「豊かに暮らせる「優れた素材」、地方でこそ掘り起こせる(地方創生会議リポート①)」

更新日:2018.07.03

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イナカミチ特別編 地方創生会議@高野山 トークセション・リポート①

全国47都道府県から「まちおこし」「地域づくり」に携わる人たちが集まり話し合う「第2回 地方創生会議」が2018年6月30日〜7月1日の2日間、和歌山県の高野山で開かれた。17年に創設された同会議は今年2年目を迎え、約200人が高野山大師教会本部の本堂内で議論を交わした。その地方創生会議でのトークセッションなどで繰り広げられた談義の内容をダイジェスト的にリポートする。

第1回目は6月30日午後に開かれた最初のトークセッションで、テーマは「地方に求められる『ハコモノ』の在り方とは?」。登壇者は全国にある「空き家」の紹介・仲介サイト「LIFULL地方創生」を始めた東証1部上場のLIFULL(ライフル)の井上高志社長、地方の歴史ある建造物を改修・再活用事業を展開するバリューマネジメント(大阪市)の他力野淳社長、そして19歳でホテル業を起業して全国で5軒を展開するホテルプロデューサーであるL&G GLOBAL BUSINESS(京都市)の龍崎翔子取締役の3人だ。

司会(モデレーター)はゲストハウス紹介サイト「FootPrints」の前田有佳利編集長が務めた。


トークセッションに臨む(右から)井上高志LIFULL社長、他力野淳バリューマネジメント代表、龍崎翔子L&G GLOBAL BUSINESS取締役。左奥はモデレーターの前田有佳利FootPrints編集長

空き家、歴史、空気感……地方にこそ「宝」あり!

司会 今回、(地方創生会議に)参加している人の中には自分自身も地方を盛り上げるためにホテルやカフェなどの拠点を持ちたい方が多くいると聞いている。そんな方々も、迷った時のどうするかを考えるために、本日登壇した3人の「先人」の話を聞いて参考にしていただきたい。

まずは自己紹介をお願いします。

井上氏 「HOMES」という不動産のポータルサイトがメーン事業だが、配布していただいた資料にもある「LIFULL地方創生」という社長直轄の組織を作っている。「未来は空き家にあった」「空き家が多い地方にこそ宝がある」と思っている。空き家は社会問題としてネガティブに捉えられているが、「いやいや、空き家って未来だぜ」と、どう活用するのかを伝えていきたい。

現在、日本全国で820万戸ある空き家のうち、300万戸が何も使われず、賃貸・売買市場にも出てこないで放置されている。これが2033年には1200万戸、今の4倍にもなる見通しだ。

これを地方創生に使ってもらおうと、LIFULL地方創生は4つの柱を立てている。

・全国の空き家をデータベース化(LIFULL HOMES 空き家バンク)
・人材育成として「地域おこし協力隊」のスキームを使った人材マッチング
・活用ノウハウ(ナレッジ)のプロデュース 
・資金調達支援(クラウドファンディング)

つまり地方に「ヒト」「モノ」「カネ」「チエ」が流れていくよう、プラットフォームを作って応援している。やる気のある若い人、いい意味での“変態”を応援したいと思っている。

他力野氏 バリューマネジメントという会社で歴史的建造物の利活用をしていて、特に運営を支援している。空き家は増えているが、地方では人口が減少していて経済活動が限られてくる。これを逆説的に考えると、知事法では「何が必要か」ということでもある。必要なものに着目して、大事なものから優先順位つけて残していく。

そこで1950年以前の建物が対象にしている。「無くしてはいけないものを残す」が事業コア。

もともとは事業再生がメーンだった。(建物を)残したい気持ちがあっても、運営が赤字では続かない。よそ者のぼくらが入ると赤字経営が黒字になる、という経営再生が強みだと思う。

以前は建物ごとに個別の案件に対応してきたが、今は地域全体の歴史的建造物を「面的」に残していく仕事が多くなっている。「この街にあったほうがいいもの」を改めて地域にプロットして「まちづくり」を再生していくのが、ぼくらの役割だと思っている。

龍崎氏 ホテルを5店舗経営している。自分で創業した会社で「どのようなホテルがこれからの時代に受け入れられるのか」「これから時代にホテルはいかにあるべきか」を考えてビジネスをしている。

小学生のころに「ホテル始めたい」と思い立った。住んでいた米国の東海岸から両親と西海岸へと1カ月ドライブしたとき、後部座席で揺られながら「どこにつくのか」を考えるのが楽しみだった。最終的に行き着くのはホテルなのだが、どこのホテルもドアを開けると「いつもと同じ景色」。毎日変わるどのホテルも同じで、日本のホテルとも変わらないのがある意味ショックだった。

つまり、ホテル業界はスタンダード化が進んでいて、土地の空気感や文化といった「文脈」から隔離された感じだった。こうした原体験がホテル事業を始めようと考えるきっかけになった。

18歳の時にエアビー(米エア・ビー・アンド・ビー)などの新しい動きがあったり、ゲストハウスブームが起きたりして、「大きな建物じゃないとホテル経営はできない」という先入観が崩れた。部屋1つ、ベッド1つあれば「ホテル」なんだと。そう考えて、自分の身の丈にあったところからホテル経営を始めた。

最初は北海道の富良野で始め、次に地元である京都に「HOTEL SHE京都」、その次は「HOTEL SHE大阪」を出した。このころからいろんな人から依頼が来るようになり、その後は湯河原(神奈川県)の旅館や、層雲峡温泉(北海道)の廃業した温泉旅館をリノベーションして運営するようになった。

大事にしていることは3つあり、

ソーシャルな空間であること。知らない土地の人や他国からのゲストなど、自分と違う価値観を持つ人とも交流できるような空間を作りたい。

「ビジュアル・ドリブン」な空間。自分の問題意識として、ホテル業界には選択肢がないと思っている。例えば、1泊1万円のホテルなら朝食の有無か、温泉の有無か、価格か、駅からの距離でしか選べる余地がない。服を買う時にはブランドごとに思想があって、それを買う人が選んでいる。ホテルも泊まる人の価値観や気分で選べるようなホテルシーンを作りたい。

ローカル性を重視すること。ホテルがその土地の空気感や文化を織り込んで反映している、そのエリアの“メディア”となっているような空間であることが大事だと考えている。

地方創生のためというより、良いホテルを作るには、その地方が活性化されている必要があると思っている。例えば、湯河原なら、それが箱根や熱海、伊豆とどう違うのかという点からブランドづくりを始めて、そのコンセプトに合わせてホテル作りをしていく。旅行において宿泊費の割合は大きく、そこに泊まる人が街の中を回遊するためにはどうすればいいのか、ということをホテル経営に携わるものとして考えている。

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プロフィール

三河主門

三河主門

2017年5月に日本経済新聞社を退社して独立。各種新聞・雑誌・ウェブメディアに記事を執筆しながら、フリーランスの編集者、メディア・リレーションのコンサルティングとしても活動している。日本最大の起業・開業・独立者向けポータルサイト「助っ人」(www.suke10.com)で編集長。17年11月に「Mikawa&Co.合同会社」を設立、中小企業・スタートアップベンチャーのためのPR(広報)コンサルティング、セミナーなどを手掛けるほか、教育関連コンテンツの製作も開始した。
日経記者時代は主に企業取材を担当。産業部(現・企業報道部)記者として長い経験がある。2007~10年にバンコク支局長として駐在した経験と人脈を生かし、タイのビジネス・社会・文化を研究・紹介する活動に長く携わる。


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