第2章:友人と起業。そして、バックステージの設立へ〜メンターからの手紙 河合義徳氏〜

ポイント(この記事は4分で読み終わります)
  1. ベンチャーキャピタル設立で抱いた「違和感」
  2. 2つの大事な「かんじょう」
  3. うまくいったとき、うまくいかなかったとき

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ベンチャーキャピタル設立で抱いた「違和感」

オリックスを退社して1人で起業する前に、友人と3人でベンチャーキャピタルを立ち上げました。

当時は空前のベンチャーブームで、オリックスでの素晴らしい気付きがありながらも「上場!」とか「キャピタルゲインで、ゆうゆう自適に暮らすぞ!」とか、マジで言っていました(苦笑)。そういうのがかっこいい、みたいな錯覚もあった。

しかし、一方で違和感もあったんですよ。「あれ、お客さんはどこにいっちゃったの?」と。

どんなときも、価値を決めるのはお客さんのはずなのに、「儲けることができたら、その資金はさらに別のとこに投資する」って言うのって、お客さんのことをどう見ていることになるんだ? と思い始めて。

そして「コーポレート・ガバナンス」にも、僕の中で矛盾が起きるわけですよ。

本来、コーポレート・ガバナンスは「会社は誰かの幸せを作るためにたまたま作られた器だから、私物化しちゃいけないよ」というものですよね。でも、当時は「株式会社は株主のものである」としかメディアもいわないし、僕らもそう思っていた。手っ取り早いから。

そうなると、社員もコスト換算し、仕入先もコスト化し、下手したらお客さんもコスト化。「売りつける」ためにコストかけて販促してみたり、そこにコーポレート・アイデンティティとか、ブランド戦略とかを、本質とは違う絡み方をさせたりと……。

そこに、なんか違うなっていう違和感が生まれていました。その経験と反省が、現在の有限会社バックステージの設立につながっていきました。
 

2つの大事な「かんじょう」

いま経営者としてやっているのは、僕がスタッフを育てるんじゃなくて、スタッフみんなが同じところを見て、スタッフが勝手に育つ土壌を作ること。経営者といっしょにやる、ということです。だから「コンサルティング」とも少し違う。一切なにも教えないもん(笑)。

でも、今やっている仕事やワークショップ、講演なんかは、僕のこれまでの失敗をすべてつぎ込んでいます。例えば、友人と会社やってたときの失敗っていうのは事業計画書の書き方、あり方が間違っていたということ。

みんな事業計画書の書き方を間違えるんですよね。多くの人は、資金調達のために事業計画書を書くけど、事業計画書っていうのは本来、「行動計画書」なんです。

どういうことか。まずは「どういう顧客にどういう喜びと幸せを提供するか」を考える必要があって、商品を考えるのは後です。それは運営している側も、お客さんから見ても、必ず原点に戻れるものでなければいけません。

多くの人が「売りたいモノ」が先にあって、どう売るかを考えてしまいます。でも、それだとホームページを見に来た人は、みんないきなりモノだけ押し売りされてる気分になって、全然接点ができない。

お客さんからしたら「この人は、私にどういう幸せを作ってくれる人か」っていうのを説明してもらえないと、自分ごととしてとらえられないんですよ。だから「どういう顧客にどういう喜びと幸せを提供するか」を行動として計画したものが事業計画書になり、その行動がお金を生んでいくんです。

でも、僕もかつては資金調達のために事業計画書を書いてしまっていたこともあります。どんなに強い信念があっても、自分の軸がブレるときはある。

自分の軸をブレさせるものっていうのは、「お金の勘定」と「心の感情」。これらが絡むと自分の軸はブレやすくなります。

お金の勘定っていうのは、先ほども話した事業計画のこと。
もうひとつの心の感情は、無形資産を形成することにもつながります。

どんな事業もなりわいも、重要なのはいかに「価値をつくるか」ということだけ。大事なのは「どういう顧客にどういう喜びと幸せを提供するか」という目的のために行動することです。そして、売り上げが上がって利益が出るのはすごく大事なことなんだけど、本来もっと大事なのは、自分の資産をどうつくるかということです。

われわれは何のために活動しているのかという目的を見据えて、モチベーション高く仕事をしている姿勢っていうのは決算書には表れない無形資産であり、必ずそれは自分の価値創造力を高める原動力になります。

逆に、なんのために頑張っているのかという目的を見据えないまま、ただただやるべきことをやって忙殺されているというのは、その人が本来もつモチベーションを削ぐことになるんです。

例えば、「金を払ってるから」と従業員をコスト化したり、ホームページの制作などを「経費」ととらえたりする姿勢の人は、無形資産が生まれない、つまり価値創造力が高まらないんですよ。

「私、こんなに頑張っているのに!」と感情的になって、ひとりよがりな頑張りをしても、その頑張りを認めるのはいったい誰か? 経済においては「お客さん」しかいない。価値がないものを、お客さんは評価しないですよね。

これって、会社でなくても家庭でも同じことがいえます。僕は、価値創造について経営者だけでなく主婦や会社員の人に向けてもワークショップや講演をしますが、そこで起業しろとはいいません。

専業主婦だって、地域活動だって子育てだって、僕は最高の価値を生んでいると思う。じゃあ家庭での主婦の頑張りを評価するのは誰か? 家族みんなの幸せを見据えた頑張りなら、家族は「頑張ってるね〜!」といってくれるでしょうけど…。

無形資産を生むことにつながる「感情」をないがしろにしてしまうこと、これが今の社会の「息苦しさ」を生んでいる一因だとも思うんです。
講師を務める「なりわいづくり講座」の様子。参加者に「自分はどう生きるか」を問い、職場や家庭などそれぞれが活躍するフィールドで存在する有形と無形の資産を見つけだす。

うまくいったとき、うまくいかなかったとき

これらを踏まえて、僕はクライアント企業の「無形資産」に着目しています。

無形資産があると、僕がスタッフを育てるのではなくて、スタッフが勝手に育つ土壌を作ることにつながる。その土壌づくりを経営者といっしょにやっていくんです。そういう価値創造力が高いチームができると、エンドユーザーに提供できる価値がもっと生まれるでしょ? 設備投資をして価値やモノが生まれることもあるけど、無形資産から価値が高まることもあるわけですよ。

価値が生まれたら、次は売らなきゃいけない。売るためには知られなきゃいけないんで、マネタイズのために、伝達プロモーションも手伝います。すると市場の反応から、売れる売れないが出てくるから、またもとに戻って分析してやりなおす。これを繰り返します。

このときに、最高に僕の存在価値が出てくるんですよ!

売れると現金化しますよね、売れた瞬間って、みんなニコニコしているんですよ。でも僕はそのときずっと怖い顔をしておく。「みんな盛り上がるのはいいよ。でもなんで売れた?」と。

予算以上にすごく売れたときって、みんななぜ売れたかを分析しない。なにがよかったかを分析しないから、いつまでもノウハウがたまらないんです。

これすごく大事なことなんですよ。売れたときこそ大事。

でも逆に売れないとき、僕はすごーく笑顔なの(笑)。結果出ないときこそ、しんどいんだから、笑顔にならなきゃって。これはもう、実体験ですよ。僕が、うまくいったときとうまくいかないとき、全部逆やっていたんで。これも無形資産。チームづくりの中では絶対必要になってくる、とても大事なものです。

僕は、これって最高のエンターテインメントだと思っているんです。

お客さんの反応がリアルに見える、街の小さなライブハウスのライブみたいだなぁと。お客さんからいいって言われた〜ハイタッチ! って。

で、「なんで良かったん?」って分析する。逆に、失敗したらときは「もうしゃあない! 下向いた時点でアウト! 次に生かそう!」って笑う。

こういう姿勢を僕は、実は娘を通じて学んだんですよ。

河合義徳氏 第3章:日常のあらゆる出来事が、仕事に結びついている

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著者プロフィール

ikekayo(池田佳世子)

関西を拠点に活動するライター。 その人のもつ無形の価値に輪郭を描く仕事をしています。