土地放棄と外国人「単純労働」開放――「骨太の方針」、時代を画す2つのテーマに注目(あすへのヒント)

ポイント
  1. 「土地の放棄」と「外国人の単純労働就労」について政府の動向とは

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土地の放棄と外国人の単純労働就労

政府が6月中旬に公表する予定の、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)。新聞を中心に各種マスメディアでは、その内容を先取りする報道合戦が熱を帯びている。その中で、時代の大きな変化を示すと思われる2つのテーマに注目したい。「土地の放棄」と「外国人の単純労働就労」だ。

土地所有権の放棄ができるようになる!?

「政府は、土地の所有権を放棄したい時に放棄できる制度の検討を始めた」――。朝日新聞は2018年5月29日付の紙面(デジタル版の記事はこちら)で、政府が「土地の放棄」についての方向性を骨太の方針に盛り込むと報じた。背景にあるのは、少子高齢化が進んだことで地方を中心に土地の相続や管理が困難になってきている現実がある。

地方出身者が生まれた土地を離れて都市部などに移り住んだ場合、親が管理していた土地や家屋を相続しても適切な管理は難しくなる。土地の所有権を保有しつづけていても、固定資産税などの諸税がかかることを苦にしている人は多い。空き家問題と同様の構図だ。所有者が判明しない土地が増えつつあり、大きな問題にありつつある。所有者不明土地問題研究会(座長:増田寛也元総務相)が推計したところ、土地の所有者不明率は全国の20.3%に達し、その面積は410万ヘクタールと九州全体の面積を上回っているという。

所有者の氏名や住所が正確に登記されていない土地について、日本経済新聞(電子版)は5月28日付で、「登記を担う法務局の登記官に所有者を特定する調査権限を与える検討に入った」と報じた。法務局の登記官は、これまでは土地の所有者が申請したことを受けて登記簿の内容を書き換える権限しかなかったという。

だが、所有者不明の土地が増えたことで、登記官が土地を実際に調査して、「登記簿に記載された所有者の情報が正しいかや土地の変遷の実態などを調べられる」ようにして、正しい所有権者とその権利関係を登記簿に反映したいという法務省の意欲が感じられる。

実際、国土交通省も2017年1月にスタートした、土地政策の新たな方向性を探る「空き地等の新たな活用に関する検討会」などで、「伝統的な土地所有について、国民の観念が薄れてきた」ことなどにも触れ、土地政策を大きく変えようとしている。

もちろん、どんな土地の所有権も自由に手放せるといった政策にはならないだろう。朝日新聞も記事で「所有者が管理できるのに、放棄して国や地方自治体に負担を押しつけるような事態を避けるため、災害で危険になった土地に限定するといった一定の要件を設ける方向だ」と指摘するように、ある種の条件のもとで土地所有権の放棄ができるようになる方向性で議論が進むだろう。

ただ、「土地の価格は必ず上がる」という昭和の高度経済成長がもたらした幻想で発生した日本のバブル経済が弾けて約30年。「平成」の幕が閉じる時期を迎え、日本の「土地神話」も、いよいよ真の終焉を迎えようとしている。土地に絡んださまざまなビジネスは、まさに時代の波の中で大きく変質していくことになるだろう。

2025年には日本語が不自由でも働けるように

一方、時代を画するもう1つのテーマが、外国人の就労問題だ。特に、人材不足に悩む労働集約的な建設業や農業、サービス業などで求められているのが、いわゆる単純労働ができる作業者だ。

5月30日付の日本経済新聞(電子版)はトップ記事で、骨太の方針に盛り込む政府の新たな外国人労働者受け入れ策の原案が明らかになったとして、「外国人、単純労働に門戸  建設や農業、25年に50万人超」 と報じた。

記事によると、2025年までに建設、農業、宿泊、介護、造船業の5分野を対象として、新たに「特定技能評価試験」(仮称)を設けて、これに合格すれば日本語がまだ不自由でも就労資格を得られるようにするという。25年までに50万人超を受け入れることで、深刻な人手不足を緩和することが狙いだ。

つまり、建設、農業、宿泊、介護、造船業の5分野では外国人労働者へ門戸を開放することを意味する。日本の労働政策にとって、大きな転換点になる可能性が高い。こちらも実際の運用には、混乱を避けるためさまざまな条件が付帯される可能性があるが、いわゆる「インバウンド客」と呼ばれる訪日外国人旅行者とあいまって、さらに日本国内で外国人が多様なコミュニティーを形づくっていくことが見込まれる。

崩れる土地神話と労働政策。少子高齢化が進んで、人材の不足による経済運営に支障をきたしかねない日本政府にとっては、時代を画する政策の転換だ。定着までは時間がかかるかもしれないが、起業家ならこの時代の変化に新しいビジネスの可能性を見いだすことができるはずだ。

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著者プロフィール

三河主門

三河主門

2017年5月に日本経済新聞社を退社して独立。各種新聞・雑誌・ウェブメディアに記事を執筆しながら、フリーランスの編集者、メディア・リレーションのコンサルティングとしても活動している。17年11月に「Mikawa&Co.合同会社」を設立、中小企業・スタートアップベンチャーのためのPR(広報)コンサルティング、セミナーなどを手掛けるほか、教育関連コンテンツの製作も開始した。 日経記者時代は主に企業取材を担当。産業部(現・企業報道部)記者として長い経験がある。2007~10年にバンコク支局長として駐在した経験と人脈を生かし、タイのビジネス・社会・文化を研究・紹介する活動に長く携わる。