クリニック開業取扱説明書【第8回】法律関係や医療制度について

ポイント
  1. 開設時に必要な手続きと法律を理解しよう
  2. 保健所の立ち入り検査について
  3. 各種の公費負担医療制度を覚えておこう

開設時に必要な手続きと法律を理解しよう

いつでもどこでも開業できる

日本は医師であれば、いつでもどこでも開業ができます。
患者が選択するかどうかは別問題ですが、経験が少なくても開業をすることを制限されることはないということです。おもしろいことに、麻酔科以外であればあなたが内科医なのに開業したクリニックが外科であったとしても問題ありません。 自分の診療科目以外で開業する医師がいるかは不明ですが、結構自由に動けるようになっている制度になっているということです。

このような制度を自由開業医制と呼んでいます。

関係ある法律を知っておこう

医療法の8条には以下の文言が存在しているので紹介します。

「臨床研修等修了医師、臨床研修等修了歯科医師または助産師が診療所または助産所を開設したときは、開設後十日以内に診療所または助産所の所在地を都道府県知事に届け出な ければならない」

この法律の条文から医師が開業するには届け出が必要なことは理解できるでしょう。ですが、ここで注意をしてもらいたいのは開業して診察ができるようになるかだけであり、 患者にとっては大問題である”健康保険が使える医療機関であるかどうか”は関係ないということです。

では、届け出の次に何をしないといけないのでしょうか?
クリニックの開設の届け出を都道府県知事に行った後には、所轄の地方厚生局長か地方厚 生局都道府県事務所のどちらかに対して、健康保険法と国民健康保険法に基づく保険医療機関としての指定を申請しなければいけません。 申請後に保険医療機関としての指定を受けることができれば、あなたのクリニックはようやく患者の診察に対して保険請求ができることになるわけです。

あなたのクリニックが自由診療となっている医療行為をメインで行っていくのであれば保険医療機関の指定はそこまで重要な事ではないかもしれませんが、他のクリニックが保険医療で行っていることをメインで行うのであれば保険医療機関であるかどうかは、クリニ ックの死活問題ということになってきます。

保険医療機関として指定された後の診療報酬を、オンライン請求がうまくできているかどうかをテストすることも忘れることなく行うようにしましょう。 クリニックが保険医療機関として指定を受けた後、平均的に1年以内になっているようですが、新しく保険医療機関となったクリニックの責任者に対して新規指定時講習というものが開催されており、保険医療のルールについて講習を受けることになります。 この新規指定時講習は受講することが義務付けられているので、クリニックを休診してでも必ず受講することを忘れないようにしなければなりません。
開業段階ですべての保険医療のルールをすべて把握する機会はなかなかないと思われるので新規指定時講習に参加して知識を吸収しておくといいでしょう。

保健所の立ち入り検査について

立ち入り検査

医療法上の医療機関には保健所の立ち入り検査が行われます。 立ち入り検査の根拠となっているものは、医療法第24条の監督権と医療法第25条の立 入権ということになります。
検査の権限を持っている知事や市長はクリニックに検査を行う職員を医療監視員として指名しており、検査には医療監視員を主体として保健所の職員数名で行われることになります。

各保健所によっては運用が独自のものを採用している場合があるので、全国すべて同じというわけではないということを認識した上で、あなたがクリニックを開業する地域の保健所がどういった運用を行っているかを事前に確認するといいでしょう。 クリニックだけに限りませんが、公的機関が検査や調査を行う場合には担当の部署と仲良くしておいて損はありません。

無駄に敵対的になったところで、特別扱いがされるわけでもないので、とにかく協力的な態度で従う姿勢を見せておくことも建前上は必要でしょう。 検査の流れとしては、クリニック開設届け出時か事前の相談時に立ち入り検査の日程を調整したうえで、指定された日時に保健所の担当者が医療監視員を含めて2名ほどでクリニ ックを訪れて、30分前後をかけてクリニック内部を見て回って、指摘する項目を口頭であなたに伝えて終了するという流れになっています。

立ち入り検査時に問題がほとんどなければスムーズに進んでいくわけですが、指摘された 項目が多い場合には、数日後に文書で指導内容が送付され、改善を行うように求められる ことがあることを覚えておきましょう。開業時に保健所の立ち入り検査を受けた内容は、医療機関ごとに台帳として記録されており、クリニックが続く限りは同じ台帳によって保健所から指導を受けることになります。

保健所の権限は広い

知事や市長から指名される医療監視員は、医療施設の人員、清潔保持の状況、内部設 備、診療記録、帳簿などの事務書類などを検査して、その施設が清潔さを欠く場合、構造設備などが厚生労働省令に違反していたり、衛生上有害であったり保安上の危険性があると判断した場合には、使用することを禁止したり、禁止まではいかないまでも改善するように命令する権限を保持しています。

あなたのクリニックに入院可能なベッドが設置されていないのであれば、法律に細かい規則が記載されていないので、開業前の行政からのチェックという意味合いが強いといえ るでしょう。私が公的機関と仲良くしておいて損はないというのは、上記の法律に記載はないのに行政のチェックという慣例などが存在するからということが大きいです。

保健所の監督権というのは思っている以上に広く、クリニックの設備だけでなく医療法をはじめとするクリニックに適用される法律で決められている運営体制すべてに権限を持っています。その内容としては、カルテを記載してしっかりと保管をしているか、衛生面でも重要な医療廃棄物の処理体制は安全に行っているか、資格者の免許証を確認した証拠として記録 して残しているか、クリニックの安全体制などクリニック運営の大部分に及んでいます。 確認内容が入院施設のある場合と無い場合で追加して行われる検査もあるので、あなたのクリニックの形態を保健所の担当者に説明したうえで、しっかりと事前相談を行いましょう。

各種の公費負担医療制度を覚えておこう

公費負担制度

日本は国民皆保険制度の国なので、すべての国民の負担が重くないよう平等に医療を受けられるよう充実した体制となっています。 その弊害で社会保障費が増大しているという側面もあるわけですが、それは別問題です。
健康保険制度があるもの、それとは別として医療費を助成してくれる制度がいくつか存在しています。

すべてを紹介することは難しいので、ここではよく知られているものを紹介していきますが、あなたのクリニックの患者によってクリニックで指定を受ける必要があるものも見つかると思うので、公費負担があると理解したうえで必要性の判断は開業後に来院する患者 の数で判断を行ってもらいたいと思います。

主要制度の紹介

<労災保険指定>
労災は労働時間に起こった事故などに関して国が労働者の生活を補助するために行う保険給付制度です。
労働時間中に仕事ができないほどの怪我を負ったにもかかわらず、労働者には生活を保障される給与が支払われないのであれば、労働者は怪我をした瞬間に生活が破綻してしまいます。
また怪我をした労働者に給与を支払いたくない企業が解雇をしてしまう可能性もあるので、そのような不当な待遇差別が起こらないためにも労災の休業補償は大切なものです。労災の患者がメインのクリニックがあるのか?と言われるとないだろうと思いますが、地域性によっては怪我の発生確率の高い産業が密集している地域では労災保険指定のクリニ ックは地域の企業に重宝される存在になるかもしれません。労災保険指定の医療機関になるためには、地方厚生局から保険医療機関としての指定を受けていることが前提で、その後に労働局に申請して認定されることになります。

<生活保護法指定>
体調などの様々な要因で働くことが困難な人には生活保護制度で国家として生活の補償を行っています。
生活保護法を根拠とした診察は、福祉事務所に対して保護を申請して、医療扶助の決定を受けることができた患者(ここでは生活保護を受給している人のこと)に対して知事や市長が医療機関を指定して患者が受診するという形になっています。あなたのクリニックが指定された場合には、患者が福祉事務所から交付を受けて来院時に提出する医療券に基づいて診察を行うことになり、診察をした月の翌月に都道府県の支 払基金に請求書を提出して診療報酬の支払いを受けることになっています。
生活保護法指定の指定医療機関となるためには、福祉事務所に申請を行って指定され、 クリニックの待合スペースなど来院した人が見えるところに生活保護指定医療機関である ことを表示しないといけなくなります。

<原爆指定>
原爆援護法に基づく被爆者に対しては、原爆に起因する疾病に対しては全額を国が負担して治療の補助を行っています。
原爆に起因しないと判断された疾病に関しては、保険医療の自己負担割合分の金額の医療費が補助されています。
ただ被爆者であっても原爆指定を受けられていない人も存在しており、原爆指定と謳っているものの私などが指定の厳しさを見る限りでは、名前負けの感があることだけは否めない制度です。

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