【滋賀県で起業!】地域の可能性を再発見するローカルベンチャー

地域で活躍する多様な起業家を特集するこの企画。
今回は滋賀県を代表して、株式会社いろあわせの北川雄士さんにお話を伺いします。
ーまずは北川さんの会社の紹介からお願いします。
北川)株式会社いろあわせの代表取締役の北川雄士です。当社は、滋賀県を中心に人と人のいろ(可能性 / 魅力 / 価値観など)を再発見して掛け合わせる会社です。って何してるかわかりませんね(笑)
ー具体的にはどういった内容になりますか?
滋賀県の企業における”採用や教育”を行う「ひとあわせ」、滋賀県の魅力ある”商品のマーケティング”を行う「ものあわせ」、地域コミュニティを通じて、”街の魅力を再発見をする”「まちあわせ」という3本柱で事業を進めています。研修やコンサル、イベント企画やデザイン、ファシリテーションなどの領域で、上記切り口に対して解決策を提案しています。
ー多岐に渡る分野で事業を手がけられていますね。各事業における共通の軸は何ですか?
”地域の魅力の再発見”です。結局のところ、地域にはたくさんの魅力がありますが、住んでいる人たちはその魅力に気付いていない、もしくは知っていても発信が得意ではない、と感じています。なので、私たちが代わりにそのような魅力を発信し、県内外の人に再発見してもらえるような仕掛けを作っていっています。
例えば就職を考えても、今、人口が東京に一極集中していると言われていますが、みんながみんな「東京に行きたい」と思って行っているのではなく、地元に前向きな選択肢が無いため、「仕方なく」東京に行っている人も一定数いるんじゃないかなと思っています。実は自分の地域に魅力的な会社があって、安定した収入と成長できる環境があれば、地元就職を前向きに選ぶ余地は多いにあると思うんです。
例えば、人生って有名なアイドルと結婚しなくても、今お付き合いしているたまたま近くにいた人と結婚して、50年とか寄り添うものじゃないですか。相手が有名とか、世の中のすべての人からベストを選ぶのではなく、選んだからにはその人生が幸せになるために、努力していくものだと思うんです。
それにも関わらず、就職活動だと東京の良い会社に行けないと幸せになれないと考える人がいまだに多いんですよね。
だからこそ、身近の会社や地域の魅力をもっと探して、それを知ることで地域で住んだり働いたりする人が増えるんじゃないかと思っています。
応募が殺到するような有名企業に採用されて、競争環境の中であまり評価を得られないくらいなら、比較的応募数の少ない地元企業で、エース級の期待をされて活躍の機会をもらう方が成長できることも往々にしてあると思います。そんな選択ができるような環境が整えば、社会全体の幸せの総量は増えるだろうと考えています。
ーそういった軸があったんですね。アイドルの例えの話は非常に分かりやすく共感しました。ちなみに、今、メインで力を入れている取り組みは、何があるんですか?
セクション毎に言うと、「ひとあわせ」で言えば、毎年ローカルインターンキャンプというものをやっています。また、「ものあわせ」では、道の駅のプロデュースをやっていたり、「まちあわせ」では彦根市のプロモーションを考えるワークショップを開催していたりします。
その中でも、目立った取り組みなのが、「ローカルインターンキャンプ」です。こちらは、滋賀県の長浜市と米原市と連携して毎年行っているものなのですが、大学生が5日間を通じて、「インターン先の採用戦略を考える」というテーマの元地域企業に入り込みながら、地域企業の魅力や地域での働き方を考えてもらうプログラムです。僕が元々、ベンチャー企業で人事をしていた経験があり、その経験が活きているなと思っています。ただ、「いろあわせ=人材系の会社」と定義したくないので、他の分野の取り組みもより力を入れていきたいなと思っています。
ローカルインターンキャンプの参加者との集合写真(右端が北川さん)
ーかなり面白そうなインターンシップですね。先ほどの話でもありましたが、ベンチャー企業の人事をやめて、どういった経緯で滋賀で起業することを選んだのですか?
滋賀県長浜市の田園風景
まず高校を卒業していつかは自分で会社をやりたいと漠然と思っていたこともあり、大学は経営学部に行きました。就職のときは「ワクワクのプロになる」という漠然としたイメージをもって、大手広告代理店を受けて入社しました。その後、独立するために学生時代のインターン先の社長にプレゼンをしにいったところ、そのままヘッドハンティングされ、ITベンチャーで人事部門の立ち上げを担当させてもらったという流れです。
広告や人事をやりたくて入ったというよりは、大学を卒業して就職をしてからもずっと、やりたいことを探し続けていました。目の前のことは、一生懸命やっていましたが、自分の中で、一生やり続けてるのか?という疑問も持っていました。とはいえ、何か行動を起こすわけでもなく、問題を先送りにしていくうちに、30代になっていきました。
きっかけは子供が生まれたことでした。娘が1098グラムで生まれて、当時は生きるか死ぬかの状態でした、その時は、「生きているだけでホンマに価値があるんだ」と心の底から感じました。
どちらかというと、キャリア的には大手やITベンチャーでイケイケでやってきており、「競争」や「勝ち続けないと幸せになれない」みたいな環境だったので、3歳まで歩けなかった彼女にとっては「生きづらい」世界なのかもしれない、と思うようになりました。少しずつ、地方でペース落としながら、自然や家族、地域の繋がりを大切にしながら暮らしていく幸せを探していきたいと考えるようになっていきました。
また、同じタイミングで働いていた会社は、上場をして「やりたいこと(Want)ではなく、しなければならないこと(Must)」を意識するように組織が変わってきていました。その中で、成長すること自体は否定はしないけども、行き過ぎると周りの人たちが疲弊していくことも感じました。
これらの変化があった上で、自分は改めて何をやりたいんだろうか?と考えて、決められてなかった中、これだけは絶対に裏切らないことだなと思ったのが、ITでもマーケティングでもなく「地元・滋賀」というフィールドでした。そこから、「滋賀」を軸として、やりたいことを考えていくと、整合性が取れてきて、今の会社のビジョンにも繋がっていきました。
ーそういった背景があって「いろあわせ」の設立につながるんですね。都市部で働くことと地域でビジネスをしていくこと、どんな違いがありますか?
「地域の課題がたくさんあるにも関わらず、プレイヤーが少ない」ことだと思います。地域で働くことはベンチャー起業みたいなもので、何かに気付づくとすぐに「そしたらやって」とチャンスが回ってくる印象です。
市場自体は小さくても、プレイヤーも少ないから食っていけるということがあると思います。また、都市部よりも出会いが多いとも思っています。行動してている人が少ないので、すぐに繋がることが出来ますし、繋がりが強い分「信用」の存在が大きくなります。
たまに、「地域は閉鎖的だ」「よそ者は排除される」と言いますが、それは横の繋がりがしっかりしているという特性の上で、胡散臭い人がいると一瞬で排除されるということだと感じています。裏を返すと、よそ者でもしっかり地域と人のことを考えた言動をしている人は全然排除されないですし、閉鎖的でもありません。
このように、地方でビジネスをやるにはいろんな利点があるなと感じているので、もっともっと若いプレーヤーがチャレンジしてきてくれるのは大歓迎です。
ーそうは言っても、地域の市場はどんどん縮んでいく一方です。その点に対してはどう考えてらっしゃいますか?
まずは、「自分のサイズ感で飯を食えるように」していきたいということです。おそらく、ほとんどの大企業が最初から大企業になろうと思っているわけではなく、目の前のお客様へのサービスを一生懸命やっていたら、あちこちから引き合いが増えて、結果的に大きくなっていたと思うんですよね。
なので、必要であれば、県外にも、海外にも出ればいいんです。市場規模はある程度ベースが出来てから考えればよいかと思っています。もし、いいサービス作って、地域が賑わってきたら、市場は縮まらないかもしれません。
それでもやっぱり市場が縮んで、スタッフも増えて、規模が大きくなり、「滋賀だけだと十分、飯食うに足らない」と思ったときが、地域外に出るタイミングになるじゃないかなと思っています
ー「自分のサイズ感で食っていく」というのは、これから起業していく人にとって重要なキーワードかも知れませんね。ちなみに、地域外の人との繋がり方や情報収集などどうしていますか?
近しい想いを持った別地域で活躍している「同志」のような人を、誰かから紹介してもらうことが多く、彼らの動きをSNSでよく見ています。「ソトコト」や「TURNS」の記事には、意識的に目を通すようにしていますね。
色んな人に紹介してもらうために大事なのは、「面白そうなやつ」と周りの人に思ってもらうことですかね。日々の振る舞いや言動から「楽しそうにやっている」ことが伝われば、自ずといろんな繋がりが生まれるんじゃないかなと思っています。
各地で活動するプレイヤーたちと北川さん
ー確かに色んな人に紹介してもらえるようになることは重要かもしれませんね。では最後に、記事を読んでいる人にメッセージを頂けますか?
地方は課題がたくさんあり、競合が少ない絶好のフィールドです。僕は僕の領域で、滋賀をフィールドに、全国各地でもパクってもらえそうな「滋賀モデル」を作っていこうと動いています。最近、滋賀って何か色々発信しててオモロイよねと言われるように、縁の下で動きまくろうと思います。近しい想いの人が読んでくれてるんですかね? ぜひ意見交換とかしていきましょう〜。名前でTwitterやFacebookで検索してもらったら出てくるので、気軽に突然連絡ください。意見交換も、滋賀案内もしますよ〜。
執筆者:濱田祐太
協力 ローカルクリエイターラボ
農山漁村が活力を取り戻し、持続可能な発展を実現するためには、何よりもまず、雇用と所得を生み出すことが重要です。農山漁村には魅力的な資源が豊富にあり、これを活用した多様な事業を起こすチャンスに溢れています。農林水産省では、豊富な資源とやる気溢れる人材、そして必要な資金を組み合わせ、農山漁村地域に新たなビジネスを生み出すことを目的として、Webプラットホーム『INACOME』を設置しました。
『INACOME』はこちらから
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