士業ってどれくらい経費が認められてるの?スーツも経費に含まれる?

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世の中には様々な士業がいるわけですが、士業と言うと、弁護士や行政書士、司法書士、税理士等をイメージされる方が多いですよね。この方々は、スーツを着られている印象が強い方も多いのではないでしょうか?一般的にメディア等に出演されている士業の方々って、スーツで登場されていますし、テレビの連続ドラマ等で士業が出た時に、着ているのもスーツな事が結構多いと思います。このスーツのイメージが強い士業って、スーツ代を経費で認めて貰う事ができるのでしょうか?

ちょっと士業から離れて考えてみましょう。なにも、スーツを着て仕事をしているのは、士業だけではないと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?もし、今読まれているあなたが、一般企業のサラリーマンだったとして、「自分だって士業じゃなくてもスーツを毎日着て出社しているし、それを経費で落として貰った事なんて一度もないぞ!」と思われた方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。

では、士業が特別なのか?と言う話になってしまうわけですが・・・。士業として事務所を経営している方が、どのくらいの範囲で経費が認められているのか?また、士業の仕事をする際にイメージのあるスーツを経費で認めて貰う事ができるのか?まずは経費の基礎的な部分から見ていきましょう!

1.そもそも経費って何?そのカラクリとは?

経費の大原則は、「売上を上げる為に、直接的に必要となったもの」とされています。

皆さんはよく、「これは経費で落とす」と言う言葉を耳にされますよね。経費で落とすと言う事は、それは仕事をする上で必要となった物であり、個人的に社員が必要とした物ではないと言う理由で、会社にお金を出して貰うと言うものです。会社側は、税務署に、これは経費ですと申告する事で、納税額に違いが生じます。

つまり、会社を経営する上で必要とされたお金ですから、経費として計上する事により、納税額を下げる効果があると言う事になります。

1つの会社を例に上げて、解説してみます。
1年間の内、その会社の売上は1000万円でした。その内、利益として出た金額は100万円。ここに、法人税が40%で計算されたとしましょう。
この場合、どのような計算方法になるのでしょうか?

①経費として何も計上しなかった
この場合、課税対象となるのは、利益として出た100万円となりますから計算はこうなります。
【100万円 × 40% = 法人税40万円】つまり、会社に残る資産は60万円です。

②経費として10万円計上していた
上記と同じ利益として、そこに経費として10万円分計上していたとすると、売上の100万円から10万円が差し引かれますから、計算はこうなります。
【90万円 × 40% =法人税36万円】つまり、会社に残る資産は54万円です。

つまり、①の場合は、納税する金額が40万円なのに対し、②の場合は納税する金額が36万円と、4万円ダウンしている事がわかると思います。
ここで「え?納税額は下がったとしても、会社に残る資産が下がってない?」と思われた方、慌てないで下さい。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、会社に残ったお金としては①に比べて6万円減っているのですが、実際には10万円の経費がかかっていたわけです。

つまり、本来は10万円分かかっていたのに、経費として計上した結果、実際には会社としてかかったお金は6万円だったと言う事になります。
例えば、経費で計上した物がコピー機だったとしましょう。購入金額は10万円ですが、経費で計上した結果、最終的には、そのコピー機を6万円でゲットした事になるわけですから、結果はプラスになるのです。経費を計上すると言うには、このようなカラクリがある事を、まずは理解して頂けたらと思います。基本的な経費とそのカラクリについては、以上のようなスタンスとなります。

2.販管費ってどんなもの?

皆さんは販管費(はんかんひ)って聞いた事があるでしょうか?仕事で経理を担当されている方や、公認会計士や税理士等の企業の会計を扱う職業の方にとっては知っていて当然の事ですが、スーツが経費で計上できるかどうかについて、この販管費をまずは知っておく必要がありますので、解説させて頂きます。

販管費とは通称であり、帳簿上で使用される正式名称(勘定科目)は「販売費及び一般管理費」と言います。販管費以外にも、省略されて「販売管理費」とも言うこともあります。(※ここでは統一して販管費とします。)

イメージがしやすいように、ここでも例を出して説明することにしましょう。
皆さんはよくスーパーへ食材を購入しに行ったり、洋服店等に衣類品等を買いに行ったりしますよね。これらのお店は、まず商品を仕入れていますから、それにかかる費用が「①売上原価」です。また、消費者に商品を販売して得るお金の事を「②売上高」と言います。
そして、最終的に上記、①②の差額となった金額がいわゆるお店の儲けとなり「③売上総利益(粗利益)」と言うわけです。これはあくまでもシンプルに表現した形です。

では実際に、このシンプルな形でお店側が販売し、購入するのか?と言うとそうではありません。「①売上原価」を行う際、売上を上げる為には、商品の宣伝をする為の広告を出す費用が必要になってきます。また、それらを行う場合には、その他に関わるものとして、人事、総務、経理等の会社自体を支えている人件費等もかかってきます。つまり、①の売上原価に入れられないお金が「販管費」となるわけです。

2-1.販売費と一般管理費の違いとは?

上記で、販管費とは「販売費及び一般管理費」の略称であると申しあげましたが、これらには違いがあるのでしょうか。

①販売費とは

販売費とは、販売をする活動を行う際に必要となる各種費用の事を言います。
一般的には、宣伝等の広告費や、販売促進費です。

②一般管理費とは

上記でも解説のあった、人件費等が該当します。
販売費のように、宣伝を行う際にかかる費用も、人が行いますよね。
これらの人が動いていると言う事は、会社の組織としても、その方を支えている人がいると言う事であり、人事、総務、経理の方々の間接部門に対する人件費や、それらが入居をしている事務所等の運営に関する費用、通信費や交際費、そして旅費や交通費等もこれに該当します。

つまり、間接的な部門に関わっている費用なんだと覚えておくと良いでしょう。販売をする際には、それを仕入れている方々や、その商品を宣伝する費用や、宣伝する為に動いている人、そしてその方々を管理したりする為に間接的に関わっている人等。会社を運営するだけでも、様々な人が関わりますから、このように分けて表現されると言う事になります。

3.実際にスーツは経費になるのか?

では、経費の基礎的な部分について解説させて頂きましたので、タイトルにあった、士業が使うスーツを実際に経費として計上できるのかどうかについて、迫って行きたいと思います。結論から申しあげて、これは大変難しい事だと表現できます。絶対にダメとも言えませんが、税務の専門家である税理士に聞いたとしても、ほとんどの方が「経費にはできません」と回答されると思われます。これには、背景があるので、ご紹介しておきましょう。

今から40年程前の判例によると、「スーツにかかる代金は、事業を行う上で必要経費になるかもしれないけれど、スーツと言うものは趣味とも言えると言う観点から考えると、購入する頻度や、値段も個人差があるので、私的にも使う可能性から考えると、経費として算入するとしても適正な金額が出せない。スーツ以外にもありますよね?クリーニング代とか散髪するお金とか・・・それらは経費には入らないから、スーツもそういう物ですよね」と言うニュアンスの判例が出ているのです。

わかりやすいように、砕けた感じで表現しましたが、結局判例では、スーツ代は必要経費にならないですよねって言う事になったわけです。この背景から、「スーツ代は経費にならない」と言われる理由となったのではないでしょうか。

では、法律ではどうなのでしょうか?
所得税による法律には以下のような規定があります。「その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額、及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする(原文;中略)」とされています。

つまり、法律では、必要経費として算入できるのは、売上原価と収入の為に直接必要とした費用、そして上記でも出てきた販管費と言う事になります。じゃあ、販管費として計上できるのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。
例えば、絶対仕事だけにしか使えないスーツだったとしたらどうでしょうか?おそらく、これは必要経費とみなされる可能性が高くなるわけですね。

何がポイントなのか?と言う事になりますが、例え会社に出社する時にスーツを着ていたとして、そのスーツで仕事をすると言うのであれば、通常考えれば、仕事の為に購入したスーツなわけですから、そこだけでしか使えないと言うのであれば、計上できる可能性が高くなります。

しかし、判例のように違う視点で考えてみると、スーツを購入するのは士業であってもご自身であり、その種類や値段を選んでいるのも、あなたご自身ですよね?もし、会社側が、会社で仕事をする時には、どこどこのお店の、このスーツを着用しなさいと言う事なのであれば、計上するには問題ないでしょうが、実際には値段も種類も色もご自身で決められているわけですから、はっきり言って経費として分類するのは難しいと言う事しか言えないのが現状だと考えます。

例えば、会社に勤務している方が、制服の着用を義務付けている場合もありますよね?これは、仕事をする上で必要とされていて、その服装以外では仕事ができないからです。つまり、スーツが制服になるのか?と言う観点でも考えてみるべきではないでしょうか?また、スーツが好きで、ブランドにもこだわっていると言う方もいると思います。

考えてみて下さい、ここでおかしいなと思われる方も出てくると思います。「私はスーツにこだわりがあり、好きなブランドがあります。そのスーツでしか仕事ができません、そのスーツは30万円もしますけど、仕事をする上で、私にとっては必要な物なのです」と言う方がいたとします。

一方、「私も士業の仕事をする上で、スーツの着用をしなければならないと考えています。しかし、ブランド等にこだわりはなく、仕事を行う事ができれば良いわけですし、近年では安いスーツも沢山売られていますから、私はいつも1万円のスーツを着ています」と言う方とでは、もしスーツが必要経費として計上できるなら、1番目の人は30万円計上し、2番目の方は1万円しか計上できない計算となるわけですね。おそらく、判例で言いたい事も、上記に挙げた例に該当するのではと思われます。

ただし、判例においても、絶対!と言う結果ではないですから、本当に必要としていて、スーツを計上できる可能性もありますから、必要経費として計上させる為には、本当にそのスーツを業務を行う上で必要としていると言う事実認定をしっかり行う必要があるとも言えるのです。

4.士業=スーツ着用だとは決まっていない

冒頭でもお伝えしたように、士業と言う業種では、スーツを着ている方が多いと思われます。これは、士業と言う業種が、専門性が高い資格でもありますし、業務の内容としても、それに割り当てられています。また、昔からのイメージとして、その流れがあると言う事も言えます。

しかし、法律で、士業は全てスーツ着用!と決められているのか?と言うと、そうではありませんよね。実際に、近年士業の方々が、スーツではなく、ラフな格好で仕事をしていると言う方も増えてきています。ですから、これは主観になる可能性が非常に高いと言えるのです。士業の資格を取得され、士業として働き始めた方が、ご自身が「士業であっても私服で良いではないか」と思っていれば、従来の士業=スーツと言うイメージは覆されてしまいます。

しかし、行う業務によっては、取引先に出向いたり、お客様や顧問先と会う際に、スーツを着ていなければ、相手に「なんだ?この失礼な人は!?」と思われる為、仕方なくスーツを着ていると言う方もいらっしゃる事でしょう。勿論、その中には、士業=スーツでしょう!と思っている方もいる為、これが正しいと言う事はできないと思われます。ただし、上記でも申しあげているように、法律によってスーツの着用を義務付けられているわけではありませんから、絶対にスーツ代が必要経費なのか?と言われると、難しいと答えるしかないのが現実だと言えるでしょう。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか?

必要経費として認められるかどうかについては、1.2.で上げさせて頂いたものが、基本的な経費として認められる物になります。それは、一般企業としても、士業としても同じ事であり、サービスや商品を提供する上で必要とした経費も必要経費ですし、その為に人が動いている分や、動いている方を管理している経費も、必要な経費だと言う事になります。

しかし、今回のタイトルのようなスーツ代と言う点に関しては、かなり難しい事が予想されます。勿論、過去の判例を覆すような新しい判例が出れば状況は変わるでしょうが、スーツ代にかかる数万円の為に、わざわざ裁判を起こす方は少ないとも言えます。経費にする為には、本当に仕事をして利益を出す上で、スーツが必要であると言う証明をする事ができるのであれば、話は変わってくる可能性もありますから、士業としてご自身がスーツの必要性をどのように考えているかから、考えてみてはいかがでしょうか。

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