高藤悠子

グローバルに活躍するママ起業家の工夫とは~起業家だからこそできる、家庭と仕事のバランス設計~

高藤悠子さんは、バリバリのキャリアウーマンから出産を機に会社を辞め、起業されました。タイの在住経験を活かし、子どものキャリア教育や格差解消といった社会問題に目を向けて活動していらっしゃいます。地域密着でこぢんまりという、今までのママ起業家のイメージを覆すグローバル規模のビジネスを、どのようにやりくりされているのでしょうか。

はじめは起業なんて考えていなかった

― 起業に至るまでの経歴を教えてください。

高藤:基本的には起業するということは頭の中にはなくて、勤めている会社のために頑張るのが自分のスタイル、会社の成長が私の成長みたいな形で働いていたんです。

夫が自分の会社をやっていたので、夫から、「そこまで仕事が好きで働くのが楽しいのだったら、自分で会社をやったほうがいいんじゃないか」みたいな話は、都度都度言われていたんですね。子どもが生まれてからは特にそういわれていました。

― 企業の中で働いていることがキャリアとしては全然違和感もなくて、むしろバリバリと活躍されて。

高藤:頑張って結果を出すほど、オーナーからも認められてというのがうれしくて。毎日夢中になって仕事をしていました

でも、夫にそう言われるようになってだんだん自分の気持ちが変わってきて。

あとは、そのときタイにいたのですが、タイ人って自分でビジネスをすごく簡単に始めるんですよね。古着売ってみたりだとか、手芸で作ってネットで売ったりとか、ウィークエンドマーケットでお店出したりとか。

そういう、気軽に自分のビジネスをするというのが当たり前の環境にいたというのも、起業のハードルを低くした一つかもしれないですね。

― 他にもきっかけが?

高藤:それも一つなんですが、会社を辞めて1カ月後に日本に一時帰国をして、人材業界の重鎮と言われる方にごあいさつに行ったんです。

その時に、「高藤さん、今、グローバルの波が日本で来てるから」「あなたの実力でかつ日本でグローバルを対象としたマーケットだったら、絶対うまくいくよ」と言われて、なんだかそのときに、スイッチがカチッと入って。

それで主人に「私、日本で独立したい」と話をして、「じゃあみんなで帰ろう」と一家で帰国して、会社を立ち上げました。

ワーキングマザーの工夫

― ママ起業家として苦労された部分はありましたか。

高藤:子どもがいるので、どうしても時間的に働けないというのはあります。

仕事柄、人脈はあればあるほどいいので、いろんな勉強会やネットワーキングには行きたいんですけど、どうしても子どもがいると、なかなか家を空けられなくて。出張もなかなか行けないとか、結構もどかしい思いをする事もありますね。

でも、私の場合は、今だけだと思って、家族との時間も大切にする時期なんだ、と思うようにしています。

あと2年ぐらいすれば、子どもも自立すると思うので、「お母さん」って寄ってくる期間は思いのほか短いのではと思っていて。イベントなども我慢してでも、子どもとの時間をとりたいなと思っています。

― お子さんいらっしゃる方は、時間の制約があったりとかすると思うんですが、そこをカバーするような工夫は何かされていますか。

高藤:子どもがいて自分がママだっていうことを、むしろプラスにしてしまおうと、発想の転換は心がけています。

企業のイベントも事前に了承を取って子連れで参加した時には、多くの方に覚えて頂けて、子連れという事がプラスにもなるんだ、と実感しました。

あとはママ友つながりで、いろんなお仕事のお話をいただく事もあって。今回康子さん(大原康子さん:クリエイティブマムズリンク)にこの取材を紹介していただいた件もそうですけど。

そんな形で、私がワーキングマザーだというのをマイナスだけにとらえるのではなく、プラスに転換しようとはしています。子どもを仕事に巻き込むことも良くあります。

子どものキャリア教育の側面もある

― それはどうしてでしょう。

高藤 タイにいたときの話なのですが、タイはほんとに子どもにフレンドリーな国なんですね。私がビザの申請で入管まで行ったときに、その入管のオフィサーの子どもがパスポートにビザのスタンプを押していたんです。小学校1年生ぐらいの。

とても新鮮だと思いました。隣にお母さんはいるんですけど、本当にスタンプラリーみたいに普通に押していて。最初はビックリしたのですが、でも、これはこれでいいんだって思って、あまり抵抗がなくなったというか。これまで持っていた、「仕事の世界と子育ての世界は分けておくべき」という価値観がこの件で大きく変わりました。

― 面白いですね。

高藤:普通のビジネスパーソンだと、子どもから見たら親が働いていることがブラックボックスで、どんな仕事をしているのか、なかなか分かりにくくなっているように思います。。

親の仕事に子どもも巻き込んでいけば、親がどういう仕事をしているかを子供も知る事が出来ます。キャリア教育という観点でも、働くという事や、親が頑張っている事を見せておくのも悪くはないのかなと思っています。

― ママ起業家の方と、お仕事でつながっているということですが、周りの方はどのような方が多いですか。

高藤:私の周りのママ起業家の方は、上場するぞ、とか何十億目指すぞ、といった大きくスケールする事が目標のビジネスというわけではないように思います。ある程度、マーケット絞り込んで、ニッチなマーケットで、確実に勝っていこうみたいな方が多いですかね。

― 結構堅実でありながら戦略的と言いますか、女性ならではですかね。男性って結構夢掲げちゃって、撃沈することは多いらしいんですけど。

高藤:そうですね。確かに周りに数十億とか売り上げてる社長さんもいらっしゃるんですけど、やっぱり全然違うなと思います。男性と女性って。

― どのような点で?

高藤:ビジネスに対するスタンスとか。もちろん、女性経営者の方も戦略的に考えていたり、財務とかもしっかり考えたりとか、そういったところはあるんだけど。どちらかというと、男性の場合はビジネスがゲーム的、自分の夢と世界の変化を一致させて、何か大きいことをしたい、名前を残したいというようなところからスタートしている方が多いように思います

一方で女性の場合は、もうちょっと身のまわりの人をよくしたいとか、身近な生活上の視点とか、他者を良くしたい、という想いからビジネスをスタートしている人が多い印象があります。

― どちらも必要なものですよね。ただ今までは男性的なところに偏っていたので、これから、男性のなかなか担えないような部分もカバーしていく必要がありますね。

人材紹介ビジネスの3本柱とは?

― 今行っている事業内容について少し教えてください。

高藤:事業内容としては人材紹介のみなのですが、特徴として3つ掲げています。

1つ目はグローバルというところ。

日系企業がタイで苦労していたのを見ていたので、何とか役に立ちたいと思って独立したという部分があります。日系企業の海外展開に必要な、日本人や外国人をご紹介しますという、グローバル領域を中心に取り扱っています。

2つ目は、最近、エシカルファンドとか、ソーシャルインパクト投資のような、いい会社だったり、社会を変えるための事業に投資をしますよ、といった動きが金融の世界では出てきているので、その人材版になりたいと考えています。

いい会社に、いい人をご紹介することでその事業が伸びたら、社会が良くなる、という流れを作っていきたいと考えています。

3つ目は私たちの紹介のスタイルなのですが、スキルや経験ベースではなくて、企業のミッション、本当にこれをしたいという想いと、人材の「人生どうしたいか、次の職場でかなえたいものは何か」といった、想いだったり志の部分をマッチングさせることです。

その3つを軸にして展開しています。

― 企業や人材の思いや、人生どうしたいかというところに注力されている理由はありますか。

高藤:これまでのご紹介実績の成功例から考えると、この想いの部分がピッタリと重なる時ほど、入社後の活躍は飛躍的なものとなっていました。やっぱりご紹介の際に、企業の想いと人材の想いというのをしっかりと掘り下げて、マッチングするというのが一番効果的だったんじゃないかなと思いますね。あともう一つ見ているのが、お人柄です。

― 人柄って、見るのは結構難しいですよね。

高藤:難しいですね。

当社としても、絶対こうすれば、というのはないのですが、これまでの経験の中で何千人も見てきているので、その経験からタイプ分けをしてある程度は判断して、より適材適所となるように紹介先企業とのカルチャーフィットも考えてご紹介をしています。

日本とタイの環境の違い

― 日本でもタイでもバリバリお仕事されてきたと思うのですが、ビジネスの環境の違いは、どのように感じられていましたか。

高藤:まず、人材紹介業界で言うと、日本はもう競合が2万社ぐらいはあるので、かなり競争が激しくて、業界としても洗練されている部分があります。

でも、タイの人材紹介はまだまだ業界として未成熟というか。やはり日本ほどは洗練されていない、まだまだこれからという発展途上の状況でした。

― かつての日本もそうだったように、タイもこれからどんどん成長していくようなステージにきていますよね。

高藤:そうですね。

私自身も、日本であんまり景気がいいっていうのを見たことがないんですけど、タイはずっと経済が伸びている環境だったので、景気がいいってこういうことなんだというのは、すごく感じました。

同じ努力をしても、景気がいいぶん、1インプットしたら、アウトプットが5倍とか10倍になるので驚きました。

― 経済成長という面で日本との違いがある。

高藤:はい。その他には日本人って、起業なんて恐れ多いとか、いろんなリスクを考えたり、自分でビジネスをするなんて大変なんだろうという感覚を持っていますよね。

私も昔はそうだったんですけど。

でも、タイ人って基本的に、まずやってしまおうという人たちがすごく多いので、そういうマインドが違うところも大きいのかなと思います。

転職市場にも変化が出てきた

― 今後の目標がありましたらお聞かせください。

高藤:長期的な目標なんですけど、海外でもオフィスをつくって、今は日本市場にフォーカスしているんですけど、アジアとかアメリカとかでも、さっき言った3つの柱で人材紹介をやっていきたいです。

 

 

 

 

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著者プロフィール

高藤悠子

プロビティグローバルサーチ 代表高藤悠子 慶應義塾大学卒業後、新卒にてメーカーへ入社。海外営業部に配属。コンサルティング業界やMBAホルダーに特化した紹介会社へ転職し、外資系戦略コンサルティングファームや世界的IT企業、ベンチャー企業などへ若手からエグゼクティブレベルの人材を紹介。未経験・社内最年少ながら月間売上社内トップの成績を連続して達成する。 その後大手人材紹介会社、JACリクルートメントのタイ法人へ入社。執行役員として現地でスタートアップの段階から日系売上高第一位まで規模を拡大する事に貢献。述べ200名以上の海外就職、海外から日本への帰国の転職のサポートを行う。常に社内トップの成績を残す。2012年に日本へ帰国、国際ビジネス経験者/グローバルリーダー人材に特化したサーチ会社、プロビティ・グローバルサーチ株式会社を設立。