角田 千佳

「不要なルールをなくしたい」。新しいスキルシェア「ANYTIMES」のビジョン

ポイント(この記事は4分で読み終わります)
  1. 長く考えたからいい答えが出るわけではない
  2. 不要なルールをなくしたい
  3. アメリカのビジネスを日本で実践する際の注意点
  4. シェアリングエコノミーが社会を変えていく

長く考えたからいい答えが出るわけではない

― まず、簡単な経歴を教えてください。

角田:大学卒業後は証券会社に就職し、株や債権、投資信託など、金融商品の営業に従事していました。その後IT企業に転職し、いろいろな企業さんのPRをお手伝いしたりしていました。株式会社エニタイムズを創業したのは2013年の5月です。ただ、本格的に起業を意識しはじめたのは、創業のわずか1ヶ月ほど前のことです。

― なぜ起業に踏み切ったのですか?

角田:実は、子どもの頃から夢がありまして。それは、世界の開発途上国の開発援助をすることです。具体的には、持続可能なまちづくりをしたいと考えていました。それで国連に行こうと思っていて。ただ、国連は世界のエリートたちが集まるところで、官僚的な組織です。ですので、まずは実社会で勉強したいと思い、一般企業に就職しました。金融、営業、PRなどを経験したのは、ビジネスをいろいろな視点から見るためでもあります。

その後、大学院に向けて勉強をはじめていたとき、実際に国際機関で働いている方のお話を伺う機会がありました。そのときのお話で、グローバルな仕事はできるけれど、柔軟に動くことは難しいと痛感して……。そのときから、起業という選択を考えるようになりました。より柔軟に活動するためには、国連ではなく、自らのビジネスとして開発援助や街づくりに携わればいいのでは、と思うようになったのです。

ただし、海外にリレーションもなければノウハウも経験もない。そして自分の身の回りにもたくさんの社会課題がある。そこで、まずは日本の社会問題を解決すべく、身近なところから街づくりにチャレンジすることにしました。

― もともと抱いていた目的に向かうための起業なのですね。

角田:何事も、長く考えたからいい答が出るわけではないですよね。状況に応じて、どのようなロードマップを描くかが大事だと思います。より早く自分のアイデアを形にする方法を考えたとき、私の場合、起業だったのです。

不要なルールをなくしたい

― 次に、事業内容について教えてください。

角田:提供しているサービス「ANYTIMES」は、家具の組み立て、掃除や料理、英会話レッスンなど日常の用事を依頼したい人と、空いた時間で働きたい人を結びつけるご近所の助け合いサービスです。いわゆるスキルのシェアですね。ANYTIMESのプラットフォーム上では、依頼したい人と空き時間を有効活用したい人がマッチングし、ユーザーはカンタンに依頼・請負が可能です。もちろん、サービス内での決済やお互いの評価も可能です。

とくにこの“相互評価”を重視しております。お互いに評価しなければ、サービスが完了しません。通常のサービスですと、仕事提供者に対してのみ評価されますが、依頼者に対しても同じように評価されるという仕組みです。その理由は、仕事提供者・依頼者ともにフラットな関係を構築したいと考えているからです。そして、私たちは「働き方を変えていきたい」と考えています。

働き方が変わるとライフスタイルも変わります。私たちが目指しているのは、社会の枠や固定観念にとらわれずに働くことのできるプラットフォームになることです。いつでも、どんな場所でも、仕事ができる世界を創りたい、と。

― 「働き方を変える」とのことですが、現状の働き方にはどのような問題があるとお考えでしょうか?

角田:様々な側面からの話があると思いますが、特に私が感じている課題が2つあります。

ひとつは「不要なルール」です。もちろん必要なルールは組織ごとに色々あると思いますが、明らかに理不尽である、文化として醸成されてしまった悪しき暗黙のルールの多さに驚き、疑問を感じていました。

もうひとつは、「固定観念の押し付け」です。私自身も、大手証券会社からIT企業へと転職したとき、周囲の人から反対されたり、「ドロップアウトした」という感じで言われていました。中身をよく知る前に、企業の大きさや業種への固定観念によって、否定したり、他人にそれを押し付けようとしてしまうのはとても残念なことだと思います。

その結果どうなるのか。不満のある仕事を愚痴をこぼしながら続け、自分で自分を苦しめてしまうことになると思います。
 
― 事業の着想についてはいかがですか?

角田:実は、私はよく「便利屋さん」を利用していました。家具の組み立てや電球の取り付けなどですね。一人暮らしをはじめたとき、自分だけではできないことがたくさんありましたので。

ただ、簡単な仕事であれば、近所の人と協力してできるのではと考え、サービスの着想に結びつきました。

オフラインサービスであることの強み

― ANYTIMESならではの強みはどこにありますか?

角田:オフラインで提供するサービスであることです。オンライン上のみで行うスキルシェアのサービスは多くなってきましたが、オフライン型のものはほとんどありません。そして、そのオフラインで会うからこそ、地域の「ゆるいつながり」が醸成されていく。そこが強みになっていると思います。

― 「オフライン」や「個人間」にこだわっている理由はありますか?

角田:地域のゆるいつながりや安心感を醸成するには、やはり、直接顔を合わせることは重要にもなると考えているからです。

また、もちろん、オンラインでは解決できない悩みにフォーカスしているということもあります。たとえば、買い物補助などのサービスはオンラインでは完結できません。そういったシェアサービスを提供するために、オフラインにこだわっています。

アメリカのビジネスを日本で実践する際の注意点

― スキルシェア型のサービスはどんどん増えていますね。

角田:とても素晴らしいことだと思います。誰かと何かを共有する、いわゆるシェアリングエコノミーが拡大すれば、お互いが協力する文化が生まれます。それはまさに、精神的な豊かさを充足させるきっかけになるのではないでしょうか。もちろん競合になる企業もあるかもしれませんが、まずは、シェアリングエコノミーを普及させなければなりません。そのため、私自身もシェアリングエコノミー協会の理事を務めるなどの活動をしています。

― 日本でシェアリングエコノミーを普及させるにあたり、注力されていることはありますか?

角田:地域と連携を重視しています。たとえば地方自治体さんと提携したり、あるいは地方の企業や団体と組んで活動したりですね。勉強会やイベントも積極的に行っています。講演やワークショップの依頼についても、基本的には断りません。なるべく参加させていただくということをポリシーとしています。全国的な普及はまだまだこれからですが、少しずつ、広がっているのを感じています。

シェアリングエコノミーが社会を変えていく

― シェアリングエコノミーの普及によって、今後、社会はどのように変わっていくとお考えですか?

角田:なかには、経済効果が縮小していくのではと懸念している方もいるようです。しかし、私は逆だと思います。眠っていた遊休資産を活用し、今まで目に見えていなかった「精神的な豊かさ」を経済活動とすることで経済活性化につながると考えております。

たとえば、統計上は「非労働力」とされているアクティブシニアや専業主婦の方なども、積極的に働けるのがシェアリングエコノミーの仕組みです。ですので、経済効果も期待できるのではないでしょうか。また、多様な働き方を生み出せるのも、シェアリングエコノミーの強みですね。個々人のスキルが仕事になり、収入を得ることができる。そういった多様な働き方が“あたり前”になるといいですよね。

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著者プロフィール

角田 千佳

慶應義塾大学法学部政治学科卒業。新卒で野村證券に入社し、その後IT企業を経て、 ”豊富な幸せの尺度を持った社会の実現”を目指し、 2013年に株式会社エニタイムズを創業。 同年末に、日常のちょっとしたお困りごとを簡単に依頼・請負できるサービス「ANYTIMES」をリリース。