社長の頑張りが社員を成長させなくするというジレンマ

ポイント
  1. 経営者が頑張るほど社員は成長しない!?
  2. 経営者が頼る、甘える、我慢しないが成長の原因
  3. 経営者ほど自分自身を大切に労わろう

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中小企業の経営者の多くはとても真面目で、本当に仕事に対してストイックです。仕事が人生において最も大切で、休みも関係なく働いています。連休などをSNSの投稿で知るという仕事人間ばかりなわけです。

しかし、SNSなどを見ていて、めちゃめちゃ働いていることや、頑張っていることを投稿されている小さな会社の経営者を見ると少し心配になることがあります。

それは、経営者の圧倒的な頑張りが、結果として、社員の成長を妨げていることがよくあるからです。つまり、経営者が頑張り方を間違えてしまうと、経営者は会社を成長させるために身を粉にして頑張っているわけですが、むしろ、会社成長が後退してしまっているということがよくあるからです。こんな本末転倒なことは防がなければいけません。

経営者が頑張ると社員が成長しなくなるメカニズム

未熟な経営者が、会社経営を個人戦の如く頑張れば、頑張るほど、「自分はとにかく頑張っている」「誰よりも頑張っている」という気持ちになっていきます。

自分の会社なので当たり前ですし、誰かに言われて義務的にとか、褒めてほしいからということで頑張っているわけではありません。自分が頑張りたくて頑張っていることが多いわけです。しかしながら、経営者といっても完璧な人間であることは一切ありませんので、どうしても、自分の頑張りを他の人と比べてしまったり、他の人にも実質的に自分のような頑張りを強要するようになってしまうことがあります。

自分はこんな頑張っているのに、なぜ、全然仕事ができない社員の●●は頑張らないのか?というように考えてしまうようになります。

経営者は、頑張れば頑張るほど、社員が頑張っていないことが目についたり、頑張らないことが許せなくなってしまうのです。(頑張っているか、頑張っていないかというのは、実際にはわからず、経営者には、頑張っていないと見えてしまっているわけです。)

 

経営者が社員を許せなくなることで社員の成長が止まってしまう

経営者が頑張れば頑張るほど、社員を許せなくなってしまう構図を説明しました。ここではより具体的にみていきます。

精神論・根性論ばかりでただ怒るになってしまう

経営者からするととにかく社員は頑張りが足りないと、精神論、根性論的になっていくことが多くあります。そのため、建設的に、合理的にどうしたらいいか?ということを考えることができずに、「頑張りがとにかく足りない」と、感情的になりがちです。

何をどうするべきか?という的確な指示を出すことができずに、問題を解決することができず、ただ怒り続けるという悪い循環に入ってしまいます。

社員は頑張らないものと思い込んで育てることをやめる

社員が頑張らないことを許せないという状況に、経営者がなり、はまり込んでいってしまうと、「社員は全然頑張らない」「社員は仕事ができない」と決めつけるようになっていきます。この結果、経営者が社員を育てるということをやめてしまったり、そもそも諦めてしまうことになります。

 

悪い意味でワンマン化に拍車がかかってしまう

社員を許せなくなると、経営者の中で、社員への信頼が失われているので、経営者が仕事を任せることができなくなります。経営者が経営者の仕事でない仕事をやることになり、会社が成長をしなくなります。このような中で、社員に任せる仕事としても、つまらない誰でもできる仕事を社員に任せることになってしまったり、社員を信頼していないので、細かすぎるマイクロマネジメントになり、社員のやる気はより一層殺がれてしまいます。
悪い意味でワンマン経営が加速してしまいます。

経営者が会社経営を個人戦と思ってしまって、個人でとにかく頑張ればとなってしまうのは、とても悪い状況をつくってしまうのです。いくら経営者1人がモチベーション高く頑張ったとしても、頑張り方が間違えてしまうと会社成長どころか、マイナスに働いてしまうということです。

経営者が会社の成長を実現するために頑張るとはどういうことか

経営者の仕事は経営をすること

経営者というのは、「経営」ということをすることが仕事です。
いわゆる仕事ができることと、経営ができることは違います。
営業、経理、人事などの役割があり、それぞれは全然違う役割なわけで、考えることや、必要なスキルなども違います。経営というのは、これらと同じで、経営という役割で、専門職なのです。経営者は自らの役割とゴール、ルールをしっかりと理解をする必要があります。

経営とは「人を通じて、人を活かして会社を成長させる」ことだと思っています。
つまり、人を活かして、成長させることです。経営者の個人戦ではないということです。つまり、経営者は自分1人が頑張っていても仕方がなく、全社員が頑張っているという状況をつくることが役割なわけです。

経営者の役割などを詳しく書いていますのでこちらもお読みください。

会社を成長させ続けるための中小企業のためのマネジメントの話

経営者は「頑張らない」ことが仕事!?

経営者が経営という仕事をしようと思った場合には、人を通じて、人を活かして、成長していくことが必要になります。そのため、経営者が1人で頑張ってもいけません。
むしろ頑張らないことが大切になります。

頑張らないというのは、

・頼る
・甘える
・我慢しない
・弱音をはく
・一方的にしてもらう

など、頑張る経営者の動きとは全く反対のことが効果的になります。
頑張る経営者がとても苦手で、ほとんどしたことがないのではないでしょうか。

 

できない経営者ができる経営者の意味

会社をとても成長させている、ある経営者から、
「自分はわざとミスをする」
「見当外れなことを言うようにしている」

社員から、社長は仕事ができないと思われるようにしていると話を聞いたことがあります。

自分は全然仕事ができないので、社員にすぐ助けを求めるとも言っていました。
周りの優秀な仲間に困ったらすぐに力を貸してほしいと頼るし、自分が優秀でなくてよかったと言っていました。

また、会社成長が伸び悩んでいた後輩の経営者に対して
「●●さんは自分が完璧すぎるから社員が成長しないんだよ」と言っていることがとても印象的でした。

●●さんは個人として極めて優秀であり、めちゃめちゃ頑張ることをポリシーとしている経営者で、●●さんの頑張りの基準で全ての社員に接しており、社員が厳しいと感じて退職率が高く、成長が鈍化してしまっていたのです。

 

頼る、甘える、我慢しない、弱音をはく、してもらう

確かにそうだなと思っていただいても、頑張ることが当たり前の経営者にとっては、「頼る」、「甘える」、「我慢しない」、「弱音をはく」、「してもらう」は本当に難しいことだと思います。いきなり全てはできないと思いますので、できるところからで構いません。小さなことからでも構いません。

また、社員に対して、いきなり、「頼る」、「甘える」、「我慢しない」、「弱音をはく」、「してもらう」が、少し難しい場合には、メンターなどの相談相手を持つことが効果的かもしれません。何でも我慢せずに、弱音を話せるメンターがいるだけでも、経営者の精神衛生というのは極めてよくなり、社員に対する考え方、コミュニケーションも変えることになります。

小さな会社の経営者ほどメンターを持つべきという話も合わせてお読みください。
小さな会社の経営者ほど成長したければメンターを持て

 

頑張る経営者ほど自分を認め、大切にし、労わるべき

会社を成長させたいという経営者であればあるほど、まず最初にするべきことは、自分自身を大切にするということです。

自分自身が大切にされることで、自分自身の平静が保たれますし、結果として、周りへの見方ということが変わります。

休みを戦略的に活用し、休みのときには、好きなこと我慢しないでとことんやってみましょう。何でも構いません。朝から晩まで映画をみるとか、旅行にいく、サウナにずっと入り浸るなど、とにかく我慢をしないということです。

また、嫌なことや辛いことがあったら、1人で抱えずに誰かに甘えてしまいましょう。
愚痴を言うことなども時には必要かもしれません。それが常態化したり、言う相手を間違えてはもちろんいけませんが、経営者といっても、1人の人間に過ぎず、完璧な人間なんていません。経営者が良い意味で平静を保ち、曇りなく社員との関係を見ることができるか?が経営者にとっては欠かせません。

経営者であれば誰しもがよくはまりうる、頑張りすぎることでのジレンマを客観的に理解して、誰でも、特に、真面目で一生懸命な経営者ほどそうなってしまうことがあるということを自覚しましょう。このジレンマを知っているだけで、対策や改善ができるようになります。

自分自身を大切にすることにも、是非、全力でコミットをしてください。
あなたは間違いなく頑張っていると思いますし、お客さんのため、社員のため、社会のために戦っているとてもかっこいい人です。できないことだってもちろんありますし、周りに少しは迷惑をかけてもよいのです。良い会社、成長していく会社をつくるためには経営者である貴方が何よりも大切です。一緒に頑張りましょう。

 

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著者プロフィール

伊藤 健太

伊藤 健太

1986年生まれ、横浜出身、慶應義塾大学法学部卒業。

23歳の時、病気をきっかけに、小学校親友4名、資本金5万円で株式会社ウェイビーを創業。

10年間で10,000人を超える経営者、起業家の「組織づくり」「売上アップ」に携わる。

社長がいなくても回る強い組織、仕組みをつくる「01組織クラウド

小さな会社、個人事業主のビジネス成長を実現する「01クラウド

の01シリーズを展開中。

2016年10月より、世界経済フォーラム(ダボス会議)の日本代表選抜
2018年9月より、徳島大学客員教授就任
2020年4月より、iU 情報経営イノベーション専門職大学客員教授就任

「行動の品質」「自分の力で稼ぐ力を身につける本」など著書7冊。
日経新聞、エコノミスト、NHKなどメディア掲載も多数。