<第2回>具体的な数字で自分の立ち位置を把握せよ

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具体的な数字で自分の立ち位置を把握せよ 

【伊藤】
本当に素晴らしいなと思いました。後で具体的な話と抽象度の高い話と分けて聞きたいのですが、ベンチマークをどこに置くかですべて決定すると思っています。僕も5年前くらいに資格者向けにアメブロを書いていたことがありましたが、「ベンチマークはディ
ズニーランド」とか書いていました。なぜかというと、ディズニーランドはリピート率が90%以上あるのですが、士業事務所でリピート率が90%なんてありえないので、そういう事務所を作ることが目的だと書いていました。お客さんにとって圧倒的な価値を提供することによって、「素晴らしいな」と、お客さんがお客さんを連れてきてくれて、事務所だって繁栄しますよね。だから(繁栄しないと言うことは)そもそもやっていることに価値がないのではないかと。新規のお客さんを増やせば事務所は大きくなるに決まっていますが、僕はいい事務所のKPIやKGI、目標設定としては、どれだけ既存のお客さんがお客さんを連れてきてくれるか、というところが一番大切なのではないかと思っています。それについてどうですか?自分では何の数字が大事だと思いますか? 
 
【田代】
今年作った家系図の作成会社は、来年、日本一家系図を作る会社にするということを、目標というより予定としています。あとは家系図を起点としたビジネス展開を行おうと思っています。法律知識をもっと一般の方に提供したいという思いが士業としてあるので、それをどう相続などに結び付けていけるか、考えていきたいです。「家系図と言えばあの会社だよね、あの会社は司法書士がやっているらしいよ」というところを目指しています。 
 
【伊藤】
途中でどこに着目しているのかというのはものすごく大切です。気づかないかもしれませんが、素晴らしいところは「目標じゃなくて予定」というところです。予定と目標は全く異なります。予定ということは、もう実施計画まで落とし込まれているということです。「こうだったらいいな」というレベル感の目標設定ではないんだということです。「これをやる」というのは決定していて、「やらない」とか「できない」という話ではありません。実現するための計画まできちんと引けています、という状態を、このくらいの先生たちは行動基準として持っています。それに気づいてほしいです。先ほどの野村さんの話でもそうでしたね。士業の中では3年4年で19人に行ったらかなり大きい方ですが、そんなことはどうでもいい。ベンチマークはそこではないからです。サービス業としてお客さんにどれだけいいサービスを提供するのかという点で言うと、全然小さいなと。どこに目標を置くかによって事務所の取る行動は変わってくるので、そこは間違えないでほしいと思います。瀧井さん、どうですか? 
 
【瀧井】
僕は一応、来年は売上を取ろうと思っています。人をどんどん増やす予定なので、その人たちを雇うためのお金が現実的に必要になってきます。来年は売上6000~8000という計画です。僕はまだまだ田代さんほど落とし込めてはいませんが…。 
 
【伊藤】
それぞれにお聞きしたいのですが、2-6年の間で、一番事務所の営業やマーケティング活動で大切にされていたことはなんですか? 
 

【古殿】
大手税理士法人の代表がおっしゃっていましたが、「一般企業が海で戦っているとすると士業は湖で戦っている」と。結構その言葉は合っていると思います。士業の競争は一般企業のそれと比べたらまだまだ緩くて、動けば食えないことはないなと1年目でわかったので…。 
 
【伊藤】
経営者が「頑張ったらなんとかなる」とよく本で記述していますが、「頑張る」の度合いが、あの人たちは血を吐くくらい頑張っている。でも本の文脈では読者は誰もわからず、それを「なんとなく今の頑張りでいいんだ」と思ってしまって、自分のベストエフォートで良しとしてしまう。資本主義社会では通用しません。僕は古殿さんの「動き方」を知っているので、古殿さんの言う「動く」もそれと同じようなものだと思います。具体的にどのくらい「動く」ということなのか、教えていただいていいですか?年間100件も顧問を取れる人は日本でほとんどいないと思いますが、どんな動きをしたらできるのでしょうか。 
 
【古殿】
うちは成約率というものを出していて、大体50%です。ということは、200件ぐらいは会っていて、それは全部私が会っているので…。どうなんでしょうか。2日に一回は誰かに会っているということですね。 
 
【伊藤】
見込みの経営者の方にということですよね。意外と少ないですね。50%の決定率がとんでもなく高いのでしょうね。 
 
【古殿】
50%が高いのか低いのかはわかりませんが…。 
 
【伊藤
いや、高いです。見込みの人がとんでもなく精査された見込みの人なのか、古殿さんの圧倒的なバリューがあってそうなっているかですね。 
 
【古殿】
最初はとりあえずなりふりかまわずいろんな人に会っていました。 
 
【伊藤
どうやって会っていましたか? 
 
【古殿】
お誘いがあればですね。例えば僕らの業界だと保険屋さんと結構付き合いがある方が多いので、うちも10人以上保険屋さんから紹介をいただいています。必ずお返しはするようにしていて、個人で入っている3つの保険はすべて別の方からです。そうすると関係性が長く続いたり、くれる人はすごく紹介をくれます。一人保険の方で、10件以上紹介をくださっている方もいます。もちろん投げても返ってこないことはありますが、そんな感じでずっとやっていれば、動物的な勘のようなものもついてくると思うので、営業はそんな感じです。 
 
【伊藤
初期のころ、営業にどれくらい時間を割いていましたか? 
 
【古殿】
名刺の数を数えましたが、1年目で1800枚くらいありました。 
 
【伊藤
素晴らしい。他の三方もそういうのが欲しいです。わかりやすいので。1800枚に意味があるのではなく、100枚くらいしか集まっていない人が「なんで結果が出ないんだろう」と考えても仕方ないということです。そこの問題ではありません。僕は、とりあえず大量構造の中でいろんなPDCAが回っていって、結果とか質とか、先ほどの成約率などが高まっていくと思っています。そのタイムコードなくして、士業の人は冷静に判断する。それでは絶対に結論を導けません。1800枚が多い多くないはいいのですが、みなさんの1年間と比べたら絶対に多いはずです。それが結果の差になっています。これは単年度の差ではなく、一生変わらないレバレッジの差です。今100件顧問がいるということは、2年目に入ったら100社の顧問を持ってスタートしているので、この100社にとって完璧なオペレーションで満足できるサービスをやっていた場合、経営者が一人税理士さんを紹介することは簡単なことなので、一人が一人に紹介するだけで翌年は200社になります。これがずっと続いていったらもう絶対追いつけません。だから極めて当たり前のことを当たり前にやるだけです。1800、1年目にやったかどうかというのはとんでもない差です。大丈夫ですか?取り返せるんです、いつでも。瀧井さんは何を大切にしてきましたか? 
 
【瀧井】
大分やり方は変わってきました。最初はなんのつながりもなかったので、独立前から行けるところには顔を出していました。週に6.5回くらいは飲んでいました。2週間に一回家に帰る、みたいな感じです。他は家にも帰っていませんでした。で、一応、得意なフィールドで勝負したほうがいいと思います。飲みに行けということではなくて、僕はたまたま飲むのが好きだったので、行っていたというだけです。自分が得意だったり好きだったりすることも、やってみないとわからないので、広告やface to faceの付き合いとかも、とりあえず数をこなしてやってみて、それから自分の向いていることを判断されたらいいのかなと思います。もう一点伝えたいと思ったのは、みなさんどれだけ現状を数字で把握されていますか、というところです。私は初めから独立志向だったので、弁護士になった時から自分の依頼いただいた仕事をめちゃくちゃ分析していました。どういうルートで、どういうジャンルで、どういう単価で、ということを全部エクセルに書いていました。いまだにぜんぶやっています。そうしたらどういうマーケティング戦略を取るべきかということが、素人ながら見えてきました。独立前の段階で。みなさんもどういうマーケティング戦略を取ればいいかと悩む以前に、きちんと現状を把握するということをした方がいいと思います。自分の場合はそれがうまくスタートダッシュにつながったんだろうなと思っています。 
 
【伊藤
さすがです。僕も見せてもらったことがありますが、このお客さんがどのようなルートで来られたのかなど、記録されていましたよね。僕は弁護士さんで一番仲がいいのがたっきー(瀧井さん)なんですが、ものすごくライトで、誘ったら確実にすぐ来てくれるので、いつもお誘いします。本当にすごいと思っています。では、お二方…。 
 

【野村】
私も名刺の数ですが、1800までは行きませんが1000は行きました。私は3年やってきましたが、営業の前に組織化を念頭に置いていました。お金は信用の対価です。信用がないとお金は入ってきません。今回のイベントでも最初の半年で400万借り、翌年で1400万売り上げたという話があったと思います。あれは実際受託で言うと2000万なのですが、その最初の半年間やってきたのは法人営業です。法人営業するときに、個人事務所を開業したてで経験がないと言ってもなかなか信用は得られません。だから最初に法人化を考え、パンフレットも立派なものを作り、いきなり駅の近くに事務所を開設しました。そういったことを3年間注力してやってきました。ここから次のフェーズに入っていきます。最近は売上1兆超えているところと提携し、葬儀社さんとも提携しました。それは信用があるからかなと思います。すぐにはできないので、最初の3年間でそれをやっていた感じです。 
 
【伊藤
最初は法人のマーケットを取りに行くんだということで、信頼がとても大事だから信頼を作っていかなければならなかったのですね。一つは事務所の規模や世界観のアウトプット、クリエイティブなパンフレットを作らなければならないということで、半年間も投資をして400万赤字になったものの、そこから投資したものが回収され始めているということですね。先ほどの田代さんの話と同じですが、士業事務所は器用な人で、やり方に合えば、どの経路から入っても売り上げは出てくると思います。スモールに始めることがいいという風潮ですが、そんなことはありません。田代さんも最初に公告代理店時代の発想でお金をかけてやっていました。古殿さんにしても開業前からものすごく準備されていました。すべてをお金換算することはできませんが、時間を含めてコストと考えるのであれば、最初にかなり時間やお金の投資をされているということです。では最後に田代さん、お願いします。 
 
【田代】
名刺の数の話で気づいたのですが、この間持っている名刺を全部スキャンしたら、全部合わせて1000ちょっとしかありませんでした。これはきちんと営業活動している士業さんと比べて非常に少ない枚数です。というのは、私は司法書士の業務に対してあまり自信がありませんでした。司法書士の仕事は誰がやっても一緒だという思いがあって、一生懸命営業しても、お客さんに役立つわけではないだろうというまじめすぎる人でした。自信を持って「うちに仕事をください」とあまり言えなかったんですね。だからあまりそういう営業はやっていませんでした。広告代理店にいましたので、広告の出し方やマーケットリサーチを一生懸命やりました。好きな言葉で、本田宗一郎も「俺は好きなことしかやらない」というものがあるのですが、私はそれを地で行っていて、広告や集客は得意ですが司法書士業務は得意な人にやってもらえればいいやという気持ちです。だから最初は広告やマーケティングに集中していました。今は家系図などで差別化できているので、自信を持って営業できています。
 

これからの士業は「士業の枠を超えろ」  

【伊藤
今日よく出ている話として、役割分担があります。瀧井さんにしても古殿さんにしてもそうですね。やらなければならないことは間違いなくたくさんあります。キャッシュを作らないといけないし、事務所の未来を作らないといけないし、その骨組みや組織図を作らなければなりません。士業の先生に限らず、マルチにいろんなことを並行してできる人はほとんどいません。だから大事になってくるのは、周りの力をどれだけ借りることができるかです。瀧井さんも「自分は器用じゃなかったからよかった」とおっしゃっていましたが、器用な人であればあるほど器用貧乏になっていきます。「自分でやった方がいい」と。全然スケールが変わらない。個人事業であればそれでいいですが。売上とはなんぞやという話をすると、新しい価値を作るためのガソリンです。ガソリンなくして新しい事務所や事業はできません。だから結果として大きくなるだけであって、お客さんに対していいものを提供したいんだとやっていけば売上はついてくるに決まっています。年々増えるに決まっています。関係先が増えていくので、当たり前のことをやって関係先といい関係であれば、お客さんを紹介してくれるので増えていきます。年々やっているのにお客さんが増えていかないというのは、当たり前のことができていないということです。新規紹介なんていらないくらいです。既存のお客さんのレバレッジだけでとんでもなく大きくなっていくのがいい事務所なので、どれだけ役割分担と、自分の得意なことにフォーカスすることができるかが大事です。意外と「なんでこの人はこれをやっているんだろう」という方はたくさんいらっしゃいます。今だと役割分担はアウトソーシングで解決できます。ネット上のオンラインサービスもたくさん出ているのでそういうものに任せていくだったり、うまく切り分けしていくといいんじゃないかと思います。あと25分くらいなので2つほどお伺いしたいと思っています。一つが、今の士業の業界をどのようにとらえていて、ここから何をしていくことが士業事務所にとって大切なのかということです。 
 
【瀧井】
野村さんがおっしゃっていたことがその通りだなと思いました。士業という枠を作ってしまうことが僕はそもそも嫌で、伊藤さんの問いに対して反論のようになってしまうのですが、士業としてということを考えない方がいいと思います。私には今師匠のような人がいるのですが、その人は政治家とかからも仕事が来ます。なんでですかと聞くと、「それは俺しかできない事をやるからやで」「たっきーしかできない事をやる、これが本当の仕事やで」と言われる。そこから自分にしかできない仕事ってなんだろうなと考えるようになりました。士業であることを売りにしたら士業であればだれでもできるので、なんの強みにもなりません。だからみんな自分のバックグラウンドや得意分野を掘り下げて、本当に自分にしかできないことを見つけるということが今後のポイントではないかと考えています。 
 
【伊藤
なるほど。今日は答弁っぽいですね(笑い)。どうしたんですか?では次、田代さん。 
 
【田代】
士業がやることは法律で決まっています。その中でばかり考えているのはダメだと思います。まずは一人の人間として、自分の技術を活かしてどのように人の役に立てるのかということから考えるべきだと思っています。その中の一つが資格だと思います。その上で資格ともう一つ別の事業をやるというのは簡単な差別化ポイントだと思います。僕が知っているファイナンシャルプランナーに、カメラマンをやっている方がいるのですが、それで営業が回りだしています。 
 
【伊藤
T氏ですか? 
 
【田代】
そうです。全く同じだと思います。一つだけやっていると周りと同じになってしまうのですが、もう一個やればオンリーワンになれます。すごく簡単だと思うので、実践したほうがいいんじゃないかと思っています。 
 
【伊藤
本当にそう思います。ではお二人、いいですか? 
 
【野村】
士業の在り方や今後という話で必ず出てくるのが、AIの台頭ですよね。あれもよく士業の方と話していると、仕事が奪われる、奪われないという観点から話す方が非常に多い。正直僕は早く奪ってほしい。単純業務をAIに任せてもっと価値の高いことをやっていけばいいだけなので、AIは敵ではありません。うちでも相続AIというのを開発しており、AIには学習型と非学習型というのがありますが、とにかくビックデータが欲しいです。今やりたいのは相続相談のAI化です。そのために、今ウェイビーさんと一緒にやらせていただいているのですが、伊藤&Aサイトを作って無料で利用してもらって、回答を増やしてデータを蓄積するというのを来年、描いています。AIに奪われる、奪われないのレベルではなく、奪われるのは決まっているのだから、活用していくというのが今後分かれ道になると思います。 
 
【古殿】
うちは普通の会計事務所で、今流行っていますが業種特化などは全然していませんし、特にハイテクということもありません。クラウドソフトを絶対使おうということもありません。正直AIって怖いな、というところもありますが、税理士に限って言えば、毎月経営者の方とお会いして、グリップが一番握れる職業だと思っています。そこでしっかりグリップを握って、いいサービスをしていれば、AIが来て税理士の仕事がなくなっても、経営者の方と全く切れるということはありません。日々いいサービスをして、紹介をいただいて、ということをきちんとやっていれば、AIが来て何か変わるかな、というところが正直なところです。昔から技術革新は起きていますが、「この人からサービスを受けたい」という気持ちは変わっていないのではないかと。なので、税理士じゃなくなっても、ケーキを売るのでも、クリーニング店でも、グリップを握ることのできる能力があればいいだけだと思います。うちは敢えて、技術革新、AIというのは意識していません。ただ今後事務所の規模や成長によって、そういうこともきちんと考えていかなければいけないと思っています。それより強い組織を作ることが今は何よりも大事ですね。
 

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