事業承継の味方!日本政策金融公庫を利用する条件と必要な手続き

目次 [非表示]

事業承継には様々な費用がかかります。そこで、実際に事業承継を行う場面になった際に、手元にあるお金だけでは足りなくなってしまうこともあるでしょう。

そこで、事業承継を行う際に必要な資金の融資におすすめなのが日本政策金融公庫です。

そこでこの記事では、日本政策金融公庫を利用する条件と必要な手続きについて解説します。

日本政策金融公庫とは?

日本政策金融公庫は財務省が運営する特殊法人で、沖縄県を除く46都道府県に住む人に教育・起業などに必要な資金を融資しています。

ちなみに沖縄は日本政策金融公庫ではなく内閣府が運営する沖縄振興開発金融公庫の管轄となります。

日本政策金融公庫は国が運営しているので、融資を受ける際に行われる審査が銀行と比べて甘めと言われているうえに、利息も低めです。

事業承継にかかる費用には、相続などで分散してしまった自社株や事業資産の買取資金や、その際に発生する贈与・相続税などが挙げられます。

このように事業継承には多額の費用が必要と言えるでしょう。

そこで、事業承継に必要な資金を調達するにあたって利息を最小限に抑えたいのであれば、日本政策金融公庫を利用すると良いでしょう。

日本政策金融公庫では様々な目的のために利用できる融資制度が用意されています。

そこで事業継承のための融資を希望するなら、「事業承継・集約・活性化資金」を利用しましょう。

この制度の場合は中小企業でも高額な融資が期待でき、銀行に融資を断られてしまった場合に便利です。

ただ、この制度の融資対象は資本金が1,000万円以上の中小企業が中心となっています。

それに、この場合は担保も必要なので万が一返済できなかった時の生活への影響が大きいです。

それに対して少額融資で良い場合は国民生活事業分野の制度を使って融資を受けましょう。

この場合は小口融資が中心なうえ、無担保で融資を受けることができます。

日本政策金融公庫を利用する条件は?

iStock-909931982

日本政策金融公庫から事業継承のためのに必要な資金を借りるには5つの条件があります。

このうちのどれかに当てはまれば、日本政策金融公庫から融資を受けることができます。

1つ目の条件が現経営者が後継者もしくは後継者の候補者を既に決めており、中期的な事業承継計画を策定している場合です。

この場合は、日本政策金融公庫から事業承継計画を実現するにあたって必要な設備資金と長期運転資金を融資してもらうことができます。

利息は4億円までの融資の場合特別利率、それ以上の融資の場合は基準利率が適用され、どちらも上限利率は3%となっています。

安定的な経営権の確保などにより事業の承継・集約を行う場合は事業承継のために必要な設備資金・長期運転資金の融資を受けることが可能です。

この際には基本的に融資を受ける金額に関係なく基準利率が適用されます。しかし、

  • 付加価値向上計画によって新たな雇用が見込まれる場合
  • 事業継続が困難な企業の事業承継を行う場合
  • 株主から自己株式・事業用資産の取得などを行う法人の場合
  • 個人事業主の退任などから5年以内の場合
  • 事業会社の株式もしくは事業用資産を取得する持ち株会社の場合

この5つの場合は4億円まで特別利率が適用されるので、これらの条件に当てはまるかどうかを確認したうえで申し込みましょう。

中小企業経営承継円滑化法によって認定を受けている中小企業の代表者が申し込む場合も、同じく事業小計のために必要な設備資金・長期運転資金の融資を受けることができます。

付加価値向上計画を作成し、新たな雇用が見込まれる場合は金額に関係なく特別利率、そうでない場合は4億円まで特別利率が適用されます。

事業の承継・集約をするタイミングで経営多角化や事業転換に取り組もうとしている場合は、それを実現するために必要な設備資金・長期運転資金の融資を受けることができます。

この際に適用される利率は4億円までだと特別利率、それ以上だと基準利率が適用されます。

この場合も融資金額に関係なく利率の条件が3%までとなっています。

最後に融資を受けることができる条件として挙げられるのが、事業承継を行うにあたって、経営者個人補償の免除などを取引金融機関に申し入れたことがきっかけで、取引金融機関からの融資が困難な状況に陥っている場合です。

適用される利率は融資額に関係なく基準利率が適用されます。日本政策金融公庫から融資を受ける際の限度額は7億2000万円までです。

設備資金は20年以内、運転資金は7年以内に返済することが条件となっており、期間内に返済を終えましょう。

日本政策金融公庫から融資を受けるために必要な手続きの流れは?

日本政策金融公庫から融資を受ける場合、まず日本政策金融公庫の各支店にある中小企業事業の窓口に相談をしましょう。

電話や商工会議所で行われる定例相談でも相談することが可能ですが、なるべく早く融資を受けたいなら日本政策金融公庫に直接相談しに行くとスムーズです。

この場合、なるべく早く融資を受けたいのであれば、会社案内・決算書・事業計画書など会社に関連する資料を持ち込むと具体的な相談に対応してもらえます。

申し込みを終えると、審査に入ります。審査の際に、

  • 会社案内等の参考資料
  • 法人の登記事項証明書
  • 最新3期分の決算書
  • 税務申告書
  • 納税証明書
  • 最新の試算表
  • 担保の内容がわかる資料

が必要です。また、設備投資のための資金の融資を受ける場合にはこれらの書類に加えて見積書など概要がわかる資料も用意しましょう。

審査の際には、書類だけで事業や計画の内容を日本政策金融公庫の担当者が理解するのが難しいとされているので、日本政策金融公庫の職員が本社や事業計画予定地に視察に訪れ、実際にどんな計画が行われる予定なのかを確認します。

そのため、事業計画に関してしっかり日本政策金融公庫の職員に説明できるように準備をしておきましょう。

審査を終えて融資が決まると、貸し付け契約の打ち合わせを行います。

そして、抵当権設定などの手続きを終えたら、申込時に登録した口座に一括で資金が送金されています。

返済に関しては基本的に毎月一定の金額が口座から引き落とされる元金均等割賦返済となっています。

これ以外に元利均等払い方式など様々な返済方式が用意されているので、元金均等割賦方式以外を希望する場合は日本政策金融公庫に相談しましょう。

また、設備投資のために必要な資金の融資を受けた場合は、融資対象の取得が本当に行われたかどうかを確認するために固定資産台帳への計上確認や現地確認などが行われます。

あわせて読みたい関連記事

実質税負担ゼロで自社株が引き継げる特例事業承継税制とは?
事業承継にかかる贈与税や相続税の負担が軽減される?後継者は知っておきたい特例事業承継税制

特例事業承継税制を検討する際にはおさえておきたい特例の落とし穴
ちょっと待って!知っておきたい特例事業承継税制をとりまくリスクと対応策

事業承継をきっかけに家族ともめたくない方はお読みください
事業承継は先代経営者と後継者の問題だけではない。家族ともめやすい遺留分問題とは?

事業を売却するってどういうこと?
法人の事業譲渡とは?~メリット・デメリットと手続き~まとめて解説

企業の承継は、自社株の引継ぎだけじゃない
事業承継・会社/企業の承継って何?承継と継承の違いも合わせて解説

ゼロイチよりも買収!?これから増えるM&Aについておさえよう
M&Aって一体なに?会社に係るM&Aを基礎知識から理解しよう!

親族での事業承継を考えるポイントをまとめました
事業相続・承継!【親族内承継】って何?納税猶予も含めて解説!

中小企業を長年コンサルしてきた元金融機関行員中小企業診断士が語るシリーズ
事業承継との向き合い方②事業承継を幻にしないために〜誰に引き継ぐべきか〜
事業承継との向き合い方④~なぜモメるのか?親子間のボタンの掛け違いから考える事業承継~
事業承継との向き合い方⑤ 事業を譲る側がすべきこととは〜船に船頭は二人もいらない?〜

関連記事