地方起業の成功に向けて、地域コミュニティを理解する

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近年では、副業の解禁によって多様な働き方が生まれ、日本においても都市部では、カフェやコワーキングスペースなどを活用して仕事をするフリーランスや個人事業主が増加しています。働き方が多様化してきたことによって、地方においても自治体がヨソ者を受け入れる体制づくりに力を入れている自治体も出てきています。

例えば、徳島県神山町。この町では、IT企業のベンチャーが集まってきていて、16社もの企業が神山町に本社やサテライトオフィスを置くようになったのだそうです。
神山町に決めた企業は、インターネット環境が整っていること、民間主導型で移住やサテライトオフィスの検討を行う企業のサポートを行っていて、行政はあくまでもフォローするといった仕組みができていることが理由として挙げられているようです。

そして、不安要素の一つとしてあげられる地方におけるコミュニティも、決して閉鎖的ではなくゆるやかで寛容的なのだそう。多様性を受け入れることに成功したからこそ、まちの外から次々と企業や人が入り込んでいるのでしょう。

環境整備ができている地域がある一方で、まだまだ閉鎖的な地域があることも事実で、会社を興したものの都市部とは異なる地域文化や独特な風習になじめず、地方での活動を断念する人たちがいることも現状としてあります。

地方での起業を目指す人は、その地域にどんな人やどんな団体があってどのような活動が行われているのかを知っておくとよいでしょう。
理解しておくだけで、十分に地方起業も成功に近づけるのです。

地域コミュニティとは?

そもそも、コミュニティとは一体なんなのでしょうか?

昨今、都内ではコミュニティービルダーといった肩書きで活動する方や、毎日何かしらのイベントが開催されているようなコミュニティスペースを見かける機会が増えてきたと実感している人も多いでしょう。地方においても地域によっては積極的にコミュニティ活動を活発にさせる人も増えきています。

専門家たちの定義

コミュニティの定義は統一されてなく、これまでもさまざまな表現がされてきました。ここでは、専門家たちがそれぞれの観点からコミュニティや組織の在り方や要素について示している定義をご紹介していきます。

▼理論社会学者・マッキーバーの定義
「一定の地域のうえに展開される自生的な共同生活」

アメリカ社会学で最も優れている理論学者、またコロンビアの名誉教授でもあるマッキーバーが唱えたものです。これは現代にあてはめると、地域だけに特化したものではありませんが、コミュニティとは「自然発生的にできるもの」であると述べています。

▼心理学者・マクミラン&チャビスの定義
「メンバーがお互いの存在に価値を感じ自分の貢献がほかの参加者にプラスに波及すると信じられる状態」

心理学者のマクラビンとチャビスが1986年に「Sense of Community」という論文においてコミュニティに必要な要素として発表したものです。

地域コミュニティ

これらの内容からすると、都内で起きているコミュニティの動きはSNSなどを介して集めるような自然発生的であるとは言い難い部分があります。地方起業で地域になじめずに離脱するのは、こうしたコミュニティの生まれ方に都市部と地方で感覚の違いが生じているから起こっているのではないでしょうか。

地域の中には、核となる団体や集団に人が集まっていて、その人たちはマクミランやチャビスが定義したように自分の貢献が、集団にいるメンバーにプラスになることがあるからこそコミュニティの維持がなされ、その中で完結していることが多いのでしょう。それが、ヨソ者からすると「地域で交流がうまくいかない」「この地域は閉鎖的だ」と感じるのではないでしょうか。

これから地方での起業をする人、今後地域と関わる仕事をする人たちは、ぜひその地域にある核となるコミュニティは何であるのかを見極めてみてください。

さまざまな組織や団体、個人の集団があるので、全てと関わるのは難しいですが、一度地域の核となるコミュニティに関わることができたら、きっと事業の広がりや地域が受け入れてくれることにもつながっていくでしょう。

地域コミュニティの課題点

日本の人口減少、少子高齢化によって、地域ではコミュニティの高齢化や運営が危ぶまれていることも多い現状にあります。
公益財団法人 東京市町村自治調査会が行った多摩・島しょ地域のコミュニティの現状と課題に関する調査の事例をご紹介します。以下の定義のもと現状と課題が出されました。

・テーマ型住民組織:自分たちが抱える課題を解決するためなど、あるテーマを持って住民が集まり活動する組織。ある一定の地域の住民によるもの。
・地縁型住民組織:ある一定の範囲に居住する住民で構成される組織。
・住民同士のゆるやかなつながり:組織化されていないが、必要に応じて、柔軟に、自由に、集まることができるつながり

その中で、自治体の地域コミュニティが抱える課題として“住民同士のゆるやかなつながり”においては、「現役世代が地域コミュニティに関わりを持ちにくい」と回答したのが半数を超える51.3%で最も高くなりました。

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また、“地縁型住民組織”においては自治会・町内会などの地縁型住民組織の担い手の固定化や高齢化、また参加者の減少の課題があるようです。同じく“テーマ型住民組織”に関しても課題を尋ねたところ、「テーマ型住民組織の、活動の幅や参加者等の広がり不足」や「担い手の固定化・高齢化」といった回答が出されました。

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こうした現状の中で、地域の人たちは今後コミュニティがどうなっていくかという問いに「住民自ら行動する機運が高まる」「地域住民のニーズを掘り起こしそれを反映させた運営や活動を行うようになる」といった活発な動きが出てくることを予想しています。

コミュニティの現状と課題を把握することで、地方起業の際にも自分たちがどのように地域と向き合い活動していくかに変化が出てくると思います。より事業を推進していくためにも、地域にある集団の動きもしっかり把握しておくとよいでしょう。

おわりに

現在、地域のコミュニティは多様化している一方で、田舎ではまだまだ昔ながらのつながり方で成り立っているコミュニティもあります。
地方での起業を成功させるひとつの方法として、「地域になじむこと」をお伝えしてきました。
なじむことでより事業の成功に近づけるよう、コミュニティの理解を深めてみてください。

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