パンづくりの未経験者を5日間でベーカリー経営者に

更新日:2017.11.13

 「5日間だけの研修で、未経験のあなたもベーカリーを開業できる」――。聞いただけでは「ありえない!」と思うビジネスモデルを実現したのが、おかやま工房(岡山市)だ。厳選した国産100%の無添加小麦を使って二百数十ものレシピを、パンづくりをしたことがない人でも作って売って稼げるビジネスモデルを提供している。どのような仕組みで成り立っているのか。職人技が不可欠とされた業界で、同社が起こしたイノベーションに迫った。2回にわたって特集する。(Sponsored by おかやま工房)


 10月下旬、東京・三田の慶應大学キャンパスに近いビルの1階にある「リエゾンプロジェクト」の研修センター。
 
 小さなキッチンスペースの片隅にあるオーブンの扉が開くと、パンが焼けた香ばしい匂いが部屋中に広がる。
リエゾンプロジェクトは、おかやま工房が手掛ける短期間で未経験者にも簡単にベーカリー、つまりパン屋さんを開業できるよう支援するプログラムの名称だ。

150店以上がオープン、驚異の存続率

 この仕組みを使って、これまでに160店舗あまりが開業。10月25日時点で35都道府県で155店舗のベーカリーが営業を継続している。

 コンビニエンスストアやスーパーに並ぶ製パン大手の商品との競争が激しい業界で、驚異的な生存率といえるだろう。しかもその経営者は皆、もともとは会社勤めをしていたサラリーマンといった初心者がほとんどパン職人として経験をつんだ人は、1人もいないという。


5日間の研修でベーカリーを開店できる仕組みを生み出した河上祐隆おかやま工房社長


 「実は、国内のパン市場は今でも成長が続いているんです」と、リエゾンプロジェクトを推進する、おかやま工房の河上祐隆(つねたか)社長(55)は説明する。
総務省統計局の調べた総世帯の平均消費支出金額(月次)によると、米食の減少によりコメへの支出は右肩下がりで減少。

 2010年にパンへの消費支出がコメを逆転した。高齢化が進み、一人暮らしの老人世帯が増えたことで、炊飯の手間がかかるコメの需要は減少。 一方で、「買ってくれば手軽に食べられて、消化もしやすいパンを求める層が増えているんです」(河上社長)。

 さらにリエゾンプロジェクトでは、北海道産の小麦を使い、しかも保存料なども全く使わない無添加のパンを作ることで、
他のベーカリーや大手製パンの商品と差別化を図っている。


 河上社長は「国産小麦100%で無添加の生地を使う。探すと分かりますが、これだけでも大いに競争力になっています」と強調する。


使う小麦粉は1種類のみ。これで200以上のレシピに対応する
 

「3つの見える化」で熟練の職人技を不要に

 ただ、パンの需要が拡大しているからといって、素人が簡単に参入して成功できる世界とは思えない。
 パン製造の未経験者でも短期間でパンづくりに慣れるために、河上社長は、だれでもパンを作れるようにするため「3つの見える化」を進めてきた。

 第一が「数値化」だ。「パン職人は生地をこねる技術が難しい」と河上社長。どれくらいの硬さになれば、どんなパンを作れるか、職人は修行を通じて体に叩き込む。だが、リエゾンプロジェクトでは生地をこねられる独自のミキサーを導入し、それによって硬さを数値で変えられるようにした。機械化したことで「職人の勘に頼っていた部分を簡易化できた」のが一つ目のイノベーションだ。

 第二の見える化が「レシピ」だという。おかやま工房には1984年の創業から積み上げてきたパンのレシピが2000種ほどあるという。その中から、簡単に作れてよく売れるレシピ二百数十のレシピを厳選した。生地に使う小麦は、北海道の製粉会社が道内で集めた5種類の小麦をブレンドした「ファリーヌリエゾン」という小麦粉だ。この小麦粉だけで200種類以上のパンを作れるように工夫を凝らした。

 第三の見える化が「マニュアル化」だという。たった5日間の研修の中で、1日目にはパンづくりの理論やパン屋の経営について、どんな設備でパンを作るのかを座学で習得する。2~4日目は実技研修となり、実際にパン生地をこねる。「開業のため研修を受けるのは50代や60代の男性が多いのですが、これまで台所に立ったこともなく、初めてパン生地に触れる人も少なくありません」(河上社長)。未経験者でも扱いやすいように工夫した前述のミキサーやデッキオーブン、コンベクションオーブンなどの使い方を学ぶ。最後の5日目は販売実習だ。その課程をマニュアル化したところが、これまでのパン職人の常識をくつがえした点と言えるだろう。


小型化して硬さを数値で把握するようにしたミキサー。
 

 「小さなパン屋を、少ない初期投資で開店できます」。リエゾンプロジェクトのパンフレットには、こんな文句が並ぶ。オーブンなどの設備には独自の設計を施して開発。シニアでも扱いやすいよう、通常のベーカリーで職人が使うものに比べて大胆に小型化した。このため小さなベーカリーが開業しやすい。「最小で7坪(約23平方メートル)から、お店を造れるようにしました」と河上社長。5日間の研修費用は10万円、開店に必要となる設備は最小で450万円前後。もちろん、どんな土地のどんな場所に店を開くかによって家賃や内外装費は異なるが、敷金・賃料・不動産仲介料を除けば1100万~1200万円前後の初期費用で小さなパン屋を開店できるという。

フランチャイズではなく「勉強会」で経営力研鑽

 リエゾンプロジェクトによるベーカリー開業支援は、フランチャイズ方式ではない。このためオーナーとなる開業者がそれぞれの個性、それぞれのスタイルでベーカリーを開業できるようにした。河上社長は「フランチャイズの本部が指導して、一律で同じようなお店、同じような商品を置いてあるような店を作っても魅力はないと思いました。お店を開く土地の個性や地域の客層に合わせて、独自のパンを作っていけるような店を増やしたい」と強調する。


デッキオーブンのほかコンベクションオーブンなどを合わせて簡単に焼けるよう工夫した。


   そして、開店後はオーナーがそれぞれ集まって研鑽を積んでいけるよう、勉強会を開いているという。「おかやま工房と各オーナーさんが、上下関係ではない、一緒の位置に並んでベーカリー店の経営を学びあう場にしたいと思いました」。実際に勉強会に参加しているオーナーらの意欲は高く、2店舗目、3店舗目を設けていく人も多いという。

 河上社長は、このリエゾンプロジェクトをどのように考えつき、スタートさせたのか。次回は、その経緯と自身の半生、そして展望を聞く。

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