メルカリ上場へ、創業会長が「決意の手紙」に込めた世界展開の意欲(あすへのヒント)

更新日:2018.05.16

「私は、野茂英雄さんの大ファンです。野茂さんがメジャー挑戦を発表された時、日本中でバッシングが巻き起こったのをよく覚えています。それでも、大方の予想を裏切って新人王と奪三振王という結果を手にされた野茂さん。常に心がけていたのは『いいボールを投げる』というシンプルなことだったそうです」

「我々メルカリも、『新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る』というミッションの達成に向け、世界挑戦を続けていきます」

スマートフォンを使ったフリーマケットアプリ大手のメルカリ(東京・港)の東証マザーズ上場が6月19日に決まった。日本で数少ない、企業価値の評価額が10億ドル(約1100億円)超の「ユニコーン企業」がいよいよ上場するとあって、注目を集めている。上場による資金調達額は500億円とされ、新興市場としては2005年3月にジャスダック上場したジュピターテレコム(JCOM)の約870億円に次ぐ規模の調達額になる。

冒頭の文言は、東証により上場日程が決まった2日後の5月16日、メルカリの創業者である山田新太郎会長兼最高経営責任者(CEO)が投資家や社員らステークホルダーに宛てて書いた手紙の書き出しから引用した。いわば「メルカリの世界化」に向けた、並々ならぬ意欲が伝わってくる。(メルカリのウェブサイトにある「創業者からの手紙 山田新太郎から皆様へ」を参照)


山田新太郎会長兼最高経営責任者(CEO)

特に力を入れたいと考えているのが米国市場だという。「創業者の手紙」にも、こうある。

「少しでも便利な社会を実現するために、できるだけ多くの人の役に立ちたい。その想いを突き詰めていくと、日本だけでなく、世界が舞台となります。特に、多様な人種、文化をもつ人々がいるアメリカで成功することは、プロダクトがユニバーサル化されたことを意味すると考えています」

メルカリのアプリ総ダウンロード(DL)数は1億を超えるが、そのうち米国でのDL数は4000万。4割を占めるとなれば大きな数字に見えるが、人口が3億人を超えた米国ではシェアはまだまだ小さい部類だろう。なにより、世界中で小売りのあり方に地殻変動を与えた米アマゾン・ドット・コムやイーベイなど、電子商取引(EC)の「巨人」が大きな壁を築いている。山田会長としては、まさに野茂投手のように米国基準へ挑む前夜のような心持ちなのだろう。

上場で調達する500億円を投じて強化するのは、人材への投資とテクノロジーへの投資だ。海外展開を加速するとなれば、国内外で経営およびサービス、プロダクトをリードしていける優秀な人材は欠かせない。カリフォルニア州にシリコンバレーを擁するアメリカで、優秀な人材とともに、AI(人工知能)やVR(仮想現実)、量子コンピューターなど新時代の技術を取り込んでいかなければならない。手紙にもあるように、「これからの時代はアイデアだけでなく、テクノロジーで差別化できないプロダクトは生き残れなくなっていく」からだ。

2013年4月に日本でフリマアプリの提供を始めた時も、当時全盛だったヤフーのオークションサイト「ヤフオク!」を超えるのは難しいとの見方があった。だが、スマホを使って簡単に出品を登録できるテクノロジーや、大手運輸と組んで簡単に「匿名」で発送できる仕組みづくりなどで、ヤフオク優位の状況を逆転してきた。

家庭に眠っている価値ある商品を、再販売・リユースできるメルカリのアプリは、経済力の拡大で消費力が高まった世界ではもっと受け入れられる余地はありそうだ。日本発の「メジャー級」世界企業として羽ばたけるか。上場後は株式市場もそれを注視することになる。

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プロフィール

三河主門

三河主門

2017年5月に日本経済新聞社を退社して独立。各種新聞・雑誌・ウェブメディアに記事を執筆しながら、フリーランスの編集者、メディア・リレーションのコンサルティングとしても活動している。17年11月に「Mikawa&Co.合同会社」を設立、中小企業・スタートアップベンチャーのためのPR(広報)コンサルティング、セミナーなどを手掛けるほか、教育関連コンテンツの製作も開始した。
日経記者時代は主に企業取材を担当。産業部(現・企業報道部)記者として長い経験がある。2007~10年にバンコク支局長として駐在した経験と人脈を生かし、タイのビジネス・社会・文化を研究・紹介する活動に長く携わる。


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