鎖国させない地方起業・地方創生の成功ポイント

ポイント
  1. 新潟とベンチャーをマッチングさせる
  2. 新潟が持つ課題と”鎖国”させないための取り組み
  3. 地方創生のカギは、地方に面白い会社を増やすこと

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「完全に新潟県に事業基盤を置かない」意図とは

伊藤:実際に新潟以外の会社に出資して、新潟とコラボしたところや、新潟に拠点をおいたケースはありますか?

星野:今、新潟で注目されているはフラー株式会社さんですかね。社長含め、経営陣、スタッフの多くが新潟出身というベンチャー企業です。新潟ベンチャーキャピタルの運営ファンドから出資させてもらってから、開発拠点を新潟にも置いてくれています。それこそ長岡花火のアプリや新潟企業のスノーピークさんのアプリを作ったりと活躍されています。

伊藤:なるほど。創業の方々は新潟に何か貢献したいという気持ちは持ってらっしゃるのですか?

星野:非常に強く思っています。彼らは長岡高専を出ていますが、高専とも提携を結んでいたそこの学生をエンジニアとして採用・育成しているそうです。

伊藤:こういったことは、きっかけとしても良いですよね。

星野:ええ、動きとして。こういった会社が上場して活躍してくれると、非常にインパクトがあるんじゃないかと思います。

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伊藤:どういう経緯でフラーさんの出資の運びになったんですか?

星野:最初は知り合いのキャピタルさんからご紹介をいただいて、新潟出身で頑張っていて次ファイナンスする段階だという話を聞いたんです。新潟ベンチャーの代表が、いろいろ話を聞いている中、ぜひ地元に貢献したいというところから、出資応援させてもらうので「新潟に拠点作ってチャレンジしよう!」という感じで取り組みが始まりました。

伊藤:拠点作りの橋渡しなど、もともと構想していた形でご一緒しているということなんですね。

星野:新潟ベンチャーは、行政との関わりも深く、起業家育成などもお手伝いしているため、「新潟にいる人を応援したい」とか、「Uターン、Iターンで新潟に来るひとは応援する」みたいな思想がベースにあります。もちろん、それは大事なのですが、僕は外からの目線ももってそこにプラスαの何かを変えていきたいなあと思っています。

僕自身は、東京に基盤をずっと残したままにしているのも、完全に新潟に入っちゃったらあまり価値がないんじゃないかなあと考えているためです。地元に入ることを選ぶことで簡単にできることもあるかも知れませんが、東京に残すことを意識しています。

伊藤:必ず100%地方の中でコミットしないといけない役割の人もいるし、客観的に外から見る役割の人の両方がいたほうが良いですよね。今、投資先をサイトで見せてもらってるんですが、新潟への投資とほかの地方への投資の比率はどれくらいですか?

星野:現状は、新潟県内の企業が4割、あと6割程度は首都圏といった感じですかね。ビジネス的には、首都圏のご出資先は、新潟に絡んでいただいたり、U・Iターン促進ビジネスをやっているベンチャー企業などですね。そうったベンチャー企業が地方(新潟)に対してソリューションが確立できれば新潟としても嬉しいので。応援させていただいています。

起業前の準備ややることを起業家が対談しましたのお読みください。

地方起業の成功のカギは、地方に面白い会社を増やすこと

伊藤:今考えている事や、今後やっていかれることで、どんなことが大切で必要だと考えていますか?

星野:地方にとって一番は、面白く働ける場所が必要だなと思っています。新潟だけで純粋にやっていてもそういう企業が増えるかっていうのは難しいので、支店としてでもいいから東京でイケてるベンチャーさんを紐づけるというのをやっていかなくてはいけないなというのが1点。

あとは課題のマッチですね。僕が代表する会社ではクリエイター向けのシェアオフィスを新潟でやっているのも、クリエイターの働き方が地方にマッチしているだろうなという考えからです。今現在は、僕の会社が案件を東京で取らせていただいて地方クリエイターにお願いしているので、これの企業の連携版をやりたいと思っています。

東京で働いていて疲れちゃっているITエンジニアとかクリエイターって、結構いっぱいいますよね。そういう方々が地方でクリエイティブな仕事をしながら、農作業をやったり、地方の特産物をブランディングしていくというところを紐づけていけたら、ちょっと疲れちゃっている首都圏の人の課題と、人が居ないという地域課題がマッチするかなと考えています。

10代、20代で未経験で起業を成功させる方法もお読みください。

伊藤:最初におっしゃった面白く働ける場所が大切だってホントそうですよね。新潟に限ってではなく、面白い会社ってホント少ないですよね。さっきの話じゃないですけど、自分で率先してアイディア出していって、「この会社のやり方って古くないですか」っていうのを言える人が地方を新しく作り直していかないと、地方の中核企業すらダメになっていくし、地方自体って良くなっていかないんじゃないかなって思います。

今地方に足りないのはリクルート力ですよね。そうすると、星野さんがおっしゃったような、「地方の外から一本釣り」みたいなやり方で、形で根付いてもらったり、地方課題を解決したりすれば、外に出ていた優秀な子が「面白い会社がある」と戻ってきてくれるかもしれません。そうすればその地方にはポテンシャルが残るので、とても大切なことですよね。

星野さんは、面白い会社ってどうやったら増やせると思います?

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星野:地方に面白い会社を増やしていくのは、ある程度の母数までの会社を同時多発で新潟にもってこないといけません。なかなか一社だけで頑張れるものではないので。まだ僕らが関わって集めた企業は少ないと思うので、まず母数を増やしてベンチャーメンバーが交流できる状況を作ることが必要だと考えています。

伊藤:5年かけて10社になりましたってのもいいんですけど、集中してやらないと孤立してしまいますよね。

星野:地方に「入ってくる時」って意識が高いし、やる気があるんですけど、半年・一年してくると地方の雰囲気にのまれちゃうので・・・。モチベーションを保つために必要なのは母数がなんじゃないかなあと思うんです。まだ仮定ですけど。

伊藤:なるほどなあ。村みたいにした方がいいってことですか? 

星野:コミュニケーションをとれるようにすることが必要だと思っています。あとは僕と同じように、常駐ではなく副業的な形で新潟とかかわっていくスタイルで数多くの方に来ていただけるような仕組みがあったほうがいいのかなと思ってます。

伊藤:星野さんみたいな動き方って地方を良くする動きだと思います。

星野:あとは今考えてる段階で言うと、僕の周りでもIPO、イグジットした仲間が増えてきているので、そのメンバーも「地方って、これからおもしろいよね」「東京にいるベンチャーの社長達も意外と地方と何かやりたいよね」と言ってくれているので、ある程度規模になっているベンチャーの仲間と一緒に取り組めていけたらいいなと思っています。

どういう起業家にポテンシャルを感じる?

伊藤:星野さんは面白い顔を複数お持ちだと思うんですけど、助っ人自体の記事読んでくれてる人って、これから会社立てたいという1~2年目の人が多いんですよね。やり始めの人に対してうまくやっている起業家・経営者と、そうじゃない人がたくさんいるので、参考までにお聞きしたいのですが、どういう会社にポテンシャルを感じたり、筋がいいなと思われますか?

星野:経営者を見る意味で言うと、失敗してもガンガンやっていく人の方が力強くきっちりビジネスをブレイクさせてるなと感じてます。失敗を恐れてビジネスをやっていると、どうしても個人事業主のちょこっと毛が生えたくらいの事業しかできなくなるので、失敗してもめげずに持ち上がってくる人を見ています。基準としては「経緯」を見て考えます。

伊藤:そういうのは、どういうところでジャッジしているんですか?

星野:疑問に思ったらどんどん聞いてみます。そういう経験をしている人は、大体自分できちんと考えを話せるので。失敗を恐れている人は恥ずかしいと思っているためか、自分の失敗をなかなか言ってくれないんです。だからこそ、あえてこういう風に失敗して、こうリカバリーしました、というような話を聞くようにしています。

農山漁村地域の起業に、チカラを「INACOME」

農山漁村が活力を取り戻し、持続可能な発展を実現するためには、何よりもまず、雇用と所得を生み出すことが重要です。農山漁村には魅力的な資源が豊富にあり、これを活用した多様な事業を起こすチャンスに溢れています。農林水産省では、豊富な資源とやる気溢れる人材、そして必要な資金を組み合わせ、農山漁村地域に新たなビジネスを生み出すことを目的として、Webプラットホーム『INACOME』を設置しました。

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著者プロフィール

伊藤 健太

伊藤 健太

1986年生まれ、横浜出身、慶應義塾大学法学部卒業。

23歳の時、病気をきっかけに、小学校親友4名、資本金5万円で株式会社ウェイビーを創業。

10年間で10,000人を超える経営者、起業家の「組織づくり」「売上アップ」に携わる。

社長がいなくても回る強い組織、仕組みをつくる「01組織クラウド

小さな会社、個人事業主のビジネス成長を実現する「01クラウド

の01シリーズを展開中。

2016年10月より、世界経済フォーラム(ダボス会議)の日本代表選抜
2018年9月より、徳島大学客員教授就任
2020年4月より、iU 情報経営イノベーション専門職大学客員教授就任

「行動の品質」「自分の力で稼ぐ力を身につける本」など著書7冊。
日経新聞、エコノミスト、NHKなどメディア掲載も多数。

星野 善宣

星野 善宣

北海道大学工学部卒業後、専門商社(株式会社日立ハイテクノロジーズ)にて海外(アジア市場)営業経験。コンサルティングファームにて、ベンチャー、中小企業の事業変革に向けたコンサルティングに従事。クライアントからの評価に後押しされ独立し、20071月パートナーオブスターズ株式会社設立。同社代表取締役。

2015年 新潟ベンチャーキャピタル株式会社 取締役(兼務)

「わくわくをカタチにする」をコンセプトとして、ベンチャー企業を中心としたブランディング、広報PRをサポート。

2012年からはベンチャー採用と学生の就職課題の素リーションとして、ベンチャー企業向け採用ナビサイト「ビズキャン」、学生参加型メディア「ビズキャンプラス 」を提供。

2013年には地方クリエイター向けのシェアオフィスSHARE BASE(シェアベース)を展開スタート。また、地方創生に取組むべく地元新潟のベンチャーキャピタルである新潟ベンチャーキャピタル株式会社の取締役を兼務。