スムーズな事業承継実現のために!事業承継計画書作成の具体例

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事業承継に取り掛かることの必要性は感じていても、何から始めれば良いのか分からず、承継がなかなか進まないと悩んでいる経営者は多いのではないでしょうか。日々の業務もある中でスムーズな事業承継を実現させるためには、事業承継計画を立てて、その通りに進めて行くことが大切です。

事業承継計画書作成の具体例を紹介します。

なぜ事業承継計画書を作成するのか?

事業承継計画書を作成することについて、ピンときていない経営者の方もいるかもしれません。しかし、事業承継をスムーズに、トラブルなく完了させるためには、計画書を作成するステップが必要不可欠です。なぜなら、事業承継にあたってやらなければならないことは数多くあり、計画書を作成しないままに取り掛かると、手順やすべき事柄に、漏れが生じてしまう可能性があるからです。

また、計画を紙という形にして提示することで、従業員や取引先、家族など、周囲の人に事業承継の重要性を実感してもらえるという効果があります。 経営者の頭の中だけで考えているだけでは、事業承継するにあたっての想いや計画は、残念ながら周囲には充分に伝わらないのです。

同様のことが後継者との間でも言えます。経営者と同じ考えを、後継者が持っているとは限りません。例えば、経営者が事業について、しばらくは国内に注力したいと考えていたとしても、後継者は海外に目を向けているかもしれません。考えの違いは、のちのトラブルの素となる可能性があります。事業承継計画書を作成しておけば、そうした意思・考えのすれ違いを防ぐことができます。

さらに、事業承継計画書を作成するにあたっては、会社の現状について分析した内容を踏まえることになります。つまり作業を進めるうちに、客観的に会社の状態が分かるようになりますから、今後の経営戦略を考える上でも、事業承継計画書を作成することにはメリットが多いと言えるでしょう。

事業承継計画書はいつ作成するのが良い?

事業承継を完全に済ませるまでには、5年から10年という長い期間が必要と、一般的には言われています。ですから、計画を立てるのは、それよりもさらに早いタイミングでなければなりません。

しかし、事業承継を思い立ったときに、いきなり計画書を作成しようとするのは、やや無理があります。事業承継計画を立てるのにも下準備が必要です。その準備がないままに急に計画を立てようとしても、結局は曖昧なものに終わってしまうリスクがあるのです。まずは、計画立案に必要な情報を集め、すべき下準備を済ませましょう。作成に取り掛かるのは、その後からということになります。

計画書の作成前にすべきこと

事業承継計画書の作成前にすべきことは、会社が現在保有している経営資源と、経営上のリスクについて分析することです。資産や負債・業績など、財務的な情報だけではなく、従業員や株主の構成状況、今後の業界の見通しなども細かく分析して、会社の強みと弱みを把握しましょう。重要なのは、「何となく」といった感覚だけで判断するのではなく、しっかりと数値を用いて分析することです。

次に必要となるのは、同様の分析を、経営者個人の資産についても行うことです。 事業承継は会社に関することではありますが、経営者の資産状況も分析が必要になります。その理由は、中小企業の場合特に、経営者と会社のお金が完全に切り離されておらず、経営者が会社に個人の財産を提供していることも多いからです。そうした状況は会社の評価にも影響するため、必ず分析しておきましょう。

具体的には、自社株式の保有数や株価の評価額、建物や土地の評価額、個人の借り入れ状況、会社に対する貸付金額などが対象項目となります。 会社と個人の財務状況についての分析が終わったら、後継者の検討と、相続時に起こり得るリスクと解決策の検討も必要です。

後継者を決めるにあたっては、候補者の能力の有無、本人のやる気の有無などを検討内容としましょう。身近に後継者候補が見つかれば良いですが、そうでなければ、外部からの経営者の招へいも視野に入れる必要があります。

一方、相続時に起こり得るリスクと解決策の検討では、相続財産として何が含まれるか、相続税はどのくらいになりそうなのか、相続人同士の人間関係、財産の分け方などについて考慮し、対策を講じることになります。

事業承継計画書作成の具体例

作成前の情報収集・分析、解決策と対応策の検討が終わったところで、いよいよ事業承継計画書を作成します。

まず、紙の縦軸には、事業承継にあたってすべき事柄を、横軸に時間を記入します。そして、それぞれいつまでに完了させるのか、スケジュールを記入していきます。

具体的な記載例を示すと、「経営者の持ち株割合」という項目を縦軸に作ります。そして横軸に、現在、1年後、2年後、3年後といった時間軸を記入します。時間軸については現在から10年後位まで作成するのが一般的ですが、ここでは省略します。 その時間軸の下にそれぞれ、80%、75%、70%、65%と数値を記入します。つまり、時間の経過に伴って、経営者の持ち株割合を減らしていくという計画です。

同じような手順で、経営者に関しては、引退までの役職、個人資産の移転状況などの項目を作り、スケジュールを記載します。会社に関しても、今後の売り上げや利益目標、人事計画、事業計画などの項目を策定し、計画を立てます。後継者については、現在の役職と、いつ頃に経営権を譲るのか、教育目標、株式の保有状況などの項目を立て、スケジュールを記すと良いでしょう。

この作業でのポイントは、縦軸の項目はできる限り細かく洗い出して、文字にしてしっかりと残しておくことです。例えば、「取引先に事業承継を公表する」という手順があったとします。これは事業承継にあたって当然すべきことで、計画書に記すまでもないことのように思われるかもしれません。

しかし、実際には他の業務に追われているとタイミングを逃したり、うっかり忘れたりしがちです。対応が遅れると、それが原因でトラブルに発展する可能性もあります。ですから、一見記載する必要がないと思われる事柄であっても、計画書には記載しておきましょう。

また、計画書はあくまで自社の事業承継をスムーズにするものですので、自社の状況に合った、オリジナルのものでなければなりません。しかし、最初はどうしても、作成書に記載すべき事柄が思い浮かばなかったり、どのようなフォーマットで作成すれば良いのか分からなかったりします。そのようなときには、中小企業庁がホームページに、事業承継計画書のテンプレートを掲載しています。必要に応じて利用すると良いでしょう。

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