鎖国させない地方起業・地方創生の成功ポイント

ポイント
  1. 新潟とベンチャーをマッチングさせる
  2. 新潟が持つ課題と”鎖国”させないための取り組み
  3. 地方創生のカギは、地方に面白い会社を増やすこと

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新潟県とベンチャー企業、起業家をマッチングさせる

伊藤:本日は宜しくお願いします。星野さんはどんなお仕事をされているんですか?

星野:東京の有楽町でパートナーオブスターズという会社を経営しています。事業内容は主にベンチャー企業のブランディング、広報PRと地方のクリエイターさん支援です。

伊藤:新潟でも事業に携わってらっしゃるんですよね。きっかけはどんなことだったんですか?

星野:もともとうちの会社のブランディング事業で、クリエイターさんを契約させていただいていたのですが、そういう方から「地元に帰っても仕事がない」「あったとしても単価を買い叩かれている」という話を聞いて。

伊藤:仕事がない、というのは地方創生の大きな課題のひとつですよね。

星野:だから、東京で仕事をいただけている僕たちが地方のクリエイターさんに仕事を回すことができたらと考え、2013年にクリエイターさん向けのシェアオフィス・SHAREBASE(シェアベース)を作ったんです。これが私の地元新潟でスタートしたきっかけです。それから新潟の経営者の方々とも接点が増えて、もっと地元に貢献したい、してほしいという声もいただき新潟ベンチャーキャピタル株式会社の取締役にも、ならせてもらいました。

伊藤:新潟でのお仕事もかなり多角的ですね。星野さんのお仕事の時間はどう配分しているんですか?

星野:現時点でいうと、ベンチャーキャピタルと自分の会社で半分ずつですね。ベンチャーキャピタルは、新たなファンドを作るところから一緒にやらせていただいていて、今は数社の投資先も担当して支援などもしています。

伊藤:地方のベンチャーキャピタルって、どういうところからお金が出ているんですか?

星野:メインでお金を出していただいているのは、新潟の地銀さん、それと新潟で上場している大手企業さん、有力企業さんです。それに加えて国の中小企業基盤整備機構というところからも数億円ファンドにご出資いただいています。新潟ベンチャーキャピタルの事業目的としては、新潟に新たな雇用を増やしたり、ベンチャーで地域を盛り上げることを掲げています。
地方発で成功するベンチャー起業家、スケールするための方法 もお読みください。

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伊藤:地方×ベンチャーというと、出資先を見極めるのにも、独特な見方がありそうですね。新潟の企業だけに出資しているんですか?

星野:いえ、新潟県内の企業に加えて、首都圏の企業にもご出資しています。首都圏のベンチャー企業に対しては、新潟の企業と組めるかや、新潟の抱えている課題に対してのソリューションを提供できるかを検討してご出資をさせていただいています。

伊藤:東京にいても主旨にフィットする企業は投資対象として考えていらっしゃるんですね。

星野:そうですね。他のエリアやベンチャーキャピタルの友人たちが地方に対してのソリューションを提供できる企業を紹介してくれるので、そういうカテゴリーも検討させていただいています。

どうして新潟県?起業支援の理由は?

伊藤:そもそもの話なんですが、星野さんはどうして新潟なんですか?ご出身というものもちろんあると思うんですが、なにか究極の理由があるんですか?たとえば、魚沼産のコシヒカリがあるから、それが圧倒的にビジネスのタネとして必要だって言われたら、あーそうだなって合理性がわかるじゃないですか。京都なら圧倒的に世界的なブランドだからとか。

でも普通の地方ってそんなのなくて、いくら素敵な山や川や人があっても、どの地方にもあるから結局一緒じゃないですか。それってどういう風にお考えですか?

星野:僕も基本的には差はないと思っています。でも、ただ一つあるとすれば、新潟には現時点で応援してくれてる先輩の経営者の方々が非常に想いが強く、若手を熱心に応援してくれているので、それは非常に強い財産だと思っています。

伊藤:それはどうして応援してくれるんだと思いますか?

星野:新潟の経営者の方々は創業し事業を大きくされた、いわゆる創業経営者が第一線で多くいらっしゃり、後継に対する課題意識を強く持っていらっしゃるからなのかなあと思っています。

新潟が持つ課題と”鎖国”させないための取り組み

伊藤:新潟が特有で持っている課題はありますか?

星野:特有ということはないと思いますが高齢者の比率が急速に高まっていたり、若者が首都圏に出やすい立地のため人材流出、農業人口が減少、高齢化など他の地方にもある課題が新潟にもあるという感じで、新潟特有の課題ということはないと思っています。

伊藤:やはりどこの地方も大変なのは若者・人口ですよね。

星野:はい、危機感は強いと思います。というのも、新潟県は明治時代までは日本で最も人口が多かったと言われています。その頃は港主体で取引がされていたのでマーケットも大きかったんですね。それが、内陸の交通手段が良くなって、東京へ集中して、新潟からは人がどんどん流出していきました。

過去が良かったからこそ、徐々にシュリンクしていく新潟をどうするかには、危機感を持っています。

伊藤:上の世代の危機感が強いんですね。星野さんから見て、新潟の中で若手でシード段階のベンチャーって結構いるんですか?

星野:少ないですが、学生で起業したいとか関心がある方もいます。でも実際、新潟県内にそういった起業・ベンチャーに関するリアルな情報は少なかったりするので、どうせ起業するなら情報が集まっている東京にと、感度の高い人は東京に出てきちゃっていますね。

伊藤:分かります。僕もいろんな地方行ってみて、地元の人たちも地方の中から起業家を出したいと思っているはずなんですけど、地方の概念にこだわり過ぎちゃうと、ただの鎖国みたいな話になっちゃうんじゃないか?とも思うんですよね。サケが川で生まれて海で育って帰ってくるみたいに、人も一回東京に出しちゃって戻ってきた方が強くなるんじゃないかと感じます。

でも、地元の人達の「東京に行かないで」「地元企業に就職して」という気持ちも分かるんですが、地方や企業が生き残りのために求めている人ってそういう言われたことを粛々とやっている人ってわけでもないんですよね。新しい未来が作れるパワーがある人や、”当たり前”を壊せる人が地方にいないと、地方は良くなっていかない。

そういう意味でいうと、まだ地方でベンチャーを育てるということがわからなくて。地方を良くしようと思ったときに、今の状況ってできると思っていますか?こういう仕組みを地方に入れたほうがいいな、みたいなこともあれば教えてください。

星野:私たちも地方内の純粋培養で起業家を育てるのはかなり厳しいかなと思っています。純粋に新潟に居たまま起業してしまうと、情報も鎖国というわけではないですが、その世界だけになってしまうので、外から連れてくることが必要だと。

新潟に限らず、地方に課題があると考えているベンチャー経営者は、東京に結構いらっしゃいます。そういう人たちを、少し強引にでも新潟の課題に当てはめてチャレンジしてもらう。本当に課題解決できるのか?という実証実験は僕たちがサポートしていくので、実証できたら新潟に入ってしっかりスケール・収益を上げてもらう、というのが今構想してる理想図です。

伊藤:ずっと地元にいるメンバーは、その「よそから人を連れてくる」という考えを理解していますか?

星野:大多数の人は新潟で起業している人を応援したい、地元で頑張っている人を応援したい、と考えている方が多いように感じています。だからこそ、結果を出さないと地元の方々にも納得していただけないです。早く結果を出して、「あの人たちが来て良かったよね」と言っていただけるようになりたいと考えています。

農山漁村地域の起業に、チカラを「INACOME」

農山漁村が活力を取り戻し、持続可能な発展を実現するためには、何よりもまず、雇用と所得を生み出すことが重要です。農山漁村には魅力的な資源が豊富にあり、これを活用した多様な事業を起こすチャンスに溢れています。農林水産省では、豊富な資源とやる気溢れる人材、そして必要な資金を組み合わせ、農山漁村地域に新たなビジネスを生み出すことを目的として、Webプラットホーム『INACOME』を設置しました。

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著者プロフィール

伊藤 健太

伊藤 健太

1986年生まれ、横浜出身、慶應義塾大学法学部卒業。

23歳の時、病気をきっかけに、小学校親友4名、資本金5万円で株式会社ウェイビーを創業。

10年間で10,000人を超える経営者、起業家の「組織づくり」「売上アップ」に携わる。

社長がいなくても回る強い組織、仕組みをつくる「01組織クラウド

小さな会社、個人事業主のビジネス成長を実現する「01クラウド

の01シリーズを展開中。

2016年10月より、世界経済フォーラム(ダボス会議)の日本代表選抜
2018年9月より、徳島大学客員教授就任
2020年4月より、iU 情報経営イノベーション専門職大学客員教授就任

「行動の品質」「自分の力で稼ぐ力を身につける本」など著書7冊。
日経新聞、エコノミスト、NHKなどメディア掲載も多数。

星野 善宣

星野 善宣

北海道大学工学部卒業後、専門商社(株式会社日立ハイテクノロジーズ)にて海外(アジア市場)営業経験。コンサルティングファームにて、ベンチャー、中小企業の事業変革に向けたコンサルティングに従事。クライアントからの評価に後押しされ独立し、20071月パートナーオブスターズ株式会社設立。同社代表取締役。

2015年 新潟ベンチャーキャピタル株式会社 取締役(兼務)

「わくわくをカタチにする」をコンセプトとして、ベンチャー企業を中心としたブランディング、広報PRをサポート。

2012年からはベンチャー採用と学生の就職課題の素リーションとして、ベンチャー企業向け採用ナビサイト「ビズキャン」、学生参加型メディア「ビズキャンプラス 」を提供。

2013年には地方クリエイター向けのシェアオフィスSHARE BASE(シェアベース)を展開スタート。また、地方創生に取組むべく地元新潟のベンチャーキャピタルである新潟ベンチャーキャピタル株式会社の取締役を兼務。