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大切なのはビジョンの共有。株式会社アマテラス代表・藤岡清高氏インタビュー

ポイント
  1. 起業に至るまで
  2. 既存の人材ビジネスには問題がある
  3. ベンチャーで活躍する人材の条件

目次 [非表示]

<株式会社アマテラス 藤岡清高>
1999年東京都立大学経済学部卒業(体育会サッカー部)。住友銀行(現三井住友銀行)入社。2004年慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。同年、株式会社ドリームインキュベータ入社。成長ベンチャー企業を支援し、戦略構築・事業立上・経営管理に従事。2011年4月 株式会社アマテラス創業。代表取締役に就任。

住友銀行からベンチャー企業へ

― まずは、経歴から教えて下さい。

東京都立大学(現:首都大学東京)の経済学部を卒業しました。体育会サッカー部に所属しサッカー中心の学生生活でした。新卒で住友銀行に入行しました。1999年のことです。もともといつかは起業したいとは考えており、当時、起業家を輩出する会社として「リクルート」「野村證券」「住友銀行」が挙げられていたのです。ただ、その頃は世間的にも不景気で、銀行での仕事と言えば、貸し剥がしや既存取引先に金利上げの交渉ばかりでした。顧客先を訪問すると嫌な顔をされるわけです。自分がどのように社会の役に立っているのか分からず、働く意味を見いだせないまま過ごしていました。かなり悩んでいたと思います。

週末は独身寮近くの多摩川の河原をとぼとぼと散歩していたイメージがあります。そこで、起業に向かうために、まずはMBA(経営学修士)を取得することにしました。土日は独身寮にこもって勉強。通勤電車では英字新聞を読む。そのおかげで、慶應義塾大学の大学院に合格。住友銀行を退社しました。MBAの授業は、その後の起業にも大きな影響を及ぼしたと思います。熱意のある人材との交流や実践的な内容の授業は、大きな刺激となりました。

また、外部講師として、起業家や経営者の方とお話できたのもいい経験となっています。二年生になると時間ができたので知り合いが経営していたベンチャー企業で経営メンバーとして働き始めました。ただ、銀行員3年程度の経験とMBAでの知識程度でいきなり活躍することはできず。ベンチャーでなら活躍できると奢った考えを持っていたのですが、自分の無力さを思い知らされました。それで、本当に起業家やベンチャーへのリスペクトを持つようになり、ベンチャーインキュベーションという仕事に関心を強めて、2004年に堀紘一さん率いるドリームインキュベータに入社。「日本からソニーやホンダを100社創出する」というビジョンに心から共感したのです。約7年弱、勤務していました。


― その後、起業に至るまでの経緯についてはいかがでしょうか?

ドリームインキュベータでは、ベンチャー企業の経営者とディスカッションする機会が多くありました。経営課題を引き出し、どんなサポートができるのかをまとめる立場でしたので。そのとき、経営者から直に相談を受ける経験を多く積みました。なかでも多かったのが、「良い人材はいませんか?」という相談でした。その他にも、経営者からの相談は人や組織に関わる相談がほとんどだったのです。どこも人手不足ですし、思うように採用ができない。起業家の多くはそのような悩みを抱えていたのです。

どんなに素晴らしいビジョンをもっていても、なかなか成長できないベンチャー企業の背景には、人材の問題がある。その部分を解決できれば、もっと日本のベンチャーが元気になると思い、今の会社をつくることにしました。当時、リーマンショックの影響もあり、ドリームインキュベータはベンチャーインキュベーションの業務を縮小。会長や社長に背中を押される形で起業したタイミングが2011年の4月になります。

既存の人材ビジネスには問題がある

― 起業した当時、既存の人材業界についてはどのような印象をお持ちでしたか?
 

そもそも日本の人材業界の仕組みは遅れていると思います。特にスタートアップ・ベンチャー企業サイドからみるとそう思わざるを得ません。背景にあるのは、そのビジネスモデルです。採用コンサルタントと称するエージェント(仲介人)が企業と人材(転職候補者)の間に入り、マッチングを行い、成約すると採用決定者の年収の30~35%を成功報酬としてもらうというもの。この仕組みだと、エージェントはより高い報酬を得ようとするために、高い年収を提示できる会社や採用数が多い会社(大企業、外資、メガベンチャー)に寄り添うことになっていきます

その結果、資金力も採用人数も少ないスタートアップ・ベンチャー企業には、なかなか良い人材がまわってこないのです。日本の多くの人材紹介会社にとっていわゆる“良い会社”とは、“大人数を採用してくれる会社”、“多くの採用フィーを支払ってくれる会社”を指すのが現実です。一方でアマテラスにとっての“良い会社”とは、“社会をより良く変えるポテンシャルがある会社”です。会社の規模や採用人数はあまり重視していません。今は小さくてもそのような会社はいずれ成長していきますし、お金は後から付いてくると思っています。

人材業界が現状のビジネスモデルのままでは、いつまで経ってもベンチャー企業が優秀な人材を採用できる仕組みが整いません。だからこそ、自分でやることにしたという経緯があります。参考にしたのはシリコンバレーでの採用スタイルです。シリコンバレー式の採用は、基本的にダイレクトリクルーティングです。つまり仲介人、人材エージェントを通さず、直接企業と個人が繋がるリクルーティングスタイルです。仲介人がいないため、とてもフェアなやり取りができるのです。大事なことは、優秀な起業家のもとに、優秀な人材が集まりやすい仕組みをつくるという視点です。情報の非対称性を解消し、お互いがお互いを選べるようにする。そのような仕組みづくりを目指しています。


― 活動の根底にある“想い”の部分についてはいかがでしょうか?

ビジョンとしては、「日本からグーグル・フェイスブックを100社創出する」という言葉を掲げています。これは、ドリームインキュベータのビジョンを現代版に発展させたものとなります。ですので、当時から想いはブレていません。素晴らしい経営者の、素晴らしい志によって社会をより良くする。そのために、良いベンチャーに、良い人材が集まるような仕組みが必要だと考えています。

ただIPOをはじめとする一過性の金儲けだけを考えている経営者も少なからずいます。社会の役に立とうという想いが希薄で、利己的に利益を求めるだけの起業家は、短期的に儲かることはあっても継続成長をすることは難しいのが現実です。弊社では、そのような企業に人材を紹介しないよう、企業を厳しく審査しています。実際に問い合わせがある企業のうち、アマテラスがお取引をするのはその1~2割程度です。とくにうちは、経営幹部の採用に特化していますので、経営者がきちんと採用にコミットしているかどうかも見ています。最初に私が社長面談をさせていただき、その上で判断するようにしているのです。志が低い経営者とは御付き合いしません。

ベンチャーで活躍する人材の条件

― 採用先を探している人材も厳選しているのでしょうか?

そうですね。少なくとも「誰でも気軽に登録してください」という方針ではありません。ベンチャーに行きたいという強い想いがある人に来てもらいたいと考えています。あとは明確なビジョンをもっていることですね。登録者の要件としては、5つの項目を設けています。

プロフェッショナル宣言  :プロとして働く
原因自分論宣言      :全ての原因は自分になる。他人のせいにしない
チャレンジスピリッツ宣言 :失敗を恐れずチャレンジする
創意工夫宣言       :出来ない理由を考えない、どうすれば出来るか考え行動する
勤続宣言         :入社を決意した会社では3年は辞めない

です。これらの要件に合意した人のみ登録することができます。ハードルは高めに設定していますが、それぐらい厳しくなければ、ベンチャーで活躍することはできません。とくに、社長のビジョンを実現して、社会を変えていこうとするのであれば尚更です。問題意識への共感もそうですね。


― 実際に採用された方はどのような活躍をされていますか?

いろいろなシーンで活躍されています。当時はまだ社員が数名しかいなかった会社に幹部人材として入社し、今では上場企業の経営幹部として活躍している人も少なくありません。ビジョンに共感しているからこそ伸びるのです。そもそもベンチャー企業は、当初の計画通りに成長していくことはありません。ビジネスモデルにしても組織形態にしても状況に応じて柔軟に変える必要がある。では、ベンチャー企業で唯一変わらないことはと言うと、“経営者の信念”ではないでしょうか。何のためにその事業をやっているのか、ということですね。きちんとした信念があり、その信念に共感する人材がいれば、困難にぶち当たっても乗り越えて成長することができます。あきらめずに突き進むことができるのです。そのために、やはり、人材というのは大事だと思います。私たちは、社長から事業を推進していくにあたっての「何のために」を聞き、その問題意識を共有できる人材を紹介していく。言い換えれば、社長の原体験を共感できる人材を通して、企業を支援しているのです。

理屈ではなく熱意が大事

― 最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

成功している経営者の方々から話を聞くと、理屈やロジックを超えた想いで行動していることが多いです。それこそ湧き出るような、止められない想いによって行動しているのです。吉田松陰が残した言葉、 “かくすれば かくするものと知りながら やむにやまれる大和魂” ですね。そういう人には迷いがありません。自然と行動を起こし、起業に至るものです。

そのような情熱をもつ起業家には、適切な方法をとることで、優秀な人材が集まると考えています。理屈ではなく、熱意を伝えていくこと。ある意味において、人を惹き付ける夢やビジョンが必要なのです。真剣に生きている人であれば、誰にでもそのような情熱を持つことができると思います。私自身、そのような人に接していれば分かります。就職する側の人材も、熱意が伝われば、自然と採用につながるはずです。弊社としては、今後も未上場のベンチャーに特化したいと考えています。資金調達のフェーズでいえば、シリーズA(プロダクトを拡大しビジネスモデルを確立するフェーズ)からシリーズB(ビジネスを拡大するフェーズ)あたりの企業がコアになりますね。すでに知名度があり人が自然に集まるようなベンチャーではなく、まさにこれからの企業です。とくに「その会社に人材を紹介することによって社会が変わる」というような感覚を大事にしたいと思います。これからも、採用コストを下げて、優秀な人材を紹介して、事業に集中できるような環境を提供していきたいですね。

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