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税理士さんのための上手な弁護士との付き合い方 【弁護士:原哲男】

【第1回】弁護士と税理士のつながりの重要性について
弁護士40年の経験から語ってもらいました(全2回)

 
労災問題、メンタルヘルスに関する講演を多数行っている原哲男氏。70年代から一般民事、家事、商事、刑事事件など幅広く扱ってきた弁護士経験が、これから独立して売り出していこうという若い税理士さんに必ず役に立つはず。弁護士歴40年の原さんが考える、弁護士と税理士の関係とは。税理士が弁護士と付き合うことのメリットについて聞いた。
 
 
――原さんにとって税理士さんとは何ですか?
 
原:私はこれまで40年近くにわたって、横浜に事務所をお持ちの税理士さんと、東京銀座に事務所をお持ちの税理士さんと、本当に親しくお付き合いしてきました。その結果、税理士さんと弁護士とのお付き合いは、両者にとってはかりしれないほどのメリットがあると肌で感じてきました。
 
一般の人にとって、とくに商売されている方にとっては、大事な商売の数字の部分を全部まとめてくれて、国民の義務である納税を全部代行してくれるという仕事だけど、私にとっては、一般の人の相談窓口としてとても貴重な存在です。
 
交通事故、離婚、借金の債務整理、不動産のトラブル、隣近所の境界や目隠しを付ける等の隣地隣家問題とか、遺産相続に関する問題。結局、そういうものが税理士さんのもとに持ち込まれているんです。
 
――弁護士先生のもとに税理士先生向けの案件というのは持ち込まれないんですか?
 
原:税理士さんで、法人税、消費税っていうのは全員やるんですね。資産税、相続税、贈与税はやる人とやらない人がいる。5割もいかないんじゃないかな。それは専門性があるのと失敗したら怖いとか、ちょっと違ったものがあるんですよね。
 
でも、相続税を受ける税理士さんにとっては、相続に関してある程度知識と経験が豊富な弁護士がそばにいると税理士さんの信用も増すし、それがきっかけで紹介してくれるお客さんも増えて、自分の販路を広げるためにもとても貴重な存在になりますね。
 
――税理士にとって、弁護士とのお付き合いがあるとどのようなメリットがあるのでしょうか?
 
原:まず関与先から持ち込まれるさまざまな法律関係のトラブルについて、すぐに適切な助言がもらえるということがあります。次に、相続税の申告をする際には、遺言書のチェックとか遺産分割協議など、それこそ多数の法律知識を必要とするのですが、これらの知識をすぐに得られるということです。
 
また、どうしても税務署の見解に納得がいかない場合に、税務署に対する不服審査請求や税務訴訟を起こす必要が生じてくるのですが、その際にも弁護士が強い味方になってくれるということです。 
 
――お互いに経験が必要ということですか?
 
原:比較的経験が浅く、関与先の少ない税理士さんが、関与先を増やしていく手段の一つとして
経験豊富な弁護士とお付き合いをしていくというケースが実際には多いと思います。それと、互
いにこれからという税理士さんと弁護士とが、手を結びあって互いに成長していくというやり方
もあるでしょうし、経験豊富な税理士さんがこれから売り出していこうという弁護士に仕事を紹
介しながら、その持っている法律知識を利用させてもらうというお付き合いの仕方も、私の周り
だけでも実際にはかなりありますね。
 
――税理士から弁護士へどのような相談ごとが多いのでしょうか?
 
原:まず圧倒的に多いのが労働問題です。関与先の企業や商店などにおいて、従業員との間で
様々な問題が起こるわけです。特に、労働環境があまりよくない中小企業の関与先を多くお持ち
の税理士さんから持ち込まれることが多い分野です。
 
具体的には、うつ病などに基因する休職・復職の問題、解雇や懲戒の問題、労働災害や安全配慮義務に関する問題、残業代の未払いに関するトラブル、セクハラ・パワハラに関する問題など、実にその守備範囲が広いのがこの労働問題の特徴です。
 
その次に多いのは、相続問題でしょう。相続税申告の相談を持ち込まれた際に、ついでのように相続がらみの法的トラブルの処理についても依頼されることが多いからだと思われます。具体的には、将来に禍根を残さないためのきめ細かな遺言書の作成、相続人間にできるだけしこりを残さないように行うべき遺言執行、行くところまでいかざるを得ない遺産分割調停や訴訟の進め方、遺留分減殺請求に対する回答案の作成方法や、財産目録の調整作業、能率よく行うべき相続放棄や限定承認の実務など、まさに経験豊富な弁護士の知識と経験がものをいう分野です。
 
――まだまだトラブル処理は多そうですね?
 
原:間違いなく多数を占めるトラブル分野があります。まずその代表格は、関与先が巻き込まれ
た商取引上の法律問題です。特に多いのが、売掛金の回収困難や、納期遅れに伴うペナルティー
支払いの問題などです。
 
更には、継続的取引契約に伴う契約書の解釈の問題、手形の不渡り事故や取引先の倒産に関し
た問題、消費者からの商品の瑕疵に対するクレーム処理、その他といった具合いで、その幅広さ
という点では法的トラブルの世界における代表格といってもよい領域になっています。
 
関与先企業の従業員やその家族の人たちが被害者あるいは加害者となってしまった交通事故に
関する相談も少なくありません。事故の重大さという点では、それこそ死亡事故からちょっとした物損事故まで、その程度は千差万別ですが、的確でスピーディーな助言が喜ばれるという点では、法的トラブルの中でもぴか一といえるかもしれません。
 
具体的には、事故の大きさや障害の程度に応じた妥当な賠償額の算定、示談の成立を困難にさせている過失相殺や休業損害の問題に対する正確な知識の提供、むち打ち症に対する対処の仕方、示談のタイミングの取り方、そして示談書の作成方法などが主なところです。
 
――離婚問題などはありますか?
 
 
原:関与先企業の役員や従業員の方から、税理士さんに離婚に関する相談ごとが持ちかけられる
ことも稀ではありません。なぜ税理士さんに離婚問題が持ちかけられるかといえば、それは税理
士さんが信用されているからであり、また関係者からすれば、だれに対しても持ち掛けられるよ
うな案件ではないからです。
 
この種の相談を持ち掛けられた時に、どこまで親身になって相談に乗ってあげられるかどうか
という点で、税理士さんの真価を問われるのではないでしょうか。できるだけ冷静になって耳を傾けてあげるべきですが、あまりに深入りし過ぎたり、誤った助言をしてしまったりすることは避けなければなりません。
 
具体的には、このケースでは離婚の方向で考えるべきか逆で行くべきかの基本方針の立て方の問題、離婚する方向だとすると、財産分与や慰謝料の額の算定問題、お子さんに対する親権をどちらがとるかの問題や月額養育費をいくらと合意するかの問題、お子さんとの面接交渉の持ち方、年金分割の具体的な方法、それと離婚合意書の作成方法などです。
 
――持ち込まれる案件が多いと大変ですよね?
 
原:関与先企業の関係者が巻き込まれた刑事事件への対応、医療過誤裁判に関する情報提供、特許や商標や著作権に関する法的助言、法律関係書類としての契約書や念書などの作成チェック。就業規則や雇用契約書のチェックなどそれこそ関与先をめぐる法的トラブルはとにかく広いです。
 
これらの相談ごとを寄せられる都度に、書物やネットを訪ねて勉強することも大事なことかもしれませんが、だれにとっても1日の時間は有限だということを忘れてはなりません。それこそ、有能で、サービス精神に富んだ法律事務所を探し出して、顧問契約を結んでおくことのほうがはるかに懸命であり、能率的だと思います。餅は餅屋にとも言います。そして余った時間については関与先の開拓に精力を注ぐべきだ と思います。
 
・プロフィール
弁護士40年のメンタルケアスペシャリスト
 
原・白川法律事務所 所長:原 哲男(はら てつお)
 
1973年司法試験合格。1977年 原法律事務所開設。1999年東京弁護士会副会長。一般民事、家事、商事、刑事事件など幅広く取り扱ってきた。労働争議、団結権、労働組合法などから労働関係に関わるようになる。最近では、労災問題、特に安全配慮義務(健康配慮義務)、メンタルヘルスに関する講演を多数行っている。精神科医の夏目誠先生とふたり一組で講演することが多い。共著に『弁護士と学ぶ健康配慮義務~会社の健康リスク対策は万全か(フェスメック社)』がある。
 

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