社労士が開業にあたって悩む「事務所ってどうすればよいの?」

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先日社労士試験の本試験が終わりましたが、資格を取得したら社労士として自分の事務所を持つべきか、自宅で開業すべきか迷うことかと思います。
ここでは、自宅開業と事務所を借りる場合を比較検討してみたいと思います。

自宅開業のメリット

社労士試験に合格しいざ開業しようと思っても、お客様がいない場合、ゼロからのスタートの場合は自宅開業をお勧めします。自分の事務所を持つことは憧れではありますが、まずは固定費を抑えて、お客様を開拓することにお金を投入した方がいいからです。例えば東京で事務所を借りる場合、アパートの一室を借りるとしても、家賃だけで少なくても10万円近くが飛んでいきます。さらに事務所の水道、光熱費なども合わせると、10万~10数万という金額が、何もしなくても毎月かかってくることになります。 
 
ところで社労士の顧問料金の平均金額をご存じでしょうか。一般的な社労士事務所では1企業からの顧問料金は2~3万と言われています。(ちなみに税理士事務所では3~4万と言われています)その中で何もしなくても10数万円の金額が飛んでいくという状態は、開業初月からは避けるべきです。コストを抑える意味では開業当初は自宅にて開業するというのは一つです。 
 

自宅開業のデメリット

一見コストも抑えることができる自宅開業はお得に思えます。ですがデメリットがあることも事実。例えば、少しずつ営業活動を行いお客様や取引先となる方が出来た際、事務所(自宅)にお客様を呼ぶことが出来ません。

また、もう少し売上が出来てきて従業員を雇うことを考えた際にも壁が立ちはだかります。それは従業員を雇う際も、まずは自宅ではなく事務所に移転する必要があるということです。まれに2部屋ある自宅のマンションの一室で、従業員であるアルバイトの方と一緒に自宅で仕事をしている方もいます。マンションの一室を仕事部屋として従業員と一緒に仕事をすることも考えることはできますが、公私のけじめをつけたいとう方もいるでしょうから好き嫌いが分かれるのではないでしょうか。

さらに、自宅開業の場合は、日中にお客様に会ったり打合せがある時以外は、基本的には1人(もしくは一緒に開業した仲間だけ)で自宅で過ごすことになります。通勤時間がないので通勤ストレスから解放されるという利点はありますが、朝起きて着替えて、そのまま机に向かって一日が終わるということもあり得ます。一日自宅から出ず、誰とも会話をしない(もしくは特定の人だけで自宅の中で会話をする)という状態です。

士業の仲間の中で、一人で自宅開業した人が共通して言うのは、「自宅だと公私の区別がなく、ずっと一人で仕事をしていて孤独だ」という感想です。一人で黙々と業務を行うというのは最初は良いのですが、いずれ何かしらで息抜きが必要になったり、他の人とつながっていたいと感じる場合もあるかと思います。

とはいえ、毎朝何分もかけて満員電車に揺られて通勤するという通勤ストレスとどちらがよいのか・・、これもその人の好みに別れるかと思います。

事務所を借りるメリット

では、事務所を借りるメリットは何になるでしょうか。それはずばり….

「事務所が自宅以外にあるということが、信用・信頼につながる」
ということに尽きます。

お客様は契約する際にその事務所は自宅か事務所かということは気にすることはないかもしれませんが、いざ相談があり「事務所に行きます」ということもあり得ます。そのいざという時に事務所の相談スペースを案内できるかどうかは、小さいけれど大きな信用のポイントと言えるのです。

一方、事務所を借りるには、当然ながらデメリットもあります。安くない家賃、水道光熱費が毎月何もしなくても発生するコストです。ご自身の活動範囲の事務所の家賃相場と相談しながら、自宅開業なのか事務所を借りるのかを検討するのがよいでしょう。

シェアオフィス・コワーキングスペースを借りるという選択肢

今まで自宅開業か事務所を借りるかという2つの選択肢を見てきましたが、第三の選択肢であるシェアオフィス、コワーキングスペースを借りるという手もあります。実はこれが開業したての人にはお勧めです。 
 
シェアオフィス、コワーキングスペースの場合、一定の使用料はかかりますが東京でも数万円で借りることが可能です。シェアオフィスでも、仕切りがあって部屋になっている場所を借りる場合は、前述の事務所を借りることと同じになりますので、コストも高くなりますが、一定区画を借りるのではなく、フリーアドレスである共有スペースを借りることで、コストもだいぶ抑えることができ、他の人との交流も可能です。

ただ一点デメリットを挙げると、社労士の業務には書類を扱うことが多いですが、それらの紙の資料を共有スペースに持ち込むことで、個人情報漏洩のリスクが高まる点が挙げられます。また施錠が出来る書類を保管するスペースがないことが普通なので、紙媒体の資料を多く扱う場合は、向かない可能性があります。

といっても開業したてで、作業もあまり多くないという状態であれば、紙の資料を扱う作業の時は施錠や管理が厳重な場所で行うとして、それ以外の作業や営業活動の拠点としてシェアオフィスやコワーキングスペースを活用することは、十分検討してもよいのではないでしょうか。

今まで社労士などの士業がシェアオフィスやコワーキングスペースを拠点にすることは、個人情報管理の観点からなかなか難しいとされてきました。社労士とはいえ、手続きだけではなく、人事戦略などコンサルティングをする機会も増えてくるでしょう。そのような新しいタイプの業務については、新しいオフィスの形態を取り入れることも検討してもよいのではないでしょうか。

また、自宅開業か事務所なのか悩みますが、大切なのは「見栄」で決めないということです。確かに事務所を借りることは信用に繋がりますが、自分がどこに時間とお金を投下しないといけないのか、その点を意識して選ぶことが大切です。

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