これからは士業共同事務所が面白い 【弁護士:北周士】

【第2回】弁護士のための開業・経営セミナーなどを多数開催する
北周士さんに、弁護士開業のアドバイスを聞く(全2回)


『弁護士 独立のすすめ』『弁護士 転ばぬ先の経営失敗談』の著者でもあり、今年9月で10年目を迎える北周士氏。現在の仕事は主に中小企業で、社長が20代後半から40代と若いクライアントの新しいビジネスの手助けをしている。「中小企業は社長がいかに実働をできるかが肝。あなたは社長業をやれ」がコンセプト。弁護士事務所が安定するために必要なこととは――。

 
【第1回】いま弁護士開業するなら大田区・足立区・北区を狙え

――昔と違って、こういう人と組んだほうがいいですよというものはありますか?

北:昔とくらべてSNSとかFacebookとかの関係で縁を繋ぎやすくなったので、同業者、他士業から継続的に紹介がきやすい環境になりましたね。会社で継続的にというのはキーマンを探さなければいけないので難しいですけどね

弁護士の仕事はトラブルバスターであることがまだまだ多いので、トラブルの相談が集中するところに営業をかけるというのが王道ですね。トラブルの相談が来るのは弁護士が一番なので、他の弁護士との付き合いはあったほうがいい。その人が受けられないことがありますから。
 
次に相談が来るのが、税理士とか司法書士。会社と結びついていますし、そこと結びついておくと紹介はきやすい。あとはそういう相談を受けやすい人を個別に落とせたら強くなりますね。

――もしちょっとお金がある人だったら、どこにお金をかけるといいですか?

北:どこでやるかにもよりますが、地方でやるのだったらホームページが必須の集客媒体です。基本的に弁護士の検索は「地域名+弁護士」か「事件名+弁護士」ですから、その地域にホームページを持っている人が少なければ少ないほど強い。

弁護士はまだ全国で4割程度しかホームページ持っていないので、ない地域で個人客を相手にするんだったら、ホームページにある程度かけるのが一番かと思います。確か全国平均で43%くらいしか持ってないし、東京も4割くらいしか持っていない。
あと経営とは関係ないのですが、他の家具は適当でいいので椅子だけはある程度いいものを買われたほうがいいと思います。ずっと座って作業しているので腰をよく痛めている人多いですからね。
 
――移動中の時間の使い方でお勧めありますか?

北:弁護士って移動と外回りが多く、自分の手を動かさなければいけない仕事なので、いかに自分の作業時間を作り出すかを考えます。移動中は、メールを打ち終わった後はkindleで本を読んでいます。

東京だとほぼ100%移動は電車なので、スマホでメールチェックをしています。クライアントはいまどこでも連絡が取れるので、返信が遅いことに対して不満を抱きます。クライアントが良くも悪くもレスポンスの早さを求めるようになっていますね。
企業内の弁護士やっている友人何人かに「どれくらい返事がないとイラつきます?」と聞いてみたら「1時間」でした。その日中に返事できればという感覚だったのですが、いまはとりあえず見ましたというのだけでも返すようになりました。

――お客さまとのやりとりはメール?

北: 昔はメール一辺倒だったのですが、今はFacebookメッセージがけっこうな比率を占めていますね。グルーピングしやすく添付もしやすい。簡単な連絡だ とLINEも使います。チャットワークとかでもいいかなと思いますが、クライアントに導入してもらわなければいけないので、その辺が問題かな。

――弁護士さんに対するお客さんのニーズに変化はありましたか?

北: スピードですかね。クライアントの若さもあるのでしょうが、特にこれから開業するのであれば、相談のしやすさというかフレンドリーさが大事。サービスが変 わって、いままで考えてないものもいっぱいありますが、やはり人と人とのトラブルがほとんどなので、相談内容は変化していないと思います。

――何が経営な意味で失敗したと考えられますか?

北:私自身、経営というものを甘く見ていました。開業する前に薄利多売でやっていて、それでいけるだろうと思ってそこそこの場所に単独で事務所を出してしまったことです。本格的に開業してしまうと、実働できる時間はむしろ減るんですよね。

経営とか営業とか事務管理とか、しなければならないことが増えるので薄利多売が成り立たなくなるんです。必要もない場所で内装もがつんと力入れてしまったりして、そこから赤字だしたりしたので、クライアント層をがらりと変えることにしました。
最初のうちは仕事選んでいられないので、来るなら何でもありがたいところですが、スタートの段階でもうちょっと戦略をもっていればと。小さく初めて、出す場所、ランニングコストとかしっかり検討して、いまのクライアント層のままで行くのか考えるべきです。

――弁護士事務所が安定するための共通の課題はありますか?

北: 教育ですね。新しく人を入れてどう定着させるか、事務所としてのバリューを出していくかですね。結局個人の技量で食べている業界の群れなので、組織として 動くということが出来ているところはほとんどないです。「俺の背中を見て盗め」みたいな職人の世界ですから、今後小さい事務所は特に人材確保に苦戦すると 思います。

――一般的には、業務の単価は下がっていますが、単価が上がっていくイメージはありますか?

北: 算定根拠みたいなものはあまり変わっていかないと思います。1時間いくらで計算するようなタイムフィーは上げています。取り扱っていく事件の規模が大きく なればパーセンテージ計算なので単価があがります。クライアントの規模が大きくなると扱う事件の規模が大きくなって結果として結果が上がるみたいなところ がありますね。顧問料も取りやすくなりますしね。

――新しい営業の施策はありますか?

 
北: 今後は士業共同事務所みたいなものを作ろうとしていて、メインが公認会計士と弁護士になります。公認会計士の方がからむ仕事はスケール感が大きくなるの で、もうちょっと事務所を組織化できたらいいな。できればワンフロアにぶち込むみたいな形であればバリューが示しやすくなり、誰に相談したらいいかわから ないようなご相談に、うちにくれば誰かが答えられますとなれば間口が広がります。どこかでひとりにひっかかれば全体のお客になる可能性もありますし、総合 顧問にでもなれば単価も挙げられますよね。

弁護士を増やすと執務スペースが膨らみ、打ち合わせ室も増やさなければならないですし、複数人同時にク ライアントがくると防音する打ち合わせ室をいっぱい増やさなければならないので場所がどんどん広くなっていってしまう。しかし他の士業の方の場合、打ち合 わせほぼ使わないので経費負担が相当落ちるんです。

――弁護士事務所の将来像は?

北:安定を考えると顧問料しか読めないので、いまの状態だと先の状態がまったくわからない。売上構造変えるために自分じゃない人の力をうまく使って、事務所として分業化と組織化をしっかりやり、個人ではなく事務所のお客さんにいかになってもらうかが次の課題ですね。

い ままでは弁護士を雇うと支配下に置く感じになりがちなんですけど、もっとチームのような形ができないと厳しいですね。経営としてはすごくシステム化してい る某事務所とか参考にはなるんですが、その分クオリティが激落ちするんですよね。下限を確保するシステムにすると人が入れ替わっても問題がないというすば らしい強みがあるんですが、訴訟では弱い。

技量的に劣るというところが問題なので、その両立ができないかなと。実務のパートナーを設定した上で、その下を増やしてトップが集客しつつクオリティを維持することが理想かな。代表が経営サイド回ってしまうと現場の実務が低下するのが怖い。
まぁ、事務所に個人名に出しているうちはダメかな。

――最後に

北:以前は独立を進めていましたが、今は以前ほど若手にどんどん独立しろとは言わないです。
するなら絶対失敗してほしくないですから。とはいえ、まだまだいけるかなと思っています。


・プロフィール

北・長谷見法律事務所 代表:北 周士(きた かねひと)

弁 護士のための開業・経営セミナーなどを多数開催、独立開業に関する失敗事例研究会 代表/開業事例研究会 代表を務める。企業・個人を問わず「困難な状況に立ち向かう方を応援する」。主にこれから起業を発展させていこうとする若手経営者及び先代が育てた企業を 引き継ごうという若手経営者の活動をサポート。著書に『弁護士 独立のすすめ』『弁護士 転ばぬ先の経営失敗談』がある。
 
 

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