特に深刻な問題となっている事業承継の現状と課題の解決方法について

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人間には寿命というものがあり、自分の会社を興して経営者となった場合でもいずれはその座を誰かに譲らなければいけない時が必ず来ます。経営者が第三者に自分の地位や会社を引き継ぐことを事業承継と呼んでいるのですが、現在事業承継はさまざまな理由からスムーズにおこなわれていないと言われています。

ここでは事業承継の現状と課題、そして課題の解決策について考えていきます。

事業承継が難しくなり、廃業せざるを得ない企業が多くなっている

会社というのは自分が思い描いたように経営していけるとは限りません。予期せぬ事態が発生したり強力なライバルが出現したりして思うように利益を確保できず、廃業を余儀なくされた会社はたくさんあります。

しかし会社というのは競争に打ち勝てなければ廃業する運命にあるわけですからトラブルやライバルの出現に対処できずに利益が確保できなくなり、廃業するというのはある意味仕方のないことだといえます。ところが現在は会社の経営が上手くいっているのにも関わらず廃業を余儀なくされている経営者が多数いるのが現状です。

例えば日本政策金融公庫総合研究所が中小企業に対して自分の会社の後継者が存在するかどうかについて質問したところ、およそ半数以上の人が自分の代で会社を廃業する予定だと回答しています。特に個人事業主の場合はおよそ7割の人が廃業を予定しているという結果になりました。

廃業を予定している人にその理由について尋ねたところ、もともと自分の代で廃業する予定だったという人が4割近くを占めています。しかし一方で子どもに継ぐ意志がない、そもそも子供が居ない、該当する後継者が見つからないといった誰かに自分の会社を引き継いでもらいたいが後継者が見つからないため廃業を余儀なくされていると答えた経営者が3割近くを占めているのが現状です。

これから事業承継をする必要に迫られる企業が急増する

事業承継に関してこれから考えていかなければならない大きな課題として、あと数年もすれば団塊の世代が事業承継をしなければいけなくなるというのがあります。社長の平均年齢を調査した結果、2017年時点で61.45歳となっています。この年代というのは事業承継について考え、後継者を探して教育しなければいけない年齢なのですが先ほども書いた通り後継者がなかなか見つかっていないという経営者がとても多いのが現状です。

今後もこのような状況が進めば会社経営者の平均年齢はますます上昇していくでしょう。特に東京オリンピックが開催される2020年には団塊の世代と呼ばれている人たちが70歳を迎えます。団塊の世代はちょうど高度経済成長期を経験していますから、その時期に自分の会社を興し、一代で会社を大きくしたという経営者が数多くいます。

その経営者があと数年もすれば早急に事業承継をしなければいけない状況を迎えることになるわけです。 ところが多くの中小企業では後継者を見つける事すらできていません。後継者が見つからなければ自分の会社を引き継いで運営してもらうための教育が全く進められません。実際に80歳以上になっても自分の後継者が見つからないという人が3分の1以上を占めています。

この後継者が見つからないという問題はどんな会社でもあり得る問題ですし早急に解決しなければいけません。後継者が見つからないままでいるとさまざまな弊害を引き起こします。 実は社長の年齢別で増減収の比率を見たところ、社長の年齢が高ければ高いほど会社が減収する会社の割合が多くなるという結果になっています。経営者が高齢になるとフレキシブルに対応できなくなるのが大きな原因だと考えられます。

そして後継者が見つからなければ自分の会社を廃業せざるを得ません。2020年以降後継者が見つからなければ廃業する企業は一気に増えていくでしょう。会社の数が減少すれば日本の経済に大きな打撃を与えることは言うまでもありません。

後継者不在の問題を解決する方法

これから多くの企業の経営者が直面することとなる自分の後継者が見つからないという課題を解決する方法としてはやはり自分の会社の後継者を広く募集するという方法が最も効果的であるといえます。

事業承継の方法としては大きく自分の子供や親族に会社を引き継がせる方法と、自分の会社で働いている人や全く自分の会社と関係していない第三者など親族以外の人に会社を引き継がせる方法、そして別会社に自分の会社と権限を売却するM&Aによって譲渡するという方法の3つがあります。

昔と変わらず現在でも最も多い事業承継が自分の子供など親族に会社を引き継がせるケースですが、もうこのケースだけを考えて自分の会社を存続させるのは難しい時代になっていると言えるでしょう。

自分の代で廃業となっても構わないのであれば話は別ですが、自分の代で会社が無くなってしまうのが惜しいと考えている経営者は第三者や別会社に自分の会社を引き渡すことも考えておいた方が良いでしょう。第三者や別会社も候補に含めるのであれば数えきれないほどの候補者が存在することとなります。

親族以外に事業承継させるなら専門家の力を借りよう

ところが親族間以外での事業承継をおこなうとまた別の問題が浮上します。先ほども書いた通り事業承継は親族間で行われることが最も多いですし、一般の人も事業承継と言えば親族間で行われるものだろうという認識になっています。社長の息子や親族に事業を引き継がせるという話になれば信条として古くから働いている古参の社員も納得しやすいです。

ところがそれ以外の人物に会社の経営をゆだねるとなると話は別です。長年勤めていた社員の中には「こいつに指示されるのは納得がいかない」という気持ちになる人も居る事でしょう。

親族以外に経営を引き継がせることとなった場合は必ず自分の会社で働いている従業員、そしてそれ以外の親族に対して納得してもらうように説得しなければいけません。またそれ以前にそもそも数えきれないほどある候補の中から会社を譲渡するのにふさわしい相手を探すこと自体が自分の力だけでは困難です。

ですから自分の親族以外を事業承継の対象にするつもりならば第三者に相談を持ちかけた方が良いでしょう。 事業承継の相談相手としてもっとも多いのが顧問会計士や税理士です。特にいつも自社の会計を任せている会計士が居るならば自分の会社の内情を良く把握しているでしょうから意思疎通が図りやすいといえます。

しかし税理士や会計士にとって事業承継は専門外なため知識に乏しく、良い解決策を導き出してもらえない場合もあるでしょう。特にM&Aを検討しているならば専門的な知識や経験が必要です。現在ではM&Aの相談を専門に受け付けているところもあるのでそういったところを利用することも検討してみてはどうでしょうか。

親族だけを事業承継の候補にするのは困難になってきている

以上のように現在特に中小企業で事業承継が大きな問題となっています。中には自分の後を引き継いでくれる対象が見つからないためやむを得ず廃業するケースも出てきているのが現状です。これからの事業承継は従来のような親族間だけの事業承継だけを考えていてはいつまで経っても候補者が見つからないという時代に差しかかっていると考えた方がいいかもしれません。

専門家の力も借りながら幅広く候補者を探すようにしましょう。

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