総合トップ
起業
資金調達
会社設立
副業
マーケティング
事業承継
地方起業
フランチャイズ
シニア起業
税・会計・法律
士業
ビジネス
失敗

第3章:イシューキュレーターとして取り組むさまざまな困りごと。でもめざすのは「できること」を増やすこと〜メンターからの手紙 中川悠氏〜

ポイント
  1. GIVE & GIFTのもたらした変化
  2. 作業を「編集」し、「分解」する
  3. イシューキュレーターとしての仕事

目次 [非表示]

中川悠氏 プロフィールはこちら

GIVE & GIFTのもたらした変化

GIVE & GIFTは、大阪を代表する大きなオフィス街である淀屋橋にあり、お昼にランチを提供したり、お菓子を販売したりしているカフェの形態をとった障害者福祉施設です。
(注:2018年12月末に淀屋橋のGIVE & GIFTはビルの老朽化によりクローズ。2019年、大阪市住吉区杉本町に移転し、GIVE AND GIFT SUGIMOTOCHOとしてリニューアルオープン予定。)

GG外観_メンターからの手紙_中川さん-12

GG中_メンターからの手紙_中川さん-10

1階がカフェで、2階に調理場があって、障害のある方はそこで調理したり洗い物したりしています。

他にもいろんな軽作業を行う作業スペースがあり、心身のさまざまな障害のある方たちが自分のペースで働いています。
カフェに来てくれるお客さんは、ほとんどの方がうちが福祉施設だとは知らずに来てくれてると思うんですけど、そんななかでも利用者さんの自立につながるようなを取り組みをいろいろしてます。

障害者の工賃って、一般的には1ヶ月働いても10,000円ちょっとだったりするんですけど、僕らがめざすべきは月に30,000円。今は、それを超える方も出てきました。

他にも利用者さんの変化はいっぱいあります。
うちは徒歩で来られる方はいなくて電車で「通勤」してきます。電車に乗るっていうことの効果は大きくて、女の子なんかは服装も明るくなったり、メイクし始めたりするんですよ。
それは、この淀屋橋という街の力ですね。郊外だと、自宅から施設までバスのお迎えがあったりして、社会経験の機会も少なくなりがちですが、淀屋橋は都市部でオフィス街だからどんどん人は集まってくるし、会社もいっぱいある。

障害者のあるみなさんは基本的には接客はしないんですが、ときどき店頭の対面販売はしていることがあります。それは、ゆっくりと販売することができるし、自分が作ったものを楽しんでもらえてることがわかる機会。

2階の調理場では利用者さんが活躍していて、包丁が使える人もいるし、そうでなければフードプロセッサーを使うことも。洗い物もお掃除もするし、それは自立して生きていくためにすごく必要な力だったりします。

GG作業_メンターからの手紙_中川さん-07

利用者さん同士での余暇活動にもすごく意味があるんです。例えば、多くの障害者さんはBBQをした経験がないんですよ。映画館も行ったことないしカラオケにも行ったことない人も多いから、もし就職後に上司から誘われても断ってしまったりする。
そういう、人とのコミュニケーションの機会を断らざるをえない状況を回避するために、BBQについてもほんとに「授業」をして。お肉の焼き方や、焼くときは手伝うんだよということを教えながらBBQしたり。
ほかにも、障害者同士をつなげる場を作ったり、堺市や高槻市で職員さんに講義したり、学生さんにも教えたり。
そんななかで、2016年にはグッドデザイン賞もいただきました。

作業を「編集」し、「分解」する

最近は、僕がなにかを探すというよりは、困りごとがある人から僕を見つけて相談にきてくれるような流れが生まれています。
そのうちのひとつは京都市さんからのもので、伝統工芸の跡継ぎを作ろうという取り組み。ろうそくの絵付師の仕事と、京鹿の子絞(※)の仕事です。

(※きょうかのこしぼり:絞り染めの一種。総絞りにした模様が小鹿の背のまだらに似ていることからその名で呼ばれる。
原型は奈良時代にさかのぼり、江戸時代以降に本格的に発展、現在でも主に和装向けの高級品として流通している。京都で生産される絹の布に鹿の子を施したものが「京鹿の子絞」と呼ばれ、昭和51年には国から伝統工芸品に指定されている。)

★_ろうそく絵付け仕上がり
ろうそくへの絵付けは1つ1つが職人さんによる手作業なのです。

ろうそくの絵付けにしても、京鹿の子絞にしても、すごく大変な仕事だけど、職人さんの平均年齢は70代。
辞めてしまったり亡くなってしまったりで、跡継ぎがいない。
でも、職人さんの世界はものすごいカチっとしていて、感覚的な世界だから、逆に理論がないんです。
そこを僕らが「編集」というスキルの強みを生かして作業分解をしていったんですね。

職人さんの作業を録画して、スローモーションで見て、障害者さんでもここまではできる、難しいこともこういう工夫をすればできる、というふうに、僕らがマニュアルを作っていったんです。

絵付けマニュアル_メンターからの手紙_中川さん-16
ろうそく絵付けのマニュアル。このように作業を分解することで、障害者の方でも作業ができるようになったのです。

職人さんのなかにも福祉に理解を示してくださる方がいて、通常の作業では行わないようなサポートを障害者さんのためにしてくれたり、作業分解やマニュアル作りにも協力してくださる。僕からすると奇跡みたいなことで、「そこまで職人さんが歩み寄ってくれるのか!」と感動しましたよ。

イシューキュレーターとしての仕事

他にも、まちづくりに関する相談なんかもありますけど、いずれにしても僕のなかではそれぞれの問題や課題解決を、いかに小さな経済に置き換えて長続きさせるかってことが、すごく未来があることだと思っているんです。

それに、テーマはなんでもよくて、そこにいらっしゃる方々が「できることが増える」っていうことが大事だと思っていて、それをやっている感じですね。
福祉でも地域おこしでも、なにかの施設づくりでも、商店街の活性化でも、それらがどうこうではなくて、「自分たちでできた!」「できるんだ!」っていう意識が、そこにいる方々に広がっていく、というのが一つの望みなんです。

絵付け風景_メンターからの手紙_中川さん-09

僕の肩書は「イシューキュレーター」=「課題の編集者」です。

今の日本では、多くの人は単一の仕事をする縦割りの世界に住んでるんですよね。そこを、僕らが横につないでいくんです。
いままでつながり得なかった職業、知識の方々をつなげていくことが僕の仕事です。

それは例えば作業分解とかの方法でつなげていくことで、困っている方々を助けに行く。それがひとつの標準値になり、その方々がまたさらに世界に広がってつながりを増やしていく…。

それは、とてもハッピーなことだと思いますね。

(続く)

おすすめの関連記事

ー行動と、仕事を作るモチベーションは対極にあるものだったー
第4章:自分の持つ「怒り」と「やさしさ」。でも、それを守れる仕事をつくってきた〜メンターからの手紙 中川悠氏〜

ー独自の道を切り開く新しい世代の女性弁護士はどんな道を歩んできた?ー
第1章:ダメダメだった「それまで」の人生。自分の甘さを思い知ったのは26歳のときだった〜メンターからの手紙 亀石倫子氏〜

登録することで、 利用規約・プライバシーポリシーに 同意したものと見なされます。

関連記事

著者プロフィール

ikekayo(池田佳世子)

ikekayo(池田佳世子)

関西を拠点に活動するライター。 その人のもつ無形の価値に輪郭を描く仕事をしています。