【2019年5月31日締切】事業承継補助金と申請のポイント

目次 [非表示]

2019年4月12日から公募が開始されている事業承継補助金について、まとめました。

親族や第三者から事業を引き継ぎ、新しい取り組みをする会社を後押しする補助金です。

第1章 事業承継補助金とは?

(1)事業承継補助金の概要

2019年4月に公募が開始される事業承継補助金は、平成30年度第2次補正予算で成立したものになりますので、正式な名称は「平成30年度第2次補正 事業承継補助金」です。

国では、事業承継を国家的な課題として、数々の政策を打ち出しており、その一環としてこの補助金があります。

後継者不在等により、事業継続が困難となることが見込まれている中小企業者等が、経営者の交代や、事業再編・事業統合を契機とした経営革新等を行う場合に、その取り組みに要する経費の一部を補助し、中小企業者等の世代交代を通じた経済の活性化を図ることを目的としています。

(2)どんな場合にもらえる補助金なのか?

補助対象者の要件

まずは、何らかの形で事業承継をしていることが必要となります。

この補助金では、大きく分けてⅠ型とⅡ型というように事業承継の形態を2つに分けて対象としています。
 


Ⅰ型:後継者承継支援型

事業承継(事業再生を伴うものを含む)を行う個人及び中小企業・小規模事業者等が対象。

Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型

事業再編・事業統合等を行う中小企業・小規模事業者等が対象。ただし、後継者不在により、事業再編・事業統合等を行わなければ事業継続が困難となることが見込まれている者に限ります。
 

Ⅰ型はよくある親族間の承継のほか、法人又は個人事業主が営んでいた事業を、異なる個人事業者が引き継ぎ、その事業以外の経営を行っていない場合も含みます。

Ⅱ型は、いわゆるM&Aと言われる会社の売買、事業の売買のケースも含みます。

2016年4月~2019年12月31日までに、事業承継や事業再編・事業統合等を行い、または、行う予定である事業者が対象です。

詳しいケースの整理は、事業承継補助金の公募要項7~8ページの表をご参照ください。

中小企業庁 平成30年度第2次補正 事業承継補助金 公募要項より

unnamed (2)(2)

unnamed (3)(3)

補助金の支給対象となる事業とは?

事業承継補助金は、事業承継等をしたことに対して補助金が出るのではなく、事業承継をきっかけとして、経営を引き継いだ承継者が行う経営革新等にかかる取組みに対して補助金が支給されるものになります。

補助される期間も決まっています。経営革新等にかかる取組みで、2019年12月31日までに行うものでなければなりません。この期間に、契約・発注・支払が完了していることが必要です。

なぜ、新しい取組みに対して、補助金がでるのでしょうか。

事業を継続していくためには、時代に合った変化を遂げていかなければなりません。

経営者が変わった、運営母体が変わったなど、「誰がやるか」が変わったときこそ、変革のチャンスです。

事業承継補助金では、その変革のチャンスに前向きにチャレンジする経営者を支援する補助金です。

また、その変革のチャンスに際して、不採算事業や拠点の廃止など思い切った改革をする場合には、補助金の上限が上乗せされます。

生産性の向上が日本の至上命題ですから、効率の良くない経営は思い切ってやめてもらい、強みを発揮できるところで集中してほしいというメッセージでもあります。

(3)補助対象の経費は?いくらまで補助されるのか?

補助対象の経費は、事業承継等をきっかけとして行う新しい取組みに必要となる経費です。

  • 使用目的が新しい取組みに必要なものと明確に特定できる経費
  • 交付決定日以降に、補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費(承継者のみ、承継された者つまり被承継者が取り扱った経費はNG)
  • 証拠書類等によって金額・支払の事実が確認できる経費

であることが必須で、補助対象経費は下記の通りです。

IMG_2191中小企業庁 平成30年度第2次補正 事業承継補助金 公募要項より

補助率は、補助対象経費の2/3以内又は1/2以内です。補助額の上限は、Ⅰ型かⅡ型か、また、申請の内容によって、異なります。詳しくは、次の表の通りです。


IMG_2192

中小企業庁 平成30年度第2次補正 事業承継補助金 公募要項より

(4)比較的通りやすいってホント?過去の採択率は?

この事業承継補助金は、平成29年度補正予算でも公募されました。

採択率はどのくらいだったのでしょうか。

Ⅰ型
第1次募集 481件中374件採択 採択率77.7%
第2次募集 273件中224件採択 採択率82.0%
第3次募集 75件中55件採択  採択率73.3%

Ⅱ型
第1次募集 220件中119件採択 採択率54.0%
第2次募集 43件中25件採択  採択率58.1%

この通り、Ⅰ型では7割~8割が採択されています。Ⅱ型でも、半数以上の採択となっています。

中小企業なら応募できるものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金や、小規模事業者が対象となる小規模事業者持続化補助金とは異なり、特定のケースの場合のみしか応募できないこともあり、応募件数自体が少なめです。

しっかりとポイントを押さえて申請書を記載することができれば、採択ラインに入ることは難しくないのではと考えられます。

2016年4月以降に事業承継や、事業再編・事業統合等のM&Aを実施した経営者の方は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

第2章 必ず押さえておきたいポイント

pasted image 0 (1)

次に、申請にあたって、必ず押さえておきたいポイントを解説します。

(1)申請要件を充足しているか

第1章(2)で解説したように、事業承継や事業再編・事業統合等で承継していることが必要です。

ここで注意しておきたいのが、Ⅰ型の後継者承継支援型に申請する場合、もしくは、Ⅱ型の事業再編。

事業統合支援型に申請する時点で事業承継が完了していない場合には、補助対象者となる承継者の代表者には、満たしておくべき要件があります。次のいずれかを満たしておく必要があるので、注意が必要です。

  • 経営経験を有している(事業)者
  • 対象企業の役員として3年以上の経験
  • 他の企業の役員として3年以上の経験
  • 個人事業主として3年以上の経験

これらについて、2019年12月31日までに、基準の年数を超えること。

承継したのちも経営していくことができるスキルと経験があるかどうかを確認する要件です。

  • 同業種での実務経験を有している(事業)者
  • 対象企業・個人事業に継続して6年以上雇用され業務に従事した経験を有する者
  • 対象企業・個人事業と同じ業種において通算して6年以上業務に従事した経験を有する者
  • これらについて、2019年12月31日までに、基準の年数を超えること

役員の経験はなくても、従業員として、相当の経験があることを確認する要件です。

  • 創業・承継に関する下記の研修を受講した(事業)者
  • 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けた者
  • 地域創業促進支援事業(平成29年度以降は潜在的創業者掘り起こし事業)を受けた者
  • 中小企業大学校の実施する経営者・後継者向けの研修等を履修した者 

これらについて、補助事業期間内に受講する場合を含みます。

産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業とは、同法の認定を受けた市町村別の創業支援事業によるセミナーや創業塾などの施策を指します。

中小企業庁ホームページの産業競争力強化法に基づく認定を受けた市町村別の創業支援事業計画の概要をご確認ください。

地域創業促進支援事業、潜在的創業者掘り起こし事業とは、地域において新しく創業を希望する方のために創設された創業スクールを指します。募集を終えているので、今から受講することは不可能です。

また、中小企業大学校の実施する経営者・後継者向けの研修等を履修した者も該当しますが、こちらもあらかじめスケジュールが決まっているもので、ある程度の期間を定めているものになるため、今から受講することは不可能です。

この要件は、役員や従業員の経験が基準の年数に満たなくても、経験のないことを補うためのこれらの研修を受講している者であることを確認する要件です。

今から承継者の要件を満たそうと思うと、1つめの市町村別の創業支援事業の支援を受けることが現実的です。

役員3年、従業員6年の要件を満たせないけれども、承継者としての要件を満たしたい場合は、早めに市町村の窓口に問い合わせてみましょう。

(2)新しい取り組みが明確であるか

pasted image 0 (2)

先述したように、この補助金は、事業承継をしたこと自体に対してではなく、事業承継をきっかけとした新しい取り組みに対して補助金が支給されるものとなります。

では、新しい取り組みとはどのようなものでしょうか。

  • 新商品の開発又は生産
  • 新役務(サービス)の開発又は提供
  • 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
  • 役務(サービス)の新たな提供の方式の導入
  • 上記に寄らず、その他新たな事業活動による販路拡大や新市場開拓、生産性向上等、事業の活性化につながる取り組み、事業転換による新分野への進出など

以上を指します。

商品やサービスが新しいこと、または、その生産・販売や提供の方法が新しいこと、その他新しい市場を開拓したり、思い切った新分野への進出をしていることが要件となります。

また、この新しい取組みには、税理士などの認定経営革新等支援機関の支援を受けるべしとのことで、認定経営革新等支援機関の記名や押印を確認できる確認書の提出も求められています。

認定経営革新等支援機関は、中小企業の経営支援の担い手としての役割を持っています。事業承継補助金を受けるうえでも、積極的に助言を受けたいものです。

(3)審査の観点を満たしているか

unnamed (4)(1)

もう少し詳しく要領を読み込むと、審査の観点として、次の通り書かれています。この審査の観点をしっかり読み込んで、これに沿うようにもれなく申請書を作成すると、採択率はグンと上がります。

・経営革新等に係る取組の独創性技術やノウハウ、アイディアに基づき、ターゲットとする顧客や市場にとって新たな価値を生み出す商品、サービス、またはそれらの提供方法を有する事業を自ら編み出していること。

独自性や新規性、そしてオリジナリティが求められているようです。
 

・経営革新等に係る取り組みの実現可能性。商品・サービスのコンセプト及びその具体化までの手法やプロセスがより明確となっていること。事業実施に必要な人員の確保にめどが立っていること。販売先等の事業パートナーが明確になっていること。

→この新しい取り組みの実現可能性が固めであること。ただアイディアがあるだけでなく、それを商品やサービスに落とし込むコンセプトやプロセスまでが明確になっていること。
いざとなれば生産・販売・提供できる人的リソースがそろっていること。そして、実際に売り先候補があることが求められています。
 

・経営革新等に係る取組みの収益性ターゲットとする顧客や市場が明確で、商品、サービス、またはそれらの提供方法に対するニーズを的確に捉えており、事業全体の収益性の見通しについて、より妥当性と信頼性があること。

→きっちりとマーケティングができているかどうか、マーケットとの対話ができているかどうかが求められています。補助金の財源は税金ですから、市場に歓迎され、収益化できることが現実的であることが求められています。
逆に言うと、売れるか売れないかが定かでないものについて、補助金を出すことはできないということです。
 

・経営革新等に係る取組みの持続性。予定していた販売先が確保できないなど計画通りに進まない場合も事業が継続されるよう対応が考えられていること。事業実施内容と実施スケジュールが明確になっていること。また、売上・利益計画が妥当性・信頼性があること。

→見込んでいる販売先が買ってくれないなど、想定外のことがあることは経営には日常茶飯事です。もしそうなったとしても、次善策やリスクヘッジ策が練られているかどうかが求められています。もしうまくいかなかったときの策をあらかじめ考えておくこと。これは補助金事業でなくても、経営している以上は当然のことだと考えられます。
また、取り組みの内容と実施スケジュールが明確であることを必要とし、ここでも計画の明確性と実現可能性が求められています。

一度申請書を書いたあと、今一度これらの審査の観点を読み直し、もれなく書き表すことができているかどうかを確認しましょう。

自社のことを知らない審査員が審査しますので、主観よりも客観的な目が必要です。

(4)押さえておきたい加点項目

事業承継補助金には、望ましいことに対しては、加点をすることにしています。

  • 公正な債権者調整プロセスを経て、2016年4月1日から2019年3月29日までの間に、債権放棄等の抜本的な金融支援を含む事業再生計画を策定した場合
    →再生支援協議会などによる事業再生があった場合に、債権放棄や第二会社方式など、思い切った金融支援も含むものとなった場合
  • 「中小企業の会計に関する基本要領」又は「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けていること
    →これらの適用を受けているかどうかは、決算書に添付される個別注記表への注記の有無により確認できます。
  • 経営力向上計画の認定を申請時に受けていること
  • 経営革新計画の承認を3月29日までに受けていること
  • 雇用や域内仕入、地域の強み活用など、地域への貢献度合いが高いこと
  • 地域おこし協力隊として、地方公共団体から委嘱を受けていること

第3章 補助金申請の注意点

pasted image 0 (3)

(1)補助金はあくまで後払いなので資金繰りに注意

補助金は返済不要のもらえるお金ですが、後払いであることに注意が必要です。

例えば、総費用200万円の新しい取り組みに対して、補助金を100万円をもらう場合、実質的な自己負担は100万円ですが、先に200万円の全額を支払い、補助対象事業が終了してから、受給申請をして補助金100万円が入金されることになります。

つまり、先に200万円のお金の工面はしておかないといけないのです。

最近では金融機関でも、補助金が支給されるまでのつなぎ資金の融資をしてくれるところもあります。

先払いが厳しい、と思われる方は、金融機関にも相談してみましょう。

(2)早めに専門家に相談しよう

事業承継補助金の申請には、認定経営革新等支援機関の確認書が必要となります。

早めに相談し、内容についても助言をもらい、必要な場合は、事業承継補助金が得意な認定経営革新等支援機関からサポートを受けるようにしましょう。

今年のゴールデンウィークは空前の10連休ですから、すぐに5月半ばになってしまいます。この補助金の申請期限は5月31日ですが、できれば、4月半ばくらいまでに相談をしておきたいです。

申請をしてみようとお考えの方は、お早めに。

(3)補助金があってもなくても成り立つビジネスモデルにしよう

補助金申請を行う上で、やってはいけないことは、「補助金が出るから、これをやろう」という考え方です。

まず、自社の課題やニーズがあって、それにあった補助金があれば申請する、という考え方でないと、補助金の目的によって、自社の方向性が歪められてしまうことになりかねません。

事業承継補助金が支援してくれるのは、事業承継後の経営革新にかかるお金の一部でしかありません。一時的な後押しになるものであって、事業承継をしたのちは自社で売上を作っていかなければなりません。

補助金が出ても出なくとも、継続可能で、利益が見込めるビジネスモデルでなければなりません。審査の観点は、まさにこのことを満たす経営革新を求めるものといえそうです。

まとめ

2019年度に公募される補助金には、創業補助金はありません。事業承継が国家的な課題であることから、事業承継補助金が、通常の事業承継だけでなく、M&Aも含めた事業再編・事業統合をして承継した者に限定して準備されています。

審査の観点は、決して補助金をもらうために必要なだけの観点ではなく、今後のビジネスモデルを作るにあたり、欠かせない視点ばかりです。

2016年4月以降に事業承継等をした会社またはする予定の会社は、自社の課題を見える化し、事業の磨き上げをおこなうためにも、ぜひこの事業承継補助金を活用頂ければと思います。

あわせて読みたい関連記事

実質税負担ゼロで自社株が引き継げる特例事業承継税制とは?
事業承継にかかる贈与税や相続税の負担が軽減される?後継者は知っておきたい特例事業承継税制

特例事業承継税制を検討する際にはおさえておきたい特例の落とし穴
ちょっと待って!知っておきたい特例事業承継税制をとりまくリスクと対応策

事業承継をきっかけに家族ともめたくない方はお読みください
事業承継は先代経営者と後継者の問題だけではない。家族ともめやすい遺留分問題とは?

事業を売却するってどういうこと?
法人の事業譲渡とは?~メリット・デメリットと手続き~まとめて解説

企業の承継は、自社株の引継ぎだけじゃない
事業承継・会社/企業の承継って何?承継と継承の違いも合わせて解説

ゼロイチよりも買収!?これから増えるM&Aについておさえよう
M&Aって一体なに?会社に係るM&Aを基礎知識から理解しよう!

親族での事業承継を考えるポイントをまとめました
事業相続・承継!【親族内承継】って何?納税猶予も含めて解説!

中小企業を長年コンサルしてきた元金融機関行員中小企業診断士が語るシリーズ
事業承継との向き合い方②事業承継を幻にしないために〜誰に引き継ぐべきか〜
事業承継との向き合い方④~なぜモメるのか?親子間のボタンの掛け違いから考える事業承継~
事業承継との向き合い方⑤ 事業を譲る側がすべきこととは〜船に船頭は二人もいらない?〜

登録することで、 利用規約・プライバシーポリシーに 同意したものと見なされます。

関連記事

著者プロフィール

神佐 真由美

神佐 真由美

京都大学経済学部在学中から「プロフェッショナルになるために手に職を」と税理士を志す。卒業後は、税理士を顧客とする株式会社TKCに入社し、税理士事務所を顧客にシステムコンサルティング営業に4年間従事。本当に中小企業経営者にとって、役に立てるプロフェッショナルはどうあるべきかを問い続け、研究する。税理士試験5科目合格後、税理士業界へ転身。
自ら道を切り拓く経営者に尊敬の念を抱き、経営者にとって「一番身近なパートナー」になるべく、起業支援や資金調達支援、経営改善や組織再編、最近では事業承継支援など多くの経験を積む。経営計画を一緒につくり、業績管理のしくみづくりを通して、未来を見通せ、自ら課題を見つけ、安心して挑戦できる経営環境づくりが得意。大阪産業創造館のあきない・経営サポーターも務め、セミナー実績も多数。「経営者のための資金繰り基礎講座」「本当に自社にとって必要?事業承継税制セミナー」など。

<関連サイト>
角谷会計事務所
未来を魅せる税理士 神佐真由美のブログ