未経験からヘルスケア分野で起業! 未開拓市場に挑戦する理由とは

更新日:2017.06.15

対談の内容

起業家として“法人向けリラクゼーション”事業を展開しつつ、研究者として大学で教鞭をとられている新井氏。そんな新井氏は、大学での活動がビジネスにもプラスの効果をもたらすと話します。日本ではまだ馴染みの薄い分野に挑戦する意義と、それをどうやって周知・拡大していくのか。お話を伺いました。

ビジネススクールを経て起業へ

― まずはご経歴から教えてください。

新井:明治大学の商学部を卒業後、国際証券(現 三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社しました。当時は就職氷河期ということもあり、大変な時期でしたね。そこでは営業、マーケティング、営業企画、人事などを経験しました。ただ、人材研修部に配属されたとき、経験がまったくないなかで人を判別することには限界があると感じました。それからビジネススクールを探しはじめ、夜間にて、明治大学に入学することになります。

その後、会社がリストラを行うことになり、リストラの原案を手伝い、退職を申し出ました。ビジネススクール在学中に準備をし、そのまま起業したかたちになります。仕事をしながらでしたので、かなり苦労しましたね。

― 最近では、企業経験を経ないまま起業する人も増えていますね。

新井:そもそも僕は、起業そのものを推奨していません。精神的に追い詰められる場面も多く、苦しい日々を過ごさなければならないためです。その上で、まずは大企業に就職した方がいいと思います。学べることも多いですし。たとえば何百人の社員を動かしたり、海外で仕事をしたり。あるいは、研修としてビジネススクールに行かせてもらえることもあります。大企業でこれ以上は学ぶことがないという状態になってから、改めて起業すればいい。

ビジネススクールに関しても、課長クラス以上になってから行った方が、学びが多いと思います。もちろん、個人事業主やベンチャー経営を経験してからでもいいですよね。社会人経験がないと、授業の内容が腑に落ちないと思います。

大企業で学ぶことの意義

― 起業のタイミングも、企業で学んでからがベストなのでしょうか? 

新井:大学あがりですと人脈も少ないですよね。ネットワークも不十分です。組織の理屈や商品開発の知識も乏しい。そのままではかなり苦労すると思います。その点、ある程度の経験があった方が有利ですよね。もちろん、経験がないからこそ大胆に行動できることもあります。しかし、ビジネスを短期間で大きくするにはやはり、組織の理屈や論理をわかったうえで起業した方がいいと思います。会社にいればお金も貯まりますし。

― 企業にいるときにやっておくべきことはありますか?

新井:機会が与えられる人というのは、成績が飛び抜けているものです。たとえば三菱には7000人の従業員がいて、全国130箇所に支店がありました。各年次、総合職で200人ほど入社してくるわけです。そのなかで、みんなが本社や花形の投資銀行を希望します。最初は現場からのスタートなので、結果を出さなければ異動させてもらえません。まずは、徹底的に努力することが求められます。

営業成績が良く、簿記やTOEICなど必要な資格を取得していれば、チャンスが与えられる可能性もありますよね。中長期的な視点をもって、やるべきことを粛々とこなしていくことが大切なのではないでしょうか。

法人向けリラクゼーションとは

― 御社の事業内容について教えてください。

新井:2010年に、法人向けのリラクゼーションルームの受託やセラピスト派遣を行う、株式会社VOYAGEを立ち上げました。現在は8期目になります。従業員は全部で11人です。新入社員も入り、少しずつ成長しています。オフィスリラクゼーションに加え、健康経営の優良法人認定を受けたり、東京都の協会健保で健康優良企業法人一号を受けたり、あるいはおもてなし規格認証、女性の活躍推進宣言などもしています。セラピストは女性のみです。

サービスの特徴としては、『VOYAGEパーソナルノート』というクラウドカルテを使用していることが挙げられます。担当が変わってもスムーズにカルテを引き継げるため、利便性の向上につながっています。もちろんお客様にとっても安心して受けて頂けます。

― 『クラウドカルテ』は初期の段階から導入されていたのですか?

新井:いえ、実装したのは創業後3年ほど経ってからです。当時はまだクラウドサービスが不十分で、データを蓄積できるサービスもほとんどありませんでした。その後、アマゾンなどがサービスを展開し、実装できるようになりました。

その他のサービスとしては、社内巡回ハンドマッサージやストレッチ講座も好評をいただいています。また、利用企業に提出している『オフィスレポート』によって、フィードバックを返す工夫もしています。きちんとデータを残しておけば、健康診断では分からない心の悩みなども顕在化していきます。ストレスチェック制度が義務化されたこともあり、今後さらに求められるシーンも増えていくのではないでしょうか。

― 日本ではあまり馴染みのないサービスということもあり、各企業の担当者を説得するのは大変だったのではないですか?

新井:それこそ最初は笑われました。「企業内でマッサージ? 何を言ってるんですか」、と。しかも、創業して1年後に東日本大震災が発生し、福利厚生としてマッサージルームやリラクゼーションサービスを提供するという発想そのものが下火になってしまいました。

しかし、2014年~15年ごろにかけ、IT企業大手が社内マッサージを取り入れていることが知られるようになり、少しずつ、普及していきました。とくにゲームやメディアなどの事業を行う会社さん多いですね。もちろん企業の業績が回復してきたということもありますが、ストレスチェック制度の導入や健康経営への意識が高まるなど、「社員の健康管理は企業の責任である」という認識が広まってきた結果かと思います。

法整備が追いついていない分野に挑戦

― ビジネスの着想およびきっかけについて教えてください。

新井:証券会社にいたとき、産業分類や上場の歴史について学びました。たとえば任天堂はもともと花札の会社でしたので、上場できませんでした。しかし、ゲームが流行した結果、上場できるようになりましたよね。つまり、社会の認識が変わると世の中から認められるようになる。かつては認められなかったものが、認められるようになるということです。そこで、起業するならまだ認知度が低くまだ認められていないものの方がいいのでは、と考えていたのです。

それで思いついたのが、リラクゼーションでした。リラクゼーションというのは法律上、厳密には違法です。「身体に圧を感じる行為はあん摩マッサージ師以外はやってはいけない」という判決が最高裁から出ていますので。

しかし現実にはたくさんある。これは、法律が追いついていない証拠です。民泊やUberのような配車サービスも、法律が追いついていないために問題になっていますよね。フィンテックなども同様です。

― そのような分野において規制緩和が行われれば、それがビジネスチャンスになるということでしょうか?

新井:産業史を見るとわかりますが、オイルショックのとき「石油の次は電気自動車だ!」と言われ、電気自動車の会社がたくさん立ち上がりました。しかし、残っている会社はほとんどありません。タイミングが悪かったのです。

健康経営という発想も、将来的には間違いなく求められます。生産年齢人口が減り、職場と健康の問題は考えざるを得なくなりますので。ただ、ビジネススクールの先生にも言われましたが、「いつ来るかわからない」のが実情です。

では、どうすればいいのか。大切なのは生き残ることです。どんなに大変でも、まずは生き残る。そのうええ、波が来たときにきちんと対応できるようにする。そのために、サービス内容も拡充しつつ、ここまで来ています。

― 生き残るための戦略は、しっかり考えておかないといけませんね。

新井:市場の未来を正確に予想することは誰にもできません。日本人は退路を断って行動するのが好きなようですが、生き残れなければ意味がないのです。会社として成り立たせるために、そのあたりも考慮しておくことが大切だと思います。

経営学修士という資産を活用して

― ヘルスケアに着目された理由についてはいかがですか?

新井:そもそもヘルスケアの領域は特殊です。人体に影響を与える可能性が高いため、その他の事業とは性質が大きく異なります。そのような事業で重要なのは何か。僕は「エビデンス」だと考えています。つまり、科学的な根拠です。ですので、数年間はエビデンスをしっかりとためていくことを意識していました。施術前後の数値を、医療機器を使い測定し、オフィスにおけるリラクゼーション等の効能について学会で発表するなどの活動もしています。

そもそも個人で考えたことの多くは、過去に研究されているものです。学会誌や論文を読めば、どのような経緯でエビデンスが蓄積されているのかも分かります。ある意味において、学術論文も事業のネタになるかもしれませんね。

※マッサージルームは、都立文京盲学校への紹介&連携を行い、支援しています。

株式会社VOYAGE
http://voyage.tokyo.jp/

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プロフィール

新井卓二

2000年に明治大学商学部を卒業後、国際証券(現三菱UFJ・モルガンスタンレー証券)に10年勤務。明治大学ビジネススクール在学中に退職。2011年に株式会社VOYAGEを創業。代表取締役に就任。法人向けリラクゼーションの提供や、企業内リラクゼーションルームの設置を提案。「健康経営」の社会的認知度向上や導入促進も行う。経済産業省地域ヘルスケアビジネス創出アクセラレーター。山野美容芸術短期大学非常勤講師。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。


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