経営者の雇用意識改革
- 離職は悪か?
- 人材採用をする企業責任の意識変化改革
- 人材不足だからこそ同業他社間で人材の流動にジョイントする

従業員の能力開発や意識向上――。企業は積極的に取り組んでいますが、一方で仕事のパフォーマンスが低かったり、社内業務の適正がなかったりする従業員を解雇することは、ほぼありません。
日本の終身雇用や採用の方式が、雇用することで一定の生活水準を保障しているからです。また、企業が従業員のキャリア育成について面倒を見ることが、雇用した企業責任だと考えられているからでもあります。
しかし、適正がない従業員にそのまま仕事をさせ続けることで、本当に従業員のキャリア形成ができていると言えるのでしょうか?この問題意識を変えることが「必要な時期にきている」と提言したのが、2018年2月PHP総研が発表した「新しい働き方経営者会議」です。
その資料を参考に、「解雇できない企業」や「離職は悪だ」と考える経営者について、今回は考えてみたいと思います。
1つの仕事を続けられる期間はどれくらいでしょうか? 現在、いわゆる“仕事の賞味期限”は3~5年だという意見があります。事業が順調に成長し、人員を多く抱えたときに賞味期限の終わりが見えてきはじめ、余剰人員を抱えてしまう事態になることは少なくありません。
メディアが「終身雇用の崩壊」などと取り上げていても、会社が倒産しない限り、従業員は雇用の保障、一定の生活水準の保障があることが当たり前であり、企業は人を採用することで雇用の責任があると考えています。
だからこそ、賞味期限が終わった事業の人材を、別の既存事業や新しい事業に異動させることで、両者の利害が一致してきました。でも、その利害一致を進めることで、従業員が適正のない部署に異動となることでのストレス過多や、なにがなんでも組織にしがみつく「パラサイト社員」という新たな問題を生じさせました。
キャリア形成という視点で考えると、従業員は適正にあった働き方やメンタル面において豊かなキャリアを築いているでしょうか? また、企業は従業員の個々の特性を生かした組織としてのキャリアを健康的に築けているでしょうか?
すべては「企業が従業員の雇用を守る」という意識と責任感が、悪循環してしまっているように感じます。新しい業務を遂行するには学ぶ意識と時間が必要です。ですが、年齢を重ねるほど学ぶ時間を与えらないだとか、もしくは従業員が学ぶ意欲がないまま実戦の場に送られるため失敗を続けてしまい、いつしか惰性で仕事をこなすようになるケースもあります。
人材不足の今だからこそ、企業単体で雇用を守るという意識や責任感を見直し、同業他社とも協力しながら、従業員の適正が生かせる仕事に就けるよう支援し、人材を流動させていく転職のありかたを考えていくことが必要なのかもしれません。
日本の人口はこれから急激に減少していきます。少子高齢化時代において、働ける人(15歳以上)の人口は現在で約6500万人ですが、2030年には1000万人が減少して5500万人になると予測されています。
対策として政府は、女性活躍の推進や定年延長、外国人の雇用などを積極的に推進しています。経営者も、雇用に対しての意識を変えていかねばならないない変革期にきています。「離職は悪」と考えるのではなく、自社では適正を生かしきれない従業員を、他社の適正環境へ流動させ、循環させていくことが今後の人材採用のあり方として考えていく1つの手段と言えます。
人材が不足しているからといって、適正のない従業員を無理に雇用し続け、従業員も組織も豊かなキャリア形成ができないことを続けることがベストと言えるのでしょうか。それよりも、外部への適正な職務の提供、人材を流動しあうことによって、結果的に従業員も組織も未来あるキャリアを築いていけるのではないかと思います。
経営者も、1つの企業単体で採用・雇用を考えていくのではなく、業界同士ヨコのつながりを深く持つことで、従業員一人ひとりの特性・適正が見いだせる場へと循環させていくことが、これからの中小企業の人材不足を緩和できる新たな変革になっていくかもしれません。
(参考文献)新しい働き方経営者会議 PHP総研 労働局調査(総務省統計局)
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