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第2章:支援をしていくなかで気づいた問題点。ほんとうに困っている人がきちんと救われる形態を模索する〜メンターからの手紙 中川悠氏〜

ポイント
  1. クリエイター支援から福祉の世界へ
  2. 障害者の工賃アップのために実証実験をする
  3. 福祉事業コーディネーターを務める上で気付いた問題点

目次 [非表示]

中川悠氏 プロフィールはこちら

クリエイター支援から福祉の世界へ

なぜクリエイター支援をしたのかと聞かれれば、それはもう単純に、みんなが貧乏で困ってるから。
僕も演劇をやっていたからわかるんですけど、だいたいみんな30歳を境にやめるか続けるか、結婚するか出産するか、みたいなことを考えて、そのタイミングで食えてなかったらやめるという選択を迫られるんです。
活動を長く続けられないことは悲しいなという想いもあった。
当時はまだクリエイター支援ってやっている人が少なかったので、行政と組んでいろんなプロジェクトをしてきましたね。

でも、そんななかで気付いたのは、クリエイターさんがとても受け身だなということでした。
ほんとに企業とつながって仕事をしていきたいなら、その企業のことを調べてニーズに応えるべきだと僕は思うけど、それよりもクリエイターさんは「自分はこれを作りたい」が優先されてしまったりすることもあって。
「それはあなたの努力が必要な範囲でしょ」と思うところまで僕が支援してもあまり広がりがないなぁと感じ始めて、僕は徐々にクリエイター支援から離れていって、本当に困ってる、頑張るべき人を支援していきたいなと思ったんですよね。

そして29歳のときに株式会社きびもく(2017年に株式会社GIVE & GIFTに名称変更)を作りました。同時に大学院に通って学びなおしたり。そこから障害者福祉の世界へ関わるようになり、いろんなことが同時並行で始まっていったんです。

障害者の工賃アップのために実証実験をする

社会課題をプラスに変える取り組みのなかで、僕が取り組んだプロジェクトのひとつに「きずなロール」というものがあります。
大阪の豊中市にある障害者福祉施設「ときヨシエンタープライズ」さんと組んでロールケーキを作ったんです。
そこではパン工場があって、精神障害者の方が自立していくための軽作業としてパン作りをしてるんですが、現場の問題としてあったのは、精神障害者は天気が悪かったり、ちょっとした嫌なことがあるだけで休んでしまったりする。
利用者が休んでしまうと、施設の職員さんが代行してパン作りをしなければいけない。
でも、彼らは福祉の専門家だけど、商売の専門家ではないから売る力はなくて、結局売れ残ったパンはロスになってしまう。

そこで思いついたのが、編集者時代にやっていた「ロールケーキのお取り寄せ」特集をヒントに、ロールケーキを冷凍してストックし、ロスを無くすということでした。
お取り寄せのケーキって冷凍で届くんです。調べてみると、冷凍だと賞味期限ってないんですね。
じゃあ、作ったらすぐに冷凍して注文があったら解凍するようにすればロスはなくなる。
さらに、素材やパッケージにもこだわって作れば単価も上げられて利益も出るんじゃないかって。

ロールケーキ_メンターからの手紙_中川さん-08
その時に作ったロールケーキ。

そして、学生さんにもインターンシップで入ってきてもらい、さまざまなPRをすることですごくメディアにも注目されて、新聞、ラジオ、厚労省のサイトなど、けっこういろんなものに載ったんですよ。
それの狙いも、所属している福祉作業所がメディアで注目されたことは、障害者さんが就職するときに、採用側への理解を深める武器になると思ったから。結果的に、前年まで一人だった就職者が6人にまで増えたから、やってよかったんですよね。

ほかにも、障害者さんの工賃を少しでも上げるために「お墓参り代行サービス」を作ったり、デジタルデバイスに対応するための書籍のスキャン作業、いわゆる「自炊」を代行するサービスを作ったりと、障害者さんが無理なくできるワークフローを考えて、いろんなことをやっていきました。

お墓参り_メンターからの手紙_中川さん-15

そうやって、利益のことはあまり考えないで、障害者の工賃アップの実証実験をしていきました。
実際にやってみることで問題点がわかったり「これだったらいけるんじゃないか」と試行錯誤していたんですよね。

福祉事業コーディネーターを務める上で気付いた問題点

しかし、そこで大きな問題点にも気付くわけです。
僕はコーディネーターとして障害者福祉施設に関わり、ビジネスモデルを作ったら基本的にはそこから離れるんですが、やはり、僕がいるときは良くなるけど、いなくなると元に戻ってしまうということが起きる。

施設の職員さんが精神保健福祉士や社会福祉士になるために大学や専門学校で学ぶことは、基本的には病気のこと、当事者の支援のしかたです。
そこで、多くの人が卒業後は病院や施設に就職していきますけど、実際は現場でパン作りを代行していたりする。パン作りは、彼らが学んだカリキュラムの中にはないわけですよ。
だから業務改善の仕方もわからないし、販売もわからないし、他の企業と組むということも知らない。

ビジネス力が低くなりがちな職員さんのために、マーケティングやデザインに関する勉強会を開いたり、ワークショップを開催したり、ブランドについて考えたりと、いろんなことをやりました。

GG作業クッキー_メンターからの手紙_中川さん-14

それによって、施設で作ったものが、福祉のものと思われずにすっごい売れて、数字的には大成功をおさめたプロジェクトもありますが、僕にとってはそれは大きな失敗で。

僕というコーディネーターがいたらできるけど、いなくなったあとに施設職員さんたちから「自分たちでやろう」という動きは出てこなかったからです。
「施設を利用する障害者さんたちのお給料を作るための苦労を、自ら買って出る人はいないんだ」と思った。
これは、クリエイター支援のときにも感じたことですけど、プロジェクトとしては成功でも、後に続くものが生まれないのであれば意味がないですよね。

これでは、施設の利用者さんがあまり幸せにならない、と思いました。

とはいえ、職員さんも、福祉のプロではあるけれども、デザインのプロではないし、販売のプロでもない。
そんななかで、「きちんと作って売って障害者を自立させなさい」という国の方向性に対しても無理があるなと…。

そこにあったのは「怒り」。
その怒りを胸に、就労継続支援B型事業所「GIVE&GIFT」を作ったのが、2014年のことです。

(続く)

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著者プロフィール

ikekayo(池田佳世子)

ikekayo(池田佳世子)

関西を拠点に活動するライター。 その人のもつ無形の価値に輪郭を描く仕事をしています。