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ちょっと待って!知っておきたい特例事業承継税制をとりまくリスクと対応策

ポイント
  1. 自社株の承継にかかる税負担が実質ゼロになる特例事業承継税制を使う3つのリスク
  2. 猶予取消リスク、争族リスク、後継者育成リスクそれぞれの対応策
  3. 会社にとっての承継ベストタイミングを見極めて利害関係者間での綿密な調整が必須

目次 [非表示]

平成30年度税制改正で新しく創設された「特例」事業承継税制。
従来の事業承継税制に比べて、各段に使いやすくなったということで、企業オーナーや後継者の関心が高まっているようです。

この制度を利用すると受けられるメリットは大変大きいのですが、デメリットもあり、利用ありきで飛びつくのも考えものだという意見もあります。
どんなケースを想定して、検討・対策をすればよいのか?そんな疑問にお答えしたいと思います。

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第一章 事業承継税制の特例はこんなに変わった!使いやすいがリスクもある

(1)実質税金ゼロで自社株が承継できる特例

平成30年度税制改正で新しく創設された特例事業承継税制。
何が大きく変わったのでしょうか?

・相続税の納税猶予を受けられる自社株式数が全株になり、また、自社株の評価額の100%について納税猶予が受けられるようになった
(従前では、自社株式数の2/3まで、自社株の評価額の80%が限度だった

雇用要件が実質撤廃となった
(従前では、5年間、従業員の雇用を8割以上維持しなければ、猶予取消となった)

・先代経営者のみならず、先代経営者の妻や親せき、第三者からの株式の贈与についても、納税猶予が使えるようになった
(従前では、先代経営者のみだった)

赤字など経営環境が変化した状況での株式の売却の場合などは猶予税額の一部が減免される
(従前では、状況は関係なく、承継した株式を売却したら、猶予された税額を全額支払わなければならなかった)

など、かなり大胆な改正が入り、使いやすくなったといわれています。
詳しくは こちらの記事をご覧ください。
事業承継にかかる贈与税や相続税の負担が軽減される?後継者は知っておきたい特例事業承継税制

企業のオーナー経営者には、自社株式の評価を下げては、後継者に贈与することを繰り返し、自社株にかかる相続税を少なくする努力を積み重ねて来られた方が少なくありません。
果たして、今回の特例事業承継税制は、このような苦労から、経営者を解放してくれるものなのでしょうか

(2)事業承継税制を取り巻く3つのリスク

大幅に使いやすくなったとはいえ、特例事業承継税制でも、適用のリスクはあります。
納税の免除ではなく、「猶予」に過ぎないことから、常に納税猶予の取消しに遭うリスクを抱えることになります。

また、自社株式は、相続財産となりますし、法律上立派な財産になりますから、遺産分割の対象となります。
事業承継を考えるということは、一見事業に関係のない他の相続人にとっても、影響がないとは言い切れません場合によっては、「争族」になるリスクもあります。

それに、事業承継は、企業にとっては、いつ、どのように引き継ぎ、先代経営者が伴走するかによって、今後の事業の展望を揺るがす大きな課題です。税制上トクになるからと適用を急ぐことは禁物です。事業承継そのもののリスクも考えられます。

このように、特例事業承継税制の適用には、

・納税猶予の取消リスク

・争族になるリスク

・事業承継そのもののリスク

この3つのリスクを考慮しておく必要があります。

(3)特例事業承継税制あるある「こんなはずじゃなかった」

事業承継税制の利用を検討される方は、資金負担少なく、円滑に事業の承継をしたいとお考えの方だと思います。
良かれと思って、事業承継税制を利用したけれども、「こんなはずじゃなかった」ということは、極力避けたいものです。

第二章から第四章で、(2)に挙げた「こんなはずじゃなかった」3大リスクと対応策について、まとめました。

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第二章 納税猶予取消リスク

事業承継税制を利用すれば、自社株の承継にかかる贈与税や相続税の負担を軽減させることが可能です。
しかし、あくまで納税猶予を受けて、納税の負担を軽減しているのであって、免除ではないのです。
つまり、納税猶予を受けられる要件から外れてしまえば、ただちに猶予されていた税額に利子税を加算して、支払わねばならなくなります

もしかしたらと想定される具体的なケースを見ていきましょう。

(1)<ケース1>雇用要件を満たさなくなった。

特例事業承継税制を使い、納税猶予を受け、自社株を先代から税金を支払うことなく、承継することができた。その後、業況が急激に悪化し、納税猶予の要件のひとつだった「雇用8割」を守ることができなくなることが明白となった。たかだか5年くらい、8割の雇用は守れると思っていたが、8割を切ることになってしまい、猶予された税額を納付しなければならないのではと眠れない日々が続いている

<ケース1>に対する対策

従来の事業承継税制では、猶予開始から5年間の平均で従業員の雇用が相続・贈与開始時の80%以上を維持することが、納税猶予継続の条件でした。

しかし、新しく創設された特例事業承継税制では、雇用8割を5年間維持するという要件を満たさなくなったとしても、実質的に納税猶予が継続できることになりました雇用要件が未達成の場合でも、税理士などの経営革新等認定支援機関に所見を書いてもらえれば、大丈夫です
所見の内容は、「なぜ8割の雇用を守れなくなったか」という客観的な理由です。
それを書いてもらうことができれば、納税猶予を継続することが可能となり、従業員の雇用維持要件は実質的に撤廃されたともいえます。

従業員の雇用維持要件が実質的に撤廃されたことは、今後の事業に不安をいだく後継者にとっては、一つの安心材料になるかと思います。

(2)<ケース2>後継者が代表を辞めざるを得なくなった

特例事業承継税制を使い、納税猶予を受け、自社株を後継者に承継させることができたが、社内の不祥事により、承継期間の5年の間に代表を辞めざるを得なくなった
猶予を受けていた税額に、利子税を加算して一括で支払わねばならず、経済的にも窮地に陥ることとなった。

<ケース2>に対する対策

このようなケースは、レアケースかもしれませんが、どの企業にも考えうることでもあります。
次のような対策が考えられます。

・猶予税額をできるだけ少なくする。

猶予税額が大きいほど、猶予取消リスクは大きくなります

できるだけ猶予税額を少なくするには、承継するときの株式の評価をできるだけ下げること、贈与で株式を承継するときは、「暦年課税」ではなく税率の低い「相続時精算課税」を適用することです。

・承継するときの株式の評価をできるだけ下げるには?

会社の規模にもよりますが、株式の評価は、直近3年間の当期純利益、直近3年間の経常利益、純資産額に依存します。

評価を引き下げるためによく使うのは、先代経営者の退職金を出すことです。退職金を出すと、当然ながら当期純利益と純資産額は引き下がります。
この評価が下がったタイミングで、株式の贈与を行うのです。

この方法を使うときの注意点は、「必ず先代には退任してもらえるタイミングでないとダメ」ということです。実質的に退任していない、経営に携わっていると認定されると、退職金として支給した金額について「役員賞与」として認定され、損金にならないため法人税がかかり源泉所得税を引いていないとのことで、不納付加算税のペナルティ、そして、先代経営者の所得税も大幅に上がってしまうというトリプルパンチになりかねません。

また、評価を引き下げたいタイミングの直近1~2年間は配当金を少なくするなどの方法も効果があります。

・贈与で承継するときの贈与税の課税の仕方について「相続時精算課税を選択するとは?

贈与で株式を承継させる場合には贈与税がかかりますが、「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つのいずれかの方法で贈与税を申告することができます。
猶予税額をできるだけ少なくするには、この「贈与税」をできるだけ少なくすることが必要となります。

そこで、株式の承継にかかる贈与については、「相続時精算課税」の方式をとって贈与税を申告した方が、一般的には贈与税を低く抑えることが可能です。

「暦年課税」だと、例えば1億円の評価の株式を承継しようとすると、

(1億円ー110万円)×55%-640万円= 4,799万円もの贈与税がかかります。

一方で「相続時精算課税」を選択すると、これまで一度も「相続時精算課税」での贈与を受けていなかったとすると、

(1億円ー2,500万円)×20%=1,500万円の贈与税で済みます。

後者の課税方法を選択して、株式の贈与を受けると、猶予税額も少なくて済みます

ただし、後者の「相続時精算課税」を選択すると、同じ人からの贈与については、いくらであっても(暦年課税の基礎控除の110万円以下であっても)申告が必要となります。
また、「相続時精算課税」という名前からもわかるように、贈与を受けた財産については、相続があったときに、相続税がかかる相続財産に加えて相続税を計算することになります。

一旦20%という低い税率で贈与を受けておき、相続のときに、「精算」する、「相続時精算課税」。
猶予税額をできるだけ少なくし、猶予取り消しリスクを抑えるには有効な選択肢の一つです。

(3)<ケース3>会社を売却することになった

特例事業承継税制を使い、納税猶予を受け、自社株を後継者に承継させることができた。承継機関の5年が経ったあとも事業を続けていたが、後継者には子どもがおらず、次に後継させる者がいない
結局、会社の株式を売却することになり、納税猶予は取消となり、猶予されていた税額と利子税を一括で支払わなくてはならなくなった

<ケース3>の救済策

今後も日本では後継者不足が引き続き問題になると思います。
現在は後継者がいる会社でも将来はどうなるかわかりません。M&Aで他社に売却することも十分考えうるでしょう。

このような場合でも、猶予税額を少なくしておくことは必要となります。(2)にあるように、評価を十分下げるなどの手を打ったうえで、株の承継を行いたいものです。

また、株式を売却した場合には、承継機関の5年の間であれば、全額一括納付です。

承継機関の5年を経過したのちでは、原則として、猶予税額の全額を納付することになりますが、赤字が続いていたり、業績が悪化して債務超過状態に陥るなどの経営環境の変化がある場合には、株式の売却時点における株式評価額で、猶予税額を計算しなおし、もともとの猶予税額のうち、再計算したあとの猶予税額を上回る金額については「免除」されることとなります。

つまり、業績を悪化しての売却等であれば、その悪化した状態での株価に置きなおして猶予税額を再計算し、再計算した税額を上回る猶予税額については、減免してもらえることになります。

(4)<ケース4>税理士が届出を怠ったことにより納税猶予が取消となった

特例事業承継税制を使い、納税猶予を受け、承継機関の5年間も終了し、3年ごとに税務署に届出を提出していた.しかし、ある年の提出期限を税理士が失念しており、納税猶予は取消となり、猶予された税額に利子税を加算して一括で支払わなければならなくなった

<ケース4>の解説と対策

事業承継税制を適用して株式を承継したのち、当初5年間は、都道府県への申請と税務署への届け出が必要です。そして、5年経過後は、3年ごとに、税務署への届け出が必要となります。猶予を受けている限りずっと届け出をせねばならず、多くの場合、その提出を顧問税理士などに委託していると思います。

毎年ではなく、3年ごとの提出なので、提出管理がとても大変です。うっかり出し忘れてしまうと、一括で猶予税額を支払わなければならないことになります。このような書類の管理を信頼して任せられる税理士に関与してもらうことが必要です。

(5)その他考えられること

その他、納税猶予取消リスクとして考えうることはいくつかあります。

例えば、承継した会社を、いわゆる「ホールディングス」にして、株式保有会社にしてしまうと、納税猶予が取り消されます会社そのものの解散もそうですし、減資として資本金や資本準備金を減らしてしまったときも該当します。
おめでたく会社が上場したときも、納税猶予は取消しとなります。

このように、納税猶予のケースはいくつも考えられますので、すべてのケースを知ったうえで、十分な対策を講じたうえで、承継することが必要です。

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第三章 争族リスク(他の相続人の相続税が多額になるリスク及び遺留分減殺請求リスク)

事業承継は、先代経営者と後継者間の事柄だと考えられがちですが、実は、その他のご家族・相続人にとっても、影響が大きく及ぶことになります。
良かれと思って、特例事業承継税制を使い、株式を承継したら、思わぬところで「争族」になってしまうこともありえます。

どういう場合にそうなってしまうのか、有効な対策は何かについてまとめました。

(1)<ケース5>承継しなかったきょうだいから遺留分減殺請求としてお金を請求された

後継者である長男に、特例事業承継税制を使って、自社株を贈与し、集中させて承継した。先代が亡くなった。先代が遺した財産は、自宅の土地建物のみであった。自宅の土地建物は先代の妻が相続し、長男は生前に自社株の贈与を受けている。何も相続していない次男は、何も相続できなかったのは不服として、遺留分減殺請求をしてきた。長男は、借金をして弟に現金を渡すことになった

<ケース5>の対策

先代は長男に会社の将来を託し、後継にと選びました。そのため、自社株を贈与にて引き継がせましたが、次男に対する考慮ができていませんでした
妻や子供など、法定相続人には、遺留分といって「最低限いくらの財産を相続することができる」という「財産を引き継ぐ枠」のようなものがあります。

次男の場合、法定相続分は4分の1ですから、その半分の8分の1について、相続する権利があるのです。

先代の妻が相続した自宅土地建物が5,000万円、長男が引き継いだ自社株は1億5,000万円だとすると、次男の遺留分は、2億円の1/8である2,500万円です。

株式は換金することがほとんどできないにもかかわらず、何も相続できなかった、あるいは相続分が少なかったきょうだいは、不満を抱えやすいものです。事業を引き継ぐことは大きなリスクを抱えることでもあるため、プレッシャーも大きく背負うことになるのですが、だれもきょうだいの仲が悪くなってほしいと願ってはいません。
争族を防ぐためにも、きょうだいには配慮が必要です

この場合の対策ですが、いくつかあります。

・次男の遺留分に対応する生命保険を準備しておく

・経営承継円滑化法の適用を受け、長男が引き継ぐ自社株については、遺留分の計算に含めない「除外合意」を家族間で取っておく

経営の承継を円滑に進めるための法律、経営承継円滑化法の認定を受けることができれば、自社株について「除外合意」といって、遺留分の計算から除外する合意をとることが可能です。もちろん、合意に応じてもらえればの話です。いずれにしても、事前に株式その他の財産の承継・相続について、よく家族で話し合っておくことが大切だといえそうです。

「経営承継円滑化法」の機能としては、他にも「固定合意」というものがあります。
贈与で株式を承継したのち、長男の頑張りで株価が上がれば上がるほど、遺留分も多くなってしまいます。

長男の事業への意欲をそがないために、遺留分の計算上、株式の評価を「固定」することが可能です。事業を伸ばしたことにより増加した株式の評価額を、遺留分の計算上、入れないことが可能です

(3)ケース6 本当は先代は株式を現金化したかったケース

猶予税額をできるだけ抑えるために、先代である父に退職金を出した。また、配当も控えて株価を下げ、事業承継税制を適用し、全株式の贈与を受け、事業を継承した。しかし、父は株式を現金化してほしかったと言い、株式譲渡代金の代わりとして、毎月の役員報酬を要求してきた

<ケース6>の対策

事業承継税制は、株式を贈与や相続で承継させるとが前提となっているため、株式を無償で後継者に渡すことになります。当然ながら、現金化をすることはできません。株式を現金化したいと先代が考えている場合は、不向きとなります。

また、このケースの場合、先代が役員報酬を要求してくるなど、実質的に退任していないと認定されれば、退職金についても、役員賞与と認定されてしまうおそれがあります。

先代にとっては、会社はまるで自分の子供のようなものですから、簡単には渡したくない、できれば株式を現金化したいという願望もあってしかるべきかと思います。

どのように株式や事業を承継するのか、事前に家族でよく話し合うことが不可欠ですし、それを怠ると、トラブルのためになりかねません。
引き継がせる側、引き継ぐ側、それぞれの言い分もありますが、引き継いでもらう、引き継がせてもらうの気持ちを忘れずに、向き合うことができればいいですね。

第四章 事業承継そのもののリスク

この10年限りの時限立法である特例事業承継税制ですから、これを機会に使わなければと意気込む経営者もいらっしゃると思います。しかし、事業承継は会社にとって大きなテーマですから、事業承継を考えるきっかけにして頂き、タイミングが合えば使う、というスタンスが望ましいかと思います。

適用を急ぐとこんなケースが考えられそうです。

<ケース7>十分育っていない後継者を連れてきてしまい、なじめなくて退職してしまう

特例事業承継を使わねばと事業承継を急ぐあまり、まだ社会人として経験不足の長男を呼び寄せ、役員にした。事業承継税制の適用には「役員3年を経験していること」と要件があるため、急がせたが、なかなか会社になじめず、退職してしまった。

<ケース8>後継者の育成が不十分なまま、代表を譲ってしまった

特例事業承継税制の適用にこだわるあまり、まだ十分に育成できていないと思ったが「立場が人を育てるんだ」として、後継者を代表にした。従業員や取引先からの支持が十分に得られず、業績不振に陥りそうになっているところを、先代が何とか支えている状況である。

<ケース7・8>の対応策

事業承継には、まずは、家族間での十分な話し合い、それから社内への告知、社内からの受入れ、事業承継、承継後の先代経営者による伴走など、決して1年や2年では完結し得るものではありません。株式の承継というのは、事業承継を取り巻く要素の1つにすぎません。

先代経営者から後継者が引き継ぐものは、株式をはじめとした目に見える資産のみならず、経営権の承継、目に見えない理念やノウハウ、ネットワークなどの「知的資産」の承継も含まれます。決して一瞬で終わるものではないのです。

長年培ってきたものを承継するために必要なタイミングがあります。

いつ、どのように承継するのがよいのか、必要に応じて専門家の知恵も借りながら、先代経営者、後継者、そしてご家族、会社の幹部と十分な話し合いをし、共通認識をもって、チームで事業承継をしていくのが望ましいです。

先代経営者、後継者、ご家族などの年齢を年表にした表を作成し、それをたたき台として話し合うこともとても有益です。なかなか承継のことに向き合うのは勇気が要りますが、事業を円滑に続けていくのであれば、必ず通らねばならない道だと思います。

第五章 事業承継税制を使うときに配慮したいこと

(1)経済的なメリットのみを追い求めると、思わぬところで足をすくわれる

ここまで見てきたように、十分な検討・対策をせぬまま、大幅に使いやすくなった特例事業承継税制の活用に踏み切ってしまうと、思わぬところで「こんなはずじゃなかった」というケースに陥ります。
経済的メリットは目に見えやすいですし、わかりやすいものですが、一番大切なのは、事業を無理なく継続できるように引き継いでいくことです。
事業承継税制は、会社を円滑に引き継ぐための手段の一つにすぎません

(2)承継のベストタイミングを見極めよう

事業承継がうまくいくか、スムーズに進められるかどうかという課題は、会社の今後に大きくかかわる重要なテーマです。

先代経営者の年齢、幹部従業員の受け入れ体制、そして後継者の育成状況などによって、それぞれの会社の承継ベストタイミングは異なります。
早すぎても、遅すぎてもうまくいきません。

いつどのように承継していくのがよいのか、関係者間でよく話し合うことが大切です。

(3)自社、経営者、後継者、その他の相続人、4者それぞれメリット・デメリットを整理しよう

事業承継にまつわる利害関係者は、先代経営者と後継者に限りません。先代経営者の財産の相続が必ず関係してきますから、他の相続人にも大きな影響を与えます。

会社を継がないから関係ないのではなく、これまで先代経営者が築いてきた事業を、誰がどのように引き継ぐため、相続財産にはどういう影響があるのかを皆で把握することが望ましいでしょう。

そのうえで、会社、先代経営者、後継者、その他の相続人、4者それぞれのメリット・デメリットをまとめておきましょう。

自分の立場や取り分だけを主張するのではなく、これまで紡いできた先代の想いを、どう家族が引き継いでいくのか、お互いの立場を尊重しながら、建設的な話し合いが必要です。必要に応じて専門家のファシリテートを活用することも有効だと思います。

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著者プロフィール

神佐 真由美

神佐 真由美

京都大学経済学部在学中から「プロフェッショナルになるために手に職を」と税理士を志す。卒業後は、税理士を顧客とする株式会社TKCに入社し、税理士事務所を顧客にシステムコンサルティング営業に4年間従事。本当に中小企業経営者にとって、役に立てるプロフェッショナルはどうあるべきかを問い続け、研究する。税理士試験5科目合格後、税理士業界へ転身。
自ら道を切り拓く経営者に尊敬の念を抱き、経営者にとって「一番身近なパートナー」になるべく、起業支援や資金調達支援、経営改善や組織再編、最近では事業承継支援など多くの経験を積む。経営計画を一緒につくり、業績管理のしくみづくりを通して、未来を見通せ、自ら課題を見つけ、安心して挑戦できる経営環境づくりが得意。大阪産業創造館のあきない・経営サポーターも務め、セミナー実績も多数。「経営者のための資金繰り基礎講座」「本当に自社にとって必要?事業承継税制セミナー」など。

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