<第3回>今後の士業業界はAI化に?その中で生き残るためには

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儲けるだけなら弁護士はまず営業!

【ミカタ編集部:伊藤】
もう一度ゼロから弁護士事務所を登録して開業するとしたら、なにをしますか。4年の経験を持った上でということなんですが。

【笹原】
僕だったら今と同じ交通事故の事業は必ずやりますね。それをもしなしにしたら、まず分野ではあまり選ばないと思います。分野で選ぶよりも…なんですかね、営業はもうできないです。スーツが着れないので(笑)

【ミカタ編集部:伊藤】
業務でなくても構わないので、4年経った今だからこそわかる、「こういう考え方や気持ちを最初に持って、こういうところに行きますよね」といったものはありますか。

【笹原】
僕の持論なんですが、弁護士は、裕福な暮らしをしたいだけだったら営業の勉強一辺倒でいいと思います。士業同士の勉強会には参加しなくていいので、とにかく営業を教えてくれる人に学ぶ。弁護士は営業が得意でない人が多いので、少し出来るだけで相対的に上にいけます。

変化する士業界

【ミカタ編集部:伊藤】
ありがとうございます。笹原さんは弁護士としてご活躍になり、今はIT企業の経営者で世界を見ていらっしゃいます。僕自身は詳しくないのですが、僕の会社もAIの開発をやっています。士業という業界もAIに淘汰される業界だとマクロで言われていますが、実際にIT企業と弁護士という、淘汰する側、される側の両方に立たれている方は珍しいと思います。そのような両方の視点を持つ笹原さんは、実際のところ士業という業界の今後についてどうお考えですか。

【笹原】
オックスフォード大学の研究で、士業の中で弁護士は代替率20パーセントくらいと言われていて、なくなりにくいとは思います。実際の訴訟の業務があるというのと、人の感情の共感を得て、人から受任をもらうという法律相談的なところが短期的にはAIには代替不可能かと思うので。ただ、税理士や会計士はほぼなくなると思います。社労士もかなり怪しいのではないでしょうか。今は、スマートHRとかも出てきているので。

【ミカタ編集部:伊藤】
最近CMもやっていますね。やはり定型化できてしまうものは代替されていく、ということでしょうか。

【笹原】
そうですね。人のコミュニケーションが絡まずに、代わりに何かを作成する仕事は結構AIに取って代わられてしまうと思いますね。弁護士は訴訟を生業にしてきたので、研修所の教育もすべて「訴訟ができるように」ということに9割5分の時間を費やしています。しかし日本において訴訟は損害をゼロに戻すところまでしかいかないので、訴額に限界があるんですね。そして弁護士が受け取れるのはそのうちの何割かです。世界的に見て、弁護士業界が肥大化したのは、損害ではなくMAというプラスのことを仕事にし始めてからです。MAとかファイナンスという、企業の未来を見る業務です。そこで生まれたのがタイムチャージという概念ですね。調査に対して(何十人の弁護士)×(単価何万円)×(所要時間)で請求を出すと、1つの案件で何億というフィーが入ってくる。訴訟では訴額が100億くらいないと無理で、なかなかそんな訴訟はありません。この通り、弁護士は単価が高くて時間がかかる案件の方がフィーが入るんです。でも、AIの時代になると時間がとても節約できます。1秒間で2億ページ読めるので。効率ってAIとの親和性がとても高いと言われていますしね。そうなるとタイムチャージという概念が崩れてくるのではないかと僕は考えています。

【ミカタ編集部:伊藤】
スケール感は違いますが僕も士業の先生方に同じようなことを言っていて、今って本当に、強いところを覆すチャンスが一気に来ていますよね。お客様には、海外事業強化のために4大事務所にユニクロの海外執行役員、リクルートの執行役員級が入る動きがあるという話をしました。大きい事務所ではなく、一人の先生にこの話をするんです。「リクルートに行くような人を採用したほうがいい」と。さきほど一点突破で営業を勉強したほうがいいというお話がありましたが、まったく一緒で、事務所を大きくするためには役割を分けたほうがいいです。士業の先生は基本的に、二人目の採用で自分の時間を浮かせるために事務作業を行うアルバイトを雇う人が多いのですが、事務所を大きくしたいならやはりリクルートに行くような人を雇った方がいいと思います。僕のお客様で実際にリクルートの営業の方をナンバーツーとして雇用した事務所は、3年で売り上げが1億ちょっとまで伸びています。ナンバーツーが実質稼ぎ頭になっていますね。このようにしていくと、組織体として全然別のものが出来上がっていくんです。今は4大事務所もようやく普通の会社のように見立て始めていたり、変わり始める潮目ですね。事務所作りはこれからすごく変わってくると思います。

【笹原】
僕はまさに、個人事務所や中小事務所がその動きをするのがアリだと思います。大規模事務所は失敗すると思います。なぜかというと、弁護士事務所はパートナー制度をとっているので、弁護士は営業、つまり受任をしてから、報酬をもらうまで一人で完結します。規模は大きくしたいけれど稼いだ分は他人にはあげたくない、という妥協の産物がパートナー制度なんですね。でも時価総額の高い株式会社にパートナー制の会社は並びません。今最適なのは株式会社だと思いますね。パートナー制は結局自分の財布からお金を出すので、採用と教育と未来投資に対するインセンティブがほぼない。「今稼げる人」が欲しいので、そこに投資するならいいけれども、5年後ここにいるかわからない人になぜ自分がお金を出さなければならないのか、とみんな思うんです。

あるニューヨークの事務所の日本人パートナーはロースクールの1年生のときの成績で採用の判断をする。採用してから優秀でないとわかったときにパートナー間での責任が取れないからだそうです。人を見極めて採用する気がありません。そうなると組織化は無理ですね。リクルートで社長になれなかった人を連れてきても。日経新聞にも出ていましたが、西村あさひ法律事務所のスーパーエースの岩倉正和弁護士が西村あさひ法律事務所からTMI総合法律事務所に移りました。その原因は代表の西村が組織化を進めて、居心地が悪くなったからと言われています。今まで売上が発言権だったのが、そうではなくなった。売上を上げているのは自分なのに、なぜそこまで売上のない弁護士が発言権を大きくしているのか、と。裏事情はわかりませんが、パートナー制で組織化は無理なのではないかと思います。

【ミカタ編集部:伊藤】
組織化を進める中で大切なポイントって、笹原さんのお話は弁護士がどうこうの話だけではなくて、全部の論拠みたいなところが、例えば孫さんとか、資本主義は「いいものが残る」という前提でその中で株式会社が生き残っていて、その株式会社のトップ層がどのようにしているのかという視点ですよね。その視点は誰も持っていない。

【笹原】
結局事務所のトップがパートナーなので、営業できることが最善なんです。

【ミカタ編集部:伊藤】
勉強になります。やはりその視点を持って、世の中で何が起きているのか、何が良いのかということを参考にしながら事務所経営をやっていかないといけないと思います。僕もお客様に、士業事務所は弱いもの同士が仲間意識を持ってしまうことが多いですが、強いものとかかわりを持たなければだめだとひたすら言っています。

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