M&Aを考え始めた社長が行うべき最初の一歩

ポイント
  1. M&Aを考えるのはどんな場合か
  2. M&Aをするときの準備の必要性
  3. M&Aを行う際に必要な書類

目次 [非表示]

後継者不足にM&Aを利用することも考えよう

深刻な中小企業の後継者不足

昨今、後継者不足に頭を悩ませている企業が多いことがメディアでも報道されていますのでご存じの方は多いでしょう。中小企業庁が1990年におこなった後継者問題実態調査では後継者不足に悩む企業は調査対象企業の30%程度でした。ですが2018年に帝国データバンクが公表した後継者不在企業の動向調査では、後継者不在の企業は66.4%と1990年の2倍以上と深刻な数値となっています。

団塊の世代の引退が後継者不足を加速させる

2012年以降に団塊の世代が会社から退職したり、年金を貰いはじめたりということが2012年問題として国の財政基盤を揺るがす可能性があると話題になりました。ただ団塊の世代の引退は企業の後継者不足の問題も加速させることになっているのです。後継者不足に悩む企業の多くの社長が団塊の世代のために、自分の引退と同時に会社も一緒に廃業しなくてはいけない事態に追い込まれるケースも増加しているのです。

後継者がいないのであればM&Aを利用するべき

経営者の子供や親族が会社の後継者とならないのであれば、子供や親族ではなく他に最適な人物に会社を任せれば存続に問題はないのではないかという考えでM&Aを利用するべきでしょう。最近では同族会社であっても子供や親族以外の人物が会社の後継者となるケースが1990年代の調査の6%程度から40%程度にまで激増しているのはM&Aを利用して効果的に会社を存続させる経営者が増えている証左であるといえるでしょう。

勘違いしやすい社長交代

社長だけの交代では不十分

多くの社長は事業承継とは、自分以外に社長を任せることであると考えているようです。

実は会社を次世代に譲るにはそれだけでは不足しており、社長が交代したのであれば会社のオーナーも同時に交代させておかないと後になってややこしいことになるかもしれないのです。では、なぜ社長が自分以外に社長を任せれば会社の事業承継が終わりであると考えているのかということですが、株式会社の場合でも社長が創業者であれば株式のほとんども自分または子供・親族が所有しているために忘れてしまうわけですね。

父親から息子・娘へのオーナー交代は一般的な相続や生前贈与などでおこなっていますので問題はおこらないのですが、他人であればそうはいきません。社長が信頼する専務・常務に会社を任せようと考えていたとしても、株式の所有者を移動していなければ社長とオーナーが一体となっていないことになります。社長とオーナーが違うという事態はトラブルの種が眠っていることを意味します。

経営方針が同じ場合にはいいでしょうが、経営方針が異なった場合に社長とオーナーで泥沼の法廷闘争にまで陥る可能性もあるのです。

会社を任せるということは経営と所有をセットで任せること

上記のように社長とオーナーの泥沼状態を防止するためにも、会社を任せる場合には社長と株式を一緒に交代させることが必要だということを絶対に忘れないでください。

また会社を任せることは、資産だけでなく債務も任せることも考えておくべきことです。

ほとんどの企業は金融機関からの借入金があるでしょうから、社長となった人物には当然会社の借入金には責任が発生することになるのです。M&A・事業承継を考える際には、従業員が転職を考えて立場を変えるように簡単には社長の交代はできないことを理解しておこなうようにしましょう。

会社の代表とオーナーを兼務しているわけですので、責任は非常に重いということですね。

M&Aを成功させるためには時間をかけた事前の準備が大切

M&Aを考えたら準備をはじめよう

社長が次世代に会社を任せようと考えるのは年齢的なものが大きいようです。

仕事には問題はないものの、自分の健康や経営手腕などに不安を覚えることで次の世代に会社を任せたいと考え始めます。M&Aは「さあM&Aをしよう!!」と考えたらすぐにできるわけではありません。M&Aは完了までに1年から2年の期間が必要なことも多くあり、準備から完了後の引継ぎまでの全ての時間を考えると3年ほどの期間が必要なことは決して少なくありません。

次項にM&Aをするべきかを考え始めた際に社長が準備しておくとスムーズに進むと予想される項目を挙げてみまあしたので参考にしてみてください。

M&Aを考えたら準備しておくといいこと

粉飾決算や過剰な節税はやめておくこと

M&Aをおこなう時には会社とは全く関係のない第三者が決算書をチェックします。

そのときに会社の実態が決算書と一致しておくことが信頼感を得られてM&Aが成功するためには必要だと覚えておきましょう。

秘密を洩らさない信頼できる相談先の確保

M&Aは実行にうつすまでは内密に進んでいきますので、何かあった場合の相談相手を確保することは重要ですが、秘密を保持できることが最重要ですので相手を選ぶ際には相談相手から秘密が絶対に漏れることがないかを選択基準にするといいでしょう。

利益重視の経営方針とすること

あなた自身が会社を買収する立場となればわかりますが、会社の利益が黒字であるか赤字であるかは非常に大きな違いになります。

赤字の企業はM&Aの対象にはされないこともありますので、売上よりも利益を黒字にすることを考えることが重要になってきます。

業界内の動向にアンテナをはっておくこと

M&Aの売却先は多くは同業他社やどの周辺業種がM&A完了後のシナジー効果を考えても多くなります。

あなたがM&Aを積極的におこないたいと考えても会社を買ってくれる相手がいなければ何も進みませんので、同業種の動向には強くアンテナを伸ばしておくようにしましょう。

資料はできるだけ事前に準備をしておくこと

M&Aをおこなうときには膨大な資料が必要となってきます。

資料の中には普段の事業では使用しないような文書もありますので、社長をはじめとした役員ですら存在を知らないことも珍しくはありません。M&Aの手続きをおこないはじめて書類探しに手間取っているようでは、相手先に「この会社を買収しても大丈夫だろうか?」と不信感を与えてしまいかねません。そのためにもM&Aを考え始めたら必要な書類は時間をかけてもいいように早めに準備を開始しておくようにしてください。

M&Aで必要な資料を分類別に紹介

準備しておくべきことで必要な書類を用意しておくとスムーズにいくことはお話しました。ここではM&Aに必要な書類を分野別に紹介していきますので参考にしてください。

概要

会社概要

・会社案内

・製品やサービスのカタログ

・会社の商業登記簿謄本

・保有している免許、許認可、届け出の内容

・会社の株主名簿

・株主総会、取締役会、経営会議などの議事録(添付書類もあるならそれも)

財務

決算資料

・決算書、期末残高試算表、勘定科目内訳明細を直近3期分

・法人税、住民税、事業税、消費税申告書を直近3期分

・減価償却資産台帳を直近の期末分

その他の財務

・月次試算表(直近1年分および進行期分)

・資金繰り表(実績と予定)

・支払保険料内訳、租税公課内訳、総勘定元帳等を直近3期分

・要約した採算管理資料(部門別、取扱商品別、取引先別など)を直近3期分

・要約した売り上げ内訳(部門別、取扱商品別、取引先別など)を直近3期分

・要約した仕入れ内訳(部門別、取扱商品別、取引先別など)を直近3期分

・作成している場合には事業計画書(今後数年の売り上げ予測、設備投資計画など)

不動産

不動産登記簿謄本

・不動産登記簿謄本

不動産賃貸借契約

・不動産賃貸借契約書

固定資産評価明細

・固定資産税課税明細書

人事

人事

・組織図(組織別の人員数の把握ができるものが必要)

・店舗や事務所の概況

・主要役員、部門長の経歴書類

・会社の従業員名簿

社内規程

・社内規程(就業規則、賃金規定は特に必要)

・退職規程

給与台帳

・直近期末分の給与台帳

契約

その他の契約認可

・銀行借入金残高一覧(返済予定表、差し入れ担保一覧)

・保険積立金の解約返戻金資料(直近期末の時点での金額)

・株式、ゴルフ会員権などの保有数量のわかる資料(例:現物集計、取引残高報告書など)

・金融商品、デリバティブの最新時価資料

・取引先との取引基本契約書

・生産販売委託契約書

・リース契約の一覧

・連帯保証人明細表

・株主間協定書はあれば

・その他の契約書や許可証

オーナー

・住民票

・印鑑証明書

インタビューシート

・インタビューシート

まとめ

いかがでしょうか。今回はM&Aを考えはじめた社長がおこなうべき最初の一歩を簡単に説明してみました。

M&Aは非常に複雑な作業ですし、時間も予想以上に必要となることが多いものです。現在は後継者の存在を考えていない又は必要ない社長であっても、いずれは後継者の問題には直面するわけですので、事前に準備をおこなっておくことは必要であることは十分に理解をしておいて行動に移していただければと考えています。

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