忘れてはいけないオペレーションづくり

更新日:2017.08.10

見落としていませんか?

これから起業される皆様。

皆様の99%は営業に自信を持っていらっしゃるかと思います。
また、一定のスキルを持った業種で起業される方も多いことでしょう。

実際にどのようなセミナーを見ても、起業家向けの本を読んでも重要なのは「集客力」と「商品力」だと書かれています。
これは間違いのない事実だと思います。
がしかし、もう一つ見落としてはいけないポイントがあります。

それは「業務運営体制」です。
言い換えれば、日々の「オペレーション」づくりとでも言いましょうか、
受注した業務を一定の品質で確実に納期内にお客様に届けるキャパシティづくりです。

私の本職は「公認会計士」です。
あまり知られていない事実だと思うのですが、主として会計業務を中心として、
日々のオペレーションが正確かつ確実に回る体制になっているか確かめることも業務の範囲に含まれています。
そんな業務を「公認会計士」として17年間続けてきた私から
「オペレーション」づくりの大切さについて皆様にシェアさせていただきたいと思います。

1.受注しすぎて倒産?

これは私が実際に遭遇した例なのです。業種は製造業です。
その会社は集客力があまりに凄くて、自社のキャパシティを超えて受注してしまった結果倒産してしまいました

お客様が沢山ついたのに倒産とはこれ如何に?という疑問を持たれるかもしれませんが、カラクリはこういったことです。
製造業であれば、大きく分けるとビジネスモデルは以下の2パターンに分かれます。

① お客様からまず引き合いがあって、オーダーメイドでお客様に対して製品を製造するパターン
これは、個別受注生産といいます。建築業やITベンダーなどもこのパターンに属します。

② 予め見込みで製品をつくって在庫しておき、在庫した中からお客様に販売していくパターン
これは、見込生産といいます。見方によっては、飲食業のランチタイムに提供されるメニューもこれに該当しますね。

で、倒産してしまった会社のビジネスモデルは②のパターンでした。
たくさん受注できたのはいいのですが、在庫を超える受注をしてしまい、不足分について生産能力が追い付かなかったばかりか、
そもそも原材料を仕入れる資金が不足してしまい、お客様に製品を提供することができず倒産してしまったというケースです


ちなみに、何年か前に「スカスカおせち事件」という事件が発生してしまったのは記憶にあるでしょうか?
詳細をここで記述するのは憚れるので、「スカスカ おせち」で検索してみてください。

ネット上の記事なので、どこまで真実なのかは分かりませんが、
商品供給能力を超えて受注してしまった結果、大炎上が起きてしまったのは事実として残っています。

2.とあるジンギスカン屋の話

私は当時北海道に在住していたのですが、最近新しいジンギスカンチェーンが出来たということで、
当時付き合っていた彼女と何気なく入ってみました。(北海道ではジンギスカンが名物なのです。)

確かに、雰囲気のあるお店で、値段もリーズナブルで、お肉もそこそこ美味しく、満足して出てきたことを今でも覚えています。
店内もそこそこ人が入っていて繁盛している雰囲気でした。

そんなある日、そのお店がテレビの取材を受けることになり、何気にテレビ番組で放送されているのを見てみました。
そして、その数日後、そのお店に行ってみたのですが、物凄い行列ができていて、普通に30分待ち
(東京の人の感覚だと普通かもしれませんが、北海道の人間にとっては飲食店では30分待ちはありえない状況です。)になっていました。

行列にならぶのは正直メンドくさかったのですが、せっかくここまで来たのだからと思ってお店に入ってみたのですが、
急にお客が殺到したせいなのか、明らかにスタッフの数がお客様に対して足りない状況が一瞬で分かるような状況でした

例えば飲み物をオーダーしても、普通に30分は出てこない状況。
スタッフの皆さん(といっても2人ぐらいで30人以上を相手にしてました…)は、明らかにあたふたしていて、
マンガのドラえもんみたいに本当に目が渦巻きになっているような状況でした。

スタッフの一人は明らかにパニックを起こし、目にうっすらと涙を浮かべていました。
何だか可哀そうになってきて、結局何もオーダーせずにお店を出てきたことをそれから20年たった今でもハッキリ覚えています。

そして、それから3ヵ月後にまたそのお店に行ってみたのですが、お食事時にも関わらず閑古鳥が鳴くような状況で、
スタッフの方がお店の片隅で椅子に腰かけていました。そらからさらに1年後にはチェーン店全体が消滅してしまいました。

結局何が原因でチェーン店全体が消滅してしまったのかは、真相は明らかではありません。
当時は、ツイッターはもちろんのこと2ちゃんねるも浸透していない状況だったので、ネット炎上ということもなかったはずです。

ですが、お店の対応の悪さが口コミで広がり、結局はお客様に対する信用を落としてしまったのではないかと推測しています

3.オペレーションづくりの大切さ

先程のジンギスカン屋の例は、「集客力」=◎、「商品力」(結構安くて美味しい)=○、
だったのですが、オペレーションが×でダメになってしまった例です

起業当時は、どうしても「集客」と「商品力」に目が向きがちですが、オペレーションの構築も忘れてはいけないと思います

先日、飲食店向けに店舗候補物件の斡旋と、内装工事や厨房設備のリースを行っている企業のセミナーに参加しました。
そこで、話されていたことはどういったことかと言うと、オープンからいきなり広告宣伝をドンと打つのではなく、
最初、知り合いとか少ない人数で2~3ヵ月業務を回して、オペレーションの不安を取り除いてから、
あたかも新規オープンしたかのように広告宣伝を打つべきというものでした


その戦略は最初の2~3カ月の家賃や減価償却費などの固定費をムダにしてしまうという短期的なデメリットはありますが、
確かにそういうやり方もひとつ理に適っていると納得しました。

また、私の友人で従業員規模10人程度の社労士法人の代表を務めている人間がいるのですが、
新しい助成金が制度化された場合、まず自社で試してみて「使えるか」どうか判断していると言っていました。

ここで言う、「使える」とは2つの意味合いがあって、一つ目は

「お客様にとってメリットが高いか」というお客様目線(商品力)
と、もう一つは
「報酬の割に申請に手間がかかり従業員が疲弊しないか」というオペレーション目線
ということでした。

実際のそこの事務所の従業員の定着率に関して、同業他社と比較してどうなのかは分かりませんが、
なかなか従業員が定着しないことに関しては、代表は嘆いていました。

会計士が守備範囲とするバックオフィス業務も同様です。
例えば、どんなに売上がたっても、請求書を切れなければ代金は入ってきません
また、請求額と入金額を突き合せしないと、とりっぱぐれが生じますし、
時として得意先に回収に出向いていかなきゃいけない場合もあります。

得意先への代金の回収はバックオフィス業務以前の問題として、請求書の発行や入金額の突合せは、
今日、クラウド会計を使うと容易に行うことが可能です

しかも、利用料がとても安価です。
理由は簡単で、ユーザーへの提供方法がネット経由でシンプルに行うことができるため、
ユーザー数を容易に増やすことができお客様一人あたりのコスト負担を安く済ませることができるためです


バックオフィス業務はそれ自体では、収益を生まないのでそんなところに時間やコストを
かけるのは無駄だと考える方が多いのはやむを得ないことかと思います


しかし、どんなに営業してもお金が入って来ないとビジネスが成り立たないのも事実です。
オペレーションの話とは少しずれてしまいますが、私は年払いにしている保険金があります。

毎年、引落時期になると営業担当の女の子から電話が掛かってきて、
引落日までに必ず銀行に残高を残しておいてくださいと念押しされます。

何も、そこまで念押しされなくても…と思っていたのですが、
先日保険会社の営業マンの方とお話しする機会があり、仕組みを知りました。

保険会社の外交マンないし営業レディというとゴリ押し営業で、とにかく契約を獲得するのが仕事というイメージがあったのですが、
近年では自分が獲ってきた契約に関して確実に保険料の引落がかかるかというのが評価基準の一つになっているからだということでした

とても納得した記憶があります。

とにかく、ビジネスにおいて集客する力、消費者にとても良いと思ってもらえる商品やサービスの存在はもちろんだと思います

しかし、それだけでなく、「魅力的な商品やサービスを確実かつ適時にお客様に届けて」、
「より多くのお客様に届けていく」ための仕組みづくり、そしてその仕組みづくりのための「リソースの調達」や
「売上代金の回収の仕組み」も重要だと思っています


ところで、「公認会計士」の本業は上場企業の会計監査だったりします。

「会計監査」というとなじみがないかと思いますので、補足説明しますと、上場企業の決算書というのは、
上場企業自体が株式投資の対象なので、投資家向けに非常に細かく専門的な内容が記載されているとともに、会社のHPにもアップされています。
(ちなみに上場企業の決算書は「有価証券報告書」といいます。)

私の個人的な体験で言うと、上場したての小規模なベンチャー企業の場合、経理部門が手薄で、リソース不足に陥っており、
経理の方が常に疲弊していたり、定着率が悪かったりします

(会社の上場を経験した経理の方は、ほかの上場を目指す企業にとっては、物凄く貴重な存在なので簡単に引き抜かれたりします。)

適正な経理を行うことも、上場を続ける上で欠かせない存在であり、重要なオペレーションの一部なのです
これを経営者の方に忘れられてしまうのは一会計士としては悲しい限りです。

また、経営学の一つの考え方にボトルネック理論というものがあります
例えば、個別オーダー型のビジネス(例えば、リフォーム業だとしましょう。)でお客様の引き合いがあった場合に、
営業担当者が見積書を即時につくれなければ、見積書の作成が全体の売上増のボトルネックになっているため、
見積書を作れる人員を増やさなければなりません。

また、施工する人員が足りなければ、売上増のボトルネックは施工能力なので、施工できる職人さんを調達しなければなりません。
金銭的リソースは限られていますから、どこに優先的に資金を配分するか、
そして内製化するか外注するかは経営者の皆さんが判断しなければなりません


若ければ、一人でオペレーションもこなせるかもしれませんが、1日には時間的に限りがあるのと、
年をとるとともに、体力はどんどん落ちてきます。
私がサラリーマン会計士をしていたときに、顧問先が外注を依頼する際の判断基準として一般的だったのは以下の通りです。

(内製化すべき作業)
その会社が提供する商品やサービスの独自性や競合他社との優位性を生み出すための作業
ルーチンで発生するような作業

(外注化すべき作業)
季節的変動が大きい、または短期的に人手が足りなくなるような作業
たまに発生するイベント的な作業(プロジェクトもの)
自社のリソースでは賄えない高度な専門的判断が必要とされる作業

起業時には、「営業」や「商品・サービス」開発以外のことについて考える余裕も、
金銭的な余裕もないかもしれませんが、業務を確実に回す仕組みである「オペレーション」づくりについても、
しっかり考えてみる必要があるのではないでしょうか

 

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