クリニック開業取扱説明書【第3回】理想のクリニックを作るために

更新日:2017.05.16

あなたの理念がクリニックを発展させる

理念なきなんとなく開業は危険

開業を考える医師にどうしてクリニックの開業を考えたのか?という質問をする。 この質問にあなたならどう答えるだろうか?このときに何となく開業をしたいと思ったであるとか、10年ほど経験を積んだので開 業してもいい時期だと判断しただとか、周囲の医師が開業しているので、自分も独立するべきかと思ったなどを答える様ではクリニックを開業するのは危険信号が発せられていると言っておかなければいけないだろう。

前回挙げた3つをよく見てもらえれば判断できると思うが、なぜ開業するのかという理由に対して確固たる理念というものが存在していないことがわかるだろう。理念なき開業は開業後の経営方針にぶれを生じさせる非常に危険なものである。 ここではしっかりとあなたが開業のための理念を持つためにも例を挙げて説明していきた いと思う。

あなたはクリニックの開業に何を求めるか

クリニックの開業に何を求めるかはすべての医師で異なってくるはずである。 自分の理想とする医療を追求したい医師もいるだろうし、勤務医では収入の上限が決まっ ているので独立して収入を増加させるために頑張りたい医師もいるだろう。私はどんな理由でも構わないと考えている。 理由は先程も挙げたなんとなく開業が最も危険性が高いからである。
 

お金を儲けるために独立したいとか露骨すぎると思われるかもしれないが、医師が収入 を増加させるためは患者に支持される必要があるのであるから、医師が収入を増加させる ことに成功したということは、それだけその医師個人と病院が患者に評判がいいというこ となので私は素晴らしいことであると思っている。
 

この開業に何を求めるのかについては、あなたがまだ開業を考えてはいないが、いつか は開業しようと思っているのであれば、開業を決断する前から考えておくことをお勧めす る。 その理由は、開業に何を求めるのかの部分が明確なイメージとして固まっていなければ、 あなたの思い描くクリニックを実現することが非常に難しいことになるからである。 特にあなたに家族がいるのであれば、勤務医から開業医になることによって生活も変化し てくるだろうし、あなたが何かで困ったときにはサポートしてくれる最も身近な存在は家族であろう。 一番身近な味方である家族が納得できないような開業に何を望むかに対する答えしか導き 出せていないのであれば、今のあなたは開業時期ではないということになる。 最低でも家族が納得し、あなたのクリニックの開業を応援したくなるような答えを導き出すようにしよう。 あなたの想いの根本である理念こそがクリニックを発展させる最高の材料なのである。

あなた自身を棚卸してクリニック像を明確にしよう

あなたのこれまでの経験と技術を明確に

あなたは医師なのでクリニックを開業したからといって商品を売るわけではない。 ならば患者にあなたのクリニックを選んでもらうためには何をすればいいのだろうか? そこでまずは、あなたのこれまで医師として培ってきた経験やスキルをリスト化してみよ う。

リストが作成できたのであれば、それを見ながらあなたがクリニックを開業した際に患者にアピールできる部分(いわゆる強みと呼ばれるもの)はどこなのかを冷静に判断して いくようにしよう。冷静にと書いたのには理由があり、自分のスキルや経験を過大評価や過小評価しすぎて しまうと好結果にならないので、冷静に判断をするように心がけてほしい。 できることなら、あなたのことをよく理解している人と一緒に判断をしてもらってもいい かもしれないだろう。

あなたの主観と他人の客観視で認識のずれがあれば、修正を行えばいいし、ほぼ一致し ているのであれば、あなたの自己分析に問題ないことがわかる。 あなたの経験とスキルの洗い出しが終わったのであれば、クリニックを開業する際の事業 計画など実際の行動の段階で、あなたの強みが最大限に活かされるように戦略を練ってい くことにしよう。

医師は専門性が強い職業であるから、必ず誰にでも自分が他の医師よりも強みだと思わ れる部分があるはずだ。それを見つけてこそ、あなたのクリニックはよりあなたの分身として進化することになる。

あなたのクリニックの売りはなにか


あなたの個人的な強みや特徴は洗い出したはずである。 次は患者が接することになる、あなたのクリニックの売りを考えていくことになる。 クリニックをどのように経営していくかという段階で必ず考えることになるのが、あなた のクリニックを既存の開業している地域のクリニックとどのようにして差別化して特徴を出していくかということになるだろう。

例えば、あなたの開業地域にたまたまあなたが専門としている分野の開業医が他の専門 分野と比較して少なかった場合には、地域の医療の充実を図るという目的で開業すること も、あなたのクリニックの1つの特徴にはなるだろう。 ただ、この場合には後々同じ専門分野のクリニックが一気に増加するなどの外的要因が加わった結果として特徴が大勢と混ざり薄まってしまう可能性は否めないだろう。
 

逆に、専門分野を活かせる地域はどこだろうかという想いを先行させて、開業する地域 をあなたの医療サービスが最も発揮できる地域を探すという方法もあるのではないだろう か。 医療サービスの特徴を決める段階で、スタッフが最低何人必要であるとか、看護師などの 専門職がどの程度必要か、初期投資でどの程度を予定しているかなども、自然と決定され ていくことになるので、この部分がぐらついてしまうと開業までのプロセスが怪しくなっ てしまう危険性があることを理解しておいてもらいたい。

クリニックを設立する地域や専門分野など、あなたが目指している医療サービスとクリ ニックの特徴が明確になることにより、融資などの資金調達をはじめ開業までには大活躍 することになるクリニックの事業計画書も作りやすくなってくるわけである。

あなたの理想のクリニックを思い描こう

思い描く理想のクリニックとは


あなたのクリニックの運営方針やサービスの特徴がまとまったのであれば、これまでに 決めたことを1つの形にしないといけない。 言い方はコンセプトや経営理念など様々あるだろうが、簡単に説明すれば、あなたの理想形のクリニックはどのようなものかということをリアルに思い描く行為であると考えれ ば、そこまで難しくないのではないだろうか。わざわざ資金が多額にかかる独立をしてクリニックを開業しようと考えるあなたには間 違いなく理想形のクリニックが存在するはずである。 その理想形がどのような物でも構わない。

今現在はとてもその理想形には遠いなと思うような大きな病院でも構わないし、留学や 学会で訪れた日本では考えられないような海外のクリニックでも構わない。とにかくクリニックの最高責任者として組織を動かしていくあなた自身に理想とするもの がなければ、次のステップアップの際にどのようにすればいいのか常に迷ってしまうことになる。その意味ではあなたの理想のクリニックはあなたがクリニックを運営していく中でのすべての基本とも言えるほど重要なものだと言えるかもしれない。

理想が有れば揺れることが無い

先程はあなたの理想とするクリニックを思い描くべきだと述べた。


ではここでは先程の補足として、理想のクリニックを描くことでどのような効果が予想さ れるかを少しだけ挙げてみようと思う。

人はそれぞれに考えがあるので、これから挙げることがすべての開業を目指す医師に当 てはまらないかもしれないが、1つでも自分に当てはまるかなと思ったのであれば、理想 のクリニックを思い描いておいて損はないだろう。

開業の時のクリニックの経営方針や購入すべき医療機器の判断材料になる土地や建物など最初からあるものを賃貸してクリニックにする場合には、建物の内部部 分は内装工事で変更できるので別として構造上どうしてもあなたの理想とかけ離れること を受け入れなければいけない場合もあるだろう。

だが、医療機器に関しては経営者のあなたの理想によってどのような医療機器を購入し たほうがより患者のためになり、あなたが理想とする医療サービスを提供できるかを判断 可能なはずである。理想のクリニックが描けてなければどうなるかは・・・おのずとわかるのではないだろうか。あなたが不安や迷ったときの指標となるすべての事業において、完全に当初の計画通りに進んで寸分の狂いもないという場合は ほとんどないと思われる。 まれにそのような幸運に恵まれる経営者も存在するのであろうが、経営者が考えていても 社会情勢が考えた事業計画の実現を阻むことがあるのは仕方がないことだろう。

このように予想外の状態にあなたが置かれたときに拠り所となるのが、あなたの理想の クリニックなのである。 目の前の事態に冷静さを失ってしまいパニックになっている心理状態ではさらにクリニッ クにダメージを与える判断をしないとも限らない。そのようなときには、まずはあなたの理想のクリニックを思い返し、あなたが開業を使 用と思った動機など、最初に作り上げたものを振り返ることが非常に重要になってくる。 開業段階でどのような形態でクリニックを作り上げるかなど、あなたは本当に頭をフル回 転させて悩んで自分の理念を作り上げ確立させたはずだ。 その苦しみぬいて出した結論は実際に直面して危機に間違いなくヒントを与えてくれる大 きな存在となるだろう。
 

スタッフや患者へのアピールポイントとなる

あなたは医師であるが、医師であるから病気にならないということはないだろう。 病気になれば当然あなたも病院に行くわけで、その時に経営者である医師とスタッフの温 度差を感じたクリニックもあるのではないだろうか。私は医師とスタッフの温度差があるクリニックも医師とスタッフも全員が同じ方向を向 いていることがわかるクリニックも接したことがある。 患者として治療後に満足感があるのは後者の方であることはあなたも経験しているのであ れば理解していることだろう。

 

理想のクリニックは医師1人で完成するものではない。 医師で経営者であるあなたも含めてスタッフ全員で理想を共有できてこそ初めて実現する ものなのだ。理想を共有しているという一体感は当然ながらクリニックの運営にも如実に現れるので 来院した患者へも波及することになる。 別に待合室に大きな字で書道家にクリニックの理想を書いて額に入れておくべきだとは言 わないが、診察券に小さく記載しておくなど、さりげなくアピールすることで患者への実際の対応と連動して効果が高くなるはずである。

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