第3章:業界の常識にはとらわれない。「素人感覚」を生かして自分らしく仕事をする〜メンターからの手紙 亀石倫子氏〜

ポイント(この記事は3分で読み終わります)
  1. 地獄の日々を乗り越えたら、あとは怖くない
  2. 無鉄砲さと素人感覚を強みに
  3. どうやったら乗り越えられるかを考える人とチームを作りたい

亀石倫子氏 プロフィールはこちら

地獄の日々を乗り越えたら、あとは怖くない

私の次なる転機となったのは、ロースクール時代に和歌山カレー事件を担当した弁護士と出会ったことです。

私は「こういう弁護士になりたい」なんて思い描いていたわけではなかったから、たまたまその弁護士と出会って、刑事弁護に関心を持ち、刑事弁護の世界に進んだんです。

法学部卒でもなんでもなく、大人になってから法律を学んだ私が、人生で始めて出会った弁護士が和歌山カレー事件の弁護人っていうのも、結構すごいですよね(笑)。

大阪という土地で弁護士になったのも運が良くて。というのも、大阪は刑事司法のレベルが全国的に見ても高いんです。2009年に弁護士としてのキャリアをスタートし、そこで、刑事弁護に特化している法律事務所に入れたのもすごくラッキーでした。そこでもまた、周りの弁護士たちや環境にすごく自分が引き上げられたと思います。

私がその法律事務所にいたのは6年間で、たくさんの刑事事件を担当するなかで、それはそれですごくハードな仕事ではあったんですが、辛いとか辞めたいとか1回も思ったことないんです。

まあ、それ以外を知らないからっていうのもあるかもしれないですけど、それはやっぱり、受験生時代の「地獄の日々」を経験してるから。

その時私は大阪に来て夫以外一人も知り合いがいなくて、挨拶をするような人もいなくて、あれほどの孤独はもうないんじゃないかという日々でした。

今は、裁判所の近くに行くと知り合いの弁護士に出会って挨拶したりします。挨拶ができるってなんて幸せなんだろうと思う。

刑事弁護って、社会から理解を得られないことも多いし、けっこうハードな仕事なんですよ。だけど私、それも全然しんどいとか思わないんですよね。

社会の中で役割を与えてもらえて、ありがたいとしか思わなかった。地獄を経験してると「あの地獄に比べたら全然平気」って、めちゃめちゃ強くなれた。それが私の強みだと思うんです。

無鉄砲さと素人感覚を強みに



もうひとつ、私の強みは「素人感覚」かなと思っています。

私はそれまでの経歴的に、弁護士の業界について精通もしていなかったし「業界の常識」も知らなかったし、固定概念もなかった。でも、この分野や業界に精通してないというのを、自分の弱みと思う必要はないと思っているんです。

弁護士業界でなくても、どんな世界・業界にも凝り固まった既成概念はあると思うんだけど、そこに新しい風を吹き込むってくらいの気持ちで、入っていくのが結構いいのかもしれない。

私は、以前に弁護士費用をクラウドファンディングで集めるということをやったんですけど、それが業界では初のことだったんですね。

私からすれば「こんなの誰でも思いつくことで新しくもなんともない」って思ってたんですけど、それをやった人って過去にいなくって、思いの外反響があったんですよね。でもそれは、私の「素人感覚」が全面に出た行動だったかもしれないです。

いまでこそ、ITなどいろんなスキルやさまざまな経歴を持った弁護士がたくさんユニークな活動をしていますが、弁護士業界はやはり保守的な考えも強くあるし、すごく閉鎖的なところもあります。

また、業種的にリスク回避や法的にOKかNGかといったことにもすごく神経質になりますから、なかなか新しい動きって出てきにくい側面はあります。

だから、クラウドファンディングでお金集めたいって当時の弁護団のチームに言ったときも、最初はみんな消極的だったんですよね。税法からの観点や、弁護士倫理だとか、あらゆる面からのリスクを真っ先に考えるから。

でも、凝り固まった世界で「そんなことできない」って話が出てきたときに、私のように別の業界から来た人間は「なんでできないの?」って思う。

他の業界だったらこういうふうにしてる、だからこの業界でできないことはない、と新しい考えを持ち込むことにすごく意味があると思うんです。

どうやったら乗り越えられるかを考える人とチームを作りたい



また、私は弁護士業界の「縦社会」についても無頓着でしたから、弁護団のチームを作るときにも「何でも言い合える若手だけのチームにする」というのはすごく意識しました。

弁護士に限らないことでしょうけど、重鎮の先生方の言うことなら通る、でも若手がそれを言うとだれも耳を貸さない、みたいなのは私が嫌だなと思う組織の特徴だったので、そういうことがないようにフラットなチームを作ったんです。

私が主任弁護人を務めた裁判に、GPS捜査の裁判(※)があります。

(※)GPS裁判:2012〜13年、集団で店舗荒らしを繰り返して窃盗などの罪で起訴された被告人らの車両に、大阪府警が令状なしでGPS端末を設置し、捜査を続けていた事件。亀石氏が主任弁護人を務めてその捜査を違法と訴え、2017年に最高裁大法廷で歴史的な違法判決を得た。

このときの弁護団は6人で、私や私の同期などを含めて弁護士になってまだ10年にも満たない経験の少ない人たちだけでした。

だから、「お友達ばっかりの仲良し弁護団」とかって揶揄する人たちもいるんだけど、でも、私があえてそういうふうにするのは、組織にありがちな序列…重鎮がいて、重鎮には逆らえなくて若手が怒られて、みたいなのが嫌なので。

そういう序列や上下関係にとらわれたくないから、自分がつくるチームは全部若手だけにして、なんでも言い合えるようにしました。

私に対してもみんななんでも言ってくるし、私もみんなに対してなんでも言う。そんなフラットな関係のチームしか今まで作らなかった。

よくある弁護団というのは、ベテランがいて中堅がいて若手がいて、下っ端の若手が一番よく働くというのが常でしたから、私たちみたいな弁護団っていうのも、業界的には多分めずらしかったんですよ。

私はあんまり、その業界の常識をあてにしてないんですよね。

これはどんな仕事にも共通かもしれないけど、なにか新しいことやろうって言ったときに、「こういうリスク、デメリットあるからやめよう」って言う人と、「こういうリスク、デメリットあるけど、こうすれば乗り越えられるよね」って言う人といると思うんですね。

リスクやデメリットをピックアップする作業ってめちゃくちゃ大事で、絶対やるべきなんだけど、「そのリスクやデメリットをどうやったら乗り越えられるか」って発想できる人と私は仕事をしたいって思っています。

(続く)

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著者プロフィール

ikekayo(池田佳世子)

関西を拠点に活動するライター。 その人のもつ無形の価値に輪郭を描く仕事をしています。