<第3回>士業におけるコミュニケーション能力とは

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士業におけるコミュニケーション能力とは 

【伊藤
商売は当たり前のことを当たり前にやっていくだけなので、信頼をいかに作っていくかということだけです。AIは手段であって、どうやって活用していくかという視点で見るべきですし、AIを入れる入れないはどちらでもいいですが、とにかく大切なのは、変わらない商売の原則をみなさんが体得して実践できるかということだと思っています。古殿さんのお話の中で「経営者をグリップする」というものがありましたが、なにか工夫されていることはありますか?
 
【古殿】
毎月会っていたら、大体仲良くなりませんか…? 
 
【伊藤
ならないと思います。「仲良くなる」の度合いですね。みなさん仲良くはなるのですが、グリップは握り切れていない士業の先生はたくさんいると思います。 
 
【古殿】
昨日の夜1時くらいにお客さんから「これからキャバクラ行かないか」と電話がかかってきたのですが、1時でも電話できるくらいの間柄にはなっているわけですね。そのとき私は東京にいたので「今東京なので今日は無理っすww」と返したのですが、そういう関係になっているお客さんがうちには多いです。うちは特に低価格競争はしていないですし、月3万円以上でないと基本的にはお客さんを取っていません。じゃあどうしているかというと、いいサービスをして、お客さんから常に信頼できる人であれば問題ないと思っています。 
 
【伊藤
問題ないと思います。どうやってそういう経営者から呼ばれるような人になるのかな、ということですね。 
 
【古殿】
一言でいえば「コミュニケーション能力」ではないでしょうか。「営業」、集客についてはほとんどテクニックだと思っていますが、唯一属人的なのが「コミュニケーション能力」です。ここで人の差が出ます。これがない人が低価格競争をしていると個人的には思っています。税理士顧問料月1万、安くていいですね、という人がいますが、うちはそこで勝負をせずに、人間と人間の信頼関係でどこの事務所にも負けないと思っています。そういうタイプのキャラというか、「飲みに行きませんか」というお客さんが大半ですし、仲良くなろうというスタンスでやっています。 
 
【伊藤
どうやったらコミュニケーション能力は上がるのですか? 
 
【古殿】
どうなんですかね。そういう人じゃないとなかなか厳しいような気もします。 
 
【伊藤
生まれ持った才能だと。 
 
【古殿】
一般企業の営業の方ってそんな感じでやっている方多くないですか。多分士業の業界が真面目一辺倒というイメージがあって、逆にちょっと緩いと「前の先生と違う」とか言われるんですよ。うまく表現できませんが…。 
 
【伊藤
誰かコミュニケーション能力を上げるための方法をうまく言える人いませんか? 
 
【瀧井】
士業一般のイメージって、「偉そう」とか「上から目線」といったものだと思います。単純にその逆をいけばいいと思います。 
 
【伊藤
本当にそうだと思います。テクノロジーは関係なく、お客さんをグリップできるかということに尽きます。それってお客さんに「この先生は面白いな」と思ってもらうことが大事です。面白いというのはただ面白い話ができるという意味ではなくて、仕事をするときはきちんとできるとか、全部含めてそう思われることがとても大切だと思っています。これも僕は場数が増えていかなければうまくできないと思います。みなさんそれぞれ得意なことがありますので、コミュニケーションが苦手な人はコミュニケーションで戦う必要はありません。高いサービスとして提供するというのでも構わないと思っていますので、なにが自分の得意なことなのかは間違えてはいけないですね。では、残りの時間でみなさんの方から聞きたいことがあれば質問していただければと思います。
 

採用は事務所の未来づくり  

質疑応答


参加者A
今日はありがとうございました。僕は野村先生に、相続のAIについてもう少し詳しく教えていただきたいです。
 
【野村】
私は超文系で、プログラムのことは一切わかりません。ただIBMがワトソンというのを開発して、11月1日からライト版が無料で使えるようになったんです。最初は1000万2000万かけてIBMに開発をお願いしようと思っていましたが、あの分野は発展が早く、すぐに陳腐化してしまいます。だから今は、うちに情報学部卒の従業員がいるので、その人にIBMの勉強会に参加させて、HTMLやJavaといったプログラミングの基礎から勉強するというのを来年から始めます。一年あれば大体わかるので、AIのプラットフォームをいじれるかなと思います。すぐできるものではありませんが、3年後必ず変わってくると思うので、長い話をしています。ただ「相続AI」で商標申請はしてあります。ベストライセンスさんの「創薬AI」という、似ているものがあったのですが、うちのも通るのではないかなと弁理士さんは言っていました。日本IBMの社員も入れて、確実に動き出しています。具体的なことはまだわかりません。 
 
【伊藤
どういう人を採用していくかというのは事務所の出来上がりは全く変わってきます。筋肉質になるのか、柔軟な筋肉か、意味のない筋肉か、脂肪か…。だから、どういうメンバーを採用するかは、どういう事務所を目指すのかという出口から逆算しなければそうなっていきません。今までやった社員教育なども全部破綻していきます。なので、どういう事務所を作っていくのかという未来を想像しながら今に引き戻していって、選択をしていってほしいと思います。他の方どうぞ。
 
参加者B
瀧井先生にお伺いします。スタッフの方をとても大事にしているというお話でしたが、業務量の調節以外でなにかされている取り組みがありましたら教えてください。 
 
【瀧井】
二つほどわかりやすいものがあります。一つは「趣味はなに」と聞くんですね。ある子が「ダーツです」と言ったので、ダーツの機会を入れました。 
 
【伊藤
それはお金があるからできたんですよ。お金で解決したってことですよ! 
 
【瀧井】
いや、たまたまもらえたんですよ。ちょうどいいタイミングで「ダーツいる?」と。いいタイミングで。あとは、みんな夜のごはん時まで仕事をしていることが多いので、「米炊こうか」と言って、炊飯器を置いて。 
 
【伊藤
それもお金があるからできるんですよ。 
 
【瀧井】
炊飯器は僕の中古です(笑い)。楽しく和気あいあいと。あとは、風通しの良さです。あまり僕が偉そうにすると意見は上がってこないので、いじられるまではいかなくても、小馬鹿にされています。そうすると相談も上がってくるので。 
 
【伊藤
では他の方。
 
参加者C
従業員が辞めないことがいいこととされていますが、私はそうではないと思っています。日本一働きやすい事務所でなければいけないと思っていますし、その人にも適性があります。明らかに法律事務所よりベンチャー企業の社長として今すぐ独立したほうがいいという人もいます。旅立った方がいい人材に対しては、瀧井さんはどう対応されるのでしょうか。 
 
【瀧井】
それは旅立ってほしいですし、いい関係を築きたいです。逆に合わずにやりたいことを用意してあげられないことが僕は嫌なので、やりたいことを聞いて、法律事務所以外がいいなら、一応一枚噛みたいですが、それでいいと思います。 
 
【伊藤
そうですよね。僕も田代さんと全く同意見で、長く働いてもらう必要はないと思います。日本人は一つのことを長く続けるのがいいことのようになっていますが、それってどうなのかなという思いもあります。適材適所というか、役割分担もありますし、事務所もどんどん脱皮していって、求められるスキルやモチベーションは変わってきます。みんなが成長していってそこにアジャストしてくれるといいですが、適材でない人がいたり、事務所側の問題があったりもするので、そういう場合、瀧井さんは、その人のことを考えてなにか用意してあげたい、ということですね。優しいですね。他の方どうぞ。
 
参加者D
先ほど田代さんが、「士業の枠組みを外す」というお話をしていらっしゃいましたが、家系図のお仕事と司法書士の業務の両方をされていることによって、なにか強みはあるのでしょうか。 
 
【田代】
具体的な家系図作成会社のメリットは、葬儀屋さんと仕事ができることです。あと、僕たちはBtoBで家系図を販売しています。今まではリスティングやSEOだけで家系図を販売している業者しかいなかったのですが、私はBtoBでやっています。やってみると石材店(墓石を作る会社)からすごい問い合わせがきていて、そういう会社は家系図がわかると墓石を新しく作れるので、ぜひ扱わせてほしいと言われました。石材店さんはある程度僕たちのサービスを利用して事業を発展させることができるんですね。そういったたくさんの会社とお付き合いができることで、司法書士の業務にもメリットがあります。司法書士として会ったのでは、「司法書士ってどんな仕事をされていますか」といった話になってしまうのですが、まず関係を作ってから、司法書士という側面を出すことができる。そういった部分からこれはやって良かったなと思っています。
 
参加者D】 
入り口としては司法書士ではなくて会社を持っていた方が、ビジネスとして広がりやすいということですか? 
 
【田代】
はい。私の経験上圧倒的に、「司法書士です。」と言うよりも、「家系図とかを作る会社を経営しています。」と言った方が、話を聞いてもらえます。あとから「司法書士なんです。」と言うのが僕の営業パターンです。それで差別化、ブランディングをしていますね。 
 
【伊藤
司法書士や行政書士は手段の一つなので、そこを自己紹介で名乗ってしまうと相当ヒットしません。相手の期待値もありますので、「この人は法律家できっと堅いんだろうな。」「(仕事の)スピードが遅いんだろうな。」「融通利かないんだろうな。」など、変なバイ
アスがかかった状態でスタートしなければなりません。できることも先方には大体イメージが付いていますので、これを壊すのも大変です。だから、入り口の自己紹介や相手にどう認識してもらうのかということはとても大事です。そこの出口が一個しかないというのはつらいですよね。違うことを何かやった方がいいと田代さんは一貫しておっしゃっていますが、間口が広い人であればあるほど、関係企業は増えていきます。関係企業が増えたあとに、一件ずつ信頼関係を築いたり、グリップしたりできれば、そこから仕事につながっていくと思います。あと2,3問行けますが、どうでしょうか。
 
参加者E
僕は独立して1年、まだ一人でやっていますが、今後もう少し拡大し人を雇っていこうと考え始めました。みなさんどのタイミングで組織として大きくすることを考えていたのかお伺いしたいです。 
 
【瀧井】
抽象的な部分で行くと、最初からある程度の規模感でということは考えていたので、いい人がいればという感覚でした。具体的に採るタイミングは、まずは「いい人がいたら」です。本当に初期のころに、たまたま。その出会いのタイミングですが、最初からぼんやりと「採らないとな」という考えはありました。 
 
【田代】
私は本当に仕事先行で、「足りないから人を採らなきゃ」という感じでした。三人採ったら一人辞めてしまったりして、その繰り返しで徐々に大きくなりました。採るポイントとしては、「自分ができない事をできる人なのか」ということをとても考えます。自分と同じことができる人がいても「+」にしかならないので、自分にできない事ができる人を採るようにしています。これからもそれを続けていきたいと思います。 
 
【野村】
私のところは、どういう人材を充てるかによって違いますが、労働力の確保という意味では、業務が増えてくる半年前に入れます。営業戦力としては、いい人がいれば即入れます。うちは上期だけで5人を雇ったのですが、中国、ベトナムの方も採りました。これは「商品」ですね。人を商品と言うと語弊がありますが、商品開発をひとつするような感じで採用しました。労務人材だったら半年前、半年間は教育期間として取るので、完全先行型ですね。先行が少し危うくなったら自分の役員報酬を下げます。 
 
【伊藤
役員報酬2億円くらいもらっていますからね、下げてください(笑い)。士業事務所は大体後手に回ることが多く、採用が結局労働力の確保です。そんなことでは事務所は作れません。採用は事務所の未来を作っていく仕事なのですが、優先順位が低く、忙しくなってから採ろうというなんの戦略もない事務所は、絶対に出来上がりがまずい事務所になります。 
 
【古殿】
僕も野村先生と同じで、先行で入れています。税理士が他の士業さんと違うのは、ストック商売なので、1カ月2カ月後の最低の売上が見えます。一人入れれば、1カ月2カ月でペイできるな、と計算しやすいので、あまり怖くありません。いい採用予定の子が二人いたら、とりあえず二人採ろうかなというスタンスです。集客よりも採用・教育の方が難しいと思っていて、基本的にはみなさんと一緒だと思います。 
 
【伊藤
では一度このパネルは終了したいと思います。瀧井さんと田代さん、野村さん、古殿さんは僕がすごく仲良くさせてもらっている先生で、とてもフランクなので、終わった後も質問にお答えいただけると思います。今の若手の先生たちのトップがどこを見てどういう動きをしているのかということは、常にアンテナを張っておくべきです。必ずつながっていただけるといいなと思います。ありがとうございました。
 

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