【事業承継】お米文化を守りたい〜生き残りの鍵はブランディングと情報発信にあり!

千葉県銚子市のお土産品の中でも高い人気を誇るぬれ煎餅。

煎餅の元となる「米」と「煎餅生地」の製造・販売を行なっているのが、創業明治34年の根本商店だ。元は米屋から始まり、現在はより多くの人に米の魅力を伝えるためさまざまな商品を世に送り出している。

代々続いていきた事業を守りながら、新たな挑戦を続ける根本吉規さんにお話を伺った。

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現在の事業について教えてください。

助っ人編集部

根本

根本商店では、お米とお煎餅生地の製造・販売を行なっています。創業は明治34年で、私は5代目になります。 元々は米のみを取り扱っていたのですが、3代目の祖父の代からは煎餅の生地の製造・販売も行なっています。

100年以上の歴史があるんですね!根本さんが会社を継ごうと思ったきっかけはなんですか?

助っ人編集部

根本

幼い頃から祖父や父の働く姿を近くで目にしたので、いつかは長男である自分が継がなければという思いは漠然とありました。私が大学に入った頃、銚子ではぬれ煎餅ブームが起こり、煎餅生地の需要が一気に増えたんです。その忙しさもあってか、祖父が体を壊してしまって… 本当は、一度どこかの企業に就職してから実家に戻ろうと考えていたのですが、大学卒業と同時に稼業に入ることになったんです。

稼業を継ぐことに対して葛藤はなかったんですか?

助っ人編集部

根本

どこかの企業に就職したとしても最終的には実家に戻るつもりでいたので、そこまで葛藤はなかったですね。むしろ銚子のせんべいをもっと日本中に広めたいという気概で頑張ろうと思いました。 祖父も父も仕事人間で、日曜の定休日以外は働いていたので、子どもの頃はどこにも連れて行ってもらえないことへの不満はあったものの、大人になってからはそんな風に働く姿がカッコいいと思うようになったんです。

先代からの引き継ぎはうまくいきましたか?

助っ人編集部

根本

今も喧嘩ばっかりですよ(笑) 父は職人堅気なので、何か新しいこと始めることへの嫌悪感があるんですよね。しっかりと説明しても出来ないという一言で終わらされてしまうんですよ…

どうやって対処されているんですか?

助っ人編集部

根本

 

実例を具体的に説明をして徐々に心を溶かしていくことが一番ですね。これはお客さんに対しても同じことだと思っているので、あせらずに時間はかかってもしっかり納得してもらえるように務めています。

 

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情報発信で昔ながらの事業に新しいを風を 

稼業に入られて何が一番大変でしたか?

助っ人編集部

根本

最初は作業内容を覚えることが大変でしたね…煎餅を作る機械がとにかくたくさんあるんですよ。使い方を覚えるのはもちろんのこと、その機械がとにかく古いので、ネジがインチ規格のままだったり。その修理まで覚えなきゃいけないので、かなり苦労はしましたね。

修理まで覚えなきゃならないんですね…

助っ人編集部

根本

修理を業者に頼んでもすぐに来てもらえない場合もあるんですよ…。すぐ対処しないと仕事にならないので、修理を覚えることは必須でしたね。

挫けそうになったことはないんですか?

助っ人編集部

根本

辞めたいと思ったことは結構ありますよ(笑) うちの事業は「BtoB」がメインだったので、必死に仕事をしてもお客さんの顔があまり見えないんですよね。そうなるとモチベーションを保つのがなかなか難しくて… このままではいけないと、お客さんとのコミュニケーションを取る機会や接点を増やすようにしました。

どのように接点を増やしているんですか?

助っ人編集部

根本

最近はワークショップやイベントなどを行なっています。ダイレクトに感想をもらうことでやりがいにつながるようになりました。 また、人との接点を増やすためにいろんな場所に顔を出すように心がけています。

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やはりお客さんから直接感想をもらえると嬉しいですよね!事業を続けていく中で今後、どのような課題があると考えますか?

助っ人編集部

根本

今、糖質制限などが流行っていることもあって、お米=太るというネガティブなイメージが結構ついてしまっていて…作る人も食べる人も減っているんですよ。でも、私は日本の食文化の中心である「お米」をもっとたくさんの方に食べて欲しいと思っているんです。そのためには情報発信の工夫が必要かなと思っています。

情報発信ですか?

助っ人編集部

根本

どんなにいいものを作っても、それを正しく知ってもらえないと、お客さんに届けることは出来ないですよね。どうしても代々続く企業などはこういった情報発信が苦手なので…
こだわりを持っていい商品を作る職人の発想と、時流をよんで商品などの情報を発信することが重要になると思うんです。  

具体的にどのようなことをされていますか?

助っ人編集部

根本

2016年に銚子のお煎餅屋さんの協力を経て、銚子のおせんべい屋さん全てのおせんべいが入った、ぬれ煎餅の食べくらべセット、「日本一の銚子しょっぱいせんべい食べくらべセット」をうちから発売したんです。 職人さんたちに代わって銚子のおせんべい業界の営業部長になろうと思いまして。こちらはその年の農林水産省主管のフードアクションニッポンアワードで入賞しました。情報発信ってやはり重要だなと思いました。

 

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体験型の情報発信で多くの人の興味を引く

ご自身の代になって新しく始めたことはありますか?

助っ人編集部

根本

煎餅が作られる過程を体験することができるワークショップと煎餅生地の小売をはじめました。
ワークショップでの体験はとても大きな情報発信になると思っていて、若い世代の方に興味を持っていただくきっかけにもなるかなと考えています。

私も実際に工場を拝見させていただいて、身近にあるお煎餅がこんなふうに作られているのだと驚きました!

助っ人編集部

根本

ただ煎餅を焼いて終わりというワークショップではなく、米屋としての視点を大事にしようと思っているんです。
米を粉にして蒸し器に入れて、練って、どんどん煎餅になっていくとう”お煎餅ができるまでのストーリー”を伝えるようにしています。

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新しい商品と新しい付加価値

煎餅生地の販売を始められたきっかけは何だったんですか?

助っ人編集部

根本

今まで煎餅生地は卸をメインに行なっていましたが、たまに直接お店に買いに来る方がいらしゃったんです。そこで小売販売もいけるのではないかと考えたんです。 ただ、煎餅生地を見たことがない人が圧倒的に多い中で本当に商品が売れるのかという疑問もあって、なかなか販売に踏み出せずにいました。

たしかに、普段煎餅生地を目にする機会はないですもんね。

助っ人編集部

根本

そうなんですよね。そんな時に異業種の人から「うちのお店に置いてみよう!」という提案をしていただいて。手作り感満載のパッケージの商品を置いてもらったんです。そしたら、店頭に並べてすぐに5〜6パック売れたんですよ。

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すごいですね!

助っ人編集部

根本

これは、もっと上手に情報を発信できたら、上手くいくのではないかと思いました。 そのために必要なのが”体験”という付加価値をつけることだと思ったんです。 例えば煎餅生地をお餅のように網の上で焼いたり、バーベキューでお肉と一緒に焼いてもらうとか、そういう新しい体験が提供できると、もっとたくさんお方に購入してもらえるのではないかと考えたんです。

バーベキューでお煎餅を焼くって新しいですね!

助っ人編集部

根本

私は今のままの煎餅文化を守っていくだけではいつか限界がくると考えているんですよ。なので、時代に合わせた新しい提案が必要だと思っています。
商品化した「かんたん手焼きせんべいの素」は2018年1月の東京ドームで行われたふるさと祭り東京のおみやげグランプリで、クールジャパン賞をいただきました。これが励みになりましたね。やってきたことが認められた感じで。 もう一つの商品である「コメの実」は電子レンジに入れて1分でできるライスクラッカーなんです。ディップにしたり、クラッカーの代わりにしたりと手軽に食べていただくことが出来ます。これも従来のお煎餅ではなく、新しい提案ができればと考えた商品です。

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インスタなどとも相性が良さそうですね。根本商店さんはSNSでも情報を発信されていますよね。

助っ人編集部

根本

そうですね。インスタでは”ライスレボリューション”を掲げていて、お米の新しい食べ方を発信しています。
インスタは情報をユーザー自らが探すツールなので、うちのことを検索してくれる様にハッシュタグを工夫するなどしていますよ。 今の若い人たちはインスタで情報収集することが多いので、そこに向けてのアピールもできればと思っています。

 

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インスタグラムより

こういった日本ならではの食文化の発信は海外の方も興味を持たれそうですよね。

助っ人編集部

根本

昨年の4月にアメリカのヒューストンで行われたジャパンフェスに参加させてもらいました。その時にお煎餅を焼くワークショップを行なったのですが、ご好評をいただきましたね。海外ではお米はヘルシーという考えもあって、お米を原料としているお煎餅に興味を持ってくれたんですよ。

海外でのワークショップでは、味付けなどもその国にあったものにされるんですか?

助っ人編集部

根本

そうですね。煎餅は味付けも自由なので、アメリカならではの味付けをして楽しんでいただきました。どういったものが海外でうけるのか実際にやってみないとわからないので、お客さんの反応を生で見ることが出来、とてもいい経験になりましたね。

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銚子のお米をもっと多くの人に食べてもらうために!

ご自身の後継者についてはどのように考えていますか?

助っ人編集部

根本

私は高校1年生の息子がいるので、継いでくれたら嬉しいという気持ちはあります。 ただ、継いで欲しいと思う反面、外の世界も見て欲しいという思いもあるんです。どっちにしろ決めるのは本人だと思うので、血の繋がりがなくても同じ志がある人がいればその人に後継者になってもらうのもありかなと思っています。

柔軟な決断が必要になるということですね。

助っ人編集部

根本

そうですね。跡取りがいても出て行ってしまう人もいますし。今、個人営業をしている会社の多くが後継者問題を抱えていますよね。なので、M&A含め、外部の力も必要だと思っています。

根本さんの今後の目標について教えてください。

助っ人編集部

根本

 

1番の目標はお米の消費量をあげることです。煎餅生地の販売もそうですが、軸になっているのはお米文化を守っていくことなんです。 今後もお米を食べてもらうために、見た目も味も楽しい商品を作っていけたらと思っています。千葉県の美味しいお米を全国・全世界に向けて発信していきたいですね。

 

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やはり情報発信が肝ですね!

助っ人編集部

根本

そうですね!私の幼馴染も銚子で畳屋を継いでいるんですが、彼は地方から世界へ情報発信して、海外のお客さんも多く抱えているんです。
彼からはブランディングの仕方や横の展開の仕方など様々なことを勉強させてもらっています。こういった銚子で頑張る人たちと協力しながら地域を盛り上げていきたいですね。

これから地方で起業する人にアドバイスをお願いします!

助っ人編集部

根本

こだわりを持って事業をすることと、足を使って人に会うことが大事だと思います。 そして、その土地に根ざした企業になって欲しいと思います。そのためには縁を大事にすることが必要です。縁を大事にしていると信頼関係が生まれると思うんです。

本日はありがとうございました!

助っ人編集部

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インタビュイー・対談参加者

桃井美里

桃井美里

2018年から、日本最大の起業・開業・独立者向けポータルサイト「助っ人」(www.suke10.com)の編集チームで、コラムを担当。 こども写真館「スタジオマリオ」の店長を経て「助っ人」編集部へ。 イラストや写真を用いて、難しく考えられがちな『起業』をもっと身近に感じることのできるコンテンツの発信に取り組む。 フリーでナレーター・MC・イラストレーターとしても活動中。
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