成果を出す従業員の給与アップ原資と承認欲求を、経営者はどう満たすか?

ポイント
  1. 経営コスト全般の見直し
  2. 年代別スタッフの意識に気をつけたいこと
  3. 雇用する側の意識の変化が問われるとき

目次 [非表示]

70 年ぶりの労働基準法改正でテコが進む「働き方改革」。労働時間の短縮だけでなく、「労働時間≠成果」という考え方、生産性・効率アップ、多様な働き方の推進、正規と非正規の垣根をなくす、派遣法改正による2018年問題など、国は抜本的に枠組みを変えています。

雇用する側である経営者自身も意識を変えていかなければいけません。時間の使い方が変化し、時間の価値観が変わりつつある現在、従業員の生産性向上はもちろん必要ですが、経営者として経営コスト全般の配分を見直していくことも考え直す必要があるでしょう。

今回のシリーズでは、小規模法人における働き方改革と従業員の自律的キャリア形成のあり方について、ひもといていきます。第3回目は、雇用する立場である経営者が「働き方改革」を推進するうえで考えておきたい経営コスト面のポイントについてです。

給与原資を確保する仕組みを整える

労働時間ではなく、「成果に対しての給与」ということを考えると、毎月かかる従業員の交通費など事務所の固定費の見直しも必要となるでしょう。成果としての給与となれば、従業員一人ひとりの主体性や自律性が問われてきます。ですから、毎日出社という時間的拘束の義務付けも、あえて必要がないかもしれません。

月1回、月2回……と徐々に出勤フリー日をつくることで、経営面では交通費や光熱費といった固定費の削減につながります。一方で、従業員のほうも、「その日は休みにしたいから他の勤務日で仕事を終わらせる!」などと目標を立てるようになり、結果として生産性が上がることもあります

定例ミーティングしか利用しない会議スペースも見直しする企業が増え、今は会議室をシェアしたり外部に提供したりすることで収入とするケースも多くなりました。このような見直しはスペースだけでなく、また働きに行けない方たちのためのテレワークでもなく、現在レギュラーで働いている従業員に対しておこなうようにすることで、固定費の削減に結びついていきます。

もちろん従業員一人ひとりの生産性を高めることも必要ですが、経営者側の視点で経営コストを見直していく必要性があります。

これからは今よりも能力重視の時代へとシフトしていきます。すると高いパフォーマンスを上げている従業員が「給与アップ」を交渉する機会が必然的に起こります。その際には、能力不足のために給与を下げた従業員の差額だけで対応ができるのか、ということも考えねばなりません。

「給与を上げたいが給与原資がない……」という状況にならないためにも、経営者として今から経営コストを見直して、給与原資をつくっていくことが大切です。従業員も出勤時間が少なくなることで、1日1日の時間の使い方を考えていくきっかけにもなります。


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年代により受け入れ方が異なる働き方改革

これらは一般的に若者には受け入れやすく、中堅以上は年齢層では受け入れがたい環境かもしれません。なぜなら、中堅は長年働くために費やした時間を、将来の安定をみすえた年功序列制や退職金制度などの金銭面で要求する環境の中で働いていたからです。昨今の「やりがいを感じる仕事」「自分らしく働ける環境」という言葉は、長年封印していた方が多くいます。

「自分の得意とすることを仕事にする」のはこれまで、アーティスティックな方面や研究・開発面で優れている、ほんのわずかな方々だけの話でした。多くのサラリーマンやOL、は会社からの命令に従い、いやな仕事や自分に合わない仕事であっても、企業の将来性・安定面を自分の将来に重ねつつ、自分と周りの家族の将来設計を考えたうえで会社にしがみついて我慢をしてきた面もあるのです。

その中で、小規模法人としてスタートアップの一員を選んだ30代後半、40代従業員は少なからず、その封印からは先に抜け出しています。起業メンバーとして「がけっぷちで後がない」ようなスタートを選び、創業メンバーとともに理念を共有し切磋琢磨(せっさたくま)している日々の仕事ぶりは、自律しているようにもみえます。

数年がたって事業が安定・成長している企業であれば、その自律した創業メンタリティーを持ったまま活躍できるかもしれません。反対に成果が出てこない場合、それまで以上に悲鳴を上げるでしょう。

必要最低限な物理的欲求である「生活に必要なお金」や、安心して暮らすことを望む「賃金の保障」、退職や解雇などの不安がなく将来性に期待できる「雇用の保障」を不安視してしまうからです。中堅の世代は若者とは異なり、圧倒的に先が短く長期的な視点には不安をおぼえがちです。経営者の視点は中長期的な視点で考えている物事であっても、従業員は数年で積み重ねた結果に不安視してしまいます。

ここが不安定のままでは、職場内や上司・部下・同僚の関係が良好で効率化が図れ、職場環境の向上し、「社会的欲求」という精神面も満たされる、ということにはなりません。近年では、賃金・雇用という物理的欲求のステージにおいても、従業員自身が如何に会社に必要とされているのかという存在価値や意味付与が問われており、また価値提供の必要性も重要視されています。

これはSNS(ソーシャルメディア)のように自分のしたことに対して「いいね!」をもらったり、一緒にジョインして楽しんだりしたいという「共感が強まった時代」になったからこそ、会社に対しても存在価値・意味提供を求める傾向にあるのでしょう。

あなたの会社では、従業員にどのような存在意義を与えながら、今からできる経営コストの見直しを考えていきますか?パフォーマンスの高い従業員を金銭面や存在意義の不安で離職されてしまうことがないように、今から経営者としてできることを考えてみましょう。

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著者プロフィール

岡本 陽子

岡本 陽子

SOARist(ソアリスト)代表 キャリアコンサルタント。1999年、大学卒業後、総合広告代理店に入社。主に求人広告営業をメインに携わり、200社以上3000名のキャリアビジョン・ヒアリングをした経験を生かし、スタッフが健やかに働くためのキャリア支援を行う。「ココロもカラダも健やかに翔(か)けていけるキャリア支援」がモットー。2016年10月に独立し、ソアリスト設立。愛知県出身。