リーガルテックで社会的課題解決を目指す! 士業の世界にイノベーションを起こす挑戦者

2019年現在の世界や日本は、数多くの社会的課題を抱えています。こうした課題を解決するべく、ソーシャルビジネスでの起業を志す人も少なくないでしょう。

しかし同時にソーシャルビジネスは、既存の社会にはない発想や政治や法律が抱える問題と向き合う覚悟などが必要になります。ここを乗り越えられなければ、社会的課題を解決しながら利益を出し、継続的にサービスや製品を届けられなくなってしまいます。

今回は旧態依然とする士業の世界にイノベーションを起こしている、リーガルテック系ベンチャー、株式会社エベレストコンサルティング代表取締役社長、野村篤司さんにインタビューさせていただきました。

既存の業界に穴をあけるための考え方や、社会的課題の解決にビジネス面からアプローチするようになったきっかけ、そしてソーシャルビジネスを展開する際のポイントについて語っていただいてます。

開業して1年半で年商2000万円に到達

野村さんは独立してから何年になるのでしょうか?

助っ人編集部

野村篤司

今年の7月でちょうど5年になります。19歳のときに行政書士試験に合格して、新卒で名古屋市内の大手司法書士法人に入社して4年間遺産整理業務に従事したのち、コネや看板なしに自分の力でやっていきたいと思って独立しました。それが今の行政書士法人エベレストですね。

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野村篤司 株式会社エベレストコンサルティング代表取締役社長 2015年に株式会社エベレストコンサルティング設立。代表取締役就任。2016年に法人化し現職。士業の世界にイノベーションを起こすリーガルテック系ベンチャーとして急成長中。

事業が軌道に乗るまではどれくらいかかりましたか?

助っ人編集部

野村篤司

事業を始めてすぐですね。普通行政書士事務所を開業したばかりの人は、エンドユーザーを一軒一軒回って営業をかけたり、あくまで行政書士としての仕事にこだわって仕事を取ろうとします。 でも僕は全く違っていて、最初に法人営業から入ったんです。

エンドユーザーのスポット案件ではなく、売上が継続的に発生するところを狙ったわけです。また僕がエベレストの主力サービスである遺産整理業務というのは、非常に幅広い知識と経験が必要な分野で、行政書士一人だけでは対応しきれません。 そのため消費者が全てを完結させようと思うと、行政書士も司法書士も税理士も社会保険労務士も必要になります。

でもその都度別々に依頼していたら、時間も労力も無駄ですよね。そこで僕は開業当初から優秀な司法書士や税理士、社労士を仲間として集めて、グループ化しました。独立した専門店としての士業ではなく、専門店が一堂に会する百貨店のような士業を実現したわけです。

これがうまくいって、開業から1年半経ったころには年間2000万円以上の報酬を受託するまでになっていました。開業当初は事務所に机1つしかない状態で法人営業に回っていたので、かなり良いスタートダッシュが切れたと思っています。

同じやり方では労働集約型からは脱け出せない

そこまで士業がうまくいっているのに、2015年5月には株式会社エベレストコンサルティングを立ち上げていますよね?その意図はどこにあるんでしょうか?

助っ人編集部

 

野村篤司

士業というのはどうしても労働集約型のビジネスになりがちです。だから大きな士業法人でも、概ね年商20億円で限界がやってくるんです。 しかもそれは今と違って労働力が十分にある環境で、時代とともにコツコツと売上と人を増やしてきたというところです。

 今の時代にこうした既存の成功者をモデルに何かしようとしても、失敗の典型例にしかならないと考えています。同じやり方では現状の労働集約型から脱け出せることはなくて、新しいやり方やサービスを作っていかなければならないと考えているんです。 

具体的にどのような動きをされているんでしょうか?

助っ人編集部
 

野村篤司

労働力を前提としない「AI技術」の活用です。これまでの膨大な相談データを全部ビッグデータとして人工知能に学習させ、チャットボットに流し込み、基本的な相談は自動応答で済むようにしていきたいと考えています。

目指しているのは専門家がやってきた専門相談を全部チャットボットが初期対応をするという構想です。あと1年で実現が可能です。   これが実現できれば24時間365日で相談に対応できるうえ、全国の不動産会社、葬儀社、金融機関に貸し出せば、導入企業の顧客満足度を高めながら、当社の売上も確保できます。  

そのチャットボットはどれくらいのレベルまで対応できるんでしょうか?

助っ人編集部


 

野村篤司

大半の一般的な相談事には対応できます。僕自身、1000件以上の相談に対応してきましたが、だいたい相談には20パターンくらいしかないんですよ。もちろんとても特殊な例もありますが、それは統計上の異常値というだけで発生率は極めて少ないです。

だからチャットボットが機能すれば、人間はチャットボットで対応できないような難しい案件にだけ集中していればいい、という状況が作り出せます。   そうなれば実際に専門家に相談にしに来る人の数も減るでしょうから、必要な労働力も実質10分の1くらいになるんじゃないでしょうか。

労働集約型から脱け出せる(労働依存度が大きく改善される)わけです。   これを実現したくて、エベレストコンサルティングはスタートアップとしての事業の伸ばし方をしていて、資金調達も進めていますし、アクセラレータプログラムへの応募もしています。

 

でもそうやって人工知能を導入すると、士業の仕事がなくなってしまうのでは?

助っ人編集部


 

野村篤司

AIが得意なことはAIに代替されて当然だと考えています。そのうえで、僕は完全にチャンスでしかないと思っています。色んなセミナーにも参加しますが、どこも「脅威だからどう生き残るか」みたいな論調で、観点がズレすぎてますよね。来てるのは脅威じゃなくてチャンスであって、どう活用するべきかで考えるべきです。奪われる奪われないという考えがそもそも間違いです。

人生を大きく変えた「死ぬかもしれない」

御社は経営理念に「公益資本主義に基づき、専門的知識を用いて、社会的な課題の解決に挑む」を掲げていますが、なぜ社会的課題がキーワードになっているんでしょうか?

助っ人編集部

野村篤司

開業して1年したころ、実は僕、一度死にかけてるんです。

え!?  そうなんですか!

助っ人編集部

野村篤司

28歳の時だったんですが、ランゲルハンス細胞組織球症という病気にかかりました。日本では子供で20万人に1人、大人になると100万人に1〜2人という珍しい病気で、いろいろな症状があるんですが、僕は「背骨が溶けていって、半身不随になる可能性がある」と言われました。  

そこから手術が二回あって、通院も去年までしていたんですが、その間結婚式を予定していたんです。でもその時に医師から「原発巣が他にあり、背骨に転移している可能性がある。仮に癌でなくても、治療方法は癌と同じで、半年後は治療に専念しないといけないかもしれない。延期した方がいい」と言われた。目の前が真っ白になり、僕は死の宣告をされたと感じました。

そんな大変なことがあったんですね。 

助っ人編集部

野村篤司

はい、人生観や価値観がガラッと変わったのはその時です。それまでは極論を言えば「自分が儲かればいい」「自分の所得が上がればいい」と思っていました。きっと多くの人はそうおもっていますよね。悪いことではないと思います。

でもいくらお金を稼いでも、死んでしまったら何の役にも立ちません。行政書士をやるにしても他の行政書士がいるから、僕がいなくなってもお客様は一人も困りません。  

じゃあ自分が愛する妻子や家族のためにできることは何だって考えた時に、社会的課題を解決して、少しでも世の中を良くしていくことだったんです。自分が社会に対して何か新しい、絶対的な価値を提供できれば、自分がいなくなっても何かが残るだろう、と。

他に何か変わったことはありましたか?

助っ人編集部


 

野村篤司

失敗を全く恐れなくなって、何事においてもチャレンジ優先になりました。死ぬことに比べたら、失敗なんかありませんからね。くよくよしてる時間とか、後悔してる時間とか、悲しんでる時間、怒ってる時間、全てが無駄。 もちろんこれらの複雑な感情があって人間らしさですが、人生において出来るだけ少ない方が良いって思うようになりました。

とにかく前向きに楽しく、ポジティブに過ごす時間を増やすために、行動あるのみです。   周りからは生き急いでいると思われることもあるようです。今は先ほどのチャットボットの開発以外にも、外国人採用に関する有料職業紹介事業など多くの事業を矢継ぎ早にスタートさせているからでしょうね。  

でも来年は死んでいるかもしれないし、再来年になったら病気が再発しているかもしれません。だからやりたいと思う、求められていると思うことは全部やろうって思っています。立ち止まってる時間はありません。

 ソーシャルビジネスは利益の使い方が肝心

外国人採用に関する有料職業紹介事業では、外国人とそれを受け入れる企業側の間に発生する問題の未然阻止など、社会的課題の解決に向けた動きですよね。こうしたソーシャルビジネスを展開する上でのポイントってどこにあるのでしょうか?

助っ人編集部
 

野村篤司

まずはどうやって利益を生み出すのか、次に生み出した利益をどこに再投資するのかですね。再投資先を社会的課題の解決の方向に設定すれば、ソーシャルビジネスになっていくと思います。

日本には「ソーシャルビジネス=儲けてはいけない」のような図式がありますが、それは間違いです。継続していかなければならないのだから、利益はむしろ出さなきゃいけません。大事なのは出した利益をどこに使うかです。  

確かに社会的課題は、課題としての規模が非常に大きく、政治や法律の壁も次々に出てきます。だから多くの人が本気で挑戦しようとしないのかもしれません。でもそこに今のITリソースを投入すれば十分解決できると思います。

昔はこのITリソースがなかったわけですが、今はあるから解決の可能性だって高まっているはずですよね。だから僕たちは士業の専門知識とIT技術を組み合わせて、社会的課題の解決に取り組んでいるんです。  

社会起業家を目指す人にとって、励みになる言葉をありがとうございます。本日はお忙しい中、お話を聞かせていただきありがとうございました。

助っ人編集部

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