M&Aと事業承継の違いとM&Aをすることによって生じるメリットとデメリット

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会社を経営していればいずれは自分の会社を誰かに引き渡さなければいけません。自分の会社を誰かに引き渡すことを事業承継と呼んでいるのですが、特に中小企業では今までのような事業承継が困難となっています。そこで近年注目されているのがM&Aを利用した事業承継です。

ここでは事業承継とM&Aの違いを確認し、M&Aによって生じるメリットやデメリットを考えていきます。

M&Aと事業承継の違いを知る

まずはM&Aと事業承継の違いを確認しておきましょう。M&Aも事業承継も自分の会社を第三者に引き渡すという点では変わりありません。簡単に言えばM&Aは事業承継の手法の1つと言えます。事業承継とM&Aの最大の違いは自分の会社を引き渡す相手が異なるという点です。

まず事業承継の場合、引き渡す相手は個人となります。事業承継の中でも最も多いのが自分の子供あるいは親族に会社を引き渡すということです。そして自分の親族だけではなく、従業員や全く外部の第三者であっても対象が個人ならば事業承継になります。近年では少子化の影響もあり、特に中小企業では親族間での事業承継がとても困難になっているのが現状です。

また従業員など第三者に対して事業承継をおこなう際には権力を集中させるために会社の持ち株を引き継ぐ側が買い取ることが大切で、そのための莫大な資金が必要となります。

一方、M&Aは簡単に言うと別の会社に自分の会社の権限を売るという形になります。M&Aを利用すると基本的に合併されることとなり、譲渡した側は買収した企業へと吸収されます。

M&Aの進め方について

M&Aを利用して会社を譲渡することを検討したのであれば、まずは自分の会社を譲渡する相手を選定することから始める必要があります。譲渡先の会社を見つけると言っても東証1部と2部に上場している知名度が高い会社だけでも2,000社以上ありますし、上場している会社以外からも探すとなるとその数は膨大なものとなるので自分1人の力だけでは適切な会社を見つけることは困難です。

したがって多くの企業はM&Aをおこなう際に仲介会社に相談します。 仲介会社に会社探しを依頼する場合には決算書や企業の概要などをあらかじめ提示しておくとその後の見通しが立てやすくなるでしょう。

譲渡するのにふさわしい企業が見つかったらまずはその企業に対して自分の会社を譲渡する意志があることを伝えます。その際に仲介会社の時と同様に決算書や会社概要などを見せるようにしてください。相手の会社が買収する意志表示をしてくれた場合は本格的に話し合いを進めていきます。この段階では双方の希望条件を提示していき、話し合いによって妥協点を見つけるという流れになるでしょう。

話し合いによって双方の合意に至れば譲渡側と買収側がそれぞれ基本合意書を締結します。基本合意書には買収方法や買収金額、今後の交渉期間などが記載されているのでよく読んでから捺印するようにしましょう。独占交渉権や秘密保持契約に関する内容もしっかりと確認しておく必要があります。

特に独占交渉権は重要で、この権限を用いることによって買い手側はほかの会社と競争せずM&Aを実施することが可能になります。

実は基本合意書の締結は義務ではなく、中には基本合意書を締結せずにM&Aを進めることもありますが、その後予期せぬトラブルが発生した時にもめないためにも基本合意書は締結しておいた方が無難です。

基本合意書を締結したら、次は買収する企業に対してデューデリジェンスをおこないます。デューデリジェンスとは簡単に言えば内部監査のことで相手先の起業を詳細に調査することによって買収後に生じる可能性があるリスクをあらかじめ知ることができます。デューデリジェンスの段階で大きなリスクしか得られないと感じた場合、買い手が交渉を破棄することも可能です

。デューデリジェンスによって特に問題が見つからなければ最終交渉をし、合意に至ればM&Aを実行して組織の再編などをおこないます。

M&Aのメリットを考える

M&Aを利用する最大のメリットは自分の会社を引き渡す先を広く募集できるという点ではないでしょうか。自分の親族や従業員の中に会社を引き継ぐ人材が居なくてもM&Aを利用すれば全国にある会社全てが譲渡の対象となります。根気よく探せば自分の希望に見合った形で会社を買い取ってくれる相手を見つけることができるでしょう。

そして会社を買い取る側にとっては買収会社のノウハウを一挙に手に入れることができるというメリットがあります。特に新規顧客を得るというのは通常なかなか難しいものですが、M&Aを行うことによって買収会社の顧客を全て自分の会社の顧客にすることができます。

また他業種の企業を買収した場合、その会社の技術やノウハウを流用することでシナジー効果が得られ、自分の会社をより発展させるためのきっかけとなるでしょう。 また買収される会社で働いている従業員にとってもM&Aを自分の会社が利用することによって引き続き業務を継続していけるため職を失うことなく働き続けることができます。

このようにM&Aを上手く利用することによって買収する側もされる側も、さらには買収される会社に働いている従業員もメリットを得ることができるのです。

M&Aをすることで生じるデメリット

M&Aを実行する際には時間とコストがとてもかかることを覚悟する必要があります。

M&Aはスムーズに交渉が進んだとしても半年、交渉がなかなかうまくいかなければ1年以上の期間を要することもあるのです。そして買収する側は当然相手の会社を買い取るために莫大な資金が必要となりますし、会社を譲渡する側も仲介会社に対しての仲介手数料や報酬などが最低数百万円から会社の規模によっては1,000万円以上必要です。

もちろん交渉までの時間が長引けば長引くほどこれらの出費は増加していくことでしょう。 そして会社を買収した側は従業員についていろいろと配慮しなければいけません。M&Aを利用して買収した会社の従業員に対して邪険な扱いをした場合はせっかくの優秀な人材が離れていくということもあります。

逆に買収した会社の従業員を重宝しすぎると今まで自分の会社で働いてくれた人たちの反感を買うこととなるでしょう。

M&Aを行使し、会社を買収した後はそのことによって生じる可能性があるリスクを十分考慮しつつ、自分の会社の従業員と買収した会社の従業員に対して平等な扱いができるような経営をしていくことが求められます。

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