「24時間型ジム市場」の勝算は(あすへのヒント)
- ファミマの24時間ジム参入は成功要素を多く持っている
- 強者の戦い方を学び弱者の戦い方に変換せよ

1階がコンビニ、2階がジムの店舗を展開して集客力を高める
変化のスピードが激しい時代、起業家は、経営者は、何をみつめてビジネスの種を探せばいいのか。「助っ人」編集部員らが普段の仕事や暮らしから探し出した起業家へのワン・テーマを、コラム「あすへのヒント」としてお届けします。
2018年1月。大手コンビニエンスストアチェーン、ファミリーマートが24時間型ジムへの参入を発表した。ファミマ店舗の2階に設置する形からスタートするが、駐車場を持つ郊外型店舗などでは敷地内に別途ジムを設けることも検討していくとのこと。
全く畑違いの参入のように思えるがその理由は明確だ。飽和したコンビニ市場で既存店の集客をいかに向上・維持するか。従来のコンビニ機能の「かけ算」として目をつけたのが健康ニーズの取り組みなのだ。
日本生産性本部発行の「レジャー白書2017」によれば、フィットネスクラブの市場規模は2000年に3650億円。それが2016年は4480億円まで拡大し過去最高を記録した。フィットネスクラブ数も、パーソナルジムや小型のスポーツクラブなどを中心に増加傾向にあり、健康志向へのニーズが高いのは間違いない。
初めての試みだけに賛否両論あるが、筆者は今回のコンビニ×24時間型ジムという掛け算は非常に目のつけどころがいいと感じている。
その理由は大きく分けて3つである。
1つは新規参入に比べて、既存店の2階や余剰スペースを用いるスタイルは経済的・時間的な障壁が低いことだ。
24時間型が適している土地を探し、そこで賃貸契約を結び24時間型の専用ジムを作る。フランチャイズ型ビジネスではIC化や内装のコストを削減することでメリットは大きくなるが、既存店からの展開という点で初期段階での負担を軽減させることができるだろう。
ファミマは5年後をめどに300店舗のフィットネス併設店展開を目指していると発表。当然スピード感のあるFC化が必要だが、既存店を改築するスタイルであれば年60店舗のペースは現実的といえるだろう。
2つ目は既に集客に関する圧倒的なデータを保有している点。
大手コンビニグループでは、コンビニ設置する際のリサーチに始まり、各店舗における性別や人口分布など大量のデータを保有している。収益の見込みありと判断され設置されているのが既存店であり、その中からフィットネスジム併設に適している店舗を抽出するのはたやすいはずだ。
そもそも24時間型ジムにしたのも、コンビニの中心客層である20~40代の男女とターゲットが一致していると判断したからだという。数多くの既存店舗の中から、特にターゲット層が多く適した立地に素早くジム併設店を置くことで、ファミマのバリューは大幅にアップするだろう。大企業にこそ向く戦い方を選べる点は強みだ。
3つ目が会社の最終ゴールをジムでの収益に置いていない点だ。
極端な話、オープンから1年程度でジム単体での収益が黒字化し、2~3年かけて初期投資が回収できれば、この取り組みは一定の成功といえるはずだ。
ファミリーマートがこの試みを始めた最大の目的は、飽和したコンビニ市場における集客を確保すること。ジムを利用することで、連動しているコンビニでの客単価が上がり、周辺コンビニとの差別化が図れれば、この取り組みは大成功なのだ。
大きな取り組みではあるが、5年後に全国で300店舗程度まで増えたジム併設コンビニは本来のコンビニ収益を生むための「フロントエンド商品」という位置づけのはず。
ファミマの目的が集客とその維持であることは、今後参入すると発表済みのコインランドリーサービスを考えても明白。全く畑違いの業界に新規参入するのとは、スタートの考え方が違う点が強みになるはずだ。
もちろん懸念材料もある。健康志向へのニーズは高まっているものの、週2回以上の運動を習慣化している人口は全体のわずか3.3%強。これは経済大国の中でも最低レベルだ。
24時間営業によって各店舗の人材確保が困難になっているという別の社会問題も既に抱えている。5年単位で考えた際に24時間スタイルそのものがマッチしているかわからない側面もあるのだ。
いずれにせよ、今回のファミマによるフィットネスジム参入は典型的な強者の戦い方。ベンチャー企業や個人トレーナーは、上手に視点をずらしながら小さいからこそ可能な工夫をしていく必要があるだろう。大手の新しい試みの本質を汲み取りながら、弱者の戦い方へと変換させていこう。
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