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2020年頃には、日本の企業の経営者の多くが70歳代になり、引退を考える年齢に差し掛かります。これまでに培ってきた企業文化や技術、ノウハウを絶やさないためには、後の世代に事業を譲り、経営を引き継いでもらうことが必要です。
こちらでは、事業承継をするためにおすすめのM&Aという方法の概要と、メリットなどについて解説します。
事業承継の現状と抱える問題点
事業承継とは、会社の経営者が、後継者に経営を譲り渡すことを言います。例え今は元気に活躍していても、年齢上、後の世代に仕事を引き継がなければならないタイミングというのは、誰にでも来ます。特に日本の場合、高齢化が急速に進んでおり、経営者についてもそれは例外ではありません。
日本の経営者の多くが、2020年頃には引退を迎える年齢に差し掛かるとされています。こうした事情から、事業承継を進めて行くことは大きな課題になっているのですが、現状では、事業承継はあまり進んでいないのです。 事業承継が進まない理由はいくつかあります。
一つ大きなものとしてあるのが、事業承継で後継者に譲り渡した財産にかかる、多額の税金です。後継者が引き継いだ財産にかかる税金として、主なものは相続税と贈与税ですが、どちらも財産の額が多いほどに税率も高くなります。また、譲り受ける財産として大きな割合を占めるのは株式ですが、税金の計算に使われる株価は、業績が良い企業ほど高くなるのが通常です。
つまり、業績の良い企業は株価も高いために、事業承継すると多額の税金を納付しなければならないことになるのです。
ところが、株価が高いからといって現金も豊富にあるわけではありません。 税の納付には現金が必要ですが、そのための現金を用意するのに、非常に苦しい思いをしている企業もあるのです。多額の税負担が発生するために、事業承継を諦めてしまう企業すらいます。
こうした状況に対して政府は、「事業承継税制」という制度を用意しています。これは、事業承継に関する財産の移転の場合には税負担が軽減されるという内容で、今後の事業承継の増加に期待が寄せられています。
一方、税金とは別にもう一つ、事業承継が進まない原因があります。それが、後継者不足の問題です。従来であれば、親の事業は、子供が引き継ぐケースが多くを占めていました。 しかし、近年は子供も自分の道を歩むことを選択したり、親も子供に引き継がせることを望まなかったりすることがあります。
親の事業を子供や親族が引き継ぐのは、1970年代には全体の9割を占めていたのに対して、2010年以降には4割以下にまで減っています。子供や親族が引き継がないとなると、他に考えられるのは役員や従業員に引き継いでもらう方法です。ところが、役員や従業員が事業承継する場合も、経営者の保有する株式を買い取るための資金が準備できなかったり、役員や従業員の家族から反対を受けたりして、思うように事業承継は進んでいません。
事業承継を進めるためにはM&Aによる方法を検討することも大切
今後、事業承継を進めて行くためには、後継者不足の問題を解決することが重要です。そのための方法として、近年増えているのがM&Aです。M&Aは、企業間での合併や買収のことです。
M&Aにもいくつか種類があり、主には吸収合併・吸収分割、株式譲渡、事業譲渡です。また、買い手企業と売り手企業が合意に達していない敵対的買収と、買い手企業と売り手企業がともに合意している友好的買収というのがあります。
M&Aというと、これまでにニュースになった企業間買収の事例のイメージから、敵対的買収のことを指すと思う人は多いかもしれません。しかし、そうと決まっているわけではなく、友好的M&Aもあるのです。そして、事業承継におけるM&Aは友好的買収となります。
ちなみに、前項で触れた親が子供や親族に事業承継することは、親族内承継と言われます。また、役員や従業員に事業承継する方法は、親族外承継や従業員承継などと言われています。M&Aも親族外承継ではあるのですが、区別してM&Aと呼ぶことが多いです。事業承継で用いられる方法はこの、親族内承継・親族外承継(従業員承継)・M&Aの3つとなります。
M&Aのメリット
後継者不足の問題を解決して事業承継を進めて行くために、M&Aは良い方法と言えます。M&Aのメリットを紹介しましょう。
一つ目のメリットは、後継者候補の選択肢を増やすことができる点です。
子供や親族に後継者候補を絞った場合、子供に継ぐ意思がなかったり、別の仕事に就いていたりという問題にぶつかります。その他にも、経営者としての素質が子供にない場合もあります。そうした中で、無理やり子供や親族を経営者に据えてしまうと、家族・親族間で軋轢が生じたり、せっかく事業承継した企業も経営が傾いたりするリスクさえ少なくありません。
従業員や役員を候補者に考えた場合にも、経営者に見合うだけの能力を備えた人材がいないこともあります。また、前述したように従業員の家族が反対することもありますし、株式を購入する資金が役員や従業員にないこともあるでしょう。M&Aであれば、経営能力や資金を充分に持ち、経営の意思も備えている後継者を探すことができます。
二つ目のメリットは、従業員や取引先に与える影響が少ないという点です。
事業承継の方法にもよりますが、株式譲渡による承継であれば、経営者が変わるだけです。従業員の雇用や取引先はそのまま維持されます。周囲に迷惑をかけるのが心配な経営者も、安心できる方法がM&Aなのです。
メリットの三つ目は、相乗効果で経営に良い影響を与えられる点です。
買い手企業と売り手企業の双方で培った技術力やノウハウが、一緒になることで相乗効果を生む可能性があります。例えば、関西の企業が関東の企業を買収すれば、関西の企業にとっては、関東進出の足掛かりになります。関東の企業も、自社の商品をこれまでとは違う関西エリアで、アピールすることができます。
最後のメリットは、廃業を選択するよりも良い結果となることが多いということです。
後継者がいないために、廃業をする経営者は少なからずいます。しかし、廃業と言っても簡単にできるわけではありません。負債を抱えている企業も多いですから、そのようなケースでは土地や建物、商品、設備を売却して、負債を支払うことになります。ところが、廃業時の資産評価はM&Aのときよりも低くなりがちで、全てを売却しても負債を払いきれないことも多いのです。
引継ぎ方法次第ですが、M&Aでは、経営者の抱えていた負債も買い手に引き継いでもらうことができます。
M&Aのデメリット
良いことずくめのように思われるM&Aですが、デメリットもあります。それは、買い手企業を探すのに時間がかかることです。
事業を引き継いでもらう以上、現経営者には相手方に求める条件がいろいろとあるでしょう。それらを満たし、かつ社内の役員や従業員の信頼も得られそうな企業となると、探すのは非常に大変です。
候補企業が見つかったとしても、相手と合意に達するまでには、そこからさらに長い時間がかかります。事業承継を考える経営者は、後継者選びも含めて承継には長い時間が必要なことを認識し、早いうちに取り組み始めることが大切です。
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