先に知りたかった…!起業家が悔やんだ「テッパンの節税」10選

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税理士の仕事をしていると、誰しも「人より損したくない」という声にならない声をお持ちだと感じます。しかし、税務に関することについては、義務教育では学べませんし、社会に出て初めて知る人も多いのではないでしょうか。

残念ながら自ら情報を取りにいかないと、ノウハウを得ることができません。起業をするフェーズにおいても、知っていれば節税できることはたくさんありますが、敷居が高いと感じて相談せずに損をしているケースが見受けられます。

これまで起業支援・経営支援をしてきた立場として、起業家や経営者から「先に知ってたらよかった」と言われたことのある節税方法について10の方法をピックアップいたしました。

1.青色申告制度を活用して地道に節税

個人事業者でも法人でも、まずは第一に青色申告制度を選択してほしいと思います。

青色申告制度とは、税務署にあらかじめ届けておき、複式簿記による帳簿を日々作成し、それに基づき所得税申告書や法人税申告書を作成することを指します。

詳しくはこちらにも記載しております。
【まだ白色申告?】 青色申告のススメ〜メリット・デメリットまとめ〜

青色申告制度は、事業者に帳簿をきちんとつけてもらい、適正申告につなげてほしいとの願いから作られた制度です。

事業をしている以上、日々帳簿をつけて、その日やその月、その年の経営状況を確認することは、いわば当たり前のことかもしれませんが、このような当たり前のことを奨励するために、青色申告制度が創設され、青色申告制度の特典が設けられています。

青色申告特別控除65万円が控除できる(個人事業者)

不動産所得又は事業所得を生ずる事業を営んでいる青色申告者で、これらの所得に係る取引を複式簿記により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付して法定申告期限内に提出している場合には、原則としてこれらの所得を通じて最高65万円を控除することとされています。

青色申告制度に従いきちんと複式簿記で帳簿をつけ、それに基づき確定申告をすると、所得から65万円控除でき、その分所得税や住民税が安くなるというメリットがあります。

お金を使うことなく、毎年9.75万円~35.75万円の所得税・住民税を節税できることになります。

青色事業専従者給与(個人事業者)として身内への給与が必要経費にできる

所得税法上、個人事業者は生計を一にする家族に対する給与は原則として必要経費となりません。

しかし、事前に提出された届出書に記載された金額の範囲内で専従者の労務の対価として適正な金額であれば、青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業に専ら従事している人に支払った給与は、必要経費に算入することができます。

損失の繰り越し

個人事業者であれば、事業所得や不動産所得の損失を3年間繰り越すことが可能です。

法人であれば、9年間繰り越すことが可能です。

30万円未満の減価償却資産は年間300万円まで全額必要経費にできる少額減価償却資産制度

原則として10万円以上の減価償却資産(機械やパソコン、器具備品など)は、数年にわたり減価償却をしなければならないことになっていますが、青色申告を採用していれば、30万円未満のものについては、一度に全額必要経費にすることが可能です。ただし、累計年間300万円が限度です。

何より地道に帳簿をつけるのが節税の近道

他にも特典はありますが、青色申告制度では、日々の取引を適時に帳簿につけることが原則となっています。

このように日々適時に帳簿をつけている事業者は、タイムリーに取引を振り返ることができるようになります。それにより、おのずと無駄遣いが減り、1年間の所得や利益を予測することが可能です。

あらかじめ納税予測ができるようになれば、年末や期末近くに、必要な備品の購入を前倒しするなど、節税策を講じることが可能となります。

このように、事業者にとって必須といえる帳簿をきちんとつけたうえで、特典を受けると、これだけでもかなりの節税ができることになります。

複式簿記による帳簿付けが難しそうというイメージがあるかもしれませんが、複式簿記が簡単にできる会計システムもありますし、税理士による記帳指導を無料で受けることも可能です。

得することしかない青色申告制度は、事業をするならまず採用してほしい制度です。

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2.小規模企業共済加入による個人所得税の節税

個人事業主や中小企業経営者のための老後資金の準備制度です。「小規模」という名前の通り、会社の規模によっては、加入できません。会社が払うのではなく、個人が支払うものです。

特徴は、月の掛金は1千円~7万円まで、いつでも変更可能です。早く始めれば始めるほど、受取額の増額幅が大きくなります。

メリットは、次の通りです。

  • 掛金全額が、所得から控除できる
  • 受取共済金は、退職所得として、低い所得税率で受取可能。結果、所得税・住民税の節税に・手数料がない
  • 掛金総額のうち、一定の範囲内で、貸付を受けることが可能

いつお金が必要になるかわからないオーナー経営者や個人事業主にとって、いつでも貸付を受けられる流動性を確保しながら、そして、所得税や住民税をおさえながら、勇退準備ができる便利な方法です。

例えば、掛金7万円で25年掛けたとすると、年間の掛金は84万円です。

年収1,000万円の方で、所得税率が20%なら、住民税率10%と合わせて税率30%となります。

84万円×30%=25.2万円 の所得税・住民税の節約となります。

受け取るときは 84万円×25年ですから、合計2,100万円です。(実際はもう少し増えてます)

他に受け取る退職金がなければ、2,100万円から退職所得控除1,150万円(勤続25年と仮定)を差し引いた、50万円について、その1/2の25万円について、所得税・住民税がかかります。

ここにかかる所得税・住民税は25万円×15%ですから3万7500円です。

毎年の節税額 25.2万円×25年ー受け取るときにかかる所得税3.75万円=626.25万円の節税になります。

よく比較される確定拠出年金(iDeco)は、60歳まで引き出しできないので、いざというときに現金に換えられる小規模企業共済が断然おすすめです。

最初は掛金を払う余裕がないという方もいらっしゃいますが、少額から始められるので、でいるだけ早めに加入された方がよいと思います。

3.旅費規定を作成して出張の日当を出す(法人)

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出張が多い事業をする場合に特に有効な方法です。

出張をすると、出張の支度や、現地での(出張先でのやむを得ない)食事など、なにかと細かい経費がかかります。

出張の日当は、出張先で使う諸経費について、「だいたいこのくらい」という妥当な決まった金額を渡し、細かい精算をしないものを言います。

この出張に伴う日当は、会社から役員や従業員に渡されるものですが、もらう人にかかる所得税は非課税、社会保険料もかからず、さらには、法人税法上損金(経費)になります。

だから、よく「節税には出張日当!」と言われるのだと思いますが、実費精算のかわりに行うものに過ぎません。

日当を出すときのポイント1  旅費規定があること

日当を出すには、日当を出す正当性が必要となります。要は、そういう決まりを会社で作りましょう、ということです。フォーマットは「旅費規定」で検索すると、たくさん出てくるので、ご参考にしてください。

使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうかが大事なので、役員のみ、日当を出すのではなく、社員さんも基準を設けて、支給できるようにしておきましょう。

日当を出すときのポイント2 支給額が妥当であること

あくまで、費用の支出に充てられるであろうという金額の範囲で支給することになります。

では、どのくらいが相場なのか?そう思われる方もいらっしゃると思います。

産労総合研究所という民間のシンクタンクが、2年に一度出張旅費の支給状況の調査をし公表をしています。
産労総合研究所:2017年度国内・海外出張旅費調査

このデータをまとめると、

(1)国内宿泊出張の場合の日当、宿泊料

  • 日当の平均額:社長4,621円、部長2,491円、一般1,954円
  • 宿泊料の上限:社長14,242円、部長9,870円、一般社員8,723円

※宿泊料というのは、宿泊費について実費精算せず、定額で渡す場合の金額を指すようです。

(2)海外出張における地域別の日当、宿泊料

エリアにより異なりますが
課長クラスで日当5,000円台、宿泊料13,000円台から15,000円台
役員クラスで日当6,000円台、宿泊料15,000円台から18,000円台

というところです。

日当を出すときのポイント3 出張の事実を記録すること

出張の事実がないと、出張の日当は出せません。カラ出張でもらうと、所得税の脱税になります。出張の事実は、何の目的でどこへ出張したのかを記録したものが証拠になります。

税務調査では、金額の過多よりも出張の事実を問われますので、出張報告書などのフォーマットを利用し、事実が客観的に把握できるようにしておきましょう。

4.会社設立の際の登録免許税の節税

会社を設立するときに、ある方法をとると、登録免許税が約半額になるという制度があります。

すべての市町村ではないのですが、

  • 産業競争力強化法に規定する認定創業支援事業計画にかかる認定を受けた市町村の区域内において
  • 内容は、市町村によって、異なりますが、商工会議所の創業支援のセミナーを受講したり、創業相談をしたりするなど、市町村が規定した創業支援事業による支援を受けること

が要件となります。

詳細は、使わないと損!?会社を設立するときに活用したい税金の免除制度をご参照ください。

5.情報提供料の活用

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業種によって、使える・使えないがありますが、情報提供料は、いわゆる「紹介料」です。取引先を紹介してもらい、成約に至ったときに情報提供料を支払う方法です。これを必要経費や費用にする方法です。

相手先を帳簿に明らかにしておく必要があることは大前提です。

ポイントは、謝礼金として「交際費ではなく、あくまで情報提供料である必要がある」ことです。

交際費なら、経費になる限度があります。 この限度の範囲内なら、謝礼にしておいてもよいです。

紹介をビジネスにしている会社や個人事業主に支払う場合は、交際費になりません。

一般人に支払う場合には、注意が必要です。

紹介料を支払う場合に気をつけるべきポイントは、

  • あらかじめ締結された契約に基づいて
  • 紹介の内容が具体的に明らかにされて、実際その通りに紹介されていて
  • 紹介料が妥当な金額であること

です。

これらの条件がそろって、全額経費にすることができます。

「情報提供に関する契約書」を交わし、支払先からの請求書もそろえる必要があります。

6.所得を分散して個人の所得税を節税

たとえば、ご夫婦で同じ会社を運営されている場合や、配偶者が個人事業に一緒に従事している場合、仕事の裏付けが必要ですが、それぞれに給与をきちんと出して、トータルでの所得税を節約するという方法があります。

所得税は累進課税制度といって、所得が高いほど、税率が高くなります。よって、夫婦の一方の給与が年収2,000万円で、もう一方が400万円とするよりも、それぞれ1,200万円ずつの方がトータルの所得税は安くなることになります。

しかし、実態とそぐわない給与の設定は避けましょう。仕事の実態や責任の重さなどを加味して、妥当な範囲でバランスをとる必要があります。

7.消費税の課税方式の選択による節税

消費税の課税方式の選択によって、大きく納税額関わってしまうこともあり得ます。

また、会社設立の際に、資本金1,000万円で設立すると、1期目から消費税がかかるというデメリットもあるほど、知らなければ損をしてしまうことが多くあります。

それには、まず消費税の仕組みを知ったうえで、自分の会社に合った課税方式を検討することが必要となります。

こちらのページにわかりやすく解説していますので、ご参照ください。

起業当初は消費税が免除される?免除期間の上手な設定の仕方と落とし穴とは?

8.倒産防止共済による節税(課税の繰延べ)

倒産防止共済とは、取引先の倒産によって連鎖的に中小企業が倒産または経営難に陥らないようにする共済制度です。 正式名称は中小企業倒産防止共済と言い、経営セーフティ共済とも呼ばれます。 倒産防止共済への加入は、1年以上事業を継続している中小企業者であることが条件です。

詳細は、中小企業基盤整備機構のHP中小企業倒産防止共済とはをご参照ください。

倒産防止共済の掛金は、全額損金にすることが可能です。毎月の掛金は5,000円~20万円の範囲で設定でき、累計800万円まで積み立てをすることが可能です。

倒産防止共済は、取引先の倒産に備えられることも大きなメリットですが、決算月前に向こう1年分を前納して一時的に法人税や所得税を抑えることができる点がおすすめポイントです。

解約をする場合は、受け取った金額は収入となり、法人税や所得税が課されます。あくまで今かかる法人税や所得税を繰り延べる方法にすぎませんが、よく使われる方法です。

9.中小企業経営強化税制による税額控除を使って節税

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中小企業経営強化税制の活用により、税額そのものを減らす、税額控除を受けることが可能です。

経営力向上計画の認定を受けた設備投資等については、 設備投資に使った金額の7~10%の法人税や所得税の減税を受けることができます。 ※資本金3,000万円以下なら10%となります。

生産性が上がるような機械装置や工具・器具備品・建物付属設備やソフトウェアが対象です。

最近では、働き方改革のための設備として、 休憩室の冷暖房設備や、テレワーク用PC(工場・店舗・作業場等に設置されるものに限ります) なども対象になっています。

起業に必要なものや、これから必要だと考えているもので、 「もしかしたら、これ、減税使えるんじゃない?」いうものもあるかもしれません。 この減税を受けるには、経営力向上計画の認定が必要なので、ご準備はお早めに。

詳細は、国税庁HP中小企業経営力強化税制をご参照ください。

10.少額減価償却資産と一括償却資産の使い分けによる償却資産税の節税

事業で使用する機械や賃借物件の内装、パソコンなどの器具には、償却資産税という種類の固定資産税が課されます。

毎年1月末までに、1月1日時点での所有するこれらの償却資産について、市町村に申告をし、それに基づき4~5月に納付の案内が送られてきます。

青色申告の特典の1つである30万円未満の減価償却資産について、一度に必要経費にできる少額減価償却資産についても、この償却資産税が課されます。

一方で、10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一括償却資産といい、3年で均等償却できるという制度があり、この一括償却資産には、償却資産税は課されません。

10万円以上20万円未満の減価償却資産について、少額減価償却資産を選択すると、一度に必要経費にできますが、償却資産税がかかります。一方で、一括償却資産を選択すると、3年かけて必要経費にできますが、償却資産税はかかりません。年間300万円までという限度もありません。

所得税については税率が所得によって変動するため、一概には言えませんが、法人の場合は、一括償却資産を選択した方が、トータルの税金の支払額は少なくなると言えます。

とても細かいですが、知っていれば、少し得する節税法です。

まとめ

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多少細かいこともありますが、「それやったら、早くそれを選んでいたらよかった」というお声を頂いた節税方法をランキングにしてみました。1つでも取り入れてみようと思うものがあると嬉しいです。

節税とは少し離れるかもしれませんが、そのときどきでの政府の支援策を知っておくことはとても重要です。

この5月に中小企業庁から、中小企業平成31年度版中小企業施策利用ガイドブックが発表されました。

2019年度版中小企業施策利用ガイドブック

これをご覧いただくと、たくさんの中小企業への支援策があることがわかります。しかし、知ることが出来なければ、当然活用もできません。

活用できる補助金や助成金、金融支援策や税制などが冊子になったガイドブックです。「こんなんあるんやったら、取り組んだらよかった」「申請したらよかった」そんなことがないように、一度チェック頂ければと思います。

前もって知っておく、知ることができる仕組みを作っておくことが、節税への第一歩かと思います。助っ人のメルマガに登録して、定期的に情報を得られるようにすることも、「知ることができる仕組み」だと思います。ぜひご活用くださいね!

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著者プロフィール

神佐 真由美

神佐 真由美

京都大学経済学部在学中から「プロフェッショナルになるために手に職を」と税理士を志す。卒業後は、税理士を顧客とする株式会社TKCに入社し、税理士事務所を顧客にシステムコンサルティング営業に4年間従事。本当に中小企業経営者にとって、役に立てるプロフェッショナルはどうあるべきかを問い続け、研究する。税理士試験5科目合格後、税理士業界へ転身。
自ら道を切り拓く経営者に尊敬の念を抱き、経営者にとって「一番身近なパートナー」になるべく、起業支援や資金調達支援、経営改善や組織再編、最近では事業承継支援など多くの経験を積む。経営計画を一緒につくり、業績管理のしくみづくりを通して、未来を見通せ、自ら課題を見つけ、安心して挑戦できる経営環境づくりが得意。大阪産業創造館のあきない・経営サポーターも務め、セミナー実績も多数。「経営者のための資金繰り基礎講座」「本当に自社にとって必要?事業承継税制セミナー」など。

<関連サイト>
角谷会計事務所
未来を魅せる税理士 神佐真由美のブログ