クリニック開業取扱説明書【第5回】立地と物件について

ポイント
  1. クリニックの場所は駅前か住宅地か
  2. 診療圏調査を理解しておこう
  3. どのような物件でクリニックを始めるか

クリニックの場所は駅前か住宅地か

クリニックの立地にはどこで開業すれば必ず成功というものはありません。地域の特性もあれば、あなたのクリニックの診療科目とも密接に関わってきます。

全てを例示するとパニックになってますます迷いが深くなってしまうことを考慮して、ここでは人の流れがある駅前周辺と一定数の住民が常に存在する住宅地との比較を行い、そ れぞれのメリットとデメリットについて検証します。

このメリットとデメリットを判断しながら、あなた自身がどこを重要視しているのかということもじっくりと振り返ってみて下さい。 ここで完全に理想的な地域を求めると開業するのが困難になりかねないので、あなたの最低限のラインを決めて判断することが大切になってくるのを忘れない下さい。。

駅前クリニックのメリット

駅前にクリニックを開設することのメリットは、一番は人の流れが多くあるという事に尽きるでしょう。
さらには公共交通機関である駅を中心として都市計画を行っている都市が多いだけに必然的に人が集まりやすい施設が駅周辺に立地しているということも、当初はクリニックの患者になるつもりはなかった人が近くにあったので患者になるという潜在顧客を捕まえやすくなることも考えられます。 また駅を利用する人であれば、自宅とクリニックが離れていたとしても患者になる可能性があるのは大きな利点といえます。

住宅地クリニックのメリット

住宅地にクリニックを開設することのメリットは、駅前のように競合クリニックで溢れかえるという危険性が少ないということがあるでしょう。あなたがクリニックを開設する住宅地に子供のころから住んでいるようなら、近所の方々はあなたを小さなころから知っているのであなたを信頼して患者となってくれる可能性は非常に高くなります。 またこのような長い時間をかけて構築された信頼関係は、新しいクリニックが例え現れたとしても崩れる可能性は、あなたがよほどのことをしていない限りは極めて少ないと言えるでしょう。

政府が推奨している「かかりつけ医」制度を最大限に利用するには患者の近くに存在する住宅地でのクリニックが最適のようにも思えてきますがどうでしょうか。 付け加えておけば、家賃など毎月の固定費は間違いなく駅前よりは安くなります。

駅前クリニックのデメリット

駅前にクリニックを開設することのデメリットは人が多く来るというメリットの中に存在します。 人が流れて多く集まるという事実はあなただけでなく他のクリニックを開業しようと考えている医師も周知の事実であるから、当たり前のように競合クリニックが増加することが 考えられます。

診療科目が違うクリニックであれば、互いに患者がバッティングすることなく平和的に共存が可能でしょうが、診療科目が完全に重なってしまった場合には、どうしてもあなたのク リニックに来院しなければいけないという動機を患者に作らせる仕掛けが必要になってくるでしょう。また駅前は必然的に物件が高額になり、土地が手狭ということでクリニックが理想よりも狭くなってしまうことも考えなくてはならない現実があるでしょう。

住宅地クリニックのデメリット

住宅地のデメリットとしては、メリットにはあなたが住宅地の住人ならと記載しましたが、 逆に住宅地の住人でなければ毎日勤務するには公共交通機関が住宅地の細部にまで行き届いていることは少ないので、車など自らの移動手段で移動しなくてはいけないことになるでしょう。

スタッフも同じような状況であると仮定すれば、クリニック職員の駐車場をどう確保するかという問題も発生してくることになります。 また駅前と比較すると絶対的に人の目にクリニックの存在が触れる機会が少ないだけに、 住宅地以外の患者をどの程度期待できるのかという不確定要素も存在します。ただ潜在顧客に関してのアピールに関して、現在ならネット環境が発達しているのでクリ ニックのホームページを作成するなどネットを駆使してアピールすることは十分に可能なので、デメリットは十二分に跳ね返せると私は考えています。

診療圏調査を理解しておこう

診療圏調査ってそもそも何?

クリニック開設を目標にしている医師のあなたは知っていると思いますが、念のために説明を行っておきます。 そもそも診療圏調査というは、あなたの考える開業予定地で、来院患者数がどの程度考えられるかを概算で推計していく調査のことをいいます。 診療圏調査の元となっている統計調査には2つのものが存在しています。

1:国勢調査
5年に1回の頻度で実施されている統計調査です。 国勢調査は期間になるとテレビでも大々的に政府が広報を行うので知らないという人はまずいないと思われます。 調査時点においての人口について、性別や年齢、就業の状態や家族構成など多彩な視点から国内の人口動態が調査されています。 様々な目的で利用される国勢調査の結果ですが、診療圏調査では、患者数を推計するための分母となる診療圏内の人口を推定するために利用されています。

2:患者調査
3年に1回の頻度で実施されている統計調査です。 この調査はそもそも患者には無関係に近いものなので、医師でなければ知る機会はほとん どないものと思われます。 ある1日を抜き出して医療機関へ足を運んだ患者の性別、生年月日、患者の住所、入院・ 外来の種別、受療の状態、診療費等の支払い方法について調べたものをいいます。 診療圏調査では、患者数と受診の状況から得ることが可能な人口10万人あたりの外来受療率を活用して、あなたが開業を目指すクリニックの診療科目に訪れる患者の疾病から、 診療圏内の外来受診率を算出するために使用されています。 要するに、国勢調査で得られた診療圏内の人口に患者調査から得られる外来受療率をかけることで、開業予定の診療圏内に存在する患者数をおおよそ把握することが可能と言われていますが、診療圏調査ということになります。

診療圏調査は信用できるのか?

診療圏調査は指向性の全くない客観的なデータになりますが、わざわざ診療圏調査と名前を付けて行っているということは、ある目的のことでデータを収集しているということは理解できるでしょう。
診療圏調査をする情報の入力段階で診療圏の範囲の指定をどの程度にするか、競合と思わ れるクリニックの数の設定など、あなたが気になる情報を入力して調査を行うことになるので、数値を少し変化させることで調査結果が大きく変化するという可能性も否定できません。

あなたが診療圏調査を行うにあたって無料で行うのか有料で行うのかは、あなたの判断に委ねられますが、より正確に真摯に調査をしてもらいたい診療圏調査はある程度の費用を捻出しても、しっかりと正確性のあるデータを収集するようにしておくべきです。 診療圏調査は調査を行う人で大きく信用度が変化するものと思われるので、あなたのクリニックについて時間をかけてヒアリングをして互いに情報を共有できるような専門家を見つけることが、診療圏調査の信頼性を上げる最大の方法ではないでしょうか。

診療圏調査はソフトが市販されており、それを使用すれば簡単に計算できるということを 知っておけば、専門家との密な連携が重要だと感じるのではないでしょうか。

どのような物件でクリニックを始めるか

開業時の最大の出費

あなたがどの診療科目でクリニックを開業するかに関わらず、最も初期段階で資金を必要とするのが、クリニックの建物と内装に加え、医療サービスを充実させるための医療機 器ということになるでしょう。お金が無尽蔵にあるのであれば開業費用はなるべく抑えて開業したいとは思わないでしょうが、ほとんどの人は自己資金が豊富にあったとしても費用は節約したいと思うでしょう。

とは言うものの、現実問題として物件も医療機器もすべて事業計画書で予想していた金額よりも安くなるように済ませるのは、かなり困難だと言えます。金額が多少オーバーしても、あなたの理想を実現するために必要な環境が整っているならば投資した資本の回収はそこまで困難ではないでしょう。 ですが金額がオーバーする場合には、どの程度までを許容範囲としておくかを決めておかなければ、際限なく増加することになる危険性があることだけは注意して下さい。

ここからは、クリニック開業の際に選択する物件の種類を見ていきましょう。

医療ビルは認知度に有利

医師であるあなたであれば、より気が付いて街中で存在を見ているのではと思いますが、医療ビルというのはビルのテナントをクリニックのみに想定して建設されたものです。 元々クリニックができることを想定しているだけに、利用することは可能だが想定をしていない物件と比較すれば圧倒的に融通が利くことになることは間違いないです。
なかでも安心できる点として挙げられるのは多量の電気を必要とする医療機器を不安なく使用できることではないでしょうか。

さらに、建物のなかは全てクリニックなので競合しない診療科目のクリニックばかりであれば、クリニックが連携することでプチ総合病院のような医療サービスを患者に提供できるという点では、クリニックにも患者にも利点があると言えるでしょう。 あなたが後発で医療ビルにクリニック開業をしたとしても、すでに医療ビルの存在が地域の住民に認知されていれば、あなたのクリニックの認知度も当初からある一定のレベルにあるという点も嬉しい部分であると言えるでしょう。

独立した建物のクリニックは資金面で大丈夫か?

医療ビルがクリニックを顧客として想定しているので、融通が利くことは確かです。
しかし、あなたがもし既存の概念に捕らわれないクリニックを開業しようとした場合には、普天的な設備だけを用意している医療ビルでも物足りなさを感じることがあるでしょう。 その意味では独立してあなたのクリニックを建設して開業することが、最もあなたの理想を反映させることができる方法だと言えます。

ただ、建物を建設するには建設可能な広さの土地が必要であり、独立して開業しようという時点で実現をさせるのは、資金的な問題から苦戦することを理解しておくべきです。またクリニックを建設可能な広さの土地は駅前には皆無ということを考えると、どうしても場所は郊外になってしまいますが、そのあたりのメリットとデメリットをどう解釈するかも大切になってきます。

あなたが独立後、ある程度成功した後に完全な理想のクリニックを実現させる場合には安心できるでしょうが、独立直後に選択する方法としてはリスクが最も高いでしょう

駅前なら一般的なビルが妥当か

医療ビルでなくてもクリニックの開業は可能です。 あなたもたくさんのビルで開業しているクリニックを看板で見ているかと思います。 駅前のような土地が限られており、不動産の購入価格で資金がショートしかねないレベルで高額な場所の時には、既存のビルで開業することになるでしょう。

ただ医療ビルと比較して電気容量などでクリニックに適さない場合もあるので、あなたの診療科目と相談しつつ、開業した場合に不都合が生じないかを判断することが大切にな ります。 絶対にこの場所だと決めた場合には、このケースが開業のパターンの王道になるように思われます。

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