現場の声をサービスに!ニッチな需要を巧みに取り込む「処方薬ドットコム」

更新日:2017.06.15

対談の内容

普段、私たちが何気なく服用している医療用医薬品(いわゆる処方薬)。そんな医療用医薬品を取り扱う医師や薬剤師は、仕事の中で、どのような情報を求めているのでしょうか。小泉氏が手がけている「処方薬ドットコム」は、そのような医療従事者ニーズに応える検索性・閲覧性に優れた専門サイトです。立ち上げの経緯や背景など、幅広くお話を伺いました。

後発医薬品(いわゆるジェネリック医薬品)に着目

― まずはご経歴から教えてください。

小泉:薬科大学を卒業後、病院、ドラッグストア、調剤薬局と勤務してきました。私が薬科大学を卒業したのは、薬科大学(あるいは薬学部)が4年制のときなので、その後の修養の為に、医療関係者の学会等で研修を続けていました。

ジェネリック医薬品については、母校の緒方宏泰 明治薬科大学名誉教授の講義を卒業後も受け、学会の資料等も確認していました。今40兆円を超えた国民医療費を抑える為の一つの方法としてジェネリック医薬品の普及率を上げることが求められています。

ジェネリック医薬品は、品質や安定供給や情報提供に課題があると言われています。あるとき、この課題について、医療関係者の学会のワークショップで調査したことがあります。例えば、ジェネリック医薬品のガイドラインは、ブランド医薬品にも勿論該当するのですがその認知度や、インタビューフォームという情報提供書を確認しているかを、医師や薬剤師にアンケート調査しました。すると、5割も知りませんでした。品質情報検討会の活動も2割しか知りませんでした。その原因をさらに調べると、仮説として忙しい医療関係者向けのサイトがないのではないか、ということに気付いたのが起業のきっかけです。

調剤薬局に勤務する中で、患者さんが良く知らないでジェネリック医薬品を断る機会に遭遇すると、退職後年金が一定になる中で、医療費が増え、介護費もかかるようになると、一体どうやって生活していくのか疑問になります。いずれ生活費を圧迫し自殺の原因になるのではないかと、いち現場薬剤師として憂います。

繰り返しますが、全てではありませんが、ブランド医薬品の剤形変更体(OD錠、細粒、シロップ、ゼリー錠等)も、ジェネリック医薬品と同じ溶質性試験や生物学的同等性試験なる試験等を経て承認されています。そういった試験で、十分効果のある薬を開発製造できます。剤形変更体は患者さんの年齢や、疾患の症状や重症度等を見て、薬物治療を続けてもらえるように製薬メーカーが開発製造した薬です。ジェネリック医薬品だとさらに剤形が増えることがありますが、ブランド医薬品と同じように開発製造されているにも関わらず、ジェネリック医薬品は受け入れてもらえないのは不可解です(勿論、こういった事実を知らない問題だけではありませんが)。効果について心配する意見も勿論聞きますが、安易かもしれませんが、例えば、普及率が一番高いのは沖縄県(80%以上)ですが、特に女性は最も長寿(86歳以上)です。これは効いている証拠にはならないでしょうか?

医療用医薬品の情報は膨大なので、ジェネリック医薬品をテーマにすることは避けたい気持ちがありましたが、やらないとこの問題はずっと残るし、いずれワークショップ等一緒に活動してきた先生方も引退するし、今やらないと私も2度とアプローチできないと考え実行することにしました(上手くいかなかったら、別のアプローチが必要かもしれません)。法政大学大学院では、実現性を考える中で、知財戦略に詳しい経営戦略論の玄場公規教授に師事しました。

― 薬学に興味を持たれたのはなぜですか?

小泉:元々別の大学の工学部で遺伝子について研究していました。そのとき、大学院に進んで研究者になるか悩んだ末に、直接患者さんの治療に貢献したいと薬学部へ入り直して薬剤師になりました。

そもそも医療関係者の学会に所属した1つの理由としては、英語の医学論文を読めるようにしたかったことがあります。今EBM(Evidence-based-medcineの略)という科学的根拠に基づいた医療が注目されています。そのEBMを学ぶには、医学論文の解釈が必須だからです。新薬について、効果は既存の薬と顕著な差があるのか、メーカー資料や医学論文は偏りがないか、主要なエンドポイントに注目しているか、既存薬にない利点はどこか、経営の点で採用薬を絞る必要がある病院なら本当に採用する必要があるか、そういった点を医学論文から学びます。これは、勤務中は勉強するのが難しいので、外の研修会等で学び注目してきたことです。

ジェネリック医薬品についても海外の医学論文が多数あります。米国ではハッチワックスマン法がつくられた後、ジェネリック医薬品が増えました。欧米では国によりますが、現在日本よりは普及率が高い国が多かったと思います。もし大きな問題があれば、訴訟社会の欧米では集団訴訟になると思いますが、その話題は聞いたことがありません。日本のジェネリック医薬品の承認基準は、溶出性試験、人での生物学的同等性試験、加速度試験、実生産バリデーションの文書化等、以前より高まっています。日本でも安心して使用してもらえるのではないでしょうか?

医療用医薬品を中心とした医療情報提供サービス

― 次に、御社の事業内容について教えてください。

小泉:忙しい医療関係者向けの、医療用医薬品を中心とした医療情報提供サービスを展開します。会社の登記は2017年4月にしたばかりです。取材頂き大変ありがたいのですが、まだモノづくり段階です。

ジェネリック医薬品には、価格だけでなく、添加物や印字や大きさ等の改善、剤形工夫、規格の変更等さまざまな製剤工夫点があります。それは、患者さんに間違いなく服用してもらう、また服用しやすくする等の改善です。現在はブランド医薬品メーカーもジェネリック医薬品を開発製造する時代です。ブランド医薬品だと思っていた薬がジェネリック医薬品である場合もあります。ジェネリック医薬品メーカーだと思っていたら、ブランド医薬品を開発製造していることもあります。小規模のジェネリック医薬品メーカーが心配なら、大手のジェネリック医薬品メーカーの薬、あるいは、ブランド医薬品メーカーが開発製造販売するジェネリック医薬品を選べば良いではないですか。そういったことを一覧検索サイトを構築し、伝えるサービスを考えています。具体的な掲載項目は、大きさ、印字、色、添加物、生物学的同等性試験結果等を考えています。

― 起業前にはどのような準備をされていましたか?

小泉:起業前に、法政大学大学院で実現性を研究調査しました。このテーマは情報の粘着性が関係しているようです。まず既存サイトを調べると、忙しい医療関係者に使いやすいサイトは見受けられませんでした。次に、業界の規制や、インターネット上の著作権も確認しました。そして、実行可能と判断し、特許申請、商標申請しサイトの構築を開始しました。

市場を調べると、大手のブランド医薬品メーカーの売上は年1兆円を越えます。他方大手のジェネリック医薬品メーカーの売上は年1,000億円程度で10倍の差があります。販管費も然りです。医療関係者の医療情報の入手先としてインターネットは途上にあります。これからインターネットでの情報提供が進む期待も込め、ブランド医薬品ほどではありませんが、販管費のごく一部を狙う予定です。政府は2020年までに80%を目標にしていると思いますが、上限はあるとは思いますが、もう少し上がる、上げないといけないと考えています。当社のサイトでは、勿論ブランド医薬品のデータも同じ基準で掲載します。すると、安心してもらえるのではないかと思います。

薬剤師を中心とした医療関係者に情報提供を

― ご自身の経験と現場の課題をサービスとして具体化されたのですね。

小泉: これまで指導頂いた薬剤師の先生方へのヒアリングや、「患者指向で考えるジェネリック医薬品選びのヒント網岡克雄著」等の参考書を拝見し、特にジェネリック医薬品だからこそ伝えるべき情報があると感じました。

繰り返しますが、例えば、医療用医薬品全般的には、規格や剤形が増えた、添加物が改良された。内服薬では、錠剤に医薬品名が印字された。点眼薬や点鼻薬では、常温で保存できるようになった、注意書きが大きく見やすくなった、残薬が確認できるようになった、滑り止めが付いた等の製剤工夫点があります。安いだけでない、こういった製剤工夫点を、医療関係者を介し、患者さんに伝えられれば、もっと普及するのではないかと思っています。

― ターゲットとしては全国の薬剤師さんになりますか?

小泉:厚生労働省の資料によると、全国に約30万人の薬剤師がいるとされています。メインターゲットはその方々になります。勿論、医師や歯科医師、看護師・準看護師の方々等、幅広い医療従事者の方にも見てもらいたいですね。使い方としても、単純に薬を選ぶシーンだけでなく、患者さんへの情報提供にも活用できるようにしたいと思います。いわゆる情報の見える化です。医療関係者を介し、ブランド医薬品と同等で、さらに工夫があることが伝われば、患者さんにとっては安心・安全を得られることにもなりますので。そう考えると、30万人の薬剤師だけでなく、さらに30万人の医師、10万人の歯科医師、150万人の看護師・准看護師も加わりますので、トータル220万人の方が対象になる計算になります。

地道な情報収集と入力、そして確認

― サイト立ち上げにあたり、とくに苦労された点はどのあたりですか?

小泉:やはり、情報の収集と入力作業です。入力だけでなく、確認作業にも力を入れなければなりません。およそ18,000の医薬品があるのですが、現段階で登録しているのは4,500ほど。夏ぐらいまでには1万を超える予定です。近日「処方薬ドットコム」で検索できるようになります(医療関係者向け、無料登録制)。

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