クリニック開業取扱説明書【第4回】資金調達や事業計画書作成について

更新日:2017.05.17

融資に関わらず事業計画書作成は必須

現実的に動き出す計画書

これまでの開業するときの理念やコンセプト、理想のクリニック像などのあなたが開設 するクリニックとしての変わることが無い根源的なものが決定したのであれば、いよいよ その想いを現実的に書き起こす事業計画の作成に移行することになる。事業計画書は資金の融資を申し込む時には必ず必要になるものなので、あなたが融資を受けることを前提にしているならば、絶対に作らなくてはいけないものになると理解して おかなくてはならない大切なものである。


あなたが事業計画書まで作らなくても資金は融資受けなくても十分だし問題ないと思っ ているのであれば、簡単に例を挙げてみよう。
あなたがまるで知らない海外の国へ1か月という期間を決めて短期滞在をしたとする。 計画を立てないでその場で判断することが楽しいからということで、思いつくままに行動をして1か月が経過した。
さて、どうなるだろうか??予想外にお金が出ていっていないだろうか? 事業計画で最も重要なのは収入や支出などの資金の流れの予測である。 計画を立てないで思うがまま行動したということは資金の出入りなど考えず直感を信じて 行動したということだ。旅行のように直感を信じて行動したとしても、失うお金が数十万単位で終わるものであ ればまだいいかもしれないだろう。 だが、今のあなたが行おうとしているのは少なく見積もっても数千万円単位の投資が必要 とされるクリニックの運営という一大事業である。 それでも計画書を立てないでいいと思うのであれば、私としては開業はやめておいたほう がいいと猛烈に翻意を促すことだろう。


先にも述べたが、事業計画書などでしっかりと予測を立てていたとしても現実には予想外のことが起きる可能性の方が高いのが事業の困難な部分である。あなたが自ら事業計画書の作成を放棄して事業を危険にさらすことは雇用しているスタ ッフのためにも許されることではない。あなたは医師であり、事業計画を立てる専門家ではないので、事業計画書は融資を手伝ってくれる専門家とともに共同で作成していくという意識を持って専門家をガンガン頼って いくといいだろう。 不安なことはすべて専門家とともに解消しておくことを強くお勧めする。

事業計画書は優秀なシミュレーターである

事業計画書はあなたのクリニックが今後どのような計画で運営されていくかを判断する 材料として非常に大切な役割をもっているものと言える。 計画書の中身には成功してクリニックの業績が右肩上がりになる予測を行うことも必要で あるが、逆に最も厳しい状態に置かれた場合には資金面でどのような状態になるかも予測 しておく必要があるといえる。事業計画書をリアリティを持って作成することにより、単なる紙の書類があなたのクリ ニック専用の優秀な経営シミュレーターとしての役割も持つことになる。 最高の場合と最悪の場合を想定しておくことの必要性を述べたので、おおよそ理解できているかもしれないが、事業計画書は1つではなく、想定される事態を予測しつつ数パターン作っておくといいだろう。


実際の事態に直面したときにパニックにならないためにも予測はしておいて損はない。

事業計画作成時に忘れてはいけないこと

分不相応な投資は破滅を呼ぶ

私はクリニックの経営者である、あなたの理想のクリニックを思い浮かべようと何度も 述べているかとは思うが、理想を最初から完全に実現しようとして、クリニックの規模に 分不相応な初期投資を行ってしまわないような注意はしなくてはならない。 理想を追い求めすぎた結果、わずかな期間であなたのクリニックが立ち行かなくなってし まっては本末転倒というものだろう。事業計画作成時で頭が痛い部分として必要な資金として計画しているものは確実に予定 した金額が必要となってくるのに対し、患者数を予測して収入を立ててみても、患者の病 状や毎月(細かく分けて毎週でも問題ないだろうが、毎日の来院数まで予測することはやりすぎのように思える)来院数にはどうしてもばらつきが発生してしまうので、予測していた収入よりも多い月もあれば、少ない月が発生してくることもあることだ。
 

この場合に多めの予測をしていて少なくなってしまうと、資金面でどうしようかという 精神面での不安が押し寄せてくるわけだが、元々厳しい状況を標準として事業計画に組み 込んで資金面の準備をしておけば、多くなったときには融資された資金を早めに返済して もいいだろうし、新たな投資を行う事も可能と精神衛生上も非常にダメージが少なくな る。

よって開業当初の事業計画はおそらくはこの程度行くだろうという予測の少し下である 厳しめの予測でも成り立つ状況を想定して動いけ行けば想定外だとパニックになることも なく、冷静に対処をすることが可能になるだろう。経営者であるあなたが不安になってしまうとスタッフにも伝染してしまうので、あなた が笑顔を絶やさずクリニックで過ごせるように精神面の安定も考えて事業計画を策定する ようにしよう。

最重要項目は収入になる

収入は開業前には完全に市場を調査したうえでの予想額ということになる。 こればかりは現実にお試し開業をしてみて事業計画書を作成するわけにはいかないので仕 方ないのであるが、予想であってもあなた以外の人が事業計画書を見たときに納得できる ような説得力あるものが必要といえるだろう。

そのためには事業計画書の数値に信頼性を持たせることが重要になると思われる。

クリニックの収入を左右するのは来院する患者の数に直結するわけだが、患者数の予測は 診療圏調査というものでおおよその数を把握することになる。診療圏調査はあなたが行うものではなく、医療関連企業や住宅メーカーが提供してくれ るサービス(基本的に有料)があるので、あなたが信頼できる企業を利用して調査を行っ てほしい。

ただ、診療圏調査を依頼し結果を見た場合に予想外に多くの患者数が見込まれて資金的 に安全圏だと判断できたとしても注意はしておくべきだ。 理由は単純で診療圏調査もあくまで調査である以上は予測の範囲内でしかなく、調査で判 明した来院予想患者数よりも多くなることもあれば、少なくなることもあるからだ。 調査では患者の感情的な部分までは推し量ることが不可能なので、診療圏調査で判明した 患者数をベースとしながらも幅が上下に触れることは当然として予想を立てる必要があ る。


患者数以外にも収入に直結してくる物が患者1人あたりの診療単価とクリニックの診療 日数である。 診療単価を高くすれば収入予測は事業計画書では跳ね上がるわけだが、実際に設定した診 療単価で患者が本当に来院するかどうかをリアルに考えておかないと後でとんでもないこ とになるので注意をしておかなくてはいけない。

診療日数も多ければ収入が跳ね上がるだろうし、少なければ減少するが、あなたが自分 の生活のことも考えて本当にこの診療日数で大丈夫なのかと考えたうえで、あなたのクリ ニックの診療日数を決めてほしい。特に診療単価に関しては、経営するあなたの目線ばかりでなく、患者の立場になって診 療単価を冷静に見てみることを強くお勧めする。

「設定した診療単価で本当にこのクリニックに来院するのか?」 この質問を投げかけてみるのは、あなただけでなく開設後に勤務してくれる予定のスタッフにも質問してみて多くの意見を集約させるといいだろう。

資金調達と自己資金

自己資金が必要な物と融資で支払うもの比較

クリニックが実際に開業されるまでには、様々な費用を支払う必要がでてくるわけだ が、自己資金のみで開業できる場合は除いて、融資を受けてクリニックの開業をする場合 に、予算ごとに自己資金で支払うのか融資資金で支払うのかを見ていきたいと思う。 あくまで参考のレベルなので、下記のように必ずこの資金で支払わなければと頑固になる必要はない。

支払い時の交渉でいくらでも融通が利くこともあるからだ。
 

<開業費と運転資金>開業時に必要となる医師会の入会費用や開業時に必要となる名刺やパンフレットなどの 印刷物、文具などの消耗品は開業のために使用された費用なので。受けた融資資金から支 払うことになる。運転資金に関しても、自己資金ですべてを賄うためにはかなりの高額なものになるの で、融資された資金を利用してクリニックがうまく経営できるように使用していくことになる。
 

<クリニックを開業する物件の契約費用>あなたが自分で所有する建物を利用してクリニックを開業するのであれば問題ないだろ うが、物件を借りて開業する場合には、契約費用は自己資金で支払うことになるだろう。 そもそもどこで始めるのかが決定していなければ融資を申し込むための事業計画書の予測 が曖昧になり計画の具体性に欠けてしまうからである。 物件の値段は条件により幅があるので高額になることも予測して、ある程度の自己資金の 余裕が必要なことは言うまでもない。
 

<建物建築費用や内装工事費用>物件の契約料は自己資金で支払うことができただろうが、建物建築費用や内装工事の費 用となると金額の桁が異なってくるほど高額になり、自己資金ですべてを賄うことは困難 になってくるので、融資を受けた資金で支払うことになるだろう。自己資金でカバーできるという方に関しては、是非賄ってほしいと思う。融資という名 前の借金よりも利息も付かず返済の必要のない自己資金で賄えるほうが遥かに素晴らしい ことだ。

<クリニック内に設置する備品や医療機器>備品や医療機器は内装工事が終了して開業直前に設置することになるので、初期投資と いうことで融資資金を利用して支払うことになるだろう。 医療機器は大きなものや最新型のものであれば数千万することを考えると自己資金でとい う医師はあまりいないのではと思うが、備品というあまり高額でないものは可能であれば 自己資金で完結させたほうが私は得策であると考えているが最終的な判断を下すのは経営 者であるあなただ。

自己資金があるとついつい自己資金で支払えるものは自己資金でと思ってしまいがち だろうが、何かあった時のことを考慮して柔軟に対応できる程度の自己資金は残しておい たほうが安心できると思われる。

自己資金はどの程度の金額が必要か

自己資金はどの程度あれば安心できるか?という質問を受けることがある。 これは非常に答えにくい質問であると言える。 極論を言ってしまえば自己資金は何億だろうが何千億だろうがあればあるほどいいから だ。石油王のようにお金は無尽蔵にあると言われれば安心して事業計画が立てられるだろう。 それは少し方針がずれても資金力を背景にパワーゲームに持ち込むことが可能だからだ。

そもそも融資というのは借金なので、あなたがいずれ返済する必要のあるお金である。 それと比較すれば自己資金はすべてがあなたのお金であり、返済する必要もなければ期間 が経過して利息を請求されることもない。 ただ現実問題として考えると、自己資金を潤沢に準備できているという医師はあなたを含 めて少数派と言えるだろう。

クリニックに限らないが、融資を受ける際には自己資金が融資希望額の10%以上は必要 であるとされている。ただこれはあくまでも原則であるので、5000万円の融資希望に 対して500万円の自己資金がないので開業は諦めると安易に考える必要はない。

簡単に言ってしまえば、自己資金は開業に対してのあなたの熱意であると考えてみてはど うだろうか? 開業をするつもりがない人はそもそも資金を準備しようという想いすらわかないだろう が、開業を考えるあなたは人よりも考えて一生懸命に自己資金を準備した。 その熱意が最終的には融資をするか否かの担当者の心を動かす可能性があると思えば自己 資金の必要性が理解できるのではないだろうか。 以上が答えの無い自己資金の準備額のお話しである。 余談だが油田開発をして石油王になればそもそも開業しないかもしれないわけで石油王で ないからこそあなたは開業を目指しているとも言える。

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