそもなぜこの仕事をしているのかと言うと、経営者を支援したいという一心なんですね。

私の実家が経営をしているということもあり、いかに経営者の仕事が大変かということも熟知していますし、業績によって状況が大きく変わるということも知っています。

経営というのは不安定な要素が大きいものです。ですので、精神的なストレスも大きいですし、心労もたまります。そういった経営者の負担を少しでも緩和できればと考え、事業を行っています。

一般的な税理士事務所が税務会計や税務申告のみ提供しているところを、うちの事務所ではさらに踏み込んで、経営者に寄り添うサービスを提供しています。みんなはこれを「寄り添い型」と呼んでいます。そのような会計事務所であり続けたいですね。

― 今後のビジョンや目標ついてはいかがでしょうか?


事務所の設立から5年が経ちました。創立10年まであと5年です。現状ではスタッフ30名、売上が2億を超えていますので、あと5年でスタッフ60名、年商5億以上を目指しています。このままの業績を維持すれば可能な数字だと思います。

もっとも、業績が伸び続けるのはいいことばかりではありません。一気に人が増えてしまい、人材育成がなかなか追いついていない時期もありました。教育がおろそかになってしまえば、クレームにもつながりかねないので大変でしたね。

また、人材の確保も同様です。社員も紹介で入社することが多いのですが、ブランドが確立できてきたおかげで、少しずつ採用が進むようになりました。もちろん、紹介で入社してもらえるように、いい会社であり続ける努力もしています。


これから先、人の問題はどの会社でも大きな課題になるかと思います。そのときにどのような対策を講じることができるのか。とくに士業事務所においては、ブランドによる人材確保が欠かせないのではないでしょうか。

そのとき、何らかの縁故で採用することができれば強いですよね。そういった点も意識しつつ、会社づくりを進めていくべきだと思います。

― 御社では研修などにも力を入れているのでしょうか?


そうですね。うちの場合は代表の私が直接、新人研修を行っています。1ヶ月に2回ほど、講義をしているのです。内容はその時々で異なります。会計業務に関することもあれば、うちの事務所のコンセプトについて説明することもあります。

そのように、社内研修を他人まかせにしないことも、ひとが辞めない組織づくりのポイントになっています。なぜなら、コンセプトが曲がって伝わってしまうかもしれないからです。そこで研修は、私か共同代表の宮田がやることにしているのです。

もちろん、OJTのような研修については社員が実施することもあります。しかし基本的には、研修は代表が自らやるというルールを貫いています。

― ありがとうございます。最後に、読者へのメッセージをお願いします。


やりがいと働きがいを考えれば、士業ほど最適な仕事はないと思います。独立して手腕を発揮することもできますし、自分がやりたいように働くこともできる。何より、実力で評価されるのはモチベーションにつながりますよね。

大変なことも多いですが、経営者の方などから感謝の言葉をいただけることも多いですし、お金もしっかり稼げます。誠実に努力を続けていれば、必ず成果となって返ってきます。ですので、より多くの人に士業という働き方をオススメしたいですね。

これからは社会そのものが大きく変わっていくと予想されます。そのようなときでも、自分なりのやり方で自己実現できる士業という仕事は、これからますます求められていくのではないでしょうか。

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